TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「誘拐の掟」*スコット・フランク

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A WALK AMONG THE TOMBSTONES
監督:スコット・フランク
原作:ローレンス・ブロック
脚本:スコット・フランク
撮影:ミハイ・マライメアJr.
衣装:ベッツィ・ハイマン
出演:リーアム・ニーソン、ダン・スティーヴンス、ボイド・ホルブルック、ブライアン“アストロ”ブラッドリー、ダニエル・ローズ・ラッセル

☆☆☆☆ 2014年/アメリカ/114分

    ◇

 原作は、ニューヨーク派ハードボイルド作家ローレンス・ブロックの「獣たちの墓」。彼の代表作で無免許の私立探偵〝マット・スカダー〟シリーズの10作目。
 90年代初頭に上梓された「獣たちの墓」は、人間の心を持たない快楽殺人者たちとの対決を描いた「墓場への切符」「倒錯の舞踏」につづく“倒錯三部作”の最終篇でもある。

 映画はほぼ原作通りに描かれている。もちろん本編をタイトにするために、シリーズ・キャラクターの高級娼婦でスカダーの恋人エレインや、交流のある凶悪犯罪者ミック・バルーなどの存在はオミットされ、ラストも少し意外なものに変更されてはいるが、かなりハードボイルドな作品に仕上がっており、原作ファンとして大いに満足できた。

 映画の冒頭約10分間に、スカダーがしがない私立探偵を生業にする前の過去が描かれる。

 1991年、NY。ある夏の日、非番だったNY市警の警官マット・スカダーは、ワシントン・ハイツにある酒場で飲んでいた時、二人組の強盗が押し入りバーテンダーを射殺。スカダーは強盗を追いかけ一人を射殺、もうひとりの太腿に銃弾を浴びせる。

 そして時は一気に流れ、1999年。
 麻薬ディーラーのケニー(ダン・スティーヴンス)の妻が誘拐され、身代金40万ドルを払ったにもかかわらず、妻は無慈悲な犯人によってバラバラに切断されて帰って来た。
 無免許の私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)は、ケニーの兄でAA(アルコール依存症自主治療協会)の会の仲間のピーター(ボイド・ホルブルック)から相談を持ち掛けられ、犯人の行方を捜すよう依頼される。ケニーの目的が復讐であり、犯人が判明すれば彼の手で処刑されるだろうと推測されるが、スカダーはケニーの依頼を請け負った。犯人は残忍で狡猾、交渉不可能な猟奇殺人鬼なのだ。

 スカダーの行動原理は「人を殺して、その罪を免れることは絶対にゆるされない」という倫理観。孤独と絶望の淵を綱渡りしているスカダーの生き方は、プロローグにあった事件のつづきとして、シリーズ・キャラクターのTJ(ブライアン“アストロ”ブラッドリ)との会話で説明されていく。
 8年前の強盗事件で、発砲したときに跳弾した一発が、たまたま路上にいた少女の眼を貫通し死なせてしまった。事件としての過失はなく、警官として表彰もされたが、スカダーは警官を辞め、その日からスカダーは重い十字架を背負い生きている。

 妻を惨殺されたケニーのモラルと、倫理観を守り通してきたスカダーの正義。何が正しく、何が正義なのか自問しながら己と闘うスカダー。
 そしてまた、新たに誘拐事件が起きる。

 被害者はケニーと同じ麻薬ディーラーの14歳になる一人娘。
 スカダーは交渉役を引き受け、狡猾で残忍な犯人と危険な駆け引きをしながら犯人を追いつめるが……。

    ◇

 日本でも人気の高い〝マット・スカダー〟シリーズだが、これまでに映画化されたものは、ハル・アシュビー監督最後の劇場映画となった『800万の死にざま』(原作「八百万の死にざま」)が1986年に公開されたきり。マット・スカダー役はジェフ・ブリッジスが演じ、酔いどれ探偵には相応しいキャスティングではあったのだが、脚本のオリバー・ストーンがドラマの舞台をニューヨークからロサンゼルスに変更したことで、原作のムードは台無しであった。

