TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

愛しき人へ/稲葉喜美子


愛しき人へ
 シンガーソングライター稲葉喜美子のアルバムで「やさしきひとへ」と読む。
 1993年までに9枚のアルバム(オリジナル&ベスト)を出している彼女の1982年のデビューアルバムだ。

 「第二の中島みゆき」などと云われたのは、彼女の歌の世界感の重さからか。山崎ハコとも並べられていたが、当然、似ているわけではない。(かなりの曲に山崎ハコの夫・安田裕美が、編曲やアコースティック・ギターで参加している)

 ハスキーな声と独特な節回しで、ディープな世界をよりブルージーな情景として唄う稲葉喜美子の世界には、男についていない女、男と女の駆け引きや男の下心を見通した女、そして、堕ちてしまった女たちが居ついている。
 
 石黒ケイの『港のマリア』から名付けたのだろうか自分のことをマリアと呼び、西岡恭象の『プカプカ』の歌詞に出てくるようなイメージの彼女。

  俺のあん娘は煙草が好きで いつもプカプカプカ
  ……………………
  幸せってやつがあたいにわかるまで あたい煙草やめないわ


   ☆    ☆    ☆

催愛術
 オンナに生まれたことしか取り柄がない女が、一生に一度の我が儘だと憧れのひとに呪文をかける。目を醒ました彼が微笑みながら愛していると囁いたそのあとに、君は段々と僕を嫌いになるとたしなめられる女。

眠れない夜
  想いだされるくらいなら 忘れられたままでいい
  中途半端なやさしさなら くれない方がいい


 男が酒に酔うように、男に酔う女のひとりごと………。

はあばあぶるうす
  カッコつけきれずヨコハマ 公衆電話捜して
  けれどもポケットのなかに10円玉ひとつない
  電話ボックスの扉を 握り拳で叩いて
  カッコつけてヨコハマ 鼻唄まじりブルース


氷雨
  別れ噺 切り出す あんたのその唇
  ついこの間まで 火傷するほど熱かった


 ルージュを変え彼の好きなトワレで出向く女のドラマは、彼のために伸ばし始めた黒髪に冷たい雨が打つことで終わる。JAZZYなピアノが奏でるブルース感たっぷりな名曲。

日の出町ブルース
  皮肉なもんさね 日の入りから稼ぎどき

 50絡みの立ちんぼの猫撫で声や、顔なじみのストリッパーのいたわりや、トルコ嬢の情けが沁みる町横浜日の出町。赤線時代の名残ある風景からは、女たちの息づかいが聴こえてくる。代表曲のひとつ。

夢の燃えがら
  どうせ男はと口にしてきたせいなのか
  それとも 男が所詮そんなもんだったからなのか

  共倒れるよりはマシ 今 離れた方が


   ☆    ☆    ☆

 残念ながら、稲葉喜美子のアルバムは全て廃盤扱いになっている。《あ~る盤》というオンデマンドCD-R盤で手に入れることは出来るのだが、きちんとした形で残して欲しいアーティストのひとりだ。

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