TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「紙の月」*吉田大八監督作品

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監督:吉田大八
原作:角田光代
脚本:早船歌江子
音楽:緑川徹
主題歌:「Femme Fatale」ヴェルヴェット・アンダーグラウンド & ニコ
出演:宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、田辺誠一、大島優子、石橋蓮司、近藤芳正、佐々木勝彦、中原ひとみ

☆☆☆★ 2014年/松竹/126分

    ◇

 角田光代のベストセラー小説の映像化。
 すでに2014年2月にNHKで原田知世主演のドラマが放送されていたが、映画は独自の視点で、平凡な主婦が快楽(恋と金)に溺れ堕ちていく様をスリリングに描いている。


 1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)は、子どもには恵まれなかったが郊外のマイホームでサラリーマンの夫(田辺誠一)と二人で穏やかに暮らしている。
 契約社員として勤める〝わかば銀行〟では、厳格なベテラン行員の隅より子(小林聡美)や若いテイラーの相川恵子(大島優子)ら様々な女性たちとともに働き、営業に励む梨花は真面目な仕事ぶりが評価されている。
 しかし、一見なに不自由ない生活を送っている梨花だが、私生活では自分への関心が薄く鈍感なところのある夫との間に虚しさを募らせていた。
 ある夜、先輩女子行員の送別会が催された渋谷で、顧客で裕福な独居老人(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせた孫の大学生の光太(池松壮亮)と再会。
 その後、梨花は何かに導かれるように光太と逢瀬を重ねるようになる。
 そんな中、外回りの帰りに衝動買いした化粧品の代金が不足し、顧客の預かり金から1万円を借りたことをきかっけに、度々、預り金の横領に手を染めるようになっていく。
 学費のために借金をしているという光太への援助や遊興費に浪費し、使えば使うほど金銭感覚が麻痺した梨花は、自宅で定期預金証書や支店印のコピーを偽造し、横領額は歯止めがかからずエスカレートしていくのだった。
 上海に赴任するという夫には同行せず、梨花は光太と一緒に高級ホテルやマンションで贅沢な時間を過ごすが、光太の行動にも変化が現れ、ある日、光太が大学を辞めたことを告げられる。
 そんな折、より子が銀行内で不自然な書類の不備が続いていることを不審に感じ始めていた……。

    □

 原作にある梨花の友人たちのエピソードをまるっと削除し、銀行内部をハブにした映画オリジナルの女性2人を加えた大胆な脚色は、ありがちな横領事件を三者三様の女の生き方で見せてくれる。

 主人公の梨花が若い男に貢ぐのは、自分の居場所を求めているのだろう。しかし、そこから何を得て何を失ったのか。
 7年ぶりの映画主演の宮沢りえには、普通の主婦の日常の歯車が少しづつ狂ってゆく様から、恋に堕ちる女性の表情とその表現力に見蕩れてしまった。
 自転車で振り返るとき…地下鉄ホームで振り返るとき…一心不乱に偽造行為をするとき…走って走って走り去るとき…宮沢りえの顔が、素晴らしい。

 「ありがちでしょ……?」
 恵子の悪魔の囁きは、梨花が堕ちてゆく道先案内としてスリリングな言葉となって弾む。
 大島優子の無邪気さと、達観視したしたたかな表情にゾクっとくる。

 梨花の対極にいるより子は、自分の居場所から外れない真っ当さで梨花を追いつめていく。
 想像しえなかった梨花の行動に楔を打つより子は、閑職に追いやられる身。自分の「行くべきところ」に大きな差があることを認めながらも「お金はただの紙よ。あなたが行けるとこはここまで」と説くが、しかし……
 「一緒に来ますか?」と梨花に誘われる。簡単に自分の枠を飛び越えてゆく梨花の姿に、どこかで共感するより子を見抜いている言葉。受ける小林聡美の巧さは、表情……とても印象的だった。
 このクライマックスの対峙は、堂々たるふたりヒロインの図である。
 そして、悪いことをしている実感もないままに「自分自身の解放」に突き進む梨花の行動は、道徳観を超越し、カタルシスさえ感じるのであった。