 監督で脚本家のスコット・フランクが、この〝マット・スカダー〟の映像化にとりかかったのは15年近くも前だ。1998年頃に最初の映画化の話が流れ、2002年に日本で上梓された「死への祈り」の単行本のあとがきでは、訳者の田口俊樹氏の言葉で2003年にクランクインすること、また、その時のマット・スカダー役はハリソン・フォードだったとも記されていた。愉しみにしていたのだが、映画の企画は水もの…いつの間にか立ち消え、それから紆余曲折があったのだろうが、こうしてリーアム・ニーソンにキャスティングされ、原作のテイストをそのままに、練りに練られたシナリオとなって陽の目を見るまでに、長い年月待ったことになる。
 
 舞台の設定を原作から少しずらした1999年にしたとは云え、ほぼ原作を忠実に映像化している。2000年以降の現代では通用しないストーリー展開なのだから、細かなディテールに作品の良さが凝縮されている点が嬉しい。

 もちろん、原作ファンを十分に納得させるだけのマット・スカダー像が一番大事なわけで、その点、リーアム・ニーソンは申し分ない。
 このところスーパーヒーローを演じてきたリーアム・ニーソンだが、ここでは地味すぎるほど渋い。人間臭く〝罪と罰〟となる過去を引きずる悩める男を、深みのある演技でキメてくれる。

 また、リーアム・ニーソン以外の配役が、あまり馴染みのない俳優たちなので、ニューヨークの日常をリアルに感じられるのも魅力だ。

 スカダーとシリーズ・キャラクターのTJとの会話は原作でもユニークで読みどころだが、本作でもフィリップ・マーロウやサム・スペードの話を劇中に入れ、ハードボイルドへの意識を高めている。
 こうなれば、リーアム・ニーソンのシリーズとしてあと2~3作は観たいところだ。



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ブルースブレイカーズの貴重音源、発掘


John Mayall’s Bluesbreakers / Live in 1967

 80歳を超えても、いまだ現役でバンド活動をつづけているBlues Man ジョン・メイオールの、1967年のロンドン・ライヴ音源が公式リリースされた。

01. All Your Love (Manor House 5 May 67)
02. Brand New Start (Bromley 29 Apr 67)
03. Double Trouble (Manor House 5 May 67)
04. Streamline (The Marquee Club 27 Apr 67)
05. Have You Ever Loved a Woman (The Ram Jam Club 1 Feb 67)
06. Looking Back (Bromley 29 Apr 67)
07. So Many Roads (Manor House 5 May 67)
08. Hi Heel Sneakers (The Ram Jam Club 1 Feb 67)
09. I Can’t Quit You Baby (Klook's Kleek 28 Apr 67)
10. The Stumble (The Marquee Club 27 Apr 67)
11. Someday After Awhile (Bromley 29 Apr 67)
12. San-Ho-Zay (Manor House 5 May 67)
13. Stormy Monday (Manor House 5 May 67)

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 バンドメンバーはVocals:ジョン・メイオール、Guitar:ピーター・グリーン、Bass:ジョン・マクヴィー、Drums:ミック・フリートウッド……言わずもがなBlues Rockファンなら承知であろう、のちのフリートウッド・マックを結成するピーター・グリーンとジョン・マクヴィーとミック・フリートウッドの3人が揃ったライヴということだ。

 今回発掘されたライヴは、トム・ヒュイッセンというオランダのファンがロンドンの5つのクラブにおいて1チャンネル・オープンリールのテープレコーダーで録音したもので、最近その音源をメイオールが取得しデジタル復元したもの。
 もちろん、半世紀近くも前のモノラル・オーディエンス録音なので音質はブートレグのように聴こえるかもしれないが、オープンリールのテープレコーダーで録音したもので言えば過去においても『ブルース・バンドの日記』(’68)が公式リリースされているのだし、この程度の音質は全然問題にならない。かなりクリアな音で再現されている。

