TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「上海帰りのリル」根津甚八

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根津甚八◆ 上海帰りのリル/しゃんそん 1982年

 2010年の引退表明から5年。朋友石井隆監督の要請によって〝1度限り〟の俳優復帰(『GOINNサーガ』)を叶えた根津甚八。
 元気な姿とは云えないものの、その眼力と、今ある限りの力で生身の肉体を曝け出し、狂気とも見える存在感でスクリーンに蘇った姿は、まさに執念の演技だった。
 役者・根津甚八の実人生を投影するかのように、因果応報のドラマチック性にファンは驚喜のひと言をあげたのだった。

 さてこのシングルは、1982年にリリースされた4枚目のアルバム『火男』からのシングル・カット。『さらば愛しき大地』で主演男優賞を総なめにした時期に重なる。
 サウンドプロデュースとアレンジをザ・ハプニングス・フォーのチト河内が務め、昭和歌謡の名曲をレゲエのリズムでクールにカヴァーした逸品だ。

 オリジナルは戦前から活躍した歌手津村謙が1951年に大ヒットさせたものだが、耳馴染んで聴いたのはバーブ佐竹や青江三奈の歌唱だろうか。
 しかし、あくまで懐かしのメロディ的な古い歌であって、好んで聴くような歌ではなかった。

 この「上海帰りのリル」という曲が思いもかけぬ効果を見せて頭に残るようになったのが、1979年に発刊された石井隆の劇画【天使のはらわた】だった。
 石井隆の代表作として、後の〝名美と村木のメロドラマ〟へと枝葉を伸ばす長編愛憎劇で、その第3部にて、長い間引き裂かれていた哲郎と名美が場末のバーで5年ぶりに再会する箇所がある。

 腕を負傷した哲郎に女がハンカチを差し出す……バーの裏口で煙草をふかす女の顔……名美だ……薄暗い店内で哲郎に気づく名美……ジュークボックスからは「上海帰りのリル」が流れている……「踊らないか」と誘う哲郎……身動きひとつしない名美……

  ♪望み捨てるなリル……
   誰かリルを知らないか……

 震えが止まらないほどに圧倒される、映画的興奮のコマ割り30数ページであった。多分、渡哲也の『「無頼」より~大幹部』のラストに流れる青江三奈の歌唱がイメージだ。

 根津甚八の歌い廻しは色気がある。
 もし『天使のはらわた サーガ』なるものの映像化が可能になれば、このシーンには根津甚八の歌唱でふたりを包み込んで欲しいものだ。
 と言いながらも「上海帰りのリル」はちあきなおみもカヴァーしている。ちあきなおみのしっとりした歌唱も絶対に捨て難いもの…ウ~ん、どうする…

 B面「しゃんそん」は、作詞吉田いつか、作曲上田正樹のブルージーな傑作。
 LP『火男』には未収録だったが、2012年に『火男』が復刻初CD化された際に収録されている。
 
★火男★
★さらば愛しき大地★
★GOINNサーガ★

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