 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド & ニコの「Femme Fatale(邦題:宿命の女)」がラストに流れるが、よくぞ使用許可が下りたものだ。
 この曲は、1967年にリリースされたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド & ニコ』に収録されていたもの。アンディ・ウォーホルがプロデュースし、バナナの絵のジャケット・デザインが有名。
 ドラッグ・カルチャー全盛期のアルバムから生まれた退廃的で気怠いニコの歌声が、罪の意識もなく逃亡する梨花の潔さに相応した働きをみせる。

 ♪彼女がやってくる 気をつけたほうがいいぞ
  彼女は本当に悩ましい 
  彼女の歩き方を見てみろよ 彼女の喋りかたを聴いてみろよ………

Femme Fatale」by the Velvet Underground & Nico


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「殺人狂時代」*チャールズ・チャップリン監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

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MONSIEUR VERDOUX
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
原案:オーソン・ウェルズ
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、イソベル・エルソム、マリリン・ナッシュ

☆☆☆★ 1947年(日本初公開1952年)/アメリカ/124分

 劇場初見1974年。〝ビバ!チャップリン〟第6弾。
 この作品はこれまでの〝チャップリン〟というキャラクターを捨てたシリアス・ドラマ。
 30年以上真面目に勤めてきた銀行をリストラされた主人公が、障害をもつ妻と幼い子どもを養うために結婚詐欺と殺人を繰り返し、そして、絞首刑になるまでの姿を描いた傑作である。
 「ひとつの殺人は悪魔を生み、百万の殺人は英雄を創り出す」

「黄金狂時代」*チャールズ・チャップリン監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

05_CH_黄金狂時代
THE GOLD RUSH
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、ジョージア・ヘイル

☆☆☆ 1942年(サウンド版)/アメリカ/73分

 劇場初見1974年。〝ビバ!チャップリン〟第5弾。
 劇場で公開、鑑賞したのは1925年に製作されたサイレント版にチャップリン自身が曲とナレーションを挿入したヴァージョンで、シーンの差替えなども施されているらしい。
 子どものころ、テレビで見た最初のチャップリン映画だと思うのだが、クライマックスの有名な山小屋シーンしか頭に残っていない。
 むかし昔のテレビ放映では、『キッド』('21)や『犬の生活』('18)などと同じように、オリジナルのサイレント版だったと思うのだが……。

「ライムライト」*チャールズ・チャップリン監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

04_CH_ライムライト
LIMELIGHT
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、バスター・キートン、シドニー・チャップリン

☆☆☆ 1952年(日本初公開1953年)/アメリカ/137分

 劇場初見1974年。〝ビバ!チャップリン〟第4弾。
 落ちぶれた老ピエロと自殺をしようとした踊り子との純愛。チャップリン62歳、相手役のクレア・ブルームは21歳。〝老い〟と〝プライド〟はそのままチャップリン自身の投影となり、長年のライバルだったバスター・キートンを起用したり、悲哀たっぷりな作品だが、映画完成後に赤狩りによりアメリカを追放されたため、アメリカでの映画はこの作品が最後となった。
 「人生を恐れてはいけない 人生に必要なのは 勇気と想像力と すこしのお金だ」

「独裁者」*チャールズ・チャップリン監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

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THE GREAT DICTATOR
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:メレディス・ウィルソン
出演:チャールズ・チャップリン、ポーレット・ゴダード、ジャック・オーキー

☆☆☆ 1940年(日本初公開1960年)/アメリカ/124分

 劇場初見1973年。〝ビバ!チャップリン〟第3弾。
 いよいよトーキーに乗り出したチャップリンが、パントマイムでは表現できないこととして、全てを犠牲にしてでも叫ばねばと思ったことを映画にした。
 映画として破綻していようと、言葉を紡いだのがラスト6分間のスピーチ。
 " Do not despair "「人々よ、絶望してはならない」
 市井の臣〝チャップリン〟の姿はこの映画で最後となる。

