TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「さらば映画の友よ~インディアン サマー」*原田真人監督作品


監督:原田真人
脚本:原田真人
音楽:宇崎竜童
出演:川谷拓三、重田尚彦、浅野温子、鈴木ヒロミツ、石橋蓮司、山口美也子、トビー門口、室田日出男、原田芳雄(特別出演)

☆☆☆★  1979年/日本ヘラルド/111分

 初見1979年6月。

 スクリーンと現実を同時に生きているような奇妙なあいつ………
 ダンさんと呼ばれた映画狂が、冬のある日、ギンギンに燃えながらスクリーンの中へ消えちまった……
 映画の魅力に取り憑かれた男のおかしくも哀しい物語……


 1968年秋。沼津に住む大学浪人中の19歳シューマ(重田尚彦)は、毎日を映画館に通う事と童貞を捨てることに心をくだいている。
 ある日、新宿まで遠出をした映画館で、お喋りをする女子学生に「お嬢ちゃん、ひとから愛されるように映画を観る気ない?」と注意する中年男と出会う。席を立つ女子学生は彼を痴漢扱いするのだったが、シューマが男を救った。
 ダンさん(川谷拓三)と称する彼は元大部屋俳優で「オレの人生の目的は、1年間に365本の映画を観ること。それを20年続けること」とうそぶく奇妙な中年男だったが、ダンさんの映画狂ぶりはケタはずれで、ふたりの映画話は尽きることがなく、映画狂同士の友情がはじまった。

 シューマの実家はおカマ言葉の父親(室田日出男)が営む〝ロード・ハウス〟という喫茶店で、キャバレー歌手のコチ(トビー門口)、OLのテンコ(山口美也子)、サラーリーマンのダメハツ(鈴木ヒロミツ)ら常連客が集っている。
 沼津に住みつくダンさんとシューマの前に、17歳の不良少女ミナミ(浅野温子)が現れた頃から、ふたりの関係が変わってきた。
 ミナミに惚れたシューマを心配するダンさんは、ミナミがホステスをしていることを教えるのだが、シューマはダンさんと絶好をする。そしてミナミは姿を消した。

 TVで東大安田講堂の学生と機動隊との攻防が映し出される1969年。ミナミと再会したシューマはふたりでモーテルに入るが、ミナミの身体には刺青があり、やくざの二代目・本間(石橋蓮司)の情婦だったことにショックを受ける。
 「本間を殺してやりたい」と口走る息子を心配した父親は、シューマを台湾旅行に送り出す。
 
 旅行から帰り、すっかりミナミのことを忘れたシューマの前にダンさんが現れた。
 大切な友達を思うダンさんは、敵討ちの計画をしていた。絵空事を夢見るダンさんに腹を立てたシューマは、ダンさんを激しく罵り、ダンさんは悔しさに立ち尽くすのだが、ダンさんは本気だった。

 穏やかで暖かくインディアン・サマー(小春日和)のような日、ダンさんはコルトを片手に本間の家に殴り込んだ。
 そして本間に止めを刺すが、ライフルを構えたミナミが現れ轟音とともにダンさんは吹き飛んだ。
 ダンさんが死んだ。現場に駆けつけたシューマの前にはパトカーに乗るミナミがいた。 

 映画館に入るシューマ。スクリーンに映る『新・網走番外地』。
 シューマには、健さんの姿がダンさんにダブってゆく。
 後部座席で騒ぐやくざに「お兄さんたち、ひとから愛されるように映画を観ませんか?」とシューマの声……。

    ◇

 本作のタイトルが名作映画からなぞらえたように、この映画のなかには名画のエッセンスが散りばめられている。
 原田真人29歳、川谷拓三37歳の出会い……
 原田真人監督のデビュー作であり自伝的な作品は、川谷拓三の主演映画として最高の演技で泣ける映画となっている。

 長らくアメリカに滞在し、ハリウッドの映画情報を「キネマ旬報」や「宝島」に寄稿していた原田真人が、敬愛するハワード・ホークス監督が亡くなった翌日から、彼に捧げる映画としてシナリオを執筆。主人公は、川谷拓三のキャラクターを念頭にアテ書きし、愛すべき映画狂を創造したという。
 病的で狂気にもなる映画ファンの振る舞いが、まさに川谷拓三の実像のように迫ってくるのも道理である。

