TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「薄氷の殺人」*ディアオ・イーナン


白日焔火/ BLACK COAL,THIN ICE
監督:ディアオ・イーナン
脚本:ディアオ・イーナン
撮影:トン・ジンソン
音楽:ウェン・ジー
出演:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン

☆☆☆★ 2014年/中国・香港/106分

    ◇

 第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞(最優秀作品賞)と銀熊賞(最優秀男優賞)の二冠に輝いたクライム・ムーヴィーは、ファム・ファタールが登場するフィルム・ノワールの傑作。

 1999年。中国・華北地方の各都市の石炭工場で見つかったバラバラ死体。身分証からリアンという男の名前が判明。妻と離婚したばかりのジャン刑事(リャオ・ファン)は、容疑者となる兄弟の事情聴取中に抵抗にあい、仲間が殉職。ジャンはふたりを射殺し、事件の真相は闇の中に葬られてしまう。
 2004年。警察を辞め警備員として暮らすジャンは酒浸りの日々を送っていた。ある日、再び5年前と同じようなバラバラ殺人事件が起きる。
 かつての刑事仲間から、被害者はいずれも5年前の被害者リアンの妻ウー(グイ・ルンメイ)と親密な関係があったと聞かされ、ジャンは独自の捜査に乗り出すのだが、ジャンもまた若く美しいウーに惹かれてゆく。
 やがて、隠された事実が徐々に明かされてゆくのだが……。

BlackCoal-ThinIce_2.jpg

 キャロル・リードの『第三の男』やオーソン・ウェルズの『黒い罠』など、名だたるフィルム・ノワールを参考にしたと云うとおり、全体に流れるトーンは欧米のハードボイルド映画の香り。

 台詞は極力削られ、男と女の虚無感が夜気に溶け込み、吐く息が白く流れる冷え冷えとした街の空気に男女の情感がもがき苦しむ。雪とネオンと暗闇に虚実が並ぶ様は、多彩なカメラワークで捉えられる観覧車や屋外スケートリンクやトンネルなどに乗り移り、そのビジュアル効果も秀逸。
 中国の冬の地方都市が、どこか幻想的にヨーロッパの裏街に見え、美しい。

 ヒロインのグイ・ルンメイは、ゆらゆらと漂う女の闇と不気味さが光り輝いてみえる絶世のファム・ファタール。薄幸の美しさにも息を呑む。

 目覚ましく経済発展する中国の大都市とは違って、時代に大きく呑み込まれる地方都市の荒涼とした風景に、格差社会の現実が重ねられる。
 夜の郊外のスケートリンクや、暗闇に浮かぶ観覧車とナイトクラブ、ダンスホールの賑やかな音楽などに街の浮かれぶりが象徴され、貧しくはないが幸福感のない都市の殺伐さが伝わってくる。

 中国語の原題『白日焔火』は“真昼の花火”を意味する。白昼の花火ほど虚しいものはなく、ラストに打ち上げられる花火には、取り残されている者の荒廃とした想いが宿っているのであろう。




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