手塚治虫の衝撃作『奇子』が《オリジナル版》で復刻!
「手塚治虫生誕90周年記念プロジェクト」として企画された奇子《オリジナル版》が、2018年1月に上下巻にて復刊されるが、それに先立ち、復刊ドットコムサイトとTSUTAYAだけの900セット限定BOX(オリジナル・デザインによる美麗箱)が、2017年12月20日に先行発売された。
BOX特典として、ネームに写植が貼られスミ入れの下に鉛筆描きの別のポーズがうっすら残る原画の複製が付いている。
『奇子』は、1972年1月から1973年6月までの1年半にわたって「ビッグコミック」に連載されていた成人漫画で、松本清張の「日本の黒い霧」ばりの日本戦後史として、崩壊してゆく地方の豪農一族の人間模様と、4歳で土蔵に閉じ込められ外界を知らずに純粋培養されたまま育った奇子(あやこ)の、数奇な運命を描いた社会派ドラマ。
児童漫画から劇画漫画への転換期に描かれたものには週刊ポスト連載の『人間昆虫記』や、ビッグコミック連載の『I・L』『きりひと讃歌』などがあるが、エロティシズムを存分に含み、世の中の善と悪、性と生を高い視点から多角的に見つめ、思想的にも歴史的事案をもかなりリアルに描き、挑戦した衝撃作が本作だ。
ビッグコミックの愛読者でもあったので当然毎回読んでいたし、1985年に初めて大都社から発刊された単行本(B6版)も買い揃え愉しんだくちだ。
大都社の単行本の冒頭に所載された手塚氏の言葉では、この物語はもっと長編になる予定だったものが、やむを得ぬ事情で突然終わったこと、物語はほんのプロローグだったと記されていたのが印象的で、手塚氏の描きたい問題に対する意欲が、まだまだあふれていたことが窺える。
さて、本復刻版はかなりの高額商品なのだが、決して後悔させない仕上がりで提供されている。
まずは体裁が雑誌と同じB5サイズってところがいいし、単行本で変更されていたたページネーションやコマ割りも雑誌オリジナルを忠実に再現された。
そして一番の売りは、雑誌掲載時のエンディングとなっていること。
単行本発刊に伴い、手塚氏はエンディングを大きく改変している。突然の連載終了で氏としてかなりの不満があったことが窺い知れるもので、単行本に所載された文章にある続編を匂わす言葉へと繋がる改稿だった。
単行本のエンディング7ページも巻末に掲載され、二通りのエンディングを見比べることが出来る贅沢、予告用のカットの数々や単行本の扉カラーイラストも嬉しい所載である。
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奇子《オリジナル版》(上)(下)/手塚治虫
【復刊ドットコム】
上下巻初版完全限定BOX:定価11,988円(税込)
上巻:定価5,994円(税込)
下巻:定価5,994円(税込)