TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「鍵」*市川崑監督作品


監督:市川崑
原作:谷崎潤一郎
脚本:長谷部慶治、和田夏十、市川崑
撮影:宮川一夫
音楽:芥川也寸志
出演:京マチ子、中村鴈治郎(二代目)、仲代達矢、叶順子、北林谷栄

☆☆☆☆ 1959年/大映/107分

    ◇

 耽美な谷崎文学の映像化作品。
 若くて妖艶な妻と性に貪欲な初老の夫、器量に恵まれない娘と打算で動く許嫁といった4人の異常な関係が描かれており、1959年の初公開時には成人映画の指定を受けている。


 没落した京都の資産家で古美術鑑定で名高い剣持(二代目中村中村鴈治郎)には、年齢の離れた美しく肉感的な妻郁子(京マチ子)がいるが、老いによって愛する妻との性生活が失われることに恐怖し、主治医の目を盗んでは、一人娘の敏子(叶順子)の許嫁で大学病院でインターンをしている木村(仲代達矢)に強壮剤の注射を打ってもらっている。
 郁子は執拗な性を迫る剣持のことは忌み嫌っているが、もちろんそんなことは一切おくびにも出さず、貞淑な妻を貫いている。

 若さを取り戻すために剣持は、自らの嫉妬心を利用しようと思いつく。
 ある晩木村を自宅に呼び、夕食の席で酒に弱い郁子にワイン飲ませ、入浴中にのぼせさせる。裸体の郁子を木村に介抱させ、その様子を楽しみながら、夜には熟睡する郁子の裸体をカメラに収めるのだった。そして、撮った写真の現像を木村に頼む。
 木村は頻繁に剣持家に呼ばれるようになり、同じように浴室で郁子は失神する。そのうちに郁子と木村の仲が接近し、お互い意識をし始めるが、ふたりが深い関係になることは剣持も承知のうえ…これこそ最上の嫉妬心であり、さらなる悦びに浸ることが出来るのだった。

 そんな両親の関係性に嫌悪感を持つ敏子は、一人暮らしをするために家を出てゆく。木村が父親の遺産目当てで自分と付き合っていることを承知していたが、木村と郁子が近づくことで、陰鬱な性格はますます暗闇に堕ちてゆくかのようで、敏子は郁子に対してある疑念が生まれる。

 木村から剣持の血圧が高くなっていることを聞いていた郁子は、ある夜、自分から剣持に軀をあずけ、これまでの自分の消極性を詫び激しく抱かれるのだが、剣持は無理を重ねたことで脳溢血で倒れ、言葉を発することができなくなり寝たきりになってしまう。
 その晩、訪ねてきた木村に裏木戸の鍵を渡す郁子。それからは、毎晩のように逢瀬をくり返すことになる。
 ある晩、剣持は郁子に目の前で着物を脱ぐように命じ、郁子の豊満な裸体を見ることで歓喜するのだが、興奮した剣持はそのまま息を引き取ってしまう。

 葬儀の後、郁子と敏子と木村は会食をはじめる。
 敏子は、台所で郁子の紅茶に赤い缶から農薬を入れるが、賄いのよね(北林谷栄)が色盲のために、事前に赤い缶と緑の缶の中身を入れ替えていた。
 郁子は、木村と敏子が結婚してこの宅で開院することを勧め、ウキウキしている。
 木村は“金の切れ目は縁の切れ目”と、そろそろ退散することを目論んでいる。
 よねがサラダを運んでくる。一口食べた木村が「ヘンな味ですね」と呟いたとき、郁子が突っ伏し、自らも昏倒。郁子も、襖の奥に立つよねに「また(缶を)間違えたのね」と言って倒れるのであった。

 警察に「自分が殺した」と自首したよねだが取り合ってもらえず、3人の後追い自殺として片付けられるのであった……。

    ◇

 長回しやストップモーション、クローズアップやカットバックのテンポがサスペンスに繋がり、ミステリー的心理戦にヒリヒリとした緊張感を味わえるのだが、特に、画面を蔓延る淫靡なエロティシズムがたまらない。
 異常な振る舞いと云うか、登場人物がそろいも揃って肚に一物持つクセ者で、誇張したメーキャップや言動が得体の知れない官能性を醸し出してくるから凄い。

