TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「あんなに愛しあったのに」*エットレ・スコーラ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1991_あんなに愛しあったのに
C'ERAVAMO TANTO AMATI
監督:エットレ・スコーラ
原作:エットレ・スコーラ
脚本:アージェ・スカルペッリ、エットレ・スコーラ
撮影:クラウディオ・チリロ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
出演:ニーノ・マンフレディ、ヴィットリオ・ガスマン、ステファニア・サンドレッリ、ステファノ・サッタ・フロレス、フェデリコ・フェリーニ、マルチェロ・マストロヤンニ、ヴィットリオ・デ・シー

☆☆☆ 1974年/イタリア/123分

 1974年に製作された作品だが、日本で公開されたのは1990年。初見1991年2月。

 時の流れは無常………郷愁と青春との惜別……
 レジスタンスの同士だった3人の男たちのその後の人生を、ひとりの女性と映画を取り巻きながら描いてゆくこの作品は、在りし世代の映画への想いと、ヴィットリオ・デ・シーカを敬愛するエットレ・スコーラの祖国イタリア映画への深い愛に満ちあふれている。

 3人に愛される女性には麗しきステファニア・サンドレッリ。
 本編中には『甘い生活』のロケ現場として、フェデリコ・フェリーニとマルチェロ・マストロヤンニが本人のまま特別出演している。

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「女がいちばん似合う職業」*黒沢直輔監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1991_女がいちばん似合う職業
監督:黒沢直輔
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
音楽:Date of Birth
出演:桃井かおり、岡本健一、橋爪功、伊原剛志、白竜、内藤剛志、伊武雅刀

☆☆★ 1990年/アルゴプロジェクト/102分

 初見1991年2月。

 亡くなった松田優作に捧げられたこの映画は、優作と親交の深かった面子が集まり『グロリア』や『ニキータ』ばりに女が拳銃をぶっ放つハードボイルドを狙った映画なのかと思いきや、これが、とんでもなく毛色の変わった女刑事ものとして出来上がっていた。

 企画は桃井かおり。脚本が丸山昇一。大筋はこんな話だ。
 妊婦ばかり惨殺する猟奇事件起きる。女刑事と同僚刑事が内偵をすすめひとりの少年を容疑者としてマークするが、なかなか尻尾を表さない。張り込みに気づいても表情ひとつ変えない少年に近づく女刑事は、彼と情交を重ねる。
 ある日、他の事件で停職処分を受けた女刑事は姿をくらませ、数ヶ月後、妊娠した姿で戻ってきた。女刑事は少年の子供を孕み、彼が妊婦になった自分を襲うように仕向け、身体を張って犯人と対決、末に彼を射殺するのだった…。

 凄い話だ。
 桃井かおりのキャラクターに尽きる映画である。
 ふてぶてしくクールな桃井かおりが、夜中に突然涙を流しすがるように同僚と寝てしまったり、凶悪犯の少年とも情交を重ねたり、情緒不安定的なヒロインは「グロリア』や『ニキータ』より生々しい。
 腹を抱え全速力で走る桃井かおりにはハードボイルドに生きる女の姿があり、橋爪功とのコンビネーションも伊原剛志との掛け合いも面白いのだが、どこかしらウェットな感覚に陥り乗り切れないまま映画が終わっていた。

 

「マルタイの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1997_マルタイの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
企画協力:三谷幸喜
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、西村雅彦、村田雄浩、近藤芳正、高橋和也、江守徹、津川雅彦、宝田明、益岡徹、六平直政、不破万作、伊集院光、仲谷昇

☆☆☆ 1997年/東宝/131分

 初見1997年9月。

 「マルタイ」とは警護対象者のこと。
 『ミンボーの女』での襲撃事件と『大病人』での劇場スクリーン切り事件などに伴い、実際に伊丹十三が警察の警護を受けていた経験をヒントにした伊丹映画初の刑事ドラマ(殺人事件が起きるという意味において)で、事件の裏に宗教団体が登場することでオウム宗教事件を想起させるものでもある。
 
 伊丹十三はこれまで常に、映画における社会への影響力を考えつづけてきたであろう。
 10作目となる本作も、たしかに「マルサの女」と比較すればパワー不足とは云え、社会性の強い企画であればあるこそ綿密な取材を敢行し、そしてそれを、きちんとエンターテインメントに仕上げる作家としての力量を見せつけてくれていた。

 映画作家であった伊丹十三が残しておきたいと思ったものは何だったのか…… 
 こんなシーンがある。
 ヒロインのスキャンダルで脅しをかける宗教団体に対し、刺客を送り込まれた不倫相手(津川雅彦)が喋る。
 「年寄りには2種類の人間がいる。いつまでも生きたい年寄りと、いつ死んでもいい年寄りだ」
 「人生は、中途半端だ。道端のドブのようなところで、突然終わるもんだ」
 そして刺客たちを次から次に射殺し、自らを撃つ。
 