 近年、このチャップリンのスピーチを様々な映像でコラージュした作品がYouTubeにアップされていた。
 2014年のいまでも考えさせられるんだよね。


KOZAのディープ・ブルーズ~ひがよしひろ


sing KOZA blues/ひがよしひろ

 久々の衝動買い。
 沖縄コザ出身のブルーズマン、ひがよしひろの1stアルバムである。

 1960年生まれ…この風貌にして歳下かいなっ。沖縄のブルーズ&フォークシンガーとしては既に有名で、全国各地でライブ活動をしているという。
 何をおいても、このダミ声にブっ飛んだ。日本のハウリン・ウルフか? いやいやトム・ウェイツでしょ。この声は、素晴らしい…好きだなぁ。

01. 熱帯夜
02. KOZA黄昏に吹かれ
03. 別れはブルースで
04. 月夜の願い
05. 女優
06. 彼女はいい女
07. 語る想いは友からの夢
08. ヨンナァ

 1970年に起こったコザ暴動をモチーフにした「熱帯夜」は、軽快なメロディに載せた歌詞に、2014年のいままた「基地の街」への思いを重ねずにはいられないだろう。

 生まれた地コザに想いを馳せた「KOZA黄昏に吹かれ」…
 オキナワに生まれ、生き、生涯を終えていった全女性に捧げる「女優」…
 人生の荒波にもまれてきた男たちへの讃歌「語る想いは友からの夢」…

 コザに愛を込めた〝歌声〟に心揺さぶられ、コザにしか生まれない歌とメロディだからこそ、これがブルーズでしょ。

【熱帯夜】 





憂魂、健さん逝く

高倉健vs横尾忠則

悪い夢だろうか
11月10日 高倉健さんが悪性リンパ腫のため逝去された
享年83


永く 日本映画を牽引してきた銀幕のスター健さん
勝さんもいない 裕ちゃんもいない 
最後の映画スターの 最期ですか
哀しいね

無骨 寡黙 不器用
背中で語れる唯一無二の俳優
数多くの逸話が どれもカッコいい
日本人が好きな男の美学を見せてくれた健さん
有り難う



代表作の『日本任侠伝』や『網走番外地』『昭和残侠伝』シリーズのころは中学生だった
見知ったのは 70年代安保の学生運動最中の熱狂的支持のニュース
「平凡パンチ」に載った横尾忠則のポスターや図版をスクラップしていた
『唐獅子牡丹』の主題歌レコードも買った

劇場で健さんの作品を観るようになるのは 70年代になってから
『新網走番外地 嵐呼ぶダンプ仁義』(監督:降旗康男)や『ゴルゴ13』(監督:佐藤純弥)
デューク東郷役は原作者のさいとうたかおが健さんをイメージして創り出したキャラクターでありながら 
映画の出来はいまひとつだったなぁ

あの頃の映画で好きな作品というと
勝新太郎と梶芽衣子との競演で日本版「冒険者たち」を再現した『無宿〈やどなし〉』(監督:斎藤耕一)とか
倉本聰脚本の足ながおじさん『冬の華』(監督:降旗康男)とか
当時の邦画としてハリウッドに引けを取らなかったサスペンスフルなクライムムーヴィー『新幹線大爆破』(監督:佐藤純弥)とか

TVドラマ初出演の倉本聰脚本「あにき」も忘れ難い
大原麗子との兄妹愛 
もう一度観てみたい


ご冥福をお祈りします

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「街の灯」*チャールズ・チャップリン監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

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CITY LIGHTS
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:アルフレッド・ニューマン、チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、ヴァージニア・チェリル

☆☆☆ 1931年(日本初公開1934年)/アメリカ/87分

 劇場初見1973年。〝ビバ!チャップリン〟第2弾。
 子どものころ週刊少年サンデーを毎週読んでいて、別冊か何かで読んだ赤塚不二夫の「おそ松くん」の一編に何度も涙したことがあった。
 この『街の灯』をベースにした『イヤミはひとり風の中」……後年アニメにもなり有名になっているマンガだ。
 ハッピーエンドな『街の灯』に対し、赤塚版はほろ苦いエンディング。天才的狂気とも言われる赤塚不二夫のギャグマンガには、ときに胸を刺すような美しいものに出会うことがあるのだ。

