TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「でんきくらげ・可愛い悪魔」*臼坂礼次郎監督作品

70_でんきくらげ可愛い悪魔
The Good Little Bad Girl
監督:臼坂礼次郎
脚本:白坂依志夫、安本莞二
撮影:上原明
音楽:八木正生
主題歌:「可愛い悪魔」渥美マリ
出演:渥美マリ、笠原玲子、草野大悟、松川勉、近江輝子、川崎陽子、猪俣光世、金子研三、甲斐弘子、平泉征(現・平泉成)、森矢雄二、岩崎信忠

☆☆☆ 1970年/大映/83分

    ◇

 1970年8月に公開された〝軟体動物シリーズ〟第5作は、本年(2015年)早々に訃報が届いた名シナリオライター白坂依志夫(享年82)の作品。
 氏が「三日か四日で書いてくれ、と依頼された」と述懐していた本作は、フレンチ・スタイルのポップな仕上がりで、シリーズ中一番明るく、70年代はじめの風俗も楽しめる。


 雑誌社に勤める姉の伸子(笠原玲子)を頼って上京した自由奔放な妹ゆみ(渥美マリ)は、街で見かけたミュージカル新人募集のポスターに惹かれオーディションを受けるが、素人のゆみはあえなく落ちてしまう。うさ晴らしに会場で知りあったフォトモデルの久子(甲斐弘子)と、アングラ芝居の俳優の五郎(金子研三)の三人でゴーゴークラブに遊びにいく。踊りまくるゆみの躍動する美しい肢体に目をつけた久子は、キャメラマンの小泉(草野大悟)をゆみに紹介するが鼻にもかけない。

 ある日、姉の恋人谷沢(森矢雄二)が伸子の留守中にアパートに来て、退屈しているゆみを海に誘う。谷沢は浜辺でビキニ姿になったゆみの豊満でみずみずしい肉体に魅せられ、太陽と海にかこまれて開放的な気分になったゆみはあっさりと全てを許すが、これを伸子に知られてアパートを追い出されてしまう。
 久子の元を訪ねたゆみは、フォトモデルとして一緒にやろうと誘われるが、久子と全裸で絡むレスビアン写真やサド・マゾ的な写真ばかり撮られ、それがいかがわしい目的に使われているのを知って激怒、久子のもとを飛び出し五郎のアングラ劇団に身を寄せた。しかし、訳の判らないテント芝居とドラッグ・パーティーに呆れたゆみは、またもひとり街に飛び出すのだった。
 
 金もなく、頼る人もないゆみを救ってくれたのは気の良いマッサージ嬢の利恵(猪俣光世)だった。利恵の紹介でマッサージ嬢になったゆみは、その抜群の肢体と男好きする顔立ちでたちまち売れっ子になるが、利恵の恋人で歌手の謙二(平泉征)に誘惑される。
 ゆみはこれを拒絶するが、根に持った謙二は利恵に中傷を吹き込み、それがもとで大喧嘩になり、マッサージ業をやめる羽目になってしまった。
 
 何をやってもうまくいかないゆみは、マッサージで稼いだ金で豪華なホテル住まいを始めるが、所持金を全部盗まれ、ふたたび窮地に追い込まれる。
 その苦境を救ってくれたのは、兵藤興業グループの女社長貴子(近江輝子)だった。かねてよりゆみの美貌と素晴らしい肉体に目をつけていた貴子は、交換条件として貴子の一人息子正男(松川勉)の極度の女性恐怖症を治してくれるよう依頼する。
 やがて、ゆみの全ての魅力を結集した献身的な奉仕が効を奏し、正男は一人前の男性としてゆみを愛することができるようになった。

 役目を果たしたゆみは兵藤邸を去り、以前知り合ったコマーシャル・カメラマン津川(岩崎信忠)の元に行き、一流化粧品会社“サン”の専属モデルとして一躍売り出された。
 しかし、有名になったゆみのもとには姉の恋人がたかりに来たり、津川の広告制作会社にはエロ雑誌に掲載した昔の写真を持って小泉が恐喝に来るようになる。
 津川とディレクターの神山は、マスコミを利用して成り上がってきたゆみの私生活を逆手にとろうと提案するが、ゆみは首を横に振り「そんな事までして有名になっても楽しくない」と言って去ってゆく。

 マスコミに追われ帰宅したゆみは、とうとう独りぼっちになってしまったが、悲壮感はない。
 「こんなことでは負けない。若いうちって起きたり転んだり、ごちゃごちゃするから面白いんだわ」
 水着姿が多い渥美マリが唯一、後ろ姿だが綺麗なオールヌードを見せてくれたところで映画は終わる。

    ◇

 前作『夜のいそぎんちゃく』から1ヶ月あまりで公開された本作は、ここまでの4作に共通した〝男を誘惑し、破滅させる〟小悪魔的ヒロイン像ではない。
 肉体に群がる男たちはいても、男に媚びない。掴みどころのないヒロインは男を利用するのではなく、あくまで自分が楽しいことだけを信じて生きている。好きなことをスキといい、嫌いなことはキライという、男っぷりのある生き方だ。

 渥美マリの芝居も、代表作と言われる『でんきくらげ』ような大芝居の台詞まわしではなく、自然な口調になり、何よりもサバサバした気っぷの良さが気持ちよく、好感持てるヒロインを作り上げている。

 アングラ、ヒッピー、サイケといった言葉が蔓延していた1970年代。
 オープニング・タイトルからフレッシュな色彩に溢れた70年代ファッションが楽しめ、終盤の渥美マリがモデルをするファッション・フォトの数々には、60年代後半から流行し出したモッズやミニスカート、ヒッピー・スタイルなどのストリート・ファッションあり、70年代になって流行るパンタロン・スタイルがウーマン・リヴの機運を高めた、そんな時代の空気を感じることができるのである。

 八木正生の劇伴も軽快に弾む。
 タイトルバック及び全体に流れる〝ダバダ~ダバダバダ、ダバダ~〟のスキャットが、1960年代のポップなフランス映画の雰囲気を醸し出している。

 そして、和製ブリジット・バルドーとして本家BBの映画『可愛い悪魔』(’58)から頂いたタイトルらしく、渥美マリのキューティー・ポップなデビュー曲「可愛い悪魔」を歌うシーンが本編に設けられている。
 なんとも麗しき彼女の表情が、素晴らしくステキなのである。
 
★いそぎんちゃく★
★続・いそぎんちゃく★
★でんきくらげ★

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