TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「晴れた空」半村良



 1991年に初版上梓された半村良渾身の大作が、戦後60年特別出版として再刊された。
 東京空襲後の上野に集まった戦災孤児たちの、戦後の過酷な時代をたくましく生き抜いていく姿を描いた大長篇で、とにかく面白く、文庫本で1500頁の長さが全然苦にならずに物語に引き込まれる。

 昭和20年3月10日の東京大空襲で焼け出されたノガミ(上野)の孤児たち、級長、飴屋、バアちゃん、ニコ、アカチン、ゲソ、マンジュー、ルスバンの8人が主人公。よく晴れた青空を見上げながら大人たちが泣いた終戦の日、彼らはその同じ空の下で、過酷にも必死に生きていくことになる。
 彼らとともに、8人が慕う戦争未亡人の母娘・吉野静子とボーヤ、そして特攻の生き残り“カミカゼ英治”こと前田たちが織りなす成功への人生物語は、戦後日本の復興とともに、戦後が終わったと云われる昭和39年の東京オリンピックの時代までを駆け抜けていく。
 “希望”という名のもとで、健気に、そして、たくましく生きていく姿には、自然と彼らの喜びや哀しさを共有する気持ちにさせられ、才覚あふれる8人がそれぞれの力で成功していく様は痛快。
 また、彼らのまわりに登場してくる大人たちも魅力的な人物ばかりだ。

 後半、陰謀劇がたちあがり、それに立ち向かう結末はとても苦い。
 大人たちの戦争への後始末が、こんなにも無慈悲なものなのかと涙が浮かぶ。

 しかしエピローグで、子どもたちが見上げる晴れた空には希望が浮かんでいる。
 それに安堵しながら、半村良氏が本書に「晴れた空」というタイトルを付けた意味を考えると、果たして60年たった今の日本には、あの晴れた日と同じ空がずっと、ずっと繋がっているのだろうか。
 そして、これからも……。

 機会があれば、ぜひ読んでほしい一冊である。

晴れた空/半村良
【祥伝社文庫】
上巻:定価 1,000円(税込)
下巻:定価 1,000円(税込)

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Comment

シリウス says... "読書あれこれ"
半村良著「晴れた空」は面白そうな小説ですね。
小説で描かれている終戦当時からしばらくの間の社会情勢は、今もある程度記憶にまだ残っています。
後半の陰謀劇の詳細と結末が気になりますね。
文庫本1500頁は大長編小説ですね。
小生には、読むのに気力が必要ですね。

別件ですが、
俳優・児玉清著 新刊「負けるのは美しく」集英社刊を読んだ。
児玉清氏は凄い読書量の持ち主で「寝ても覚めても本の虫」などの著作もある人ですが、今回初めて彼の本を読んだ。
昭和33年(1958年)に東宝第13期ニューフェイスに合格して、しばらく大部屋も経験し、主役・準主役で映画出演を果たしたが、昭和42年(1967年)にフリーになって、スクリーンからブラウン管に転出した。映画俳優からテレビに転出した草分けの1人で、その後の活躍はご存知の通り。
第2章で「忘れ得ぬ監督・俳優たち」で、故黒澤明監督や俳優・故森雅之 他との映画撮影現場や、その他の接触機会での秘めたる話が語られている。
この本は俳優・児玉清氏の波乱万丈の人生録とも言えますね。
2005.10.29 16:44 | URL | #6cov1DqI [edit]
mickmac says... ">シリウスさん/晴れた空"
 『晴れた空』はぜひ読んでもらいたいような本です。1500頁に腰が引くでしょうが、半村さんの文章はとても読み易いのでサッと読破できますよ(笑)。
 主人公たちは昭和8年生まれです。女の子のボーヤが17年生まれなので、シリウスさんの記憶はこの子あたりでしょうか。

 児玉清氏の読書量の凄さは知っています。BS2『ブックレヴュー』での、知識の豊富さは目を見張るものがあります。
「負けるのは美しく」探してみることにします。
2005.10.30 12:11 | URL | #kuX..F9k [edit]

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