TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

負ける時もあるだろう~三上寛

 三上寛……どんなジャンルにも属さない孤高の歌い手。
 シンガー、詩人、アナーキスト、そして存在がブルース。

 71年の中津川の舞台でデビューした彼のアルバムを聴いたときの衝撃は大きい。「ひびけ!電気釜」と怒号し、「犯されたら泣けばいい」と恨み唄うのは、人間の哀しみと破壊性。そのアナーキーさは尋常ではなく、不快さを伴いながら人間の暗黒部をさらけ出す「うた」の毒は、非常に危険で聴く者を打ちのめしてきた。

 72年までのURCレコードでの魑魅魍魎さに比べ、70年代後期のレコードは歌謡曲っぽく怨歌・情念・恋歌を表現してきた。
 そして傑作が多く生まれた。
 その70年代後期の名作『負ける時もあるだろう』『青い炎』『』『夕焼けの記憶から~青森ライヴ』の4枚の廃盤・未CD化レコードが、インディペンデントレーベル(うち1枚はビクターエンタテインメント)からデジタル・リマスターされ紙ジャケットで発売された。



はじめの4曲「そうさあの日の夜は」「泣けてくるよ」「人間とはなにか」「せりふ」は、哀感を込めた、場末の酒場でひっそりと唄われるような歌謡曲。貧しくて惨めったらしい四畳半的な唄からは、市井の人間が浮かび上がる。どこか昔のイタリア映画のリアリズムを感じことができる。
“男にとっては何でもないことでも 女にとっては命がけのときがある”と唄う「関係」や「花子と太郎の恋物語」の日本的恋愛の姿。
「オートバイの失恋」「三上工務店が歩く」………どれをとっても名作。


負ける時もあるだろう
震えるほどに言葉が光り輝いている。
それまでの危険な香りが内包され、閉じ込められなかでチロチロと燃える炎のごとく、切ない叙情ある言葉と唄の数々。
中村誠一の弾けるようなサックスが踊る「ふしだらの傾向」。タイトル曲「負ける時もあるだろう」は、オーケストラをバックに物語られる。
言葉がウネウネと聴くものの体内を這って同化し、こころを鷲掴みされる傑作だ。
何か一枚と云うならば、これしかない。

    ◇    ◇    ◇

 上記シリーズではないが、メジャー・レーベル最期のアルバム(81年)もいい。


Baby
小室等、りりぃ、井上陽水、宇崎竜童、山崎ハコ、クニ河内、斉藤哲夫、惣領智子、大塚まさじ、菅野賢二らから提供された楽曲を、ヴォーカリストとして三上が歌うアルバム。彼の人脈の広さに感心しながら、ひとつひとつの曲から発せられる三上の歌声は素敵だ。
とくに「幸せの手紙」(りりぃ)「うわさによれば」(山崎ハコ)は、哀しい女の情感が伝わってくる。

 この3作は、昭和歌謡のブームのなか大西ユカリなどを聴く方々には、ぜひ一度聴いていただきたい。

  ◆    ◆    ◆

 90年代からはPSFレコードから精力的にアルバムを発表しているが、ぼくは80年代以前のように聴くことはなくなった。
 久々に最新録音を買ってみたのがコレ。


異義ナシ!
20年ぶりの新宿2丁目でのライヴはデビュー当時を彷佛とさせる熱い弾き語りで、「夢は夜ひらく」「オートバイの失恋」「青森県北津軽郡東京村」を再び絶唱している。

 幻の作品「補遺」と「1972・高知大学ライヴ」も、インディペンデントレーベルから発売されたが、コアなファンだけがお聴きください。灼けど、するかも。

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