TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

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「誘拐の掟」*スコット・フランク

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A WALK AMONG THE TOMBSTONES
監督:スコット・フランク
原作:ローレンス・ブロック
脚本:スコット・フランク
撮影:ミハイ・マライメアJr.
衣装:ベッツィ・ハイマン
出演:リーアム・ニーソン、ダン・スティーヴンス、ボイド・ホルブルック、ブライアン“アストロ”ブラッドリー、ダニエル・ローズ・ラッセル

☆☆☆☆ 2014年/アメリカ/114分

    ◇

 原作は、ニューヨーク派ハードボイルド作家ローレンス・ブロックの「獣たちの墓」。彼の代表作で無免許の私立探偵〝マット・スカダー〟シリーズの10作目。
 90年代初頭に上梓された「獣たちの墓」は、人間の心を持たない快楽殺人者たちとの対決を描いた「墓場への切符」「倒錯の舞踏」につづく“倒錯三部作”の最終篇でもある。

 映画はほぼ原作通りに描かれている。もちろん本編をタイトにするために、シリーズ・キャラクターの高級娼婦でスカダーの恋人エレインや、交流のある凶悪犯罪者ミック・バルーなどの存在はオミットされ、ラストも少し意外なものに変更されてはいるが、かなりハードボイルドな作品に仕上がっており、原作ファンとして大いに満足できた。

 映画の冒頭約10分間に、スカダーがしがない私立探偵を生業にする前の過去が描かれる。

 1991年、NY。ある夏の日、非番だったNY市警の警官マット・スカダーは、ワシントン・ハイツにある酒場で飲んでいた時、二人組の強盗が押し入りバーテンダーを射殺。スカダーは強盗を追いかけ一人を射殺、もうひとりの太腿に銃弾を浴びせる。

 そして時は一気に流れ、1999年。
 麻薬ディーラーのケニー(ダン・スティーヴンス)の妻が誘拐され、身代金40万ドルを払ったにもかかわらず、妻は無慈悲な犯人によってバラバラに切断されて帰って来た。
 無免許の私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)は、ケニーの兄でAA(アルコール依存症自主治療協会)の会の仲間のピーター(ボイド・ホルブルック)から相談を持ち掛けられ、犯人の行方を捜すよう依頼される。ケニーの目的が復讐であり、犯人が判明すれば彼の手で処刑されるだろうと推測されるが、スカダーはケニーの依頼を請け負った。犯人は残忍で狡猾、交渉不可能な猟奇殺人鬼なのだ。

 スカダーの行動原理は「人を殺して、その罪を免れることは絶対にゆるされない」という倫理観。孤独と絶望の淵を綱渡りしているスカダーの生き方は、プロローグにあった事件のつづきとして、シリーズ・キャラクターのTJ(ブライアン“アストロ”ブラッドリ)との会話で説明されていく。
 8年前の強盗事件で、発砲したときに跳弾した一発が、たまたま路上にいた少女の眼を貫通し死なせてしまった。事件としての過失はなく、警官として表彰もされたが、スカダーは警官を辞め、その日からスカダーは重い十字架を背負い生きている。

 妻を惨殺されたケニーのモラルと、倫理観を守り通してきたスカダーの正義。何が正しく、何が正義なのか自問しながら己と闘うスカダー。
 そしてまた、新たに誘拐事件が起きる。

 被害者はケニーと同じ麻薬ディーラーの14歳になる一人娘。
 スカダーは交渉役を引き受け、狡猾で残忍な犯人と危険な駆け引きをしながら犯人を追いつめるが……。

    ◇

 日本でも人気の高い〝マット・スカダー〟シリーズだが、これまでに映画化されたものは、ハル・アシュビー監督最後の劇場映画となった『800万の死にざま』(原作「八百万の死にざま」)が1986年に公開されたきり。マット・スカダー役はジェフ・ブリッジスが演じ、酔いどれ探偵には相応しいキャスティングではあったのだが、脚本のオリバー・ストーンがドラマの舞台をニューヨークからロサンゼルスに変更したことで、原作のムードは台無しであった。

 監督で脚本家のスコット・フランクが、この〝マット・スカダー〟の映像化にとりかかったのは15年近くも前だ。1998年頃に最初の映画化の話が流れ、2002年に日本で上梓された「死への祈り」の単行本のあとがきでは、訳者の田口俊樹氏の言葉で2003年にクランクインすること、また、その時のマット・スカダー役はハリソン・フォードだったとも記されていた。愉しみにしていたのだが、映画の企画は水もの…いつの間にか立ち消え、それから紆余曲折があったのだろうが、こうしてリーアム・ニーソンにキャスティングされ、原作のテイストをそのままに、練りに練られたシナリオとなって陽の目を見るまでに、長い年月待ったことになる。
 
 舞台の設定を原作から少しずらした1999年にしたとは云え、ほぼ原作を忠実に映像化している。2000年以降の現代では通用しないストーリー展開なのだから、細かなディテールに作品の良さが凝縮されている点が嬉しい。

 もちろん、原作ファンを十分に納得させるだけのマット・スカダー像が一番大事なわけで、その点、リーアム・ニーソンは申し分ない。
 このところスーパーヒーローを演じてきたリーアム・ニーソンだが、ここでは地味すぎるほど渋い。人間臭く〝罪と罰〟となる過去を引きずる悩める男を、深みのある演技でキメてくれる。

 また、リーアム・ニーソン以外の配役が、あまり馴染みのない俳優たちなので、ニューヨークの日常をリアルに感じられるのも魅力だ。

 スカダーとシリーズ・キャラクターのTJとの会話は原作でもユニークで読みどころだが、本作でもフィリップ・マーロウやサム・スペードの話を劇中に入れ、ハードボイルドへの意識を高めている。
 こうなれば、リーアム・ニーソンのシリーズとしてあと2~3作は観たいところだ。



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