TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「恋人たちは濡れた」*神代辰巳監督作品



監督:神代辰巳
脚本:神代辰巳、鴨田好史
出演:中川梨絵、大江徹、絵沢萠子、堀弘一

☆☆☆☆★ 1973年/にっかつ/76分

    ◇

 かつての日活ROMAN PORNO の作品が随時DVD化されている。30年近く前、青春を過ごした時の長さを感じながらいくつかの作品を改めて見てみると、同時代に生きていた頃に共感した感覚がひとつも色褪せていないことに気付く。根底に流れているそれぞれのテーマにブレがなく、いつの時代にも感じることができる普遍性を持った作品の力強さを感じるのだ。
 特に、神代辰巳監督自身が「一番好きな作品」という本作品は、神代作品の世界観を見事に創造した逸品で、70年代学生運動の挫折から生み出された“無気力”“無感動”なシラケ世代の姿が見事に描かれる青春映画の大傑作である。
 この作品で時代を感じるとしたら、それは作品全体のセックスシーンに無用に大きな修正が入ることだろうか。不粋で野暮なことなど忘れていたのだが、こんなにも大きな黒ベタには笑ってしまう。

 「お客様は神様です」と映画館の舞台上でおどける主人公。路上でギター片手に弾き語る春歌や、「さようならさよなら、達者でいてね」と中川梨絵が口ずさむ流行歌のフレーズなどが、主人公たちの虚無に彩られた心情に重なり情感とともに作品効果となるのが神代辰巳の世界だ。まさに神代節のエッセンスに満ちた作品。

 海沿いの田舎町で映画館のフィルム運びをしている克(大江徹)は、何かから逃れて来ているような感じの若者で、名前を捨て過去を捨てただヘラヘラと自分を嘲笑しながら日々を送っている。町の若者たちが久しぶりに帰郷した彼に親身に話しかけるが、彼は頑として否定し続ける。

 ふと知り合ったひと組の男女、光夫(堀弘一)と洋子(中川梨絵)。過去の詮索もしない洋子に、克は自分と同じ匂いを感じるようになる。中川梨絵の美しさと妖しさ、そして浮遊感が不思議な魅力となって記憶に止まることだろう。

 こんな町は嫌いだと云う克に「もう少し居なさいよ。みっともないじゃない。」と洋子。
 「俺はみっともないこと、きらいじゃないよ。」と克。
 カッコ悪いことがなんてカッコ良いことなんだ、という時代が云わせる台詞……。

 忠霊塔で首を吊る映画館主の妻(絵沢萠子)は、首に廻した帯紐がスルスルと解け自殺に失敗する。若者の無力感とは違い、英霊の碑の下で不様に生き残る中年女の挫折感には滑稽さが漂う。

 目的のない、意味のない行動をし続ける若者たちの心象をとらえ、忘れることができない浜辺での全裸の馬跳び。カッタるい日常をイメージする名シーンである。このシーンのみ、チラチラと中川梨絵の股間を飛ぶ白いボカシが優雅だ。

 そして、防波堤でカッコよく仁義を切る中川梨絵の姿から「明日に向かって撃て」のように情緒豊かな自転車の二人乗りへと繋がり、洋子と克は海に沈んでいく。
 「俺、本当はあんたとしたいんだよ。だけどよ……」唐突のラストシーンは、アメリカンニューシネマの如く鮮烈な終幕だ。

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