TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「わるいやつら」*野村芳太郎監督作品

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監督:野村芳太郎
原作:松本清張
脚本:井出雅人
撮影:川又昴
音楽:芥川也寸志
出演:片岡孝夫(現・片岡仁左衛門)、松坂慶子、梶芽衣子、藤真利子、宮下順子、藤田まこと、神崎愛、緒形拳、渡瀬恒彦

☆☆☆  1980年/日本・松竹/129分

    ◆    ◆

 1978年に松本清張氏が自身の著作物の映像・ドラマ化の粗製濫造を抑えるために、野村芳太郎監督と共に設立した「霧プロダクション」の第一回作品が、この『わるいやつら』だった。

 親が残した総合病院を継ぎ病院長になった戸谷信一(片岡孝夫“現・片岡仁左衛門”)は、医師としも経営者としても熱心さに欠ける放蕩息子で、世間知らず。
 そのために病院の経営は苦しいのだが、彼は、資産のある女性らから金を巻き上げては病院の赤字を埋めていた。

 あるとき、ファッションショーで暴漢に襲われる新進ファッション・デザイナー槙村隆子(松坂慶子)を助けた戸谷は、彼女に一目惚れをし、彼女を手に入れるために次々と悪事に手を染めることになる。

 自分の欲望を満たすために、社会的地位がありながら、女を騙し、金を貢がせ、やがて殺していく戸谷。
 女性を食い物にしているプレイボーイで、プライドも高い男だが、槙村隆子の美貌の前に“純愛”に陥ってしまったことが、結果、女たちに惑わされる悲劇の始まりとなる。


    ☆    ☆

 ◆以下、物語の核心に触れる箇所があります。

    ★    ★

 別居中の妻慶子(神崎愛)とは、友人でもあり父親の代から仕えている会計士の下見沢(藤田まこと)に離婚調停を進めさせている戸谷。
 彼には3人の愛人がいる。
 
 寝たきりの夫を抱えた、材木商を営む横武たつ子(藤真利子)。
 情事を楽しんだホテルの帰りに、たつ子は毎回戸谷から病身の夫に飲ませるようにと薬包を渡される。
 日ごと衰弱していく夫を眺めながら、戸谷が自分のために夫の死を早めてくれていると、彼への想いを募らせていくたつ子。

 京都の老舗料亭の女将・藤島チセ(梶芽衣子)は、東京の店に顔を出す度に戸谷との逢瀬を愉しむ十年来の愛人で、やはり夫がいる身だが、料亭の経営をチセに任せ遊び惚けているグータラ亭主には愛想を尽かしている。

 病院兼用の自宅に住み着いている看護婦長の寺島トヨ美(宮下順子)は、以前は父親の愛人で、いまでは戸谷を心から愛し身を捧げる独身女だ。

 横武の主人が死亡し、解剖の結果体内からヒ素が検出される。
 たつ子は恐ろしさから動転し戸谷の元へ駆け込んでくるのだが、戸谷にしてもヒ素が検出されたことなど寝耳に水の話だった。
 実は、たつ子に渡していたクスリはただの風邪薬で、医者の立場を利用して女を操る方法にすぎなかった。
 では、誰がヒ素を混ぜたのか。

 戸谷の思惑と、それとは別に起こる展開の歪み。それは、女たちを利用しているつもりでいた男が、実は誰かに利用されているのかもしれないというサスペンスに変わってゆく。

 終始、着物姿で魅せてくれる梶芽衣子は貫禄十分。
 妖艶な物腰と冷たい表情から夫殺しを持ちかけ、一転、戯れ言の如く笑い飛ばす表情の豊かさなど円熟味ある演技。
 死期間近な病床の亭主の鼻先に手鏡を置き、「やりきれんわぁ。いつまで気張る気やぁ、このオッサンは」と、もの静かに毒づく姿の老獪さ。
 ラストのワンシーンでのふてぶてしい笑みといい、登場する女のなかでは一番の性悪……か?

