TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

村八分BOX 〈Limited Edition〉

01_村八分_CD-BOX
 今更ながらだが、2005年に購入した村八分のBOXセットを紹介しておこう。
 バンドが解散して42年が経ち、このBOXがリリースされてからも早10年。その間、ギターの山口冨士夫とベース担当の青木真一の二人が相次ぎ亡くなり、オリジナル・メンバー5人から既に4人が他界してしまっている時の流れなのである。

 日本で最もラジカルなロック・バンド村八分は、活動期間約5年の間に公式にリリースされたオリジナルアルバムはたった1枚しかなく、その唯一のアルバムもライヴ盤(2枚組)であり、ライヴバンドの名をほしいままにしていた証としてレジェンドな1枚として語り継がれている。

 村八分BOXの内容は、ELECレコードからリリースされたアルバム『ライブ』をリマスタリングしたアナログ完全復刻盤(紙ジャケ仕様の被せ帯付)と、スタジオ・セッション&未発表ライヴで充実させたCD6枚プラス未発表映像を収録したDVDを未発表写真を満載したベルベット生地の特殊仕様ブックレットに納めたもので、かなり高額な価格にも関わらず躊躇せずに買い求めたアイテムだ。

 disc1に収録された1971年のスタジオ・テイク6曲は、多分ファーストアルバムとしてリリースされるものだったのだろう。こうしてリマスタリングされ陽の目を見たわけで、現在では単体で唯一のスタジオ・アルバムとして『くたびれて』のタイトルでCDリリースされている。

 未発表ライヴCDの音質は、カセットなどのオーディエンス録音なのでコアなファン以外の人には辛い音質だと思うが、ロックンロールが不良少年のものとして生きていた時代の生々しい音には感慨深いものがある。

 動く〝村八分〟は強烈だ。断片的で物足りなさがあるものの、それまでサイレントの短い映像で目にしていたものが、たとえアフレコとはいえ音入りの映像で復刻されたことに歴史的価値があるってものだ。


02_村八分_CD-BOX
村八分 BOX Limited Edition (8CD+DVD)
Disc.1:1971年スタジオ&ライブ
01. どうしようかな
02. のんだくれ
03. くたびれて
04. あやつり人形
05. ドラネコ
06. あっ!
(1971年4月30日大阪 スタジオ)
07. 裸の街
08. あやつり人形
09. どうしようかな
10. 機関車25
11. はなからちょうちん
(1971年6月20日日比谷野外音楽堂ライブ)
12. インスト1
13. インスト2
(1971年 スタジオ)

Disc.2:1972年8月27日 京都円山野外音楽堂〝村八分No.1コンサート〟
01. あやつり人形
02. はなからちょうちん
03. 夢うつつ
04. あっ!
05. どうしようかな
06. ぐにゃぐにゃ
07. 機関車25
08. 水たまり
09. のうみそ半分
10. にげろ
11. ドラネコ
12. 馬の骨

Disc.3:1972年11月11日 京都会館第一ホール〝村八分公演〟
01. ぶっつぶせ
02. 夢うつつ
03. ねたのよい
04. あっ!
05. どうしようかな
06. ドラネコ
07. くたびれて
08. あやつり人形
09. んっ!
10. はなからちょうちん
11. のうみそ半分
12. にげろ
13. ぐにゃぐにゃ

Disc.4:1972年~1973年 京都ガロ
01. はなからちょうちん
02. にげろ
03. あやつり人形
04. ぐにゃぐにゃ
05. ゴミ箱のふた
06. インスト~あっ!
07. んっ!
08. のうみそ半分
09. ねたのよい
10. あくびして
11. 夢うつつ
12. どうしようかな
13. 水たまり
14. 馬の骨

Disc.5:1973年エレックスタジオ+1972年プライベートアコースティックテープ
01. 夢うつつ
02. はなからちょうちん
03. ぐにゃぐにゃ
04. あくびして
05. 機関車25
06. ゴミ箱のふた
(1973年エレックスタジオセッション)
07. 読人知らず1〈リハーサル〉
08. 読人知らず2〈リハーサル〉
(1972年プライベートアコースティックテープ)