 チャップリン映画の話じゃなくなっているが、『街の灯』のこととなると赤塚マンガの豊かな感性の方を思い出すのである。

「モダンタイムス」*チャールズ・チャップリン監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

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MODERN TIMES
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、ポーレット・ゴダード、ヘンリー・バーグマン

☆☆☆ 1936年(日本初公開1938年)/アメリカ/87分

 劇場初見1973年。
 チャップリンの映画は日本初公開以後長い間公開されることがなかったのだが、1973年に東宝東和45周年記念イベントとして〝ビバ!チャップリン〟と題されたシリーズ企画が催され、この『モダンタイムス』はその第1弾として35年ぶりにリバイバル公開された。

 この作品で記憶に残るのが音楽。
 1927年にアル・ジョルソン主演の『ジャズ・シンガー』によってトーキー映画が幕を開けたのだが、頑にパントマイムに固執しているチャップリンが映画で初めて声を発した『モダンタイムス』では、意味のない言葉でトーキーを肴にしている。それがキャバレーのシーンでデタラメな歌詞で歌う「ティティーナ」。後世に残るアドリブ・スキャットだ。
 そして、ラストシーンに流れるチャップリン作曲の「スマイル」。
 家には父親が好きだったナット・キング・コールが歌詞を付けた「スマイル」のレコードがあり、本作を観る前から耳にしていた歌だったが、映画音楽としてラストシーンに流れるこの曲の素晴らしさに感動したものだ。

「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

79_男はつらいよ・翔んでる寅次郎
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]桃井かおり
[ゲスト]湯原昌幸、布施明、小暮実千代

☆☆ 1979年/松竹/107分

 〝男はつらいよシリーズ〟第23作。初見1979年8月。
 ちょっとズレてるお嬢様マドンナ……良い意味でも悪い意味でも『幸せの黄色いハンカチ』のキャラクターまんまの桃井かおり。

 本作以後「男はつらいよ」シリーズを前売券買ってまで観に行くことはなくなった……




「男はつらいよ 噂の寅次郎」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

78_男はつらいよ・噂の寅次郎
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]大原麗子
[ゲスト]室田日出男、泉ピン子、志村喬

☆☆☆ 1978年/松竹/104分

 〝男はつらいよシリーズ〟第22作。初見1979年1月。
 マドンナらしいマドンナ、麗しき大原麗子……涙目と可愛らしい声、コケティッシュな仕草と儚さ………お話なんかどうでもいい、それだけの映画……それが幸せよ


 

「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

78_男はつらいよ・我が道をゆく
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]木の実ナナ
[ゲスト]武田鉄矢、竜雷太

☆☆ 1978年/松竹/107分

 〝男はつらいよシリーズ〟第21作。初見1978年8月。
 マドンナは浅草国際劇場のダンサー。本場アメリカのショウビジネスを学んできた木の実ナナにはぴったりの役柄だから歌と踊りはさすがのものだが、踊り子さんと云えばリリーさん………木の実ナナの弾けたキャラクターも悪くはないのだが、どうしても比べてしまう。




「男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

77_男はつらいよ・頑張れ
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]藤村志保
[ゲスト]大竹しのぶ、中村雅俊

☆☆ 1977年/松竹/95分

 〝男はつらいよシリーズ〟第20作。初見1978年1月。
 そろそろマンネリ感に腹一杯になりつつも、正月映画として初めて寅さんを観た。
 マドンナは藤村志保だが、メインは大竹しのぶと中村雅俊の若いカップルの話。若手として実力の片鱗を垣間見せていた大竹しのぶは、このあとに公開された野村芳太郎監督作品『事件』で天才女優ぶりを披露している。
 併映作『ワニと鸚鵡とおっとせい』は、TVドラマ『ムー』の名コンビ(郷ひろみ&樹木希林)を映画でもう一度との企画だったのだろうが、コメディらしくとも笑えない。