 物語の舞台は1968年から1969年にかけて。〝3億円事件〟〝東大闘争〟〝川端康成ノーベル賞受賞〟〝永山則夫連続射殺事件〟などのニュースが駆け抜けた時代だ。
 それら背景とともに時代を彩るのが、宇崎竜童選曲の60年代日本のポップス。
 「廃墟の鳩」「愛する君に」「あの時君は若かった」「ブルーライト・ヨコハマ」「恋の季節」などのヒット曲が流れ、まさにジャパニーズ・グラフィティの様相である。
 

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「エイリアン2」*ジェイムズ・キャメロン

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1986_エイリアン2
ALIENS
監督:ジェイムズ・キャメロン
原案:ジェイムズ・キャメロン、デビッド・ガイラー、ウォルター・ヒル(ダン・オバノン、ロナルド・シャセット)
脚本:ジェイムズ・キャメロン
エイリアン・デザイン:H・R・ギーガー
撮影:エイドリアン・ビドル
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:シガニー・ウィーバー、マイケル・ビーン、キャリー・ヘン、ランス・ヘンリクセン、ジェニット・ゴールドスタイン、マーク・ロルストン、ポール・ライザー、ビル・パクストン、ウィリアム・ホープ、アル・マシューズ

☆☆☆☆ 1986年/アメリカ/136分

 初見1986年8月。
 前作『エイリアン』から7年の歳月を経て、SFホラーの作風を一変。当時『ターミネーター』『ランボー/怒りの脱出』(脚本)で注目を浴びていたジェイムズ・キャメロンに監督への白羽の矢を立て、バイオレンス・アクション映画となって再登場したのが本作。

 『エイリアン』ではハッキリとした姿を見せなかったエイリアンが、ここでは無数の群れを成して襲ってくる。
 この女王蜂のようなエイリアン・クイーンを登場させる改訂に伴い、ジェイムズ・キャメロンは原案者のダン・オバノンに協力を要請したが、プロデューサーのひとりウォルター・ヒルとは犬猿の仲だったダン・オバノンは応じなかったという。
 「複数のエイリアンが暴れ回るのは、ただのモンスター映画だ」と後述している。

 しかしこれが意表を突く迫力で、観客を圧倒する出来映え。
 シガニー・ウィーバーがサーボ機能のハイテク・マシンガンを抱える姿はまさに女ランボーであり、戦争アクション絵図のダイナミズムが見どころの別もの作品として、傑作と呼べるであろう。

「第2章」*ロバート・ムーア

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1980_第2章
CHAPTER TWO
監督:ロバート・ムーア
脚本:ニール・サイモン
撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ
音楽:マービン・ハムリッシュ
出演:ジェームズ・カーン、マーシャ・メイスン

☆☆☆★ 1979年/アメリカ/126分

 初見1980年。

 妻と死別した作家と、5年間の結婚生活に破れた女優志望が出会い結婚。ハネムーンでのいさかいなど紆余曲折を経て、第2の結婚を確かめ合う……。

 妻であり本作の主演女優マーシャ・メイスンとの結婚までの経緯を描いた、と言われる劇作家ニール・サイモンの自伝的脚本は、ニューヨークを舞台に、粋な会話がもたらすユーモアと感動で満たされる傑作ラヴ・コメディ。

 

「ミッドナイト・エクスプレス」*アラン・パーカー

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

197811_ミッドナイト・エクスプレス
MIDNAIGHT EXPRESS
監督:アラン・パーカー
脚本:オリバー・ストーン
原作:ビリー・ヘイズ、ウィリアム・ホッファー
撮影:マイケル・セレシン
音楽:ジョルジオ・モロダー
出演:ブラッド・デイヴィス、ランディ・クエイド、ボー・ホプキンス、ポール・L・スミス、ジョン・ハート

☆☆☆☆ 1978年/アメリカ/121分

 初見1978年12月。
 〝ミッドナイト・エクスプレス〟とは、刑務所用語で〝脱獄〟を意味する隠語。

 大麻の密輸でトルコの刑務所に投獄され、祖国からも見放され絶望の日々を送る青年が脱獄するまでを描いた実話で、非人間的扱いを受けながらも生き延びた人間の驚異を感じる問題作。
 オリヴァー・ストーンの脚色は、若者の愚かな行為が政治的背景(ニクソン時代のアメリカと中東諸国の緊迫関係)を巻き込み、そのため国家的犠牲になりながら精神を病んでいく様を執拗に描いていく。
 異常な刑務所内を美しい映像で見せられると、哀しさが倍増する。