 そして、市川監督が描く妖しい世界の人物カリカチュアは、卓越した俳優陣によっていかんなく堪能できる。
 跛を引き薄気味悪さと好色ぶりを見せる二代目中村鴈治郎は、こんな変質的ひひじじぃぶりを演じられる役者は彼以外にはいないだろうと思わせるリアルさ。 
 細く眉を引いた京マチ子は、貞淑さの裏に悪意が隠れた上品かつ淫靡な顔がいい。主人の後ろ姿に侮蔑の表情を見せ、足の悪い猫を見るや般若のような表情に一変。主人の死に顔を無表情で見て「死んでる」と呟くと含み笑いをする、その表情の芝居が素晴らしい。
 ゲジゲジ眉と分厚く真っ赤な唇の叶順子にはふてぶてしく底意地の悪さが透かし見えていて、大芝居に目を見開く仲代達矢も策士の腹黒さが不気味に漂っていて面白い。
 
 

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「薄氷の殺人」*ディアオ・イーナン


白日焔火/ BLACK COAL,THIN ICE
監督:ディアオ・イーナン
脚本:ディアオ・イーナン
撮影:トン・ジンソン
音楽:ウェン・ジー
出演:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン

☆☆☆★ 2014年/中国・香港/106分

    ◇

 第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞(最優秀作品賞)と銀熊賞(最優秀男優賞)の二冠に輝いたクライム・ムーヴィーは、ファム・ファタールが登場するフィルム・ノワールの傑作。

 1999年。中国・華北地方の各都市の石炭工場で見つかったバラバラ死体。身分証からリアンという男の名前が判明。妻と離婚したばかりのジャン刑事(リャオ・ファン)は、容疑者となる兄弟の事情聴取中に抵抗にあい、仲間が殉職。ジャンはふたりを射殺し、事件の真相は闇の中に葬られてしまう。
 2004年。警察を辞め警備員として暮らすジャンは酒浸りの日々を送っていた。ある日、再び5年前と同じようなバラバラ殺人事件が起きる。
 かつての刑事仲間から、被害者はいずれも5年前の被害者リアンの妻ウー(グイ・ルンメイ)と親密な関係があったと聞かされ、ジャンは独自の捜査に乗り出すのだが、ジャンもまた若く美しいウーに惹かれてゆく。
 やがて、隠された事実が徐々に明かされてゆくのだが……。

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 キャロル・リードの『第三の男』やオーソン・ウェルズの『黒い罠』など、名だたるフィルム・ノワールを参考にしたと云うとおり、全体に流れるトーンは欧米のハードボイルド映画の香り。

 台詞は極力削られ、男と女の虚無感が夜気に溶け込み、吐く息が白く流れる冷え冷えとした街の空気に男女の情感がもがき苦しむ。雪とネオンと暗闇に虚実が並ぶ様は、多彩なカメラワークで捉えられる観覧車や屋外スケートリンクやトンネルなどに乗り移り、そのビジュアル効果も秀逸。
 中国の冬の地方都市が、どこか幻想的にヨーロッパの裏街に見え、美しい。

 ヒロインのグイ・ルンメイは、ゆらゆらと漂う女の闇と不気味さが光り輝いてみえる絶世のファム・ファタール。薄幸の美しさにも息を呑む。

 目覚ましく経済発展する中国の大都市とは違って、時代に大きく呑み込まれる地方都市の荒涼とした風景に、格差社会の現実が重ねられる。
 夜の郊外のスケートリンクや、暗闇に浮かぶ観覧車とナイトクラブ、ダンスホールの賑やかな音楽などに街の浮かれぶりが象徴され、貧しくはないが幸福感のない都市の殺伐さが伝わってくる。

 中国語の原題『白日焔火』は“真昼の花火”を意味する。白昼の花火ほど虚しいものはなく、ラストに打ち上げられる花火には、取り残されている者の荒廃とした想いが宿っているのであろう。




