TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「鍵」*市川崑監督作品


監督:市川崑
原作:谷崎潤一郎
脚本:長谷部慶治、和田夏十、市川崑
撮影:宮川一夫
音楽:芥川也寸志
出演:京マチ子、中村鴈治郎(二代目)、仲代達矢、叶順子、北林谷栄

☆☆☆☆ 1959年/大映/107分

    ◇

 耽美な谷崎文学の映像化作品。
 若くて妖艶な妻と性に貪欲な初老の夫、器量に恵まれない娘と打算で動く許嫁といった4人の異常な関係が描かれており、1959年の初公開時には成人映画の指定を受けている。


 没落した京都の資産家で古美術鑑定で名高い剣持(二代目中村中村鴈治郎)には、年齢の離れた美しく肉感的な妻郁子(京マチ子)がいるが、老いによって愛する妻との性生活が失われることに恐怖し、主治医の目を盗んでは、一人娘の敏子(叶順子)の許嫁で大学病院でインターンをしている木村(仲代達矢)に強壮剤の注射を打ってもらっている。
 郁子は執拗な性を迫る剣持のことは忌み嫌っているが、もちろんそんなことは一切おくびにも出さず、貞淑な妻を貫いている。

 若さを取り戻すために剣持は、自らの嫉妬心を利用しようと思いつく。
 ある晩木村を自宅に呼び、夕食の席で酒に弱い郁子にワイン飲ませ、入浴中にのぼせさせる。裸体の郁子を木村に介抱させ、その様子を楽しみながら、夜には熟睡する郁子の裸体をカメラに収めるのだった。そして、撮った写真の現像を木村に頼む。
 木村は頻繁に剣持家に呼ばれるようになり、同じように浴室で郁子は失神する。そのうちに郁子と木村の仲が接近し、お互い意識をし始めるが、ふたりが深い関係になることは剣持も承知のうえ…これこそ最上の嫉妬心であり、さらなる悦びに浸ることが出来るのだった。

 そんな両親の関係性に嫌悪感を持つ敏子は、一人暮らしをするために家を出てゆく。木村が父親の遺産目当てで自分と付き合っていることを承知していたが、木村と郁子が近づくことで、陰鬱な性格はますます暗闇に堕ちてゆくかのようで、敏子は郁子に対してある疑念が生まれる。

 木村から剣持の血圧が高くなっていることを聞いていた郁子は、ある夜、自分から剣持に軀をあずけ、これまでの自分の消極性を詫び激しく抱かれるのだが、剣持は無理を重ねたことで脳溢血で倒れ、言葉を発することができなくなり寝たきりになってしまう。
 その晩、訪ねてきた木村に裏木戸の鍵を渡す郁子。それからは、毎晩のように逢瀬をくり返すことになる。
 ある晩、剣持は郁子に目の前で着物を脱ぐように命じ、郁子の豊満な裸体を見ることで歓喜するのだが、興奮した剣持はそのまま息を引き取ってしまう。

 葬儀の後、郁子と敏子と木村は会食をはじめる。
 敏子は、台所で郁子の紅茶に赤い缶から農薬を入れるが、賄いのよね(北林谷栄)が色盲のために、事前に赤い缶と緑の缶の中身を入れ替えていた。
 郁子は、木村と敏子が結婚してこの宅で開院することを勧め、ウキウキしている。
 木村は“金の切れ目は縁の切れ目”と、そろそろ退散することを目論んでいる。
 よねがサラダを運んでくる。一口食べた木村が「ヘンな味ですね」と呟いたとき、郁子が突っ伏し、自らも昏倒。郁子も、襖の奥に立つよねに「また(缶を)間違えたのね」と言って倒れるのであった。

 警察に「自分が殺した」と自首したよねだが取り合ってもらえず、3人の後追い自殺として片付けられるのであった……。

    ◇

 長回しやストップモーション、クローズアップやカットバックのテンポがサスペンスに繋がり、ミステリー的心理戦にヒリヒリとした緊張感を味わえるのだが、特に、画面を蔓延る淫靡なエロティシズムがたまらない。
 異常な振る舞いと云うか、登場人物がそろいも揃って肚に一物持つクセ者で、誇張したメーキャップや言動が得体の知れない官能性を醸し出してくるから凄い。

 そして、市川監督が描く妖しい世界の人物カリカチュアは、卓越した俳優陣によっていかんなく堪能できる。
 跛を引き薄気味悪さと好色ぶりを見せる二代目中村鴈治郎は、こんな変質的ひひじじぃぶりを演じられる役者は彼以外にはいないだろうと思わせるリアルさ。 
 細く眉を引いた京マチ子は、貞淑さの裏に悪意が隠れた上品かつ淫靡な顔がいい。主人の後ろ姿に侮蔑の表情を見せ、足の悪い猫を見るや般若のような表情に一変。主人の死に顔を無表情で見て「死んでる」と呟くと含み笑いをする、その表情の芝居が素晴らしい。
 ゲジゲジ眉と分厚く真っ赤な唇の叶順子にはふてぶてしく底意地の悪さが透かし見えていて、大芝居に目を見開く仲代達矢も策士の腹黒さが不気味に漂っていて面白い。
 
 

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