TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「夢犯」*黒沢直輔監督作品

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監督:黒沢直輔
原作:石井隆
脚本:石井隆
撮影:野田悌男
出演:赤坂麗、内藤剛志、志水季里子、山路和弘、梅田浩

☆☆☆ 1985年/にっかつ/69分

    ◇

 1970年~80年代はじめのロマンポルノにおける石井隆の世界は、名美と村木の濃密な女と男の情愛をメロドラマで描いてきたものが大半だったが、この『夢犯』は名美も村木も登場せず、石井ワールドの片翼でもある石井的フィルム・ノワールと呼ばれる〝ヒットガール〟女殺し屋の世界が展開する。
 この作品の3ヶ月ほど前の8月に『ラブホテル』が公開され、正月映画として『魔性の香り』が公開されたことで、1985年は3本もの石井ワールドに巡り逢うことができたのだった。


 闇組織の木崎(山路和弘)から小田(内藤剛志)という男の殺害を依頼されたヒットウーマン優(赤坂麗)は、組織が用意したマンションに身を寄せた。
 優は10年前、レイプされたうえ恋人(梅野浩)を殺された過去があり、毎夜、悪夢にうなされていた。
 小田はなかなか姿を現さず、優はあるモデルガンショップで死んだ恋人にそっくりなガンマニアの高校生・土屋洋介(梅野浩・二役)に出会い、戯れのままに身を重ね再会の約束を交わす。
 翌日、優はレズビアンのママ陽子(志水季里子)のバーで小田を待つよう指示されるが、店を出たところでチンピラたちに襲われてしまう。彼女を助けてくれたのがターゲットの小田だったことから優はクライアントを裏切る結果となり、組織から狙われた代償として大きな深手を負う。
 その夜。土砂降りの雨の中、少年と約束した新宿西口公園に向う優の姿があった…。

    ◇

 名美的女が、欲望と暴力で迫る男たちに初めて銃を持って立ち向かった【パイソン357】(’75)から、杉本美樹の『赤い手錠(ワッパ)』に触発されながらロマンポルノでの映像化を想定して描かれた『黒の天使』まで、石井隆のピカレスクロマンは石井ワールドのもうひとつの源流。

 その『黒の天使』の連載が終わり、鈴木則文監督による映画化も忽然と無くなって何年か経った当時、にっかつ専門映画館の次回公開作品のポスターだったかを見たとき、「これって『黒の天使』じゃないの?」と思えるような惹句に、これまでと違った石井的ロマンポルノを期待をした。
 が、正直初見は楽しめなかった。ピカレスクロマンにおいて、村木的な男(内藤剛志)とヒロインとの、生死の共有といったヒリヒリする感覚を感じることができなかった。

 再見したのは石井隆監督・天海祐希主演『黒の天使 vol.2』(’99)以後。葉月里緒奈主演の『黒の天使 vol.1』(’98)にしろ、それ以前の『GONIN』シリーズにしろ、映画における石井隆フィルムノワールが確立したなかでは確かに『夢犯』は完成度にほど遠いのだが、石井隆の世界の奥深さを知るには格好のプロトタイプと言ってもいいだろう。
 
 原作は1984年「別冊近代麻雀」に掲載された【象牙の悪魔~第三話/イリュージョン】。
 名無しの女殺し屋が新宿に降り立ち、ターゲットが現れるまで雀荘で時間つぶしをするのだが(麻雀雑誌なので半分は麻雀シーン)、ツキの付いた勝負の途中で抜け出し仕事を遂行するも、ボディガードに遮られ自身が負傷してしまう。
ふと、逃げる途中に公衆電話から雀荘の主人に自分の打ち筋を指示し、見事にゲームに上がる〝運〟…電話口からは「あんたの打ち方きれいで好いよ。みんなもまたやりたいとサ」と店主の誘いが聴こえるが、女は追っ手の銃に倒れる〝不運〟に見舞われるといった話。

 映画は、オープニングから三分の一くらいを劇画の構図を引用しながら進行するが、後半大きく流れを変えるストーリーが『黒の天使』シリーズに引き継がれてゆく感じだ。
 黒沢直輔監督の演出は、ネオンに煙り雨に濡れる石井隆の世界に、クール・ビューティーなヒロインとスタイリッシュな映像で乾いた情感を生み出しているのだが、ムードに流される分全体のテンポが悪くなったのが惜しい。

 新宿の高層ビル群をバックにヒロインが振り返る、劇画ではお馴染みのカットにピタっと嵌りキメてくれるのは、美貌の赤坂麗だからこそ。
 台詞やモノローグは拙くとも、すらっとした体躯(身長の低さを感じさせない)にハイヒール姿でブローニングを構える姿が絵になっていれば、それだけでいいのである。

 そして、赤坂麗と濃厚なレズシーンを繰り広げる志水季里子の妖艶さは特筆ものである。

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★ラブホテル★
★魔性の香り★
★0課の女 赤い手錠〈ワッパ〉★


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