TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「11/22/63」スティーヴン・キング

king_11:22:63
 読了は1月末。ツイートまとめに記したが、あらためてBook Reviewをしておこう。

 上下巻、各二段組500頁は『アンダー・ザ・ドーム』以来の超大作。相変わらずの一大エンターテインメントな世界を十二分に満喫できる傑作だ。


 ハイスクールの英語教師のジェイクは天職ともいえる教師の仕事に充実感を覚えてはいるものの、別れた妻との傷が癒えない毎日を過ごしている。
 ある日、行きつけのダイナーのマスターで友人のアルに呼び出され、アルの店の倉庫の奥にある秘密を教えられる。それは“過去への穴”で、1958年9月19日正午2分前に繋がっていると知らされる。そして、癌に侵されたアルは死ぬ前にジェイクに受け継いでもらいたいことがあると言う。
 それは、1963年11月22日のダラスで発生するジョン・F・ケネディ大統領暗殺という歴史的悲劇を阻止し、その後にくるベトナム戦争への流れを食い止めてくれということだった。
 アルの願いを承諾し過去に旅立つジェイク。
 “穴”の向こうに広がるのは古き良きアメリカだった。暗殺阻止までの5年間を過去の世界で教師として暮らすジェイクは、やがてセイディーという女性とめぐり逢い、初めて味わう幸福と充実の日々を過ごしていた。その一方、大統領暗殺犯となるリー・ハーヴェイ・オズワルドの動向を探る日々。
 しかしジェイクの前には、歴史の改変を拒む“時間”が立ちはだかる。それは思わぬ悲劇を巻き起こし、痛ましい出来事となってジェイクを苦しめるのだった……。

 運命の日、未来を変える銃弾が発射される。

    ◇

 タイムトラベルもののSFジャンルであろうが、単純に現代人が時間を遡り過去をいじってくるなんてちゃちな設定ではないのがキング。
 ディテール描写は詳細で、アメリカ人にとってはノスタルジーに浸るだけで感涙であろう時代設定。
 その世界で主人公がどう生きていくか……歴史を変えることの意味を考えながら悩み苦しむ主人公の生き方に、読者は歴史認識(ケネディ暗殺の事実)をすっかり忘れて共感してゆくだろう。

 タイムスリップの設定も面白い。その世界に何日、何ヶ月、何年も居ようと、一旦現代に戻ってくれば、それはたった2分間の出来事であり、過去の足跡は全てがリセットされる。この何度もやり直しが出来るという一見自由な約束事だが、実はこれが重要かつ厳しい足枷となる。

 J・F・ケネディ暗殺を阻止するために時間旅行する主人公の愛とサスペンスは、歴史を変えたあとには何が残されたのか……終章の思いがけない悲劇と、その後の展開に感動すること間違いない。
 超大作のキング特有の伏線の綾は、下巻のラスト・エピソードを読み終えたときに見事に集結され、長い、ながい読書の道のりの末に与えられるのは、涙と至福感………。
 まさか、こんなにも美しきラヴストーリーになっているとは……
 恐るべしキング帝王である。

     ◇

11/22/63(上)(下)/スティーヴン・キング
訳:白石 朗
【文藝春秋】
上巻:定価2,100円(税別)
下巻:定価2,100円(税別)

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/1032-1eb45ab6