 なによりも、この時期のピーター・グリーンの素晴らしいパフォーマンスを聴くことが出来た歓びを、存分に噛みしめることである。
 特に、グリーンの独断場となるインストゥルメンタル曲「The Stumble」と「San-Ho-Zay」は、ともに7~8分の長尺で激しいギター・プレイを披露。演奏時間が9分近い「Stormy Monday」も、エリック・クラプトンとジャック・ブルースが在籍時の唯一の録音(17 March 66)と聴き比べてみるのも愉しい。

 さてブルースブレイカーズといえば、その後のロック・ミュージックに名を馳せる多くの名プレイヤーたちが集まり、育ち、巣立っていること、そして、特に1964年から1968年のデッカ・レコード時のメンバー変遷が激しいことでも有名。
 ミック・フリートウッドは、ジェフ・ベック・グループに参加することになったエインズレー・ダンバーの後任として、4月にシングル『Double Trouble/It Hurts Me Too』をレコーディングした後、6月のシングルがリリースされる前に、ピータ・グリーンとともにブルースブレイカーズを脱退しフリートウッド・マックを結成した(ジョン・マクヴィーは遅れて参加)。

 このアルバムは、ミック・フリートウッドがブルースブレイカーズで活動した約3ヶ月の間の記録でもあるが、エインズレー・ダンバーがクレジットされている『A Hard Road』がリリースされる前の2月1日のライヴに参加していることなど、ある意味歴史的資料としても貴重だと云うことである。

「泳ぐ人」大野轟二


SWIMMER / KEIKO'S THEME
大野轟二◆ 泳ぐ人/恵子のテーマ 1982年

 1982年10月に公開された工藤栄一監督『野獣刑事』の主題歌として、映画公開前の9月にリリースされた大野轟二(元ガロのヴォーカリスト大野真澄)のシングル。

  〝ビルの影から スイミング〟〝あいつは ダイバー〟
  〝ふられて スタンドバー〟〝うわずって フォービート〟
  〝いかれた ハイボール〟

 キャッチーな言葉を並べた歌詞はコピーライターの日暮真三(イラストレーター日暮修一の実弟)が書き下ろし、大野克夫が作曲したブルージーなバラードだ。
 演奏は大野克夫BANDが担当。大野轟二のダルな歌声が、映画のテーマに寄り添うように切なく、何度でも聴きたくなる傑作である。

 ジャケット写真は映画のオープニング。工藤監督お得意の逆光シーンから映画ははじまり、朝方の大阪釜ヶ崎地区の街中をカメラが移動するタイトルバックに「泳ぐ人」は流れる。

 B面「恵子のテーマ」も大野克夫作曲。大野克夫BANDが演奏する映画の挿入曲で、いしだあゆみが囮捜査のために出向くシーン…これも切ないぞ。

「女優たち」*イ・ジェヨン


ACTRESSES
監督:イ・ジェヨン
脚本:イ・ジェヨン、ユン・ヨジョン、イ・ミスク、コ・ヒョンジョン、チェ・ジウ、キム・ミニ、キム・オクビン
出演:ユン・ヨジョン、イ・ミスク、コ・ヒョンジョン、チェ・ジウ、キム・ミニ、キム・オクビン

☆☆☆ 2009年/韓国/104分

    ◇

 クリスマス・イヴ……ファッション誌[ヴォーグ]の特集グラビア撮影のために、韓国を代表する20代から60代の女優たち6人が一堂に会した。
 さて、常にスポットライトを独り占めしてきた女優たちに、何が起きるのか。

 慣れないグラビア撮影にスタジオに早めに到着するユン・ヨジョンは、誰かの代役ではないかと疑念を持ち、若いスタッフからの扱いに自分の居場所に困る。
 そんなユジョンから「早く来て」と電話をもらうコ・ヒョンジョンは、愛想がよいだけでなかなか現場に出向かない。
 自分で愛車を運転しながら悠然とやって来るのはイ・ミスク。
 オートバイで颯爽とやってくるのはスタイル抜群の若手キム・ミニで、地下の駐車場のワゴン車内でビビりまくっているのがキム・オクビンだ。
 日本で大人気の最中のチェ・ジウは、連日の忙しさに顔のむくみを気にして撮影を断りたい気分。一番遅くに到着することで、皆から厳しい目を向けられる。