 主演のブラッド・デイヴィスは1985年にエイズと診断され、1991年他界。享年41だった。

「エイリアン」*リドリー・スコット

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1979_エイリアン
ALIEN
監督:リドリー・スコット
原案:ダン・オバノン、ロナルド・シャセット
脚本:ダン・オバノン
脚本協力:デビッド・ガイラー、ウォルター・ヒル
エイリアン・デザイン:H・R・ギーガー
撮影:デレク・ヴァンリント
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:トム・スケリット、シガニー・ウィーバー、ヴェロニカ・カートライト、ハリー・ディーン・スタントン、ジョン・ハート、イアン・ホルム、ヤフェット・コットー、(猫)ジョーンズ

☆☆☆☆ 1979年/アメリカ/117分

 初見1979年8月。
 70年代初めまでのSFやホラー映画は多分にB級映画扱いだったが、それを覆したのが1977年の『スターウォーズ』と『未知との遭遇』の大ヒットであり、乗じて『スターウォーズ』の20世紀フォックスが空前の超大作として製作されたのが本作。

 リドリー・スコット監督の出世作であり、シガニー・ウィーバーの映画デビュー作は、〝異星人=エイリアン〟という名を定着させ、SFホラー映画の古典として語り継がれているのだが、リアルタイムで観ていた映画が既に〝古典〟と言われるのもヘンな感じ。
 たしかに『エイリアン』のようなスリルとショッカー、ミステリーとサスペンスの要素を加えた宇宙SF映画は、その発想の斬新さと意表を突く展開では群を抜くものだ。
 その感覚は今も変わらない。だから、超A級SFホラーの〝古典〟……それでいいのだ。

「タイタンの戦い」*デスモンド・デイビス

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1981_タイタンの戦い
CLASH OF THE TAITANS
監督:デスモンド・デイビス
特殊撮影効果監督:レイ・ハリーハウゼン
脚本:ビバーリー・クロス
撮影:テッド・ムーア
音楽:ローレンス・ローゼンタール
出演:ハリー.ハムリン、ジュディ・バウカー、ローレンス・オリヴィエ、クレア・ブルーム、マギー・スミス、ウルスラ・アンドレス


☆☆☆ 1981年/アメリカ/118分

 初見1981年12月。
 ダイナメーション(ストップモーション・アニメと実写を組み合わせた映像特撮)の巨匠レイ・ハリーハウゼン最後の作品。
 なにせ1977年に『スターウォーズ』が公開され、ルーカスによるSFXという新しき時代が誕生した特撮映画界において、コマ撮りクリーチャーは時代遅れの産物となってしまったのだから……。
 しかし、コマ落としで動くクリーチャーも中々悪くはない。子どもの頃観ていた特撮SFファンタジー映画のほとんどが、このダイナメーション方式ということで当時でも懐かしい思いだった。

 作品はギリシャ神話を題材にしたもので、ハリーハウゼン出世作と成る1963年の『アルゴ探検隊の大冒険』の続編的傑作。
 ローレンス・オリヴィエやマギー・スミス、クレア・ブルームといった英国の一流キャストが脇を固めているのも見逃さない。
 
 2010年にサム・ワーシントン、リーアム・ニーソンでリメイクされたがコチラは未見。

「テン」*ブレイク・エドワーズ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1980_テン
10
監督:ブレイク・エドワーズ
脚本:ブレイク・エドワーズ
撮影:フランク・スタンリー
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ダドリー・ムーア、ボー・デレク、ジュリー・アンドリュース、ロバート・ウェバー

☆☆☆ 1979年/アメリカ/121分

 初見1980年3月。
 ジュリー・アンドリュースの夫で、「ティファニーで朝食を」「酒とバラの日々」「ピンクパンサー・シリーズ」などで知られるブレイク・エドワーズの大人のラヴ・コメディ。

 中年の妄想男が、理想とも言える10点満点女性と出会い、なんとかベッドインをするのだが、理想と現実の違いを思い知る……そんなお話。

 妄想男で突っ走るダドリー・ムーア、セクシー度満開のボー・デレク、強面ロバート・ウェバーはゲイになり、ジュリー・アンドリュースは歌わない……

「カジノ」*マーティン・スコセッシ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


CASINO
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ニコラス・ビレッジ、マーティン・スコセッシ
撮影:ロバート・リチャードソン
音楽:ロビー・ロバートソン
出演:ロバート・デ・ニーロ、シャロン・ストーン、ジョー・ペシ、ジェームズ・ウッズ、