 一心に愛する男に尽くす宮下順子のネチッ濃さは、この映画を一段とダークなものとしている。戸谷にとっては、殺しきれなかったトヨ美こそが一番の誤算であり、女の怨念を感じながら堕ちるべくして堕ちた感がある。
 夜遅くに、隆子のマンション前で仁王立ちする宮下順子の形相は、ホラーだ。

 物語は最後の30分で急速に展開する。

 仕掛けた者と仕掛けられた者たちの思惑に、まんまと嵌まった戸谷の運命は一点に集約されていく。
 緒形拳扮する刑事が一気に戸谷を落とす見せ場から、弁護士(渡瀬恒彦)から聞く事件の顛末。
 本当に“わるいやつ”は誰だったのか………。


    ★    ★


 この『わるいやつら』は、2001年に2時間のサスペンス・ドラマとして、主人公の戸谷信一に豊川悦司を配しドラマ化されたが、ラストが変更されていた。
 
 2007年1月から放映される連続ドラマでは、看護師の寺島豊美を主役にしている。
 大好きな梶芽衣子が扮した藤島チセを、これまた大ファンである余貴美子が演じる。どんな悪女ぶりを見せてくれるのか、楽しみである。

《役名》  ・連続ドラマ ・映画     ・SPドラマ
戸谷信一………上川隆也   片岡孝夫    豊川悦司
槙村隆子………笛木優子   松坂慶子    萬田久子
藤島チセ………余貴美子   梶芽衣子    十朱幸代
横武龍子………小島 聖   藤真利子    広岡由里子
寺島豊美………米倉涼子   宮下順子    藤真利子
田中慶子          神崎愛     杉本彩
下見沢作雄……北村一輝   藤田まこと   内藤剛志
井上警部………金子 昇   緒形拳     岡本信人
榊弁護士          渡瀬恒彦
横武常次郎         米倉斉加年
沼田看護師長…朝加真由美
粕谷事務長……伊武雅刀

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Comment

トモロッシ。 says... "はじめまして。ストーンズ大好き人間です。"
はじめまして。
ちょっと長谷川安春のことを調べていましたら、ここをヒットしました。
あれこれ読んでみると、ジョーボナマッサのジャケットに
注目。夫に見せると、狂喜乱舞。ツウだ、ツウだ、と言っていました。
夫も1950年代の1月24日生まれの水瓶座。
なにやら、ツェッペリンの来日のことなど、共通項を見出して、ミックマックさんのブログをお気に入りに入れました。
後ほどゆっくり過去のブログを拝見いたします。
私もブログを書いています。でも、ミーハーな内容。
水瓶座の人は収集家か、と私は思っています。ウフフ。
うちもこだわりの人。
ではでは、変な書き込み失礼。あまりにも夫に似ていたので、思わず書いてしまいました。
また、お邪魔します。
2006.12.15 22:11 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
トモロッシ。さん  はじめまして。コメントありがとうございます。

長谷部安春監督の検索は、先日の『相棒5/名探偵登場』をご覧になってのことでしょうか? 監督お得意のアクションはなかってですが、軽妙なストーリー運びはさすがでした。ハードボイルドを肴にした脚本も面白かったですよね。あの風貌冴えない探偵マーロウ矢木を、今後のシリーズにも再登場させて欲しいくらい良かったです。

>1950年代の1月24日生まれの水瓶座。ツェッペリンの来日のことなど、共通項を見出してお気に入りに入れました。水瓶座の人は収集家か、と私は思っています。ウフフ。うちもこだわりの人。

イヤァ、きっと素敵な旦那様だと思いますよ(笑)。

ボナマッサをご存じということは、かなりブルースロックに興味がおありでしょう。
ストーンズファンはご夫婦共なのですか? うちも毎回、来日時はふたりで出向いていますよ。

