TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「女体」*増村保造監督作品



Vixen
監督:増村保造
脚本:増村保造、池田一朗
撮影:小林節雄
音楽:林光
出演:浅丘ルリ子、岡田英次、岸田今日子、梓英子、伊藤孝雄、川津祐介、小沢栄太郎

☆☆☆★ 1969年/大映/95分

    ◇

 浅丘ルリ子の才能に惚れ込んだ増村保造が、彼女のためにシナリオを書いた愛欲ドラマ。
 日活退社後、一時期石原プロに所属していた浅丘ルリ子の大映初出演作となる。

 あばずれだが魅力的な女……浜ミチ(浅丘ルリ子)。
 私立大学の理事長小村(小沢栄太郎)の秘書を務める石堂(岡田英次)は、ある日、小村の息子にレイプされたと訴えてきたミチの応対をする。小村と彼の妹で石堂に嫁いでいる晶江(岸田今日子)らは100万円の慰謝料を決めるが、ミチの自分に正直な態度が気に入った石堂はミチの言い値の200万円で話をつける。
 しかし翌日からミチは石堂に付きまとうようになり、困惑する石堂もいつしかミチの魅力に取り憑かれ、高級ホテルの一室で激しく愛しあうのだった。
 ミチは慰謝料でマンションを購入。その部屋に石堂は出入りするようになるが、晶江の侮辱的な態度に激しい敵意を持っていたミキは、石堂のマンションに押し掛け晶江に情事を告げて彼女を辱めた。
 ミキと別れるつもりでミキのマンションを訪ねた石堂は、そこにミチの元情夫で売れない画家の五郎(川津祐介)が入り浸っているのを知り嫉妬を覚え、ミキを棄てることができない。慰謝料目当ての五郎に、石堂は学園長から管理を任されていた裏口入学金から500万円の手切れ金を捻出する。しかし、五郎はミチと別れないばかりか、金の出所を追求すると嘯きミチのマンションに居座り、ミチを巡ってもみ合う石堂は、誤って五郎を殺してしまった。
 自首した石堂は、仮釈放後、妻を捨て、職を辞してミチとの生活を始める。そして、裏口入学金のプール口座の金を使ってミチと小さなバーを経営し始めるが、自由奔放なミチにバーのママが務まるはずもなく、店は赤字続き。
 石堂にはたった一人の身内となる妹の雪子(梓英子)がおり、雪子は兄を心配して婚約者の秋月(伊藤孝雄)と共に店を訪ねてきた。ミチは、真面目なコンピュータ技師で大学時代にラグビーをしていたというスポーツマンの秋月に心を惹かれ、その日からミチは秋月に付きまとうようになる。
 石堂はミチをとがめるが、束縛を嫌い奔放な性格のミチの行動を止めることはできない。
 ある晩、ミチは秋月を深夜ドライヴに誘い、車を暴走させて無理心中を図る。重傷を負った秋月は病院に運び込まれ、駆け付けた石堂はミチをマンションに連れ帰り、秋月を諦めるようミチに迫るが、頑なミチは逆に石堂を責め続ける。
 逆上した石堂は包丁を持ち出しミキを殺めようとするが、その姿に自らを絶望しマンションを飛び出す。
 ひとり部屋に取り残され、泥酔するミチ。
 「また素敵な男を見つければいいわ」
 よろけた足で風呂のガスホースを引っ掛け、ガス管からガスが漏出していることに気づかないまま、湯船に身を浸すミチだった………。

    ◇

  女体の激しさ! 女体の美しさ! 女体の狂おしさ! 
  浅丘ルリ子が初めて見せる愛の十二態! 

 なんともピンク映画のようなポスター惹句は、思春期だった当時のぼくには刺激的だった記憶………増村保造監督を巨匠という認識でTV放映の『兵隊やくざ』や『黒の試走車』を観ていても、『卍』や『痴人の愛』の看板に出くわしたらドキドキしていた当時。1960年代後半から大映倒産の70年代前半まで、大映はお色気映画がひしめいていた。『でんきくらげ』とか『高校生番長』とか『十代の性典』とか、通学途中にあった大映系劇場(日活ロマンポルノ専門館になってから通った劇場)の看板やポスター。
 本作で云えば「女体」の文字を「にょたい」と読んでいたから官能させられていたが、ルビ表記は「じょたい」だった。英語表記は「VIXEN」……牝ギツネ。そんな映画なのである。