「スウィッチ〜素敵な彼女?〜」*ブレイク・エドワーズ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

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SWITCH
監督:ブレイク・エドワーズ
脚本:ブレイク・エドワーズ 
撮影:ディック・ブッシュ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:エレン・バーキン、ジミー・スミッツ、ロレイン・ブラッコ、ジョベス・ウィリアムズ、トニー・ロバーツ

☆☆☆★ 1991年/アメリカ/103分

 初見1991年10月。
 『ティファニーで朝食を』(’61)や『ピンク・パンサー・シリーズ』(’63~)で知られるブレイク・エドワーズの作品で、女性差別やバイセクシャルといった社会問題を笑いに潜めたシチュエーション・コメディの傑作。

 女性蔑視者で女たらしの主人公が恨みを買って女たちに殺される。
 天国で神らしき存在から、もう一度だけ生きるチャンスを与えようと云われ、翌朝、目が覚めた彼が鏡に見たものは、彼が見下してきた女性の姿。悪魔が「女性として再び生きよ」と下した罰だった。
 “彼女”が“女装”し慣れないハイヒールに四苦八苦したり、言い寄ってくる男たちの本心を“彼”として見抜いたりしては、女性が社会で働くことの様々な障害や不公平を身に沁みて体験することで、かつての自分の行いを思い知る。
 その“彼女”の虜になるのが“彼”の親友だった……。

 “男”を演じる男前な女優エレン・バーキンがセクシーだ。

チケット「グロリア」

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

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 初見1981年3月。


 初見1999年9月。

過去レヴューあり
★グロリア[1980年版]★
★グロリア[1998年版]★

「フリージャック」*ジョフ・マーフィ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。


FREEJACK
監督:ジョフ・マーフィ
原作:ロバート・シェクリイ
脚本:ロナルド・シャセット、スティーヴン・プレスフィールド、ダン・ギルロイ
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
出演:エミリオ・エステベス、ミック・ジャガー、アンソニー・ホプキンス

☆☆ 1992年/アメリカ/110分

 初見1992年4月。

 タイム・スリップもののSF映画だったと思うが、ミック・ジャガーが出演していたという、ただそれだけの映画。

「眠る男」*小栗康平監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

1996_眠る男
監督:小栗康平
脚本:小栗康平
音楽:細川俊夫
出演:安聖基(アン・ソンギ)、クリスティン・ハキム、役所広司、野村昭子、田村高廣、今福将雄、蟹江敬三、小日向文世、平田満、左時枝、岸部一徳、渡辺哲、浜村純、八木昌子、高田敏江、藤真利子

☆☆☆ 1996年/日本/103分

 初見1996年9月。
 デビュー作『泥の河』(’81)の情感豊かなドラマ性に文句なく感動し、『死の棘』(’90)でカンヌ国際映画祭の審査員グランプリを獲得し、大いなる認識を得た小栗康平監督の初のオリジナル作品。

 人間が登場するも、そこにドラマはない。
 ただ、静かに、美しい風景が、“物語”を語るだけ。
 実に日本的な、精神性に富んだ作品。

 再度鑑賞するかと云われれば、一度の鑑賞で十分である。

「トゥルー・ロマンス」*トニー・スコット

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


TRUE ROMANCE
監督:トニー・スコット
脚本:クエンティン・タランティ-ノ 
音楽:ハンス・ジマー
挿入曲:エアロスミス「The Other Side」、ビリー・アイドル「White Wedding」
出演:クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット、デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ゲイリー・オールドマン、ヴァル・キルマー、サミュエル・L・ジャクソン、ブラッド・ピット

☆☆☆☆ 1993年/アメリカ/121分

 初見1994年1月。
 兄リドリー・スコットの傑作ロード・ムーヴィー『テルマ&ルイーズ』に触発されたわけでもないだろうが、弟トニー・スコットもロード・ムーヴィーを男と女の逃避行で描いた。

 脚本はタランティ-ノ。劇画的展開のストーリーは、アクの強いキャスティングと本筋を外した長ったらしい会話。このオタク色の強いシナリオを、トニー・スコットは巧くさばききり、爽快なラブストーリーに仕上げている。
 当初バッド・エンディングだったシナリオを、何がなんでもハッピー・エンディングに変更させた監督の意向が正解だったんじゃない?