☆☆☆☆ 1995年/アメリカ/178分

 初見1996年4月。
 1970年代から80年代にかけて、マフィアに支配されていた頃のラスベガスが描かれる。

 天才ギャンブラーでカジノを仕切っていたギャング(ロバート・デ・ニーロ)とその妻(シャロン・ストーン)、幼馴染みの用心棒(ジョー・ペシ)の3人を中心に(3人とも実在の人物)した愛憎劇で、当時のカジノ世界の裏側も赤裸々に暴かれている。
 3時間を超える長尺ながら見応え十分な作品である。
 
 デ・ニーロの成り切りぶりは言うに及ばず、朋友ジョー・ペシの極悪ぶりもさすがの演技。
 あばずれ感たっぷりのシャロン・ストーンは、その美貌だけでなく高い演技力でゴールデングローブ賞主演女優賞を獲得している。

浅川マキ、七回忌

2016年1月17日は 浅川マキの七回忌

こんな風に過ぎてゆきます…

ふたたびの
さよなら あばよ




「レオン」*リュック・ベッソン

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


LEON
監督:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン
撮影:ディエリー・アルポガスト
音楽:エリック・セラ
出演:ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン

☆☆☆☆☆ 1994年/フランス・アメリカ/110分(オリジナル劇場版)

 初見1995年4月。
 言わずもがな、何度も何度も観たくなる魅力に溢れた映画……。
 リュック・ベッソンにとってもジャン・レノにとっても最高傑作はこれでしょ。
 そしてナタリー・ポートマンにとっても、「ブラック・スワン」(2010)で評価されるまで長い女優人生となったのも、いかにこの作品の存在が大きかったのかと……。
 
 さて、リュック・ベッソンが「ニキータ」(’90)をアメリカ映画的アクション・ムーヴィーに仕立て、ハリウッドデビューした本作。公開当時の上映時間は110分だったが、DVD化に伴いベッソン監督が本当に描きたかった「レオン」を完成させるために、自らの編集により22分長くなった「完全版」を世に送り出した。

 マチルダ「私が欲しいのは、愛か死よ…それだけ」

 マチルダ「もう大人よ。あとは年をとるだけ」
 レオン「俺は年だけはとったが、これから大人に…」

 子供じみた大人の男と、大人びた少女との不思議な関係がよりわかりやすくなり、フランス映画的「愛の物語」の様相を深く感じることができるようになった「完全版」は、ラストシーンの感じ方もオリジナルとはまるで変わってしまい、より感動を覚えるであろう。
 故に、最強の映画なり…。

「霧笛が俺を呼んでいる。」THE SPOIL


sound trucks 〝AGAIN〟
霧笛が俺を呼んでいる。◆ 
'84 version by THE SPOIL
'60 version by 赤木圭一郎 1984年


 「霧笛が俺を呼んでいる」は1960年公開のトニーこと赤木圭一郎の最高傑作映画の同名主題歌で、作詞は水木かおる、作曲は藤原秀行。
 このシングルは、にっかつ70周年を記念して製作され1984年に公開された日活映画『AGAIN〈アゲイン〉』のイメージ・ソングとしてリリースされたもの。

 A面は、THE SPOILがアヴァンギャルドにアレンジしてカヴァーしたもので、B面は『AGAIN〈アゲイン〉』の挿入歌として使われた赤木圭一郎のオリジナル・ヴァージョン。
 オリジナル・タイトルは「霧笛が俺を呼んでいる」だが、THE SPOILヴァージョンは「霧笛が俺を呼んでいる。」と表記される。

 THE SPOILとは、80年代前半に活動していたクラブ・ジャズ・バンドで、ロカビリーやラテン、ジャズとテクノを融合したインストゥルメンタル・バンドとしてキャバレーやクラブなどで活動していたバンド。
 桑原茂一と伊武雅刀らのスネークマン・ショーのアルバム(カセット)で聴いたのが最初で、唯一のアルバム『DAY and NIGHT』(’82)を購入している。
 80年代特有のスノッブ感覚で、ニュー・ウェイヴ的ビ・バップに富んだ音楽が見事だったが、60年代のキャバレー音楽のような日活歌謡のひとつ「霧笛が俺を呼んでいる」のカヴァーは、その雰囲気といい面白い取り合わせだと感じた。