 そう遠くない昔の日本の女性から新しい価値観を持った女性が生まれた時代の、鬱屈した女の孤独と、生きてゆくことへのエネルギーと破滅が描かれ、刹那に生きる女の輝きに満ちている。
 古い日本の常識や道徳をはみ出し、建前で生きている人間を吹き飛ばし、生身の人間としてありのままに生きるヴァイタリティある女を眺めることが、増村映画の愉しみであろう。

 「私は女よ。愛すること以外にやることがあって?」

 しかし現実には、こんなに身勝手で独りよがりで激しい女は男にはたまったものではないのだが、こんな女だからこそ、その魅力に嵌ると男はいつでもダメになってもいいと思う哀しい性。いや、女も男と同じか。

 「男はいいのに、女がやるとなぜいけないの?」
 男の間を浮遊するミチを咎める石堂に、ミチが声を荒げる。それはそうだ、男が許されて女が許されない道理はない。

 「おれは何もかも棄ててオスになったんだ」
 終始無表情を貫くクールな岡田英次。親友の北村和夫に吐露すると 
 「これからは増えるぞ。大都会での独り暮らし、家庭にも道徳にも縛られないミチのような女が……」
 と返す北村和夫。現代を予見する増村監督であったろうか。


 冒頭、モダンな色柄の超ミニスカートのワンピースで下着も露に、苛立ち、疼き、身もだえながら踊る浅丘ルリ子であり、テーブルをかじり出すに至っては、その凄い演出に目を奪われる。(劇中で艶かしく踊る振付けは2013年12月に亡くなったダンサーで演出家の竹巴類)
 当時の浅丘ルリ子は29歳。オープニングからラストまで、とにかくハイテンションで突っ走る。
 その姿はとても美しく、ファッショナブル。
 本作後に公開された『華やかな女豹』(’69)でのモダニズムなファッションも華やかだったが、ここでの浅丘ルリ子は、登場する全シーンにおいてコスチュームを替え、色とりどりの下着も惜しげもなく何度となく曝してくれる。(下着にシャツだけの姿を含めると15回の衣装替えである)

 1969年はTV「プレイガール」の放送が始まった年。ミニスカートでのアクションから見えるパンチラ・シーンが世の男性たちを虜にした時代。女優がパンティ丸見えも厭わないのが時勢だった。
 浅丘ルリ子の、あばらが見えるガリなスタイルがエロティックさに欠けるとも云えるが、超がつく程のミニスカートからのパンチラや、シースルーなパンタロン姿など、美しい肢体をさらす大胆さが潔く見惚れてしまう。

    ◇

 石原裕次郎や小林旭の映画世代ではないので、日活アクションでのヒロインはTVで見たものしか知らなかったが、女優浅丘ルリ子を意識して観た最初の映画は、加山雄三のハードボイルドアクション『狙撃』(’68)だったと思う。ここでも、浅丘ルリ子は半裸姿で情熱的なダンスを披露していたっけ。

 1968年から1971年辺りが、いちばん浅丘ルリ子に夢中になっていたかもしれない。
 TVドラマ『流れる雲』を見ていた。内容は覚えていないが主題歌はよく覚えており、これと前後してのドラマ『水色の季節』の主題歌も美しい歌声に魅了されていた。大ヒットした『愛の化石』もこの頃。
 「平凡パンチ」をスクラップし、シングル・レコードを買った。横尾忠則がジャケットデザインした、浅丘ルリ子芸能生活15周年記念アルバム[浅丘ルリ子のすべて 心の裏窓]はマイ・フェイバリットの1枚だ。

Ruriko_7ich.jpg

★浅丘ルリ子のすべて 心の裏窓★
★狙撃*堀川弘通監督作品★


スポンサーサイト

Comment

さすらい日乗 says... "最高でしたね"
公開時に見て最高でしたね。
男がやっていることを女がやるといけないことだと言われるのはおかしいわ、とは本当にそうだと思いましたが、今本当にそうなったのは驚きです。
この映画のルリ子の踊りの振付は、昨年亡くなった竹邑類です。
増村によれば、浅丘ルリ子は体が軽すぎてついて行けていないそうです。増村のご推薦は、『やくざ絶唱』の大谷直子だそうで、確かに異常に色っぽい。
2014.03.12 23:21 | URL | #o/PXu/q6 [edit]
mickmac says... "Re: 最高でしたね"
>さすらい日乗さん どーもです。

公開時に堂々と観に行かれたとはさすがです(笑)
『やくざ絶唱』は未見ですが、大谷直子さんのイメージは納得できますね。
ルリ子さんはエロティックよりヴァイタリティですね。
2014.03.13 00:38 | URL | #- [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://teaforone.blog4.fc2.com/tb.php/1023-26533357