TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「キッドナップ・ブルース」*浅井慎平監督作品




脚本・監督・撮影・照明:浅井慎平
音楽:山下洋輔
挿入歌:「狂い咲きのフライデイ・ナイト」
    作詞・作曲/桑田佳祐  歌/タモリ
出演:タモリ一義、大和舞、伊丹十三、竹下景子、川谷拓三、吉行和子、根津甚八、桃井かおり、内藤陳、宮本信子、小松方正、所ジョージ、室田日出男、岡本喜八、淀川長治、小倉エージ、おすぎ、ピーコ、佐藤B作、藤田弓子

☆☆☆ 1982年/ATG/92分

    ◇

 映画から物語性を排除したらどうなるか。この映画はその答えのひとつになっているかもしれない。
  
 自転車に乗った中年の男(タモリ)が、地下駐車場で幼い少女に声をかける。「海が見たい」という少女を自転車に乗せて、男と少女とぬいぐるみのゴリラが共に旅をすることになる。田舎道、海岸、夜道、旅館、農家、居酒屋、小学校、バー、床屋と、いろんな所でいろいろな人間たちと出会う。
 ふたりが出会う人間は多い。農家で『恋愛論』を語る男(川谷拓三)、風呂屋で話し掛けてくる男(内藤陳)、『心理学』と『応援歌』をがなる男(伊丹十三)、おでんやと云われて怒り出す屋台の主人(渡辺文雄)、ピアニスト(山下洋輔)、酔っぱらい(根津甚八)、小学校の女教師 (竹下景子)、バーのマダム(吉行和子)etc...

 写真家・浅井慎平の初監督作品は、ストーリーを書いても何の意味も持たない。映っているのは被写体として、人工的な物(空 き缶、電話ボックス、カメラ、ラジオなど)と、自然の美しい景色(海岸、一本道など)が人間と同列に並べられているだけだ。その中には俳優森田一義はいない。ましてや、芸人やミュージシャンとしてのタモリがいるわけでもない。曖昧な存在として浮遊する男がいるだけだ。
 写真集のような“風景”の中を、男と少女が“風”となって通り過ぎて行く。自由に語る人たちに紛れて存在するだけのふたりには、人と人とのコミュニケーションは稀薄だ。しかし、語る人々の体温は伝わる。温もりがあるからふたりは自由に旅ができる。
 夏から冬にかけて続けられた旅は、雪山にいる男の前に突然鉄格子が立てられ、終わる。
 しかし物語のリアリズムがないから、そのオリのうしろには囲いも何もない。ただ雪景色が広がるだけ……。

この映画は、好きか嫌いかがはっきりと分かれるだろうが、浅井慎平の写真集ならぬ映像集として、気に入った。

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