 本作のプロデュースとピアノには、前年に解散したダウンタウン・ブギウギ・バンドの千野秀一が参加。ヴォーカルは〝紅拳児〟の名前で伊武雅刀が歌っている。紅拳児の名が、赤木圭一郎の代表作『紅の拳銃』から取られているのは明白。
 オリジナルのレコードは、映画のラストシーンの赤木圭一郎と芦川いづみの別れの台詞を導入にして、魅力的に歌が始まるが、THE SPOILヴァージョンにも伊武雅刀の「ごきげんよう」の台詞で始まるカッコよさだ。

1984-01_アゲイン
AGAIN〈アゲイン〉

 映画「霧笛が俺を呼んでいる」は、『第三の男』にインスパイアされて製作されたミステリー・ロマン。赤木圭一郎の淡々とした台詞と、叙情性豊かなメロディを持つ主題歌が高貴なロマンとセンチメンタリズムを漂わせ、赤木圭一郎と芦川いづみとのコンビネーションも最高に素晴らしい、日活アクション映画の代表作である。

「実録エロ事師たち」*曽根中生監督作品


監督:曽根中生
原作」吉村平吉
脚本:下飯坂菊馬
撮影:畠中照夫
美術:菊川芳江
音楽:月見里太一(鏑木創)
出演:二條朱実、殿山泰司、江角英明、星まり子、榎木兵衛、高橋明

☆☆☆ 1974年/日活/75分

    ◇

 〝エロ事師〟の名称は、野坂昭如が命名したとされる。
 ポン引き(売春斡旋)、ブルーフィルムやエロ写真の製作、カップルが本番行為を見せる白黒ショーの実演・上映会など、その商いは野坂昭如原作、今村昌平監督の傑作人間喜劇映画『人類学入門「エロ事師たち」より』を見ればよくわかるものだが、本作は、その野坂昭如の小説のモデルとなった伝説のポン引き師吉村平吉の著作本を原作にしている。


 手配師の殿村銀次郎(殿山泰司)の斡旋で、白黒ショーを演じる中山(江角英明)と春子(星まり子)の夫婦。ある日ふたりのショーに感激した客の西沢(榎木兵衛)が弟子入りを懇願する。それは若い女房のユカリ(二條朱実)を満足させたい一心だった。
 彼に同情した3人がいろいろと協力するのだが、なかなか効果は表れない。ある日、西沢に同情した春子が彼をモーテルに誘い、西沢は初めての歓喜を味わう。それは春子にとって初めての浮気でもあった。
 一方、殿村は性的不感症のユカリを白黒ショーに誘うが、あらためて夫の不甲斐なさを知り別れる決心をする。そして、春子の浮気に気づいた中山を尻目に、西沢と春子は駆け落ちをするのだった。
 殿村は、残された中山とユカリの新しいコンビを結成し初舞台を催すのだが、殿村が抱えるオカマ売春のカップルやブルーフィルムの監督など全員があえなく逮捕されてしまう。
 手錠姿の殿村だが「次はうまくやるさ」とうそぶくのだった…。

    ◇

 1958年までポン引きをしていた吉村平吉が述懐する彼らの生態は、やくざとは違った非合法社会を形成し、開けっぴろげでなごやかな人間関係があったとしている。

 艶笑ドラマとしての本作は、暗い部屋で睦あうアングラな世界に生きる人間たちの軽い浮き草のような人生の悲哀と、リアルに淡々と流れてゆく時間の心地良さに魅入ってしまう映画だ。
 男と女の時間に身を任せる人間模様のなか、殿山泰司が飄々としながらも活力に満ちた手配師を好演し、ある意味主役とも言える榎木兵衛は見事な情けなさぶりで、名脇役としてのいぶし銀光る姿を楽しめる。

 もちろん女優陣もよし。1973年にミノルフォンから「泣くなおっぱいちゃん」(作詞:富永一朗、作曲:井上忠夫)で歌手デビューした星まり子は、この作品で二条珠美と名前を並べて映画デビュー。以後、全部で10本ほどのロマンポルノに出演している。

 そして、欄干に仕掛けた鏡越しのベッドシーンとか、ネガポジを反転した二条珠美の裸体とか、工夫を凝らした曽根中生監督の演出も冴える。



「イメージの詩」浜田省吾


THE SONG OF IMAGE / FAR FROM MY HOME
浜田省吾◆ イメージの詩/生まれたところを遠く離れて 1997年

 1997年10月にリリースされた浜田省吾通算28枚目のシングルは、A面7分9秒/B面9分15秒のフルヴァージョンの7inch/33回転EPの完全限定盤。
 ただし、2005年に8cmCDシングルで復刻されている。