「男はつらいよ 寅次郎と殿様」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

77_男はつらいよ・寅と殿様
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]真野響子
[ゲスト]嵐寛寿郎、三木のり平、平田昭彦

☆☆ 1977年/松竹/99分

 〝男はつらいよシリーズ〟第19作。初見1977年8月。
 マドンナ真野響子と寅さんの話より、かくしゃくとした〝アラカン〟こと嵐寛寿郎の存在感と、三木のり平の笑いのセンスに脱帽。
 見るべきものは、それだけか………。


「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

76_男はつらいよ・夕焼け小焼け
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]太地喜和子
[ゲスト]宇野重吉、岡田嘉子

☆☆☆ 1976年/松竹/109分

 〝男はつらいよシリーズ〟第17作。初見1976年8月。
 渥美清と宇野重吉の軽妙な掛け合いに和まされる序盤から、人生の黄昏が滲む宇野重吉と岡田嘉子の気品と存在感に感嘆し、健気に生きている芸者の太地喜和子登場で彼女の魅力炸裂…
 終盤、人情の温かさにハートウォーミングな気持ちにさせられる。

 

「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」*山田洋次督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

75_男はつらいよ・相合い傘
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:山本直純
出演:渥美清、倍賞千恵子、下条正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、笠智衆
[マドンナ]浅丘ルリ子
[ゲスト]船越英二

☆☆☆☆ 1975年/松竹/91分

 〝男はつらいよシリーズ〟第15作。初見1975年8月。
 TV放映時から見ていた〝寅さんシリーズ〟は風物詩的映画としてときどき観ていた。
 なかでもやはり、シリーズ第11作『忘れな草』(’73)のマドンナ〝リリーさん〟が秀逸。
 〝リリーさん〟と寅さんはどちらも、風来坊という宿命(さだめ)を持った人間の孤独と寂しさを共有する同志であり、以後の〝リリーさん〟登場の4作すべてにおいて、ふたりがお互いを最愛のひとと認めながら出会いと別れをくりかえしてゆく関係が切なくて好きだ。

 名作と云われる『幸せの黄色いハンカチ』をはじめ山田洋次作品はどうも苦手なのだが、浅丘ルリ子のキャラクターが最高に活きている〝リリーさん4部作〟だけは評価が高いのである。
 

 


 

「大誘拐」*岡本喜八監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1991_大誘拐
RAINBOW KIDS
監督:岡本喜八
原作:天藤真
脚本:岡本喜八
音楽:佐藤勝
主題歌:サイコ ヒステリックス「MESSAGE」
挿入歌:サイコ ヒステリックス「レインボー・キッズ」
出演:北林谷栄、緒形拳、風間トオル、西川弘志、樹木希林、内田勝康、神山繁、水野久美、岸部一徳、天本英世、奥村公延、岡本真実、嶋田久作、橋本功、常田富士男、本田博太郎、寺田農、竜雷太、山藤章二(特別出演)、景山民夫(特別出演)

☆☆☆☆ 1991年/東宝/120分

 初見1991年1月。
 1978年に発刊された天藤真の推理小説の映像化で、岡本喜八流エンターテインメントなヒューマン・コメディに仕上がっている。

 日本最大の地主で世界でも有数の大富豪・柳川とし子(北林谷栄)は、和歌山県の山奥に暮らす小柄なお婆さん。御年82歳。
 彼女を誘拐して大金を要求しようと計画したムショ帰りの若い3人組(風間トオル、西川弘志、内田勝康)。彼らは滞り無く誘拐を完了するものの、誘拐された当のお婆ちゃんにはずさんな計画がお見通し。
 ましてや身代金が5000万円だと知ると「見そこのうてもろたら困るがな。そんなはした金で取引をされたら末代までの恥…身代金は100億や」と頼りない3人組に知恵を与え、お婆ちゃん主導で身代金が引き上げられる。
 こうして、国家権力の警察とマスコミを相手に前代未聞の誘拐劇がはじまった……。
 