Disc.6:1979年5月6日 京大西部講堂〝狂騒ロックコンサート〟
01. レッドレター
02. くたびれて
03. 夢うつつ
04. 水たまり
05. ツイスト&シャウト
06. ディジー・ミス・リジー

Disc.7:村八分ELEC『ライブ』完全復刻&リマスタリング
01. あッ!!
02. 夢うつつ
03. どうしようかな
04. あくびして
05. 鼻からちょうちん
06. 水たまり
07. のうみそ半分
08. 馬の骨

Disc.8:
01. ねたのよい
02. ぐにゃぐにゃ
03. のびてぶぎー
04. んっ!
05. どこへ行く
06. にげろ
07. どうしようかな
08. 序曲

DVD:
・1971年日比谷野外音楽堂、1972年円山野外音楽堂、1972年慶応大学三田祭前夜祭の未発表映像
・CD『Live '72 三田祭』 発売時に限定配布されたビデオ映像
・店頭演奏用に作成されたPV
・1972年慶応大学三田祭前夜祭・未発表フォト・ギャラリー

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「上海帰りのリル」根津甚八

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根津甚八◆ 上海帰りのリル/しゃんそん 1982年

 2010年の引退表明から5年。朋友石井隆監督の要請によって〝1度限り〟の俳優復帰(『GOINNサーガ』)を叶えた根津甚八。
 元気な姿とは云えないものの、その眼力と、今ある限りの力で生身の肉体を曝け出し、狂気とも見える存在感でスクリーンに蘇った姿は、まさに執念の演技だった。
 役者・根津甚八の実人生を投影するかのように、因果応報のドラマチック性にファンは驚喜のひと言をあげたのだった。

 さてこのシングルは、1982年にリリースされた4枚目のアルバム『火男』からのシングル・カット。『さらば愛しき大地』で主演男優賞を総なめにした時期に重なる。
 サウンドプロデュースとアレンジをザ・ハプニングス・フォーのチト河内が務め、昭和歌謡の名曲をレゲエのリズムでクールにカヴァーした逸品だ。

 オリジナルは戦前から活躍した歌手津村謙が1951年に大ヒットさせたものだが、耳馴染んで聴いたのはバーブ佐竹や青江三奈の歌唱だろうか。
 しかし、あくまで懐かしのメロディ的な古い歌であって、好んで聴くような歌ではなかった。

 この「上海帰りのリル」という曲が思いもかけぬ効果を見せて頭に残るようになったのが、1979年に発刊された石井隆の劇画【天使のはらわた】だった。
 石井隆の代表作として、後の〝名美と村木のメロドラマ〟へと枝葉を伸ばす長編愛憎劇で、その第3部にて、長い間引き裂かれていた哲郎と名美が場末のバーで5年ぶりに再会する箇所がある。

 腕を負傷した哲郎に女がハンカチを差し出す……バーの裏口で煙草をふかす女の顔……名美だ……薄暗い店内で哲郎に気づく名美……ジュークボックスからは「上海帰りのリル」が流れている……「踊らないか」と誘う哲郎……身動きひとつしない名美……

  ♪望み捨てるなリル……
   誰かリルを知らないか……

 震えが止まらないほどに圧倒される映画的興奮のコマ割り30数ページであった。

 根津甚八の歌い廻しは色気がある。
 もし『天使のはらわた サーガ』なるものの映像化が可能になれば、このシーンには根津甚八の歌唱でふたりを包み込んで欲しいものだ。
 と言いながらも「上海帰りのリル」はちあきなおみもカヴァーしている。ちあきなおみのしっとりした歌唱も絶対に捨て難いもの…ウ~ん、どうする(笑)

 B面「しゃんそん」は、作詞吉田いつか、作曲上田正樹のブルージーな傑作。
 LP『火男』には未収録だったが、2012年に『火男』が復刻初CD化された際に収録されている。
 