 「イメージの詩」は周知のとおり、1970年リリースの吉田拓郎デビュー・シングル曲。
 拓郎50歳のバースデイ記念に浜田省吾がカヴァーしたのが本作で、星勝のアレンジで浜田流ロックに変貌している快作。
 アコースティック・ギターで拓郎も参加している。

 カップリングの「生まれたところを遠く離れて」は、浜田省吾のデビュー・アルバム『生まれたところを遠く離れて』(’76)に収録されていた同名曲のリメイクで、10分ちかい名バラッドである。


スプリングスティーン『ザ・リバー・ボックス』を紐解く

 ブルース・スプリングスティーン『THe River』35周年記念BOXは、幻のアルバム再現と完全未発表曲集、完全未発表ライヴの映像化で4CD+2Blu-rayの6枚組といった最高の内容で、年末年始にかけて十二分に堪能している。
 『ザ・リバー』はこれで4点目。
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 LP盤は発売当初の日本盤が1枚。CDは紙ジャケを2枚。
 1枚は1999年の“NICE PRICE紙ジャケシリーズ”で、これはブルース側からのクレーム(音質と紙ジャケのクォリティが問題だと思われる)ですぐに回収され発売中止となっている。全16枚シリーズだったが、紙ジャケの再現度は低く音質も芳しくない代物だった。(このシリーズでいま手元にあるのは『ザ・リバー』と、〈Tunnel of Love Express Tour〉のライヴを収録したミニアルバム『Chimes Of Freedom』の2枚だけ)
 もう1枚は2005年リリースの紙ジャケシリーズ。US初盤を模した光沢のあるジャケット再現が素晴らしく、音源はブルース本人の意向によってオリジナル・マスター・テープが使用されていた。

 さて、それではボックス・セットの中身を順次見てゆこう。

 ザ・リバーBOX ~THE TIES THAT BIND: THE RIVER COLLECTION
 〝The Ties That Bind〟(人と人との繋がり)と題された『ザ・リバー・ボックス』の日本盤は、帯を印刷した箱型パッケージに収まっている。

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 まずは、ボックス・セット収録のハードカバーの写真集。
 初のトップ10入りした先行シングル「ハングリー・ハート」のジャケット写真のアウトテイクをはじめ、レコーディング風景やステージ写真など、200枚以上の未公開写真で埋め尽くされた豪華本だ。

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 『闇に吠える街』BOXにも収録されていたような手書き歌詞を複写したレプリカ・ノート。これは正直どうでもいいかな……。

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 CDとBDは、二つ折りのバインダーを模した紙パッケージにそれぞれ紙ジャケ仕様で納められている。メモラビリアが紙ジャケを外した箇所にも印刷されている。

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 紙ジャケの形態はすべて外側への折り返し。

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 DISC.1&2はアルバム『ザ・リバー』のオリジナル形態全20曲。
 2014年リマスター・ヴァージョンが使用されている。

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Original THE RIVER album Record One
1. タイズ・ザット・バインド (The Ties That Bind)
2. 愛しのシェリー (Sherry Darling)
3. ジャクソン刑務所 (Jackson Cage)
4. 二つの鼓動 (Two Hearts)
5. 独立の日 (Independence Day)
6. ハングリー・ハート (Hungry Heart)
7. 表通りにとびだして (Out in the Street)
8. クラッシュ・オン・ユー (Crush on You)
9. ユー・キャン・ルック (You Can Look (But You Better Not Touch))
10. アイ・ウォナ・マリー・ユー (I Wanna Marry You)
11. ザ・リバー (The River)
Original THE RIVER album Record Two
1. ポイント・ブランク (Point Blank)
2. キャディラック・ランチ (Cadillac Ranch)
3. アイム・ア・ロッカー (I‘m a Rocker)
4. 消え行く男 (Fade Away)
5. 盗んだ車 (Stolen Car)
6. 恋のラムロッド・ロック (Ramrod)
7. ザ・プライス・ユー・ペイ (The Price You Pay)
8. ドライブ・オール・ナイト (Drive All Night)
9. 雨のハイウェイ (Wreck on the Highway)