さて、過去の記事を読んでいただいてお分かりのように最近は昭和歌謡やピンキー映画の話が多くなりましたが、何でも見たい、聴きたい、知りたいが信条ですので、ストーンズはもちろん、ゼップや70年代ロックのお話等なんでも、気軽にまたお出でください。
2006.12.16 14:28 | URL | #- [edit]
トモロッシ。 says... ""
ミックマックさん、おはようございます。
早速のお返事ありがとうございます。

そうです、そうです。相棒を観ていて、あれ、昔聞いたことのある監督の名前だな、と思って検索したわけです。
うろ覚えで、長谷部ではなく、長谷川と勘違いしていたようです。ドラマを観ていてあまり監督名に注目していない性質(たち)なので、今頃こうして調べています。
結構、最近のドラマで監督していたのですね。
昔のイメージとしては、エロ的な映画を撮っていたかな、と
そのぐらいの知識です。

こちらのブログ、読み応えがあって、話題も豊富。かなり
私の趣向にマッチしています。
まだ全てを読みきっていませんので、時間を見つけては
過去のを読んでいきたいと思います。
こだわりの水瓶座の夫は、ゼップの大ファンです。
来日公演の2日目に行ったとのこと。
私はその頃はまだ自由に外に出られない年齢でしたので
来日公演は行っていません。
て言うか、ゼップ好きじゃなかった。ここが夫と合わないところ。ストーンズは小学生の時に出会って、それ以来ファンですよ。これを書くと長くなりますので割愛。
でも今回の来日公演は参加しなかったんですよ。
私たち、ここ数年、東京でのコンサートは日帰り強行なんです。3日連続でも、行っては最終で帰ってきて、また翌日に行く、といったことを繰り返していました。どうしてもその日に帰ってこなければならない、家庭の事情。ネコがたくさんいるので、家を空けられないのが現実。
今回、仙台でのコンサートがある、と発表になったとき
喜んだのですが幻となり、グッと萎えました。
長くなるので、また書きます。
ストーンズは初期の頃が好きですね。ルビーチューズデイは涙涙です。ハートオブストーンが私のベストかな。
2006.12.17 09:19 | URL | #- [edit]
mickmac says... ""
トモロッシ。さん

>こちらのブログ、読み応えがあって、話題も豊富。かなり私の趣向にマッチしています。まだ全てを読みきっていませんので、時間を見つけては過去のを読んでいきたいと思います。

ありがとうございます。
過去記事でも構いませんので、記事内容で何かコメントがありましたら自由にお出でください。

「Heart of Stone」は、60年代の曲のなかでは、同じく大好きな1曲ですよ。
最初に買った、日本ファンクラブ会員が選んだベストアルバムに収められた曲は全部がマイベストです。
2002年のLICKS TOURでは、前半の北米ツアー時に数回演奏され、日本でも聴きたいと思っていたのですが、セットリストから外れてしまい、とても残念でした。
それでも、念願の武道館公演には涙涙でした(笑)。

ゼップの初来日公演は、初日の23日に行きました。
あの頃はまだ、簡単にチケットが手に入ったんですよねぇ。
2006.12.18 15:52 | URL | #- [edit]
蟷螂の斧 says... "藤田まこと"
原作の終わりの部分から、さらに一歩踏み込みましたね。
これもまた良かったです。
松坂慶子さんも強かな女をうまく演じていました。
2013.02.05 23:59 | URL | #HMPKSmtQ [edit]
mickmac says... "Re: 藤田まこと"
蟷螂の斧さん 

> 原作の終わりの部分から、さらに一歩踏み込みましたね。
> これもまた良かったです。
> 松坂慶子さんも強かな女をうまく演じていました。

松坂慶子に貢ぎ、裏切り者となる藤田まことが、結局、松坂慶子に棄てられご乱心するラスト……
男たちを手玉にとったのは、結局、美貌を持つ美女………
腹黒い人間たちばかりが出てくる松本清張らしい作品でした。
2013.02.06 18:14 | URL | #- [edit]

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