TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ニワトリはハダシだ」*森崎東監督作品



監督:森崎東
脚本:近藤昭二、森崎東
音楽:宇崎竜童、太田恵資、吉見征樹
出演:肘井美佳、原田芳雄、倍賞美津子、浜上竜也、守山玲愛、加瀬亮、石橋蓮司、余貴美子、塩見三省、岸部一徳、李麗仙、中川梨絵、柄本明、笑福亭松之助、不破万作、河原さぶ、

☆☆☆☆  2004年/日本/114分

    ◇

 常に、社会の底辺でたくましくエネルギッシュに生きている庶民の姿を描いてきた森崎東監督の24 本目の新作は、知的障害の少年を軸に権力の汚職や差別など、社会が抱えるさまざまな問題をユーモアをもって描いたエンターテインメントな傑作。

 タイトルの『ニワトリはハダシだ』とは“わかりきっていることのたとえ”。そして、誰もが自分の人生哲学を持っているということ。

 ♪ 生きているうちが花なんだぜぃ ♪

 舞台は、京都府舞鶴。
 潜水夫のチチ・守(原田芳雄)と二人暮らしの少年サム(浜上竜也)は、知的障害をもちながら人並みはずれた記憶力を備えている。チチはサムの将来を案じ、自分と同じ潜水夫の仕事を憶えさせようとしていた。
 サムのハハ・チンジャ(倍賞美津子)は在日朝鮮人で、チチと教育方針が合わないためにサムの妹チャル(守山玲愛)と共に、近所に住むチンジャの母親・金順礼(李麗仙)のところに帰っている。

 サムが通う養護学校の担任教師・櫻井直子(肘井美佳)の父親は大阪府警の捜査課長(石橋蓮司)で、妻・貴美(余貴美子)の実兄の検事・灰原(岸部一徳)が関係している機密費など裏金による汚職事件を捜査している。
 ある日、暴力団重山組が灰原への賄賂として贈ったベンツが盗まれる事件が起きるのだが、車内には機密費の裏帳簿が入ったままだった。

 出稼ぎ外国人が頻繁に出入りする中古車販売所で、クルマのナンバーや車種を憶えるのが好きなサムは、偶然、盗難されたベンツの中で帳簿を見てしまう。生来の記憶力の良さから丸ごと数字を暗記してしまったサムは、事件の揉み消しを画策する警察権力と暴力団らに狙われることになる。
 直子やチチ、ハハ、そして権力に疑問を持つ若い刑事(加瀬亮)らは、サムを救出するために決死の覚悟で行動を起こす………。

    ☆    ☆
 
 障害者問題や在日あるいは外国人労働者を扱ったからと言って、決して悲惨で暗い映画にはなっていない。むしろヴァイタリティあふれ、あっけらかんと、ワクワクして観ることができる。弱者が追いつめられたときに、沸き上がるパワーで権力に立ち向かう姿の痛快さがある。
 そして、愛する者同士が一緒に暮らせないもどかしさや、苦しい環境や立場で一生懸命に強がって生きている者たちの絆が、こころに響く。

 尊い歴史がある舞鶴。
 第二次大戦終結後、シベリア抑留からの引き揚げ港としても有名だが、もうひとつ、多数の朝鮮人の殉難地でもある。
 日本で強制労働を強いられていた朝鮮人労働者の家族を乗せ、祖国釜山港へ向けて航行していた船が佐波賀沖で爆発。五百人以上の命が眠っている地でもある。
 その時、運良く助けられた人々が、祖国へ帰ることもなくこの舞鶴に住み着いている。

 海に落ちた守を引き上げ、震える守の身体をさすりながら「この海がウチを産んだも一緒や。韓国人でも、朝鮮人でも、日本人でもない、この佐波賀の海で産まれた佐波賀人や!」と、チンジャが語る。
 かつて「なに人でもかまわん。ニワトリはハダシや!」と言って、守はチンジャと結婚しているのだが、逞しさの裏にある男の弱さを優しく包み込む見事なイイ女ぶりは倍賞美津子ならではだ。

 ほかに大好きな女優がふたり出演している。

 余貴美子は、仕事一筋で家庭を顧みない捜査課長石橋蓮司の妻役。実兄の汚職事件を夫が捜査しているために家を出て行く。ここにも、愛する者たちが幸せに暮らせない不合理がある。
 父親に反発している直子に、余が最後にかけて行く言葉が映画の軸にもなっているような気がする。
 「お釈迦さんが死なはって五十六億七千万年経ったら、弥勒菩薩(みろくぼさつ)さんがこの世の人間を救いに来はる。その時までにも時々菩薩さんは人間の中に混じって、布袋さんみたいな欲のない、ニコニコ笑うてばかりの、ちょっと知恵が薄いように見える人に化けて、様子を探りに来てはる。あんた(直子)を救うてくれるんは、菩薩そっくりに見えるあの子らだけやで。」
 
 18年ぶりの映画出演となる中川梨絵は、鍼治療師の島崎一枝役。
 容姿端麗お変わりないが、さすがに『竜馬暗殺』でのギラギラした原田芳雄と妖艶な中川梨絵からは長い年月を感じさせるふたりだが、それでもこのツーショットは嬉しい。ついでながら、石橋蓮司も『竜馬暗殺』のひとりだ。

 そのほか、円熟味ある役者たちが一同に揃った見事なキャスティングだ。
 李麗仙と不破万作のツーショットに、にやり………。

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