TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「悪党たちは千里を走る」貫井徳郎



 「慟哭」や「症候群シリーズ」など、ダークな世界観で知られる貫井徳郎の新作。氏としてはスクラプスティックなユーモア・サスペンスは初めての分野だが、面白く読み終えた。
 書籍の腰巻き惹句はこうだ。

真面目に生きることが嫌になった3人が企てる、「人道的かつ絶対安全な」誘拐?
誘拐ミステリーの新境地!


 数々ある誘拐ものミステリーにも、まだまだあるこの手あの手。

 詐欺師の高杉と彼を慕う園部のふたりが、田舎の成り金に詐欺話を持ちかけるところから物語は始まる。しかし、彼らの前に高飛車で美人の詐欺師が登場してふたりの計画は失敗。後日、園部がある誘拐計画を思い付くのだが、ひょんなことからこの美女までが仲間に加わることになるわけで、前半(全体の三分の一)に二転三転する展開はかなりユーモアたっぷりに語られる。
 話の中心にいる10歳の巧という子供がなかなかいい感じで、この子供が考えたある計画に乗る大人たちという図式も面白い。

 後半に奔走する詐欺師三人組のキャラクターは、口が悪く悪党ぶっているが根が真面目な高杉と、女王さま気取りの美女・菜摘子とのやり取りが楽しく、随所でおマヌケぶりを見せる園部の存在も魅力的ではあるが、ただ、これはどう見ても「傷だらけの天使」だ。
 「アニキ~」と子犬のようにまとわり付いている園部はどうしても水谷豊の亨で、カッコつけ屋の高杉はショーケンの修である。だから余計にこの詐欺師たちに親しみが湧いたのだろう。
 
 ハラハラドキドキとスピーディに疾走しながら辿り着く結末は、伏線の具合も気持ちいい快感に浸れる。そしてシリーズ化の可能性を残しながら、こんなに軽くていいのかって感じで終わる。
 

悪党たちは千里を走る/貫井徳郎
【光文社】
定価 1,785円(税込)

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