 なんと云っても若い頃から老け役で有名な北林谷栄の、品があり、気だてが良く、ひとを喰ったような大富豪のお婆ちゃんが素晴らしい。ときとして大胆さと天才的知力を持ち合わせ、凛とした存在感を醸し出せるのは彼女しか思い浮かばないだろう。
 緒形拳扮する井狩警部との頭脳戦も、そして、誰も傷つかないハートウォーミングなハッピーエンドといい、「お婆ちゃん思いの犯人」と「犯人思いのお婆ちゃん」の大人の寓話的活劇映画に満足するのであった。

「黒木太郎の愛と冒険」*森崎東監督作品



監督:森崎東
脚本:森崎東
原作:野呂重雄
撮影:村上雅彦
音楽:佐藤勝
出演:田中邦衛、倍賞美津子、財津一郎、伴淳三郎、清川虹子、沖山秀子、小沢昭一、三國連太郎、緑魔子、杉本美樹、岡本喜八、火野正平、殿山泰司、芥川比佐志、伊藤裕一、太田聖規、荒木健一、赤木春恵、麿赤児

☆☆☆★ 1977年/ATG/110分/B&W

    ◇

 初見1977年11月。
 松竹喜劇『喜劇・女は度胸』(’69)や『男はつらいよ・フーテンの寅』(’70)などでヴァイタリティにあふれた庶民の生活を描いたり、黒沢明の『野良犬』のリメイク(’73)を撮った森崎東監督が松竹退社後、フリーとなっての第1回作品。

 中年のスタントマンとその家族、友人たち、映画監督を夢見る若者たちを交えた群像青春喜劇に仕上がっているが、残念ながらATG作品の中では不入りのワースト映画となった。


 かつては優等生だった定時制高校5年生の銃一(伊藤裕一)は、いまでは学校と学友たちを軽蔑している。彼にはふたりの親友がおり、小学校時代から付き合いのある気の優しい乾物屋の公二(荒木健一)と、パーマ屋(あの時代は美容院とは言わずこう蔑称していた)の倅で女たらしの大学生の勉(太田聖規)らと一緒に八ミリ映画を撮ったりしている。
 銃一はアルバイトで知り合ったゴメさん(伴淳三郎)の世話で、大人のオモチャ屋を営んでいる元刑事の菊松さん(財津一郎)の家に下宿させてもらっている。

 モンキーに似ていることから〝文句さん〟と呼ばれている黒木太郎(田中邦衛)は勉の叔父にあたり、パーマ屋に間借りする映画のスタントマン。当年42歳の冒険好きで、多趣味な彼のいまの趣味はゲリラごっこ。デモがあれば大きな日の丸を掲げたジープで走り廻っている。
 文句さんの奥さんは美人で元女優の牧子さん(倍賞美津子)で、一人娘の白百合ちゃんがいる。
 銃一の夢はいつか牧子さんのカムバック映画を監督することだ。

 勉の母親の加津江(清川虹子)は通称〝大婆〟と呼ばれ、かつては馬賊になり満州に渡り、今は年下の信太郎(小沢昭一)という彼を持つ性豪な女性で、彼女の下には横須賀で芸者の置屋をしている〝ちい婆〟こと満江(沖山秀子)がいる。
 銃一は、セックスも含めてすべてにおいてあけっぴろげなこの家族と、この街を愛している。

 文句さんの世話で博打の負け金の取り立てをしていたゴメさんが、路上で死んだ。文句さんと銃一はゴメさんの遺骨を持って聾唖の娘の吹雪さん(杉本美樹)を訪ねるが、場末の小さな理髪店を営むやはり聾唖の亭主(岡本喜八)と幼い娘との三人の暮らしは想像を絶する貧しさだった。
 理髪店の経営不振は2階を貸している中学の女教師が原因。猫を20匹も飼い、そのノミが原因で客が寄り付かなくなったのだ。
 その女教師君島(緑魔子)は、かつて教え子に輪姦されたショックで猫を飼うことと生徒をいじめることが生きがいになったオールドミス。
 文句さんは、菊松さんのアドバイスでショック療法を用いて君島を立ち直らせた。

