TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「濡れた週末」*根岸吉太郎監督作品




監督:根岸吉太郎
脚本:神波史男
出演:宮下順子、山下旬一郎、中島葵、亜湖、安達信康

☆☆☆☆ 1979年/にっかつ/70分

    ◇

 この作品は、にっかつだけで60本近い作品に出演し、72年から8年間主役を張り続けたスター女優宮下順子の最後の主演作で、監督は20代の根岸吉太郎の第3作目にあたる。
 根岸吉太郎監督の落ち着いた演出は師である藤田敏八を思わせ、しっかりと存在感ある演技の宮下順子が断然光る秀作だ。

 1979年のにっかつ(前の年から日活は“にっかつ”と名称を変更した)には、『天使のはらわた/赤い教室』と『赫い髪の女』というふたつの傑作が生まれている。男女の性愛を濃密に描いた『赫い髪の女』で流浪の女を演じた宮下順子は、今度は、婚期を逃した30代の女性の心の渇きとジェラシーを淡々と演じ、平凡な独身女性の焦りをリアルに感じさせてくれる。

 小さな町工場で働く志麻子(宮下順子)は、不倫関係にある経営者の後藤(山下旬一郎)の煮え切らない態度に寂しさを感じる日々を送っている。後藤の妻(中島葵)からは頻繁に見合いの話を持ちかけられ、小学生の娘の明美とは遊び相手となりながら、素知らぬ顔のまま逢い引きの場所に向かう志麻子。『黒の舟歌』を訥々と口ずさむその唄が、その後、徐々に変化する彼女のこころの機微に符号してくる。まるで神代辰巳作品を思い起こさせる手法。

 ある夜、工場に泥棒に入った矢野という若者と知り合うが、矢野はその場に来た後藤に叩き出される。
 数日後、後藤の家で明美と遊んでいた志麻子は、夫妻に2人目の子供ができたことを知る。それまで、ベッドの上で志麻子が必ず問う「奥さんと浮気していない?」の言葉が、とんでもなく意味もない空虚な言葉だったと思い知ることになる。
 後藤夫婦に嫉妬した志麻子は矢野を探し出し彼の部屋に住みつくのだが、そこに矢野の彼女も加わり奇妙な同棲生活が始まる。矢野は毎日を気怠く生きているだけの男だが、その気ままさに何となく安らぎを憶える彼女は、気を紛らわせるためにふたりに明美の誘拐を持ちかける。

 だが、それも幼稚な計画としてしらけた結末で終わってしまう。
 最後の精一杯の復讐も、彼女には虚脱感だけが残る始末。
 空き地の片隅に、赤いワンピース姿で身体を丸めて佇む志麻子。口ずさむ『黒の舟歌』が印象的で、宮下順子の虚ろな顔がとても美しく撮られているシーンになっている。
 
 ラスト、赤いワンピースに白のスーツケースを引きながら歩く宮下順子のカットが印象的だ。

 根岸吉太郎はこの後、81年にこの作品と同じ脚本家神波史男、助監督に池田敏春を配し、蜷川有紀主演で撮った意欲作『奇妙な果実』を発表、そしてATG作品『遠雷』とともにブルーリボン賞監督賞を受賞した。

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