TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

びっくり箱-姉妹編-

◆原作:向田邦子
◆脚本:中島淳彦
◆演出:福島三郎 
◆出演:沢口靖子/余 貴美子/永島敏行/佐藤重幸
    草村礼子/小宮孝泰/琵琶弓子
◆公演:2006年4月3日 愛知厚生年金会館 B列15番
◆上演時間:130分

  ☆     ☆

 70年代に向田邦子によってテレビドラマ用に書かれた『びっくり箱』は、大竹しのぶと京塚昌子による母娘の設定だったのだが、今回の舞台化は姉妹に設定を変えての上演になっている。

  昭和50年頃の一軒家が舞台で、隣家のおばさんの通夜から翌日のお葬式までの時間が、ちゃぶ台のある茶の間の中でテンポよく進んでいく。
 向田邦子的世界を浮かび出させるのは昭和の家の茶の間。『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』『あ・うん』が忘れられないように、茶の間という空間で話が形成されていく空気が何とも懐かしい。
 
 会場の照明が落とされ、2階からミシンを踏む音が聞こえてくる。足踏み式ミシンの音も昭和の郷愁を誘い、すんなりと向田邦子の世界に入り込むことになる。
 見事なはじまり。

 幼いころ父親を亡くし、母親の腕ひとつで厳しく育てられた姉妹。3年前に母親を亡くしてからは、29歳の妹厚子(沢口靖子)は東京で看護士の仕事を。36歳の姉とし子(余貴美子)は母の後を継ぎ実家で洋服のリフォームを生業にしている。
 ふたりは、母親から常にひとつのことを言い聞かされていた。
 『夫として選ぶ男性は、きちんとした学歴とりっぱな職業に就いていること』
 しかしふたりとも、お互いがその言葉を守っているものと思いながら、自分が惚れ込んでいるのはグータラ男だった………。

 ◆以下、ネタバレを含んでいるのでご注意を。


  ☆     ☆

 ミシンの音につられるように米倉(永島敏行)が登場。こっそりと2階を伺いながら箪笥の引出しなどを物色。とし子に見つかり甘えるような声で言い訳する永島敏行と、余貴美子が独特な声の調子でなだめすかすように話すこの台詞のなかの、ちょっとした言い回しや言葉のやりとりに、この男女の微妙な関係が見えてくる。巧い。

 一人暮らしの家に転がり込んできた45歳の男を『よねくらさん』と名字で呼ぶような距離の取り方をするとし子に対して、調子がよく山っ気がありグータラな米倉を演じる永島には、男の根の優しさが現れていてお見事。この男の軽さがじつは、黙っていても分かる相手への思いやりなのだと気付かされるのだ。女は、そんなところを感覚的に感じて惹かれてしまうのだろうな。

 東京で真面目に働いていると思った厚子がフリーター男をつれて帰ってくる。このときふたりは、観客席の後ろから登場する。
 田島(佐藤重幸)は、これまた気のやさしい男。夢ばかり追い掛け頼りがないけど、好きになった女性を幸せにしたい気持ちだけは一人前。しっかり者の厚子に引っ張られながら郷里に連れてこられ、岸田家の隣家の葬式に間違えて入ってしまうようなドジな男。
 沢口靖子は生真面目だけどどこか可笑しいっていう役が結構似合っているから、コメディエンヌぶりは十分に発揮される。

 隣家の小塚夫婦(小宮孝泰・琵琶弓子)と、その家の叔母で姉妹の母親の友人春子(草村礼子)の存在もからみ合いながら、この茶の間で繰り広げられるのは男と女や、姉妹、家族や夫婦の愛にあふれた関わり合いであり、本音でぶつかり合い言い合いになることで相手を理解できる家族の姿が、可笑しくそして少しセンチに描かれていく。

 『スーツをきちんと着た堅いお役所勤め』の父親の姿が、本当は『定職もなく毎日職安巡り』だったことが判り、実は自分達も母親と同じだったことに気付かされホッとする姉妹。

 男たちは不器用に、女たちは懐深く生きている世界こそ、実はとても素敵な世界じゃないかと思えてくる。
 そんなお話、ほんわかした気持ちで見終わりました。

 年寄りが『よいしょ』と口にするのは『良い死を』と願っているのだという台詞があった。なんだか耳に残っている。

  ☆     ☆

 女優・余貴美子さんのファンサイトY's Passionを運営していることもあり、今回楽屋を訪問させていただいた。
 この楽屋訪問のレポはY's Passionに掲載するつもりです。



そのとき頂いたサイン
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/179-10fee9e1