★火男★
★さらば愛しき大地★
★GOINNサーガ★

手を携える者が舞い降りた★「GONIN サーガ」*石井隆監督作品

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監督:石井隆
脚本:石井隆
撮影:佐々木原保志
編集:石井隆、阿知波孝
音楽:安川午朗
挿入歌:「紅い花」ちあきなおみ、「ラスト・ワルツ」森田童子、「rose」土屋アンナ
出演:東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本佑、安藤政信、井上晴美、りりィ、松本若菜、屋敷紘子、間宮夕貴、飯島大介、菅田俊、伊藤洋三郎、福島リラ、テリー伊藤 / 竹中直人、根津甚八、鶴見辰吾、佐藤浩市(特別出演)

☆☆☆☆ 2015年/KADOKAWA、ファムファタル/129分

    ◇ 

 ~手を携える者の 魂の滑空 すべては元に立ち返る運命~

 〝名美と村木〟を幹として純愛と性愛を描いてきた石井隆が、もう片方で進行させてきたピカレスクロマンの世界。
 劇画時代でいえば【パイソン・シリーズ】【黒の天使シリーズ】【曼珠沙華】など女ヒットマンを主題にしたものと、映画に移り葉月里緒菜と天海裕希の『黒の天使』2作や〝名美と村木の物語〟として夏川結衣の『夜がまた来る』、サイコパスなヒロインを登場させた川上麻衣子の『赤い閃光』も、井上晴美の『フリーズ・ミー』もしっかりとハードボイルドな作品であった。
 そんななかで、1995年に男だらけのバイオレンス・アクション『GONIN』を撮りあげた。公開当初の興行はおもわしくなかったが、のちに監督の代表作となったのも必然の流れであり、国内のみならず海外においても評価が高まった作品だ。

 『GONIN サーガ』は、数奇な運命を背負った5人の男たちはもとより、死闘のなかで命を落とした遺族たちへのレクイエムとなる19年ぶりの真正続編となる。

 五人組による、暴力団五誠会系大越組襲撃事件から19年。大越組の若頭・久松(鶴見辰吾)の遺児である勇人(東出昌大)は母・安恵(井上晴美)を支えながら真っ当な人生を歩み、勇人の幼馴染で大越組組長の遺児・大輔(桐谷健太)は壊滅した大越組再興の夢を抱きながら、五誠会三代目の誠司(安藤政信)のボディーガードをしていた。元アイドル歌手の麻美(土屋アンナ)はあるネタを元に五誠会に囲われているが、なんとか逃れたいと呪う日々を送っていた。
 ある日、19年前の事件を追う富田(柄本佑)と名乗るルポライターが安恵を訪ねてきたことから、遺された者たちの人生が大きく歪みだすのだった…。

    ◇

 2010年に病気で引退を表明した根津甚八が〝1度限り〟の俳優復帰となる作品でもあり、発表になったときの根津氏のコメントや、石井監督との出演経緯を読んだときには涙を禁じえなかった。
 〝役者〟であった根津甚八……右目下直筋肥大という俳優にとって致命的でもある病状を、石井監督は根津甚八でしか成り立たない設定でホンを書き、渾身の演出で根津甚八という〝役者〟を復活させている。
 邦画史に残る〝GONIN〟の蘇りは演者と監督との信頼関係があり、スクリーンの中におけるふたりの死闘には狂気さえも感じさせる凄まじいもので、根津甚八の演技に圧倒されるのだった。

gonin-saga_nez.jpg (C)2015「GONINサーガ」製作委員会

 映画の冒頭、カセットテープからちあきなおみの「紅い花」が流れる。
 嗚呼、こうして始まるのか…やっぱり、ここから始まるしかないよな、と感慨を覚えての涙モノである。
 『GONIN』のアイコンと云えるこの曲は、万代(佐藤浩市)の悪魔の囁きによって家族を冥界に差し出す結果に陥った氷頭の、妻・早紀(永島暎子)との唯一の繋がりであり、『GONIN』に通底した血と硝煙の無慈悲を浄化するメロディとして、いつ、どこで流れてこようと、自然と涙が滲んでくる。

 その「紅い花」と同じように、今回の『GONIN サーガ』のアイコンとなる曲が、白いホリゾントと松本若菜が着用する真っ白なウェディングドレスを鮮血に染めるクライマックスに流れる森田童子の「ラスト・ワルツ」。
 優雅な調べで亡霊を導き、“死”と“血脈”を抱擁するためのプレリュードとなる。
 『夜がまた来る』のカスタネット音と明け空を飛翔する3羽の念いが『GONIN』に移行し、永き瞬間〈とき〉をくぐり『GONIN サーガ』に舞い降りてくるのには相応しい楽曲ではないか。