 60代のユン・ヨジョン、50代のイ・ミスク、40代間近のコ・ヒョンジョン、30代のチェ・ジウ、20代後半のキム・ミニ、20代前半のキム・オクビン。この6人の女優たちが、本人の役として自分自身を演じている。
 また、終盤に6人がドンペリを呑みながら韓国における女優の立場や、離婚の話など自分の名前をかけて私生活を晒す展開となっているので、6人の女優たちの名前が共同脚本として載っている。

 同世代は互いを牽制し、若手はベテランと互角に対決しようと遠慮がない。その場が緊張感で膨らみ、会話は整形の話や人気への嫉妬心、偏見など際どいまでに一触即発状態がつづくが、これは一種のモキュメンタリー(フィクションを元に作るドキュメンタリー風表現方法)であり、あくまで映画だ。だから、サスペンスにもなったり、日本の韓流ブームを皮肉ったりするところなどはコメディとして笑える。

 韓流ドラマは観たことがなく、韓国映画もごく限られたものしか観ないので、ここに登場する6人の女優の作品は観たことがないのだが、本人たちを知らなくても、6人のどこまでが現実でどこからが演技なのかを探りながら観ていた。

 コ・ヒョンジョンは初対面のチェ・ジウに対して、韓流ブームで人気が高かったことをかなり意識して本気で怒らせようと演じていたというが、それに対してのチェ・ジウの反応が鋭く、また、女優みんなの赤裸々な想いは切ない。

 キム・オクビンは可愛くあって、イ・ミスクは姐御肌…

 総じて、女優は麗しくあれ……

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「監視者たち」*チョ・ウィソク


COLD EYES
監督:チョ・ウィソク、キム・ビョンソ
脚本:チョ・ウィソク
音楽:タル・パラン、チャン・ヨンギュ
出演:ソル・ギョング、チョン・ウソン、ハン・ヒョジュ、イ・ジュノ、チン・ギョン、キム・ビョンオク、サイモン・ヤム(カメオ出演)

☆☆☆ 2013年/韓国/118分

    ◇

 ジョニー・トーが製作した『天使の眼、野獣の街』(’07/香港)の韓国版リメイクで、凶悪犯の行動監視を専門とする警察チームと犯罪グループとの息詰る攻防を描いたクライム・サスペンス。


 卓越した記憶力と鋭い洞察力を持つ新人女性刑事ハ・ユンジュ(ハン・ヒョジュ)は、厳しいテストを見事にパスして、韓国警察特殊犯罪課(SCU)内で凶悪犯の行動監視を専門とする〝監視班〟に配属される。直属の上司は動物的な直感と本能で犯罪を追うファン班長(ソル・ギョング)。
 荒っぽく無茶な要求も多いが人情味に溢れたベテラン班長のもとには、コードネーム〝リス〟(イ・ジュノ)〝毒蛇〟〝モグラ〟などと呼ばれユンジュと同じ能力を持ったメンバーが集まっていた。そんな中、コードネームを〝子鹿〟と希望したユンジュだったが、仲間たちからは〝子ブタ〟と呼ばれる始末。
 おりしも街では、武装集団による強盗事件が発生する。
 徹底した計画のもと、わずか3分のうちに事を終え、1秒の誤差も許さない冷徹な犯罪集団のリーダー、ジェームズ(チョン・ウソン)。顔を見せず、手掛かりも残さないジェームズは、抜群の頭脳と高度な戦略で監視班の追跡を毎度くぐり抜けてしまう。
 ユンジュは、ジェームズの追跡捜査を通して徐々に監視班との絆を深めてゆき、あらゆる記憶を呼び起こしながらジェームズの完全犯罪に立ち向かっていくが…。

