TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ユナイテッド93」



UNITED 9
監督・脚本:ポール・グリーングラス

☆☆☆☆  2006年/アメリカ/111分

    ◇

 記憶に新しく、それだけに観る事をためらいがちな事実だが、遺族や関係者たちの伝えておかなければならないという想いの“記録”に、我々は目をそらすことなく受け止めなくてはならない。

 2001年9月11日、テロリストによってハイジャックされた四機のボーイング機のうち、唯一テロリストたちの目標に到達できなかったユナイテッド93便のドキュメンタリー・ドラマであり、それは膨大な資料と関係者の証言、そして、遺族たちに残された乗客たちからのメッセージを基に構成されている。

 もちろん事実を知って見ているのだから、オープニングから緊迫感を強いられる。
 そして、最初にワールド・トレード・センターに突っ込んだアメリカン航空11便の、ハイジャック第一報から起こる連邦航空局や各地管制センターそして軍の防空指令センターの右往左往ぶりが実にリアルだ。連邦航空局のトップに就くベン・スライニーをはじめ、管制官や軍の担当者が自身の役で出演していることで、そこに起きた事柄の“真実の姿”が裏付けられていると感じられる。
 そのほか93便の乗客乗員のキャスティングに無名の俳優たちが起用されていることも、リアリティさを増すこととなっている。
 
 アメリカ映画特有のエンターテインメント性など皆無なのは、監督が英国映画生まれのポール・グリーングラスだからだろう。彼の作品『ボーン・スプレマシー』('04)こそハリウッドの大作として大ヒットはしたが、もとはドキュメンタリー作家だ。
 乗客乗員たちの背景やメロドラマ性など、いくらでも描こうと思えばドラマ性を全面に出せる要素を一切取り入れない手法こそ、この作品の迫真力を一段と高めている。

 映画は、93便がハイジャックされる後半から機内の人間描写に重きが置かれるのだが、事の善悪を別にしてテロリストたちが行動するまでの心理描写にはハラハラしてしまう。そして乗客が神に祈るのと同じように、テロリストが神に祈る姿を見て人間の哀しさを見せつけられる。

 機内の出来事は“推測”ではあるが、膨大な資料と事実のほかに、少しの想像力で記憶されておくべきこともあるはず。

 真しやかなヒロイズムに走らず、上質な再現ドラマとして完成されており、絶対に観ておくべき映画だ。


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