TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ショート・カッツ」*ロバート・アルトマン

1994_ショートカッツ
SHORT CUTS
監督:ロバート・アルトマン
脚本:ロバート・アルトマン、フランク・バーハイト
撮影:ウォルト・ロイド
音楽:ハル・ウィルナー
出演:アンディ・マクダウェル、ジャック・レモン、ジュリアン・ムーア、マシュー・モディーン、アン・アーチャー、ロバート・ダウニー・Jr、ティム・ロビンス、トム・ウェイツ

☆☆☆☆★ 1993年/アメリカ/187分

    ◇

 初見1994年11月。
 現代アメリカ文学の小説家で詩人のレイモンド・カーヴァーの短編と詩を下敷きに、ロサンジェルスの住人22人を主役にした群像劇で、ヴェネツァ国際映画祭の金獅子賞を獲得したロバート・アルトマンの傑作。

 メド・フライと呼ばれる害虫を駆除するために、L.A.郊外の上空を数機のカラフルなヘリコプターが飛び回る、美しくも不気味なプロローグ……このオープニングが素晴らしい。

 9組の家族のエピソードが平行に描かれながら、その複数視点の人間たちの関係が少しずつ複雑に絡み合っていく。ひとつの家族が描かれるなかで他の人物が脇役として登場したりと、さまざまな日常のコラージュが映画的興奮となってグイグイと引込まれていくのである。あっという間の3時間であろう。


 22人の主役たちの関係を記してみると…

 TVパーソナリティのハワード(ブルース・デイヴィソン)の妻アン(アンディ・マクドゥェル)は、明日9歳を迎える一人息子ケイシー(ザーン・キャシディ)のために、気難し屋で無愛想なケーキ職人アンディ(ライル・ラヴェット)にバースデーケーキを注文する。
 しかしその朝、ケイシーは登校中に車に撥ねられ昏睡状態になってしまい、さらに、悪質な悪戯電話に悩まされるようになる。

 孫のケイシーの見舞いに病院を訪れたポール(ジャック・レモン)だが、30年ぶりに逢う息子ハワードの態度は冷たい。

 24時間営業のダイナーで働くウェイトレスのドリーン(リリー・トムリン)と夫でリムジンの運転手アール(トム・ウェイツ)は、愛し合っているのになぜかギクシャクしていた。そんななか、夜勤帰りのドリーンは男の子を車で撥ねてしまった。

 ハワードとアン夫婦の隣人で、ジャズ・シンガーのテス(アニー・ロス)とチェロ奏者のゾエ(ロり・シンガー)母娘は、互いを巧く理解し合えない。ケイシーが事故で亡くなったことで心を痛めるゾエは、何の関心も示さない母親テスに幻滅する。

 警官のジーン(ティム・ロビンス)は、ヘリのパイロットをしているストーミー(ピーター・ギャラガー)の元妻ベティ(フランシス・マクドーマンド)と浮気中。そんな夫を陰で軽蔑している妻のシェリー(マデリーン・ストー)。

 シェリーの姉でセクシーな画家のマリアン(ジュリアン・ムーア)と、ケイシーの担当医師ラルフ(マシュー・モディーン)夫妻は、傍から見ると理想の夫婦にみえたが、実は夫婦の間には深い溝があった。

 無職のスチュアート(フレッド・ウォード)は、釣り仲間のゴードン(バック・ヘンリー)とヴァーン(ヒューイ・ルイス)の3人で鱒釣りに出かける。途中立ち寄ったダイナーでは、ミニスカートの年増のウェイトレス(ドリーン)を冷やかし、目的地に着いたらそこで女性の全裸死体を発見する。しかし趣味の欲求の方が勝り、3日間釣り三昧のあと警察に連絡をするのだった。
 スチュアートの妻クレア(アン・アーチャー)はピエロの出張サービスで病院を慰問している。

 アールとドリーンの娘ハニー(リリー・テイラー)はメイクアップ・アーティストのビル(ロバート・ダウニー・ジュニア)と夫婦関係。管理を任されている家で、親友のプール清掃業ジェリー(クリス・ペン)夫婦を呼んでドンチャン騒ぎをしている。

 ジェリーは、妻ロイス(ジェニファー・ジェイソン・リー)が育児をしながらテレフォン・セックスのパートタイムをしている姿に耐えられず、欲求不満が募っている。
週末、ビルの家族と郊外の森にピクニックに出かけた時、そこで見かけた二人の女の子をビルとふたりでナンパするのだが、突然ジェリーの欲望が爆発する。

 そして、L.A.に大きな地震が起こる……



 アルトマンのシニカルな視点は物語の中心に無垢な子どもの「死」を置き、人間が抱える欲望、絶望、矛盾、悲観を俯瞰にして「生」と「孤独」と「荒涼感」を人工的な街L.A.に寒々しく映し出している。

 何が起きようと、そこから逃れることはできない。巧くいく人生も、下手を打つ人生も、それが人間。
 毎日の繰り返しのなかの一場面でしかない「日常」を世紀末的世界観で示し、大地震という異常事態が起こる幕引きのあとにも、ゲームのような人生はつづいていくのである。


[ロバート・アルトマン作品]
★ロング・グッドバイ★
★ボウイ&キーチ★
★ザ・プレイヤー★

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