 石井美学の象徴である雨を屋内に降らせ、凄惨で血みどろながら綺羅綺羅輝く舞台には冥界と現世を漂ってきた言霊が渦巻き、息絶え絶えの漂流者には優しき声の囁きと手を携える死して歳を重ねた主が出現する。
 その一瞬、「ラスト・ワルツ」を終えた〝レコード盤〟からブチッブチッと聴こえる針音が、麻美の鼓動と連動…驚喜!
 そこに居るのは、まさしく名美…土屋〝アンナ〟名美である。
 
 麻美と名美をダブらせるシーンは何もエンディングばかりではなく、墓石のように林立するビルの谷間から、奈落にいる大輔に女ヒットマン余市(福島リラ)のスマホで連絡を入れる麻美の仰ぎ見に、劇画【象牙の悪魔/第三話イリュージョン】(’84)の扉絵を思い出すのも石井ワールドの楽しみ方である

GONINsaga-GALLERY_3.jpg (C)2015「GONINサーガ」製作委員会

 クライマックス後のBirds舞台上の〝YONIN〟は、遂、土屋アンナに眼差しが向くだろうが、斬られたホリゾントの端が風に揺らぎ見える柄本佑の神々しさも格別なものがある。
 そんな柄本佑をはじめ次世代俳優たち(東出昌大、桐谷健太、安藤政信)の熱演も見どころではあるが、やはり石井隆の世界を絢爛とするのは屍に乱舞する女優たちだ。

 バスルームでの土屋アンナと福島リラの対決では、劇画【黒の天使/闇の音】(’81)に描かれた画を見事に体現した土屋アンナの、ビッチな感じと恐怖におののく表情のバランスが見事。
 現代アートのように壁にペイントされた血の紋章も『死んでもいい』のバスルームを思い起こすに十分なシーンだった。

 個人的に一番素敵に見えたのが『フリーズ・ミー』『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』につづいて3度目の登場となる井上晴美。愛する亭主(鶴見辰吾)の名誉を回復したい思いで五誠会に怒鳴り込む迫力マムだ。
 土屋アンナも、福島リラも、銃を構える姿も様にはなっているが、井上晴美の水泳で鍛えた肩幅の広い体躯からスッと腕を伸ばした均整のとれた立ち姿には、惚れぼれするばかりである…。

 そんな女優たちがまとう音楽の選択も石井ワールドの聴きどころで、先に述べたように「紅い花」が『GONIN』のアイコンであるように、土屋アンナには Waltz、福島リラには Baroque~テレマンの「アリア」、井上晴美はJazz(オリジナル曲なのかスタンダードなのか不明だが安川午朗のピアノ演奏と思える)が、それぞれの女たちの妖気を包み込み、『GONIN』よりも女たちの映画として成り立っているのが嬉しい。

 『GONIN』においてビートたけしのヒットマンに殺された竹中直人は、根津甚八同様に石井ワールドには欠かせない役者として狂気のヒットマン明神として再起用されるが、『GONIN』との共通の遊びを交えたキャラクターと、変幻自在な俳優だけあって何の無理もない再登場となっている。この造形は面白い。
 その明神が掟破りのウージー機銃を使う説得性は、相棒の余市の首を持って彷徨う姿に『GONIN』のジミーとナミィの姿を転写させることで納得できるのだが、もう少しふたりの関係性も見せて欲しかった…これはブルーレイのディレクターズカットとしてのお楽しみになるのか?

 本編でカットされた部分といえば、麻美とアノ人とのワルツ・シーンもディレクターズカットで復活されるだろう。
 一瞬の夢想として、ワルツに身をあずけた麻美のストップモーションが、かつて「テネシーワルツ」で再生へ踏み出した名美の呟きと重なり、より強固な石井ワールドを感じることができるはず…。


★ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う★
★夜がまた来る★
★死んでもいい★
★フリーズ・ミー★
★天使のはらわた 赤い閃光★