 この騒ぎで銃一は、自分を訪ねてきた父親の豊大郎(三國連太郎)に逢えなかった。父は陸軍士官学校出の砲兵大尉で、戦闘中に神経がおかしくなり戦後は山谷暮らしをしていた。
 父親の後を追った銃一は、労務者が溜まる飲み屋で手配師ら(殿山泰司と火野正平)に「お前が本当の大尉だったのなら切腹をしてみろ」と嘲笑され、無言で出て行ったと聞いた。
 ひっそりと静かな戦没者の墓の前で、立派に切腹している軍服姿の父親を見つけるのに時間はかからなかった。

 銃一は郷里に帰ろうとパーマ屋へ挨拶に寄ると、自主八ミリ映画に出てもらった勉の従妹で14歳の和美ちゃん(靏ひろみ)が家出して、トルコ(この時代はソープランドをこう名称していた)の寮にいると騒ぎが起きた。
 頼りにならない警察を尻目に、自分たちで和美ちゃんを救出しようと決心した文句さんたちは、やくざ相手ならプロらしくスーツを着込んで日本刀片手にジープを走らせた。
 無事に救出された和美だったが、「売春がどうしていけないの?自分の身体でお金を稼いでいけないの?」と詰問してくる。文句さんは「裏街道を生きる覚悟があるなら指をつめな。そんな度胸もなけりゃ生きて行けねぇよ。お前が可哀想だ」と独自の論法で説得し落ち着いた。

 和美の身を隠すために横須賀の〝ちい婆〟のところに送り届けた銃一たちに、文句さんが仕返しにやくざに襲われ首と腹を刺され瀕死の重傷だと知らせがくる。
 「私のせい?!」と泣き叫ぶ和美に「そうさ、お前のせいだよ!だから、そのことを一生忘れるんじゃないよ」と満江の声が響く。

 パトカーに連行されるやくざの組長(麿赤児)に、日本刀を持って立ち向かう銃一。

 春………刑務所を出る銃一。
 「俺は刑務所という〝俺の大学〟を出た今、やっと本物の映画が作れそうな気がしています」

    ◇

 映画の冒頭には森崎監督自身が登場し、3人の若者を紹介する。彼らは、森崎監督が講師をしていた横浜放送映画専門学院の教え子で、監督の分身ともいえるキャラクターだろう。
 主人公黒木太郎の役には、企画時から念頭にホンを書いたという田中邦衛。
 菩薩のような美しき倍賞美津子、当時8年ぶりの映画カムバックで話題になった(精神疾患で自殺未遂などスキャンダル女優の名を欲しいままにしていた)沖山秀子と清川虹子の豪快・豪傑姉妹の存在感、労務者の伴淳や手配師の殿山など、森崎監督のために集まった布陣が快調。

 この作品を最後に引退した杉本美樹の薄幸うら寂しい様と、亭主役の監督・岡本喜八も味があり、いま見直すと身障者差別と騒ぐ輩が出るかもしれないほどの無力感がいい。
 猫狂いの変質的女教師緑魔子も不気味だが、彼女を立ち直らせるために「強姦には強姦」の発想は完全にアブナイ。

 そして財津一郎が群を抜いていい。「日本人として恥ずかしいことだけはするな」の言葉や「ニワトリは所詮ハダシよ」の台詞が脳裏に残っていたのだが、2004年森崎監督は『ニワトリはハダシだ』のタイトルで、在日問題や障害者問題を扱い権力に立ち向かうパワーあふれる傑作を創りだしている。

 森崎湊の遺稿集「遺書」が三國連太郎の自死に映る……森崎湊は森崎監督の実兄で海軍少尉候補生(特攻)の20歳の時、昭和20年8月17日「御国の御役に立たず、何の手柄も立てず、申し訳ありません。死んで護国の鬼となります」の遺書を残して割腹自殺した。16歳から20歳までの5年間に書き留めた兄の歴史感を、森崎監督はどうしても自分の作品の中で戦争への憎悪として取り上げたかったのであろう。
 ラスト、文句さんの病院に駆けつける銃一に「遺書」の頁が被さり、父親に教わった「砲兵のうた」を口ずさみながらやくざ者に刃を向ける銃一の憤りは「自分たちの戦争は終わっていない」と語っているかのようだ。