    ◇

 単純なストーリーで、エンターテインメント性にあふれ、理屈抜きに面白い。

 街に溶け込み、地道に張り込み、己が目で見たものの記憶だけを頼りにターゲットに近づいていく監視者たちの世界が描かれるのだが、そこは韓国映画らしい外連とダイナミックなアクション、スピーディでスリリングな展開で目を離させない。
 オープニングからしてスタイリッシュ。台詞は一切なく、カメラが捉える幾人かの登場人物の行動に、何が起きているのか判らないままの謎だらけの展開にただただ惹き込まれる。

 街中に備えられている監視カメラを駆使し、手掛かりを掴んで追尾する〝監視班〟のプロフェッショナルな動きは、ディテールの積み重ねがリアルなだけに十二分の緊張感を醸し出してくる。
 
 2011年にフジTVで連続ドラマとして放送された『絶対零度 season2〜特殊犯罪潜入捜査〜』の第1&2話が、本作のオリジナル『天使の眼、野獣の街』に影響されていたのは明らかなのだが、どうせならこの『監視者たち』くらいのクォリティが欲しかった。付け焼き刃って感じだろうか。

 さて、映画のラストシーンにはオリジナル作品へのリスペクトとして、サイモン・ヤムが顔を見せるのも一興である。

[覚書]憂歌兄弟、無料ライヴ


ナゴヤ「第9回栄ミナミ音楽祭’15」2日目(5月10日)
今年は 昼から矢場公園のメインステージの前席に陣取り 地元SKE48を今年3月に卒業した〝佐藤実絵子〟のステージから一日を過ごすことに
どぶろっくバンド(ver)につづいて登場の〝高木麻早〟は元気だ
懐かしい曲のあとは〝奥華子
東京大衆歌謡楽団〟は昭和生まれ平成育ちの3兄弟が奏でる古き良き昭和の名曲群
バンバンバザール〟はステージMCも愉快な和製ジャグ&スウィング・バンド
マイブームになりそなグッド・ミュージック

そして いよいよ〝憂歌兄弟
1998年に無期限活動休止宣言をした憂歌団が 
2012年にドラム担当だった島田和夫の自死を乗り越え
2013年突如として活動再開の憂歌兄弟
久々にステージで見るヴォーカル木村充揮とギター内田勘太郎 
ドラムはサポートとして元RCサクセションの新井田耕造

ユー・ビロング・トゥ・ミー
サマータイム・ブルース
(勘太郎ソロ・アルバムver)
俺の村では俺も人気者
おそうじオバチャン
胸が痛い
嫌んなった


これぞという憂歌 ふたたび
木村充揮のステージトークは客のヤジとのコール&レスポンス
相変わらず なんも変わっていなくて嬉しかった

ステージ最後は〝もんたよしのり〟が締めてくれた

「悪魔は誰だ」*チョン・グンソブ


MONTAGE
監督:チョン・グンソブ
脚本:チョン・グンソブ
音楽:アン・ヒョンジョン
出演:オム・ジョンファ、キム・サンギョン、ソン・ヨンチャン、チョ・ヒボン、ユ・スンモク

☆☆☆☆ 2013年/韓国/120分

    ◇

 15年の時効を迎えた幼女誘拐殺人事件の被害者の母親と、執拗に犯人を追っていた刑事の前に再び悪夢がくり返されるサスペンスで、韓国のクライム・ムーヴィーは面白い。


 15年前に誘拐事件で幼い娘を失った母親ハギョン(オム・ジョンファ)は、犯人が見つからない中、自らも長年情報を集めていた。事件の担当刑事チョンホ(キム・サンギョン)は、事件が間もなく公訴時効を迎えることを告げにハギョンのもとを訪ねる。犯人逮捕を願っていた彼女にとって、それは決して受け入れられるものではなかった。
 時効まで残り5日と迫ったある日、事件現場に1輪の花が供えられていたことを知ったチョンホは、監視カメラなどそこに残った手掛かりを元に捜査を再開するが、時効まであと2時間というところで犯人を追いつめるも取り逃してしまう。
 責任を感じたチョンホは刑事を辞める。そして数日後、15年前と全く同じ手口の幼女誘拐事件が起きる……。