 見ものは、凄みのあるクリストファー・ウォーケンとデニス・ホッパーの対峙。そして怪優ゲイリー・オールドマンの醜悪さ。

「テルマ&ルイーズ」*リドリー・スコット

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


THELMA & LOUISE
監督:リドリー・スコット
脚本:カーリー・クーリ 
音楽:ハンス・ジマー
出演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、ハーヴェイ・カイテル、マイケル・マドセン、クリストファー・マクドナルド、ブラッド・ピット

☆☆☆☆☆ 1991年/アメリカ/129分

 初見1991年10月。
 荒野を彷徨うふたりの女性のロード・ムーヴィーは、1990年代に入っての“ウーマンズ・シネマ”であり、“ニュー・アメリカン・シネマ”と呼べる作品。

 平凡な専業主婦テルマ(ジーナ・デイヴィス)と、独身でウエイトレスをしているルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が、退屈な毎日から逃れるためにドライヴに出かけるが、途中に立ち寄ったドライブインでテルマがレイプされそうになり、ルイーズが男を射殺してしまう。この瞬間、ふたりの逃避行がはじまる……

 対照的な生き方をしてきた女性スーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスのはしゃぎぶりと決意…
 ふたりを追いかける刑事・ハーヴェイ・カイテルの洞察力と人情深さ…
 荒野に流れるマリアンヌ・フェイスフルが歌う「The Ballad of Lucy Jordan」の慈しみ…
 そして、完璧なるラストの解放感…

 リドリー・スコットの作品としては『エイリアン](’79)『ブレードランナー』(’82)『ブラック・レイン』(’89)以上に大好きな映画である。

「シャイニング」*スタンリー・キューブリック

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


THE SHINING
監督:スタンリー・キューブリック
原作:スティーヴン・キング
脚本:スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンソン
出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド

☆☆☆☆☆ 1980年/アメリカ/119分(オリジナル143分)

 初見1980年12月。
 原作を大幅に改変していることで、原作者スティーヴン・キングが「ただの恐怖映画だ」と激怒したのは有名。
 ただ、血なまぐさいシーンなどなく、視覚効果による恐怖演出(カメラ位置やインサート・カットだけで怖さが伝わる)と、ジャック・ニコルソンの狂気の目とシェリー・デュヴァルの恐怖に歪む顔など俳優の優れた演技により、映画として最高に面白い作品。
 
 現在では当たり前の撮影方法として知られる「ステディカム」を初めて用いた映画としても知られるが、当時、この映像には度肝を抜かれ興奮したもの。
 オープニング、生け垣の迷路、ホテルの廊下を走る三輪車etc……それぞれの映像表現ひとつとってみても、ホラー・ムーヴィーとしては最高傑作、偉大なる古典として脳裏に焼き付く素晴らしい映画である。

 因みに1980年度洋画ベストテンは…
 1位『シャイニング』
 2位『オール・ザット・ジャズ』
 3位『ローズ』
 4位『ジャグラー/ニューヨーク24時』 
 5位『マンハッタン』
 6位『クレイマー、クレイマー』
 7位『彼女と彼たち』
 8位『悲愁』
 9位『マリア・ブラウンの結婚』
 10位『地獄の黙示録』

「私がウォシャウスキー」*ジェフ・カニュー

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


V.I.WARSHAWSKI
監督:ジェフ・カニュー
原作:サラ・パレツキー
原案:エドワード・テイラー
脚本:エドワード・テイラー、デヴィッド・アーロン・コーエン、ニック・ティール 
音楽:レンディ・エデルマン
出演:キャスリーン・ターナー、ジェイ・O・サンダース、チャールズ・ダーニング

☆☆☆ 1991年/アメリカ/89分

 初見1991年11月。
 アメリカの探偵小説家サラ・パレツキーの代表作、女探偵“ウォーショースキー”シリーズの2作目「レイクサイド・ストーリー」を基にした映画用のオリジナル・ストーリー。