    ◇

 このボックスの目玉のひとつがDISC.3の『ザ・リバー・シングル・アルバム』。
 1979年のクリスマスにリリース予定だったがブルースの意向で発売が見送られた『The Ties That Bind』を再現したもので、後のアルバム『ザ・リバー』に収録されないまま見送られた3曲以外でも、全てテイク違いとミックス違いの全10曲。聴くほどに惹き込まれる楽曲群だ。

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THE RIVER: Single album
1. The Ties That Bind
2. Cindy
3. Hungry Heart
4. Stolen Car (ver. 1)
5. To Be True
6. The River
7. You Can Look (But You Better Not Touch) (ver. 1)
8. The Price You Pay
9. I Wanna Marry You
10. Loose Ends

 「Cindy」「To Be True」「Loose Ends」の3曲が『ザ・リバー』に未収録。「To Be True」「Loose Ends」は1998年に『TRACKS』で発表されたが「Cindy」は完全未発表。
 必聴は「ユー・キャン・ルック」の初期ヴァージョンで、歌詞は同じで曲がまったくの別物なのに驚愕する。
 「盗んだ車 」もピアノで始まるヴァージョンで、物語性(歌詞)が長く聴き応えがある。既に『TRACKS』で発表されていたが、これもミックスが違う。
 ほかに『ザ・リバー』に収録された楽曲で違いが顕著なのは、中盤の歌詞差替えとフェイドアウトのハーモニカが聴こえる「ザ・プライス・ユー・ペイ」や、終盤のハミングがオミットされていてあっさりとフェイド・アウトする「ザ・リバー」など興味深いものばかりだ。

    ◇

 もうひとつの目玉がDISC.4の『ザ・リバー:アウトテイクス』。
 親しみやすいポップな楽曲は11曲が完全未発表で、残り11曲は『TRACKS』や2003年の『Essential』などで陽の目を見た曲群だが、それらを“ザ・リバー・セッション”として一同に会したことで、このボックスの魅力を一段と高めているだろう。

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THE RIVER:Outtakes
~未発表曲〜
1. Meet Me In The City
2. The Man Who Got Away
3. Little White Lies
4. The Time That Never Was
5. Night Fire
6. Whitetown
7. Chain Lightning
8. Party Lights
9. Paradise By The “C”
10. Stray Bullet
11. Mr. Outside
~既発曲〜
12. Roulette
13. Restless Nights
14. Where The Bands Are
15. Dollhouse
16. Living On The Edge Of The World
17. Take 'em As They Com
18. Ricky Wants A Man Of Her Own
19. I Wanna Be With You
20. Mary Lou
21. Held Up Without A Gun
22. From Small Things (Big Things One Day Come)

 未発表曲のなかで「Chain Lightning」が、かなりクールな楽曲で耳に残る。
 唯一のインストゥルメンタル「Paradise By The “C”」は、1978年の〈Darkness On The Edge Of Town Tour〉の第2部の幕開きで既に演奏されている。(1986年リリース『THE “LIVE” 1975-85』において78年7月7日の演奏が初収録される)

    ◇

 残るはBlu-rayディスクが2枚。
 「THE TIES THAT BIND」と題された『ザ・リバー』制作秘話のドキュメンタリー(約60分)は、アコースティック・ギター片手に当時を振り返るブルースのインタビュー構成で、「タイズ・ザット・バインド」や「ザ・リバー」など数曲をアコースティック・ヴァージョンで聴くことができる。

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 「THE RIVER TOUR TEMPE 1980」は、1980年の〈The River Tour〉から11月5日アリゾナ州立大学での完全未発表ライヴ映像が2時間40分収録されている。それに加え、9月下旬のツアー・リハーサルの演奏も20分ほど収録。アルバム・リリース前にライヴ・アレンジを試みている様子である。

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THE RIVER TOUR TEMPE 1980 live concert from Tempe 1980, plus rehearsal footage 
1. Born To Run
2. Prove It All Night
3. Tenth Avenue Freeze-Out
4. Jackson Cage
5. Two Hearts
6. The Promised Land
7. Out In The Street
8. The River
9. Badlands
10. Thunder Road
11. No Money Down
12. Cadillac Ranch
13. Hungry Heart
14. Fire
15. Sherry Darling
16. I Wanna Marry You
17. Crush On You
18. Ramrod
19. You Can Look (But You Better Not Touch)
20. Drive All Night
21. Rosalita (Come Out Tonight)
22. I'm A Rocker
23. Jungleland
24. Detroit Medley
25. [Credits]〜Where The Bands Are
《BONUS》
26. Ramrod[The River Tour Rehearsals]
27. Cadillac Ranch[The River Tour Rehearsals]
28. Fire[The River Tour Rehearsals]
29. Crush On You[The River Tour Rehearsals]
30. Sherry Darling[The River Tour Rehearsals]