    ◇

 『殺人の追憶』『チェイサー』の成功で韓国映画の主流になった感のあるコリアン・クライム・サスペンスは、印象的な音楽や効果音を駆使した映像的アイデアとヴァイオレンス描写が観客の求心力を高めている。
 本作は『殺人の追憶』『チェイサー』のような実際の事件をベースにしたものではなく、巧妙にストーリーを練り込み推理性に重きが置かれた犯罪映画。だからこれまでのような残虐な描写もなく、スリリングなサスペンス映画に仕上がっている。
 邦題の『悪魔は誰だ」は、多分に『悪魔を見た』(’10)を意識した誘いでネーミングされたのだろうが、猟奇モノを連想させてしまい損をしているのではないだろうか。

 映画の核は、最愛の娘を亡くした母親の怒りと犯人を目の前で取り逃がした刑事の執念。
 身代金受け渡しの駅での大掛かりなシーンや、母親が小さな手掛かりをもとに犯人に近づいてゆく過程や、カセットテープに残された音声を解読し真相を知るシークエンスなど、ふたりの行動が丁寧に描かれることでミステリーの醍醐味が味わえる。
 そして、そこに映画のトリックをも隠されている趣向。

 本編の3分の2が過ぎたところで明かされる事件(映画)の真相は、単に観客を驚かせるだけの外連ではなく、つづく映画の終幕において、誰が〝悪〟に成り得るのかと観客に問うことになる。
 予告編の惹句通り、誰にも想像できない衝撃を目の当たりにするストーリーテリングの妙味に感心させられる。

 原題の〝モンタージュ〟は色々な意味で含みのある言葉で、映画を観終わったあとになるほどと思える仕組みになっている。

 刑事を演じたキム・サンギョンは上川隆二か仲村トオルに見えるところがあったり、母親役のオム・ジョンファはどこか鈴木砂羽に似ている。
 そのオム・ジョンファは、韓国のアカデミー賞と言われる大鐘賞で主演女優賞を獲得している。

「スローなブギにしてくれ」*藤田敏八監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1981_スローなブギにしてくれ
監督:藤田敏八
原作:片岡義男
脚本:内田栄一
撮影:安藤庄平
音楽:南佳孝
出演:浅野温子、古尾谷雅人、山崎努、竹田かほり、春川ますみ、赤座美代子、室田日出男、伊丹十三、奥田瑛二、岸部一徳、鈴木ヒロミツ、高橋三千綱、和泉聖治、林美雄、石橋蓮司、原田芳雄

☆☆☆ 1981年/東映・角川/130分

 初見1981年3月。
 当時の若者たちの(少なくとも自分には)バイブルであった片岡義男の短編小説『スローなブギにしてくれ』『ひどい雨が降ってきた』『俺を起こして、さよならと言った』の3篇を織り交ぜ、70年代の青春映画の雄・藤田敏八が監督。

 猫好きな少女浅野温子…バイク好きの青年古尾谷雅人…白いムスタングを駆る中年男山崎努…この三人を軸にした〝新しい青春映画〟の企画だったはずが、藤田敏八と内田栄一は、いまだに青春を抜け出せないでいる中年男にスポットを当てることでアンニュイな世界を創り上げている。
 ただ、藤田敏八の80年代に入っても未だ70年代をひきづった感覚が中年男への感情移入となっているので、モダンでスタイリッシュな片岡義男の作風とのズレに気恥ずかしい気分にさせられた。