 タフな女探偵に扮するキャスリーン・ターナーはドンピシャなキャスティング。
 たしかにアクションにぎこちなさはあるのだが、大好きなキャシーが銃を構える様を観ているだけで良いのである。
 舞台になったシカゴには、1991年9月に初めて訪れている。ニューヨークに次いで大好きになった街であり、独特な街の雰囲気をこの映画であらためて楽しんだ思いでがある。

 しかし映画作品としては、肝心のシナリオがTVドラマ的というかハードボイルドに徹していないから辛い。

「グリフターズ/詐欺師たち」*スティーヴン・フリアーズ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


The GRIFTERS
監督:スティーヴン・フリアーズ
原作:ジム・トンプスン
脚本:ドナルド・E・ウェストレイク 
製作:マーティン・スコセッシ
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・キューザック、アネット・ベニング

☆☆☆★ 1990年/アメリカ/109分

 初見1992年1月。
 副タイトルの「詐欺師たち」とか惹句から巧妙なコン・ゲームが繰り広げられるのかと思うと大間違い。
 本作は1963年に発表されたジム・トンプスンの小説「グリフターズ」の映像化で、愛憎関係にある母と息子と息子の恋人の3人の詐欺師たちの人間模様が描かれるハードボイルドなクライム・ムーヴィーである。

 アンジェリカ・ヒューストンの一人舞台と云ってもいい貫禄と、鬼親ぶり全開でラストまで突っ走る凄さ。
 色仕掛けに長けたアネット・ベニングにはヌード・シーンもあり、いまとなっては貴重なもの。

「ジャッキー・ブラウン」*クエンティン・タランティーノ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


JACKIE BROWN
監督:クエンティン・タランティーノ
原作:エルモア・レナード「ラム・パンチ」
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:パム・グリアー、サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・フォスター、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン、ロバート・デ・ニーロ

☆☆☆ 1997年/アメリカ/154分

 初見1998年5月。
 エルモア・レナードの小説をベースにしたクライム・ムーヴィー。

 70年代のブラック・パワー・ムーヴィーのセックス・シンボルだったパム・グリアーは、日本映画で云えばスケバン映画の池玲子のようなものか。
 その彼女をヒロインとして90年代にひょっこりと復活させたわけで、それほどパム・グリアーに思い入れがない観客には、タランティーノの趣味的お遊びに付き合うには154分というのは長尺過ぎる。
 でも、確かにパム・グリアーはカッコいい。

「アンクル・ジョー」*ジョゼフ・C・ハンライト

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1979_アンクル・ジョー
UNCLE JOE SHANNON
監督:ジョゼフ・C・ハンライト
脚本:バート・ヤング 
音楽:ビル・コンティ
出演:バート・ヤング、ダグ・マッキーン、マッジ・シンクレア、ジェイソン・バーナード

☆☆☆ 1978年/アメリカ/108分

 初見1979年9月。

 名ヴァイプレイヤーのバート・ヤングが脚本を手掛け、彼が人気を博した『ロッキー』のスタッフらと製作、主演をしたヒューマン・ドラマ。

 かつては有名なジャズ・トランペーターだったジョー(バート・ヤング)は、公演中に愛する妻と息子を火事で失い、いまでは酒浸りの毎日を送っていた。そんなある日、親に捨てられた足の不自由な孤児のロビーに出会う。不運なふたりは、お互いに生きる勇気を与え合う……。

 バート・ヤングと云えば『ロッキー』エイドリアンの兄を思い浮かべる人がほとんどだろうが、それ以前に『110番街交差点』(’72)のチョイ役(冒頭シーン)から、ジェームズ・カーンとの3作品『シンデレラ・リバティ/かぎりなき愛』(’73)『熱い賭け』(’74)『キラー・エリート』(’76)での特異な雰囲気、『チャイナタウン』(’74)では本筋とは関係ない箇所ながら嬉しい出番だったり、『クワイヤボーイズ』(’77)においてもそのキャラクターには強い印象を持っていた俳優である。