 当日は34曲を演奏したステージなので、10曲ものボツ映像があるのが惜しいところだが、そんな考えをぶっ飛ばすくらい素晴らしい映像・演奏・ステージパフォーマンスを目にすることができる。

 「明日なき暴走」で幕開け、ロイ・ビタンのピアノの上で歌い始める「凍てついた十番街」。「二つの鼓動」を歌い終えるとステージにショーツが投げ入れられ、「プロミスト・ランド」が終わると女子学生がステージに飛び出しブルースに抱きついたりする(ブルースはキスで応える)シーンを挟み、「ザ・リバー」まで一気に8曲を歌い上げる。そして、ファンに語り継がれるほど有名なブルースの発言と「バッドランド」。

 この日は、共和党のロナルド・レーガンが圧倒的な支持を得て大統領に選出された翌晩のライヴ。
 「昨夜恐ろしいことが起こった。君たちはまだ若い。君たちの行動に期待する人々は沢山入りと思う。だから、この曲を君たちのために歌うよ」と発言して「バッドランド」になだれ込む。
 このときのヴァージョンが『THE “LIVE” 1975-85』にも納められるほど、素晴らしい演奏と歌だ。

  待つことで時間を無駄にしちゃいけない…
  ぼくたちはこの荒れ果てた地で生きなくちゃいけない…心を奮い立たせよう…
  進み続けよう…何かが見えてくるまで…
  荒れ果てた地が良くなるまで…(「バッドランド」要訳)

 第2セットは、チャック・ベリーの「No Money Down」から「キャディラック・ランチ」が始まる〈The River Tour〉初期のレアパターンから、終盤への大ロックンロール大会が繰り広げられる。


 年末に入った情報では、Blu-rayに未収録の10曲が《live.brucespringsteen.net》においてMP3でフリーダウンロードを開始した。映像は何かしらのトラブルがあったのだろうと想像し、CD−R通販もあるようなので音だけでも完全版を聴くことが出来るようだ。

1. Darkness On The Edge Of Town  5:08
2. Independence Day 7:03
3. Factory 3:16
4. Racing In The Street 8:30
5. Candy's Room 3:29
6. The Ties That Bind 3:47
7. Stolen Car 4:50
8. Wreck On The Highway 4:56
9. Point Blank 7:57
10. Backstreets 8:29


Rock'n Roll New Year 2016

あけましておめでとうございます

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ミルク・タイム /柳田ヒロ

 干支に合わせたロック・アルバム・ジャケット
 2016年は申年…ということで、インパクトあるゴリラ・ジャケットの『ミルク・タイム』で年明け候

 日本のロック黎明期の一翼を担ったキーボード奏者・柳田ヒロが“エイプリル・フール”や“フード・ブレイン”で活動した後、1970年11月に水谷公生〈ギター〉、角田ヒロ〈ドラムス〉、石川恵樹〈ベース〉、玉木宏樹〈エレクトリック・ヴァイオリン〉、中谷望〈フルート〉のサポートでリリースした、初のソロ・アルバム…
 角田ヒロと石川恵樹は初期の“フード・ブレイン”メンバーで、若松孝二監督の『新宿マッド』('70)のサウンド・トラックを吹き込んでいる。

 アルバムは、4ヶ月前にリリースしたフード・ブレインのファースト・ラスト・ルバム『晩餐』と同じようにインプロヴィゼーションを主体に、鍵盤を縦横無尽に操る柳田の破壊的奏法と水谷公生のアグレッシブルなギターがプログレッシヴでアートなロック・サウンドを構築している…
 クラシカルな小品を交えたインタープレイは、70年代初頭の日本ロックの熱情を感じる一枚として語り継がれている…

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01. LOVE ST.
02. RUNNING SHIRTS LONG
03. WHEN SHE DIDN'T AGREE
04. HAPPY, SORRY
05. YUM
06. LOVE T
07. FISH SEA MILK
08. FINGERS OF A RED TYPE-WRITER
09. MILK TIME
10. ME AND MILK TEA AND OTHERS