 藤田敏八作品にはお馴染みの俳優陣に囲まれた〝新人〟浅野温子の存在感は圧倒的。70年代の秋吉久美子から80年代の浅野温子への流れである。
 
 物憂げなメロディが素晴らしい主題歌「スローなブギにしてくれ」。
 〝アーヴァン・ポップ〟の先駆者として70年代からボサノヴァ、サンバ、ジャズなどの要素を取り入れながら、都市に生活する男と女のクールな心情を温かく包み込むような優しさで歌ってきた南佳孝。
 毎回の角川映画の戦略通り大量のTVスポットで流され大ヒットしたのだが、70年代からの南佳孝ファンとしては何をいまさらと思っていたりしたのである。

「私生活」辺見マリ


PRAIVATE / CHATEAUX DE MOUETTE
辺見マリ◆ 私生活/かもめの部屋 1971年

 デビュー曲「ダニエル・モナムール」のヒットから、つづいてリリースした「経験」の爆発的ヒットで各賞の新人賞を総ナメした辺見マリの1970年8月にリリースした3rdシングル。作詞・作曲は前2曲と同じ安井かずみ&村井邦彦のコンビで、NHK紅白歌合戦初出場は本曲で果たしている。

    止めて 二人だけの時を
    燃えて 火の鳥になるの
 
 アクション・グラマー歌謡の先駆け的歌手として、基本姿勢は「経験」と同じエロスを醸し出すため息歌唱。
 「やめて」から「とめて」に変わった本作はコロムビアでの最後の曲だが、新設されたワーナー・パイオニアに移籍して「めまい」「太陽に走る女」へとその路線は続いてゆく。
 しかし、人気絶頂時の西郷輝彦との電撃結婚でとりあえず、その歌声には終止符が打たれた。

 本作の購入動機はフェロモン歌謡だからというより、何よりもこのインパクトあるジャケットに惹き寄せられたというところ。
 辺見マリの魅力がエキゾチックな顔立ちとは云え、これだけ目鼻唇だけの大写しは髪型や顔の輪郭に惑わされることなく、美しさだけの勝負だというのが判るはず。文字のレイアウトにしろデザイン的にも最高のジャケット。


「誘惑」五代マリ

 本文は、過去[歌謡曲外伝・あばずれ編]に掲載したものに一部加筆修正したものです。


五代マリ◆ 誘惑/ごめんねあなた 1977年

 1973年ミス・コリア在日同胞代表のキム・メジャ(金梅子)が五代マリの芸名で日本デビューした1stシングルで、1977年3月のリリース。作詞・作曲は秋野めぐみ。
 アクション・グラマー的なビート歌謡とかフェロモン歌謡とかの悩殺路線のジャンルを超えた、強烈なグルーヴ感にKOされること間違いなし。

 辺見マリ「私生活」の強烈なジャケット写真に負けないほどのモノクロどアップ顔は、堂々たるあばずれ感を醸し出しており、当時21歳にして聴く者を痺れさせるに十分な凄みを持った歌唱が、希代の傑作を生み出したのである。

 「たンまらなッく たンまるぁッく好きぃぃ」
 なんて事はない詞世界が彼女の声から発せられると、八代亜紀を彷彿とさせる巻き舌がよりエロティズムを超越し、獣の叫びのように木霊する。


「みずいろの世界」じゅん&ネネ


じゅんとネネ◆ みずいろの世界/お熱い仲 1969年

 大ヒット曲「愛するってこわい」(’68)で一躍時のひとになったポップ・デュオ、じゅん&ネネの1969年2月にリリースされた2ndシングルで、A/B面とも作詞:山上路夫、作曲:平尾昌晃。

 この「みずいろの世界」も大ヒットした彼女たちの定番曲で、イントロのギターとトランペットの旋律が出色。

  「あの日から私は私でないの」とはじまり、「見知らぬところに行く私」とつづき、「ふたりだけのみずいろの世界」と、妖しい世界に誘う山上路夫の詞も秀逸だ。

 当時は、宝塚風ルックスからしてレズビアン・デュオなんて扱いもあったけれど、色物の一発屋でないことはスクールメイツの1期生として活躍もしたふたりの実力が証明していたわけである。
 
