TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ブラック・ダリア」

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THE BLACK DAHLIA
監督:ブライアン・デ・パルマ
原作:ジェイムズ・エルロイ
脚色:ジョシュ・フリードマン
出演:ジョシュ・ハートネット、スカーレト・ヨハンソン、アーロン・エッカート、ヒラリー・スワンク、ミア・カーシュナー、ジョン・ガバナー、フィオナ・ショウ、ビル・フィンレイ

☆☆☆☆  2006年/アメリカ/121分

    ◇

 最高のヴィジュアリスト、ブライアン・デ・パルマ監督が描く極上のフィルム・ノワールである。

 原作はジェイムズ・エルロイの、1940~50年代のL.Aの暗黒部を描いた『LA四部作』の第1作目。1997年の映画賞を総なめし、キム・ベイシンガーの妖艶さで魅了された『LA コンフィデンシャル』はこのエルロイの『LA四部作』の3作目だった。

 1947年のロサンゼルスを震撼させた実際の迷宮入り猟奇殺人事件を下敷きに、エルロイが書き上げたこの犯罪小説は、まさにデ・パルマのために用意されたような素材だ。

 アメリカで一番有名な死体の名前はエリザベス・ショート。女優を夢見ながら、田舎からハリウッドへ出てきた黒髪の美人。しかし、ハリウッドではひと山いくらの存在でしかなく、安バーで男漁りをし、サンセット大通りを黒服で歩きまわる彼女を指して、当時の映画"THE BLUE DAHLIA"から『ブラック・ダリア』と呼ばれていた。

 発見された全裸の死体は、腰から胴を真っ二つに切断され、内蔵を取られ、血液はきれいに洗い清められており、顔は口から耳にかけて切り裂かれていた。

 デ・パルマ監督の70~80年代の作品『愛のメモリー』や『悪魔のシスター』『殺しのドレス』に通じるような、いわゆるタブロイド紙が競い合うゴシップネタに満ちた犯罪だ。
 映画はミステリーの形式をとりながら、決してミステリーだけに終始しているのではなく、特異な死体を介して、その周りにいる魑魅魍魎な人間たち、性と狂気に魅了された人間たちの暗い闇を浮かび上がらせている。
 セピア調の色彩とギミックな映像は、まさにデ・パルマらしい香りに満ちている。

    ☆    ☆

 ミスター・アイスことバッキー・ブライカート刑事と、ミスター・ファイア=リー・ブランチャード刑事はともにボクシングのリングで闘った間柄。バッキーがリーを恩人と慕う要因や、リーの恋人ケイ・レイクとの三角関係が、映画の前半三分の一を使って語られなかなか事件が起こらないのだが、ここでいろんな伏線が張られているから要注意だ。

 ケイ役のスカーレト・ヨハンソンが素晴らしく美しい。バッキーとの恋愛模様もスリリングで魅惑的だ。

 後半、『ブラック・ダリア』に魅せられたリーを含め、エリザベスに関係した人物が次々と登場する中で、エリザベスにそっくりな大富豪の娘マデリンの存在がバッキーをも狂わせていくことになる。
 このマデリン役のヒラリー・スワンクが、『ミリオンダラー・ベイビー』とはうって変わって妖しい魅力を振りまいている。

 そして、40年代のハードボイルドな雰囲気も魅力的だ。
 紫煙漂わせるダンディな男たちと、眩しいくらいの赤いルージュで官能を振りまく女たち。
 バッキーが聞き込みに行くレズビアン・クラブのなんと退廃的なことか。ここでは、実生活でもレズビアンを公言している歌手のkd.ラングが、颯爽と『Love for Sale』を披露している。

    ☆    ☆

 デ・パルマお得意の流麗なカメラワークは冒頭からも見ることはできるが、ピークを迎えるのが、ふたりの刑事がある事件の張り込みをしているところから始まる。
 2羽の鴉の不気味な鳴き声を合図に、カメラはまるで神の目線であるかのように天空高く昇り、エリザベスの死体発見者の悲鳴をフレームの隅に収めながら、バッキーとリーの張り込み現場に舞い降りてくるまでの長廻しは実に見事だ。

 そして後半のクライマックスであるスローモーション・シーンと、『キャリー』を彷彿とさせるラストのショック・シーンでのデ・パルマらしさに、ゾクゾクさせられた。

    ☆    ☆

 エリザベス・ショートが生きているシーンは、ポルノ映画とカメラテストのフィルムの中だけ。この手法が、回想以上にエリザベスの存在を際立たせている。カメラテストの監督の声はデ・パルマ自身。そして、このエリザベスを演じているミア・カーシュナーは、テレビシリーズ『24〈Twenty Four〉』のseason 1・2・4で女テロリストのマンデーを演じている。





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