 密かに反戦魂を秘め、セックスと排泄物で人間学を語る森崎喜劇の一編である。

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「ホワイトラブ」*小谷承靖監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

1979_ホワイトラブ
監督:小谷承靖
脚本:藤田敏八、小林竜雄
原案:中川美和子
音楽:広瀬健次郎
出演:山口百恵、三浦友和、北村和夫、范文雀、小林桂樹、岩崎加根子、永島暎子、岸田森、大林宣彦、岩城滉一、赤座美代子、田中邦衛

☆☆★ 1979年/東宝/110分

 初見1979年8月。
 百恵・友和のコンビ第10作目で、スペイン・ロケのストーリーは一般公募だった。

 あまり面白くなかったなぁ。
 記録では、前日に『天使のはらわた 名美』を観て、翌日は口直しに『その後の仁義なき戦い』を観に行った次第………。

伝説の「歌う銀幕スター・夢の狂宴」1975.JAN.19

1975_歌銀幕スターPoster

 1975年1月19日、『仁義なき戦い』全5作が完結した菅原文太と深作欣二監督、『東京ながれ者』の鈴木清順監督と渡哲也コンビ、原田芳雄、桃井かおり、中川梨絵は『竜馬暗殺』などなど………こうした時代の寵児たちが一堂に会した、一夜限りのお祭り[歌う銀幕スター 夢の狂宴]が新宿厚生年金会館大ホールにて開催された。
 元TBSアナウンサーの林美雄を筆頭に、当時20代の高田純、植草信和氏ら映画ファンたちが企画したものだ。

 出演し歌を披露したのは以下のとおり(出演順)……

01.菅原文太 『吹き溜まりの唄』
02.中川梨絵 『雪が降る』
03.原田芳雄 『プカプカ』 『早春賦』
04.佐藤蛾次郎『モズが枯れ木で』
05.原田芳雄 『黒の舟歌』
06.桃井かおり『六本木心中』
07.宍戸 錠 『黒い霧の町』 『ジョーの子守唄』
08.石川セリ 『八月の濡れた砂』
09.高橋 明 『なかなかづくし』
10.あがた森魚『昭和柔侠伝の唄』
11.藤 竜也 『ネリカンブルース』 『任侠花一輪』
12.菅原文太 『命半分ある限り』
13.鈴木清順 『麦と兵隊』
14.深作欣二 『赤とんぼ』
15.渡 哲也 『東京流れ者』 『望郷子守唄』 『くちなしの花』

◆企画・司会:林美雄
◆演出:長谷川和彦
◆構成:高田純
◆音楽:高見弘
◆演奏:小野満&スイング・ビーバーズ
◆ポスター:シマダソウジ(イラストレーター時代の島田荘司)


出演者は他に緑魔子、宮下順子の名前もあるが、あがた森魚の『昭和柔侠伝の唄』はレコードでデュエットしている緑魔子ではなく、どういうわけか桃井かおりが担当……

神代辰巳『一条さゆり 濡れた欲情』の中で歌われた高橋明の『なかなかづくし』では、坂本長利が太鼓を叩き、お囃子は沢田情児……踊りで参加は、芹明香、丘奈保美、ひろみ麻耶、山科ゆりらロマンポルノ勢だ

宍戸錠に紹介され登場したのは、日活解雇事件後久々に公衆の前に現れた鈴木清順
菅原文太に紹介された深作欣二は「萩原健一のアホウ」と愚痴をこぼし
前年に入院した渡哲也も体調が回復し、トリで出演しお祭りを楽しんでいる

伝説となったこのイベントは、テレビやラジオで放送されることがなかったのだが、一度だけ、記録用のVTRからの音源がダイジェストでラジオ放送されていた。
この録音がYouTubeで聴けるなんて、いまの世の中いいよねぇ。(あがた森魚と桃井かおりの『昭和柔侠伝の唄』も検索をかければ聴くことができる)



桃井かおり「六本木心中」