 ビート歌謡としてB面「お熱い仲」も大傑作。

「ジャスト・ア・ジゴロ」*デイヴィッド・ヘミングス


JUST A GIGOLO
監督:デヴィッド・ヘミングス
脚本:ジョシュア・シンクレア
音楽:ギュンター・フィッシャー
出演:デヴィッド・ボウイ、シドニー・ローム、キム・ノヴァク、マレーネ・ディートリッヒ、マリア・シェル、クルト・ユルゲンス、デヴィッド・ヘミングス

☆☆☆★ 1978年(日本公開1983年)/西ドイツ/104分(オリジナル147分)

 初見1983年5月。
 1920年代を舞台に、時代に翻弄されながらジゴロとなった男の悲運な生涯が描かれる。

 第一次大戦後のドイツは敗戦の痛手により、街は貧困と享楽が入り混じった奇妙な状態だった。負傷してベルリンに戻ったエリート青年将校のポール(デヴィッド・ボウイ)は、今では地位も名誉もないただの失業者でしかなかった。
 彼の唯一のよりどころは場末のキャバレーの踊り子をしている恋人のシリー(シドニー・ローム)だったが、ふとしたチャンスから彼女はハリウッドへ渡って女優になる道を歩み始める。
 シリーに去られ、すべてに失望したポールは、バー〝エデン〟でジゴロたちを指揮する男爵夫人(マレーネ・ディートリッヒ)のもとで、金持ち女(キム・ノヴァク)の若い情夫となりジゴロの世界に浸ってゆく。
 3年後、人気女優となったシリーがパトロンだった侯爵(クルト・ユルゲンス)と結婚式を挙げるために帰国。華々しい式に招かれざる客としてやってきたポールは、シリーにジゴロとして買われる。
 ひとり寂しく夜の街を彷徨うポール。そこで、当時台頭しつつあったナチスと共産党首との争いの流れ弾に当たり、虫けらのように死んでゆくのだった…。

    ◇

 マレーネ・ディートリッヒ、キム・ノヴァク、マリア・シェルといった往年の大女優が顔を揃えたのも豪華だが、特に、ジゴロの元締めを演じたマレーネ・ディートリッヒは当時77歳。衰え知らずの美貌と脚線美、ハスキーで低い声で「Just A Gigolo」を歌う姿も艶やか。この作品が遺作となってしまったが、ボウイとの美しい競演は魅力的だった。
 撮影時のデヴィッド・ボウイといえばブライアン・イーノとの〝ベルリン三部作〟で世界中で凄まじい人気のあった頃だが、映画の耽美な雰囲気にぴたりと嵌っている。

 石畳と階段を歩くボウイの姿に銃声、壁に差す無数の影、そしてディートリッヒの歌声……



 監督のデヴィッド・ヘミングスは、ミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』(’66)で一躍有名になったイギリス出身の俳優で、『バーバレラ』(’68)や『ジャガーノート』(’74)『サスペリアPart2』(’75)に出演。『小さな恋のメロディ』(’71)の製作にも関わり監督業にも乗り出し、本作は監督作品2作目。
 残念なことに、この映画のお披露目は散々な目に遭う。1978年、ドイツでのプレミアム上映での酷評やロンドンでの公開打ち切りに伴い、世界的にも配給会社が決まらずお蔵入りになった曰くがある。

 1979年、日本でも映画未公開という状態で、本作のオリジナル・サウンドトラック盤だけがリリースされた。

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 デヴィッド・ボウイは1曲のみの参加(ザ・レベルズ名義)。マレーネ・ディートリッヒの「Just A Gigolo」をはじめマンハッタン・トランスファーの「Johnny」「Jealous Eyes」「I Kiss your Hand Madame」、シドニー・ローム演じる踊り子が劇中セミヌードで歌う「Don't Let It Be Too Long」など、1920年代のデカダンな雰囲気を堪能できる好アルバムだが、2015年現在未CD化である。