 音楽はやはり『ロッキー』で一躍有名になったビル・コンティ。
 ジャズとフュージョンが入り交じったスコアが心地良く、バート・ヤングの吹替えをしたメイナード・ファーガソンのトランペットが炸裂し、ラストの「聖しこの夜」の哀愁のメロディには感涙必至。

チャイナタウン
シンデレラ・リバティ/かぎりなき愛
クワイヤボーイズ


「プレステージ」*エドゥアール・モリナロ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

1979_プレステージ
L' HOMME PRESSE
監督:エドゥアール・モリナロ
脚本:モーリス・レイム、クリストファー・フランク 
音楽:カルロ・ルスティケリ
出演:アラン・ドロン、ミレーユ・ダルク、モニカ・グワルリトーレ、ミシェル・デュショーソワ

☆☆★ 1976年(日本公開1979年)/フランス/112分

 初見1979年5月。

 とても地味な映画のため、1978年にエドゥアール・モリナロ監督のコメディ『Mr.レディMr.マダム』がヒットしていなければ、アラン・ドロンの作品とはいえ未公開のままだったのではないだろうか……実際、あまり覚えていない映画なのである。

「ディア・ハンター」*マイケル・チミノ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1979_ディア・ハンター
THE DEER HUNTER
監督:マイケル・チミノ
脚本:デリック・ウォッシュバーン 
音楽:スタンリー・マイヤーズ
出演:ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール、ジョン・サヴェージ、メリル・ストリープ

☆☆☆☆ 1978年/アメリカ/183分

 初見1979年5月。
 言わずもがな、アメリカ映画史に燦然と輝く作品。

 1960年代末期、過酷なベトナム戦争に巻き込まれてゆく3人の若者と彼らの良き友人たちとの交流を描いた本作は、ベトナム戦争に真正面から向き合った、まさに反戦映画の金字塔。
 
 183分という長尺映画は、デ・ニーロとC・ウォーケンとのロシアン・ルーレットをはじめ、戦争の狂気と恐怖が強烈に描かれつづけるが、そんな“生と死”の残酷性を最大限に浮き彫りにするのが、前半の田舎町でのゆったりとした若者たちの日常。
 随所に流れるフランキー・ヴァリの「君の瞳に恋してる」(劇中当時の大ヒット曲)と、全体のテーマになるジョン・ウィリアムズがギターを奏でる「カヴァティーナ」の美しい旋律は、いま現在でも忘れられないメロディとして脳裏に残るもの。
 
 あとこの作品で忘れてはならないのがジョン・カザール。
 『ゴッドファーザー』シリーズ、『狼たちの午後』で特異な存在として知られるジョン・カザールは、この作品の撮影前に癌の宣告を受けていたにも関わらず、チミノ監督やデ・ニーロの強い要望で撮影に参加でき、メリル・ストリープとの婚約をも果たしたが、映画公開を待たずして42歳の若さで逝ってしまった。

「料理長殿、ご用心」*テッド・コッチェフ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1979_料理長殿、ご用心
WHO IS KILLING THE GREAT CHEFS OF EUROPE?
監督:テッド・コッチェフ
原作:アイヴァン・ライアンズ、ナン・ライアンズ
脚本:ピーター・ストーン 
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ジョージ・シーガル、ジャクリーン・ビセット、ロバート・モーリー、ジャン=ピエール・カッセル、フィリップ・ノワレ、ステファノ・サタ・フロレス

☆☆☆ 1978年/アメリカ・イラリア・フランス・西ドイツ/112分

 初見1979年6月。
 後に『ランボー』を撮るカナダ出身の映画監督、TV演出家、プロデューサーでもあるテッド・コッチェフのミステリー・コメディと云ったところか。

 世界中に名を馳せた一流シェフ4人(タイトルは「シェフ、ご用心」と読むべし)。彼らたちが、お得意の料理に因んだ方法で殺されてゆく……残るはジャクリーン・ビセット扮するパティシエだが……。

 ミステリーとしてもサスペンスとしてもイマイチな映画なのだが、とにかくジャクリーン・ビセットがチャーミング。70年代最も麗しかったジャクリーン・ビセットの魅力に、ただただ見蕩れていればよい。