 自死の良し悪しではなく「いつ死んでもいい」生き方の伊丹十三が、何に対して怒りのマグマを煮えたぎらせていたのだろうか。
 この作品が伊丹十三の遺作となった。


「スーパーの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1996_スーパーの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、津川雅彦、伊東四朗、金田龍之介、六平直政、高橋長英、渡辺正行、三宅裕司、あき竹城、松本明子、原日出子、伊集院光、野際陽子、佐藤蛾次郎、ヨネスケ、不破万作

☆☆☆ 1996年/東宝/127分

 初見1996年6月。

 激安店に押され経営不振になったスーパーマーケットを改革する一介の主婦の奮闘記で、激安商品のトリックを暴きながらダメなスーパーが立ち直ってゆくサクセスストーリーは、ただただ爆笑の連続となるドタバタコメディ。 
 身近なスーパーマーケットを舞台に、業界裏話として「良いスーパー」「悪いスーパー」の見分け方指南は、少し利口になったような気分になり楽しめる。
 映画としてのスマートさはないが、後に大きな社会事件にもなった食品偽装・表示改ざん・リパックのトリックなど、伊丹十三の先見の明が光る作品である。


「静かな生活」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1995_静かな生活
監督:伊丹十三
原作:大江健三郎
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:大江光
出演:佐伯日菜子、渡部篤郎、山崎努、柴田美保子、今井雅之、緒川たまき、岡村喬生

☆☆ 1995年/東宝/121分

 初見1995年10月。

 伊丹十三の級友であり義弟となる大江健三郎の私小説を原作に、作家家族の長女と障害をもった兄とのひと夏の日常を描いたもの。
 伊丹十三としては娯楽作品ではなく、映画作家としての良心で「障害者のいる家族」を世に問いたかったのだろうが、正直言って後味が悪く好きな作品ではない。
 未だに本作による今井雅之の最低男のイメージが消えないし、緒川たまきに官能させられるのでは鑑賞能力の稚拙さも判るってものか………。

「大病人」*伊丹十三監督作品

1993_大病人_pf

監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:三國連太郎、津川雅彦、木内みどり、高瀬春奈、宮本信子、熊谷真美、田中明夫、三谷昇、高橋長英、左時枝、渡辺哲、村田雄浩、清水よし子、南美希子、櫻井淳子

☆☆☆★ 1993年/東宝/116分


 初見1993年6月。

 暴力団に襲われ全治三ヶ月の重傷を負った伊丹十三が、事件が生々しいままに撮りあげた監督作品第7作目のテーマは「死」。
 大病人と医者と看護婦と妻と愛人の人間模様を巧みなユーモアで編み込み「死生観」を描いたが、興業的にはヒットしなかった。

 病院を舞台にするコメディなら「病院へ行こう」とか「ガンと闘う○○の方法」とか、もっと前向きな言葉でテンションを上げるタイトルを付けるだろうに、伊丹十三は「大病人」の「大=大病=癌」という負のアイコンでデリケートなテーマに堂々と切り込んできた。
 本作が製作された頃はまだ「本人への癌の告知」は一般的ではなかった。この映画は「人間にとって理想的な死に方」「人間の尊厳とは何か」を、往生際の悪いエロおやじを主人公にして語るところが実に生々しく面白いのである。
 実際に誰もが往生際を良くするなんて難題だが、「死」を見つめることで「生」を感じる実感はよく理解できる。

 三國連太郎の子供みたいにダメ男ぶりの熱演。
 臨死体験のシーンは、当時日本映画初のデジタル・エレクトリック・オプティカル・システムによる合成画像。三國連太郎が異次元を飛び廻るが、ここは、新しもの好きの伊丹十三が4分間遊んでしまったってこと。

 裸になることを拒みランジェリーのままでラヴシーンを演じた愛人・高瀬春奈は十分に「性」の官能が豊かだったし、自転車に乗った溌剌とした美少女・櫻井淳子の姿は、まさしく美しいものに「生」を感じさせる素晴らしいシーンだ。

 

「ミンボーの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1992_ミンボーの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、宝田明、伊東四朗、中尾彬、村田雄浩、小松方正、津川雅彦、大滝秀治、結城美栄子、柳葉敏郎、田中明夫、関山耕司、六平直政、不破万作、上田耕一、渡辺哲、矢崎滋、関弘子

☆☆☆★ 1992年/東宝/123分

 初見1992年5月。

 「ミンボー」とは〝民事介入暴力〟の略語。高級ホテルを舞台に、暴力団に立ち向かう女弁護士とホテルマンたちの奮闘を描いた伊丹流How To映画で、一般市民とヤクザ、企業と暴力団、「善と「悪」との闘いをどこまでもエンターテインメントに仕上げている。

 宮本信子の「女」シリーズではあっても、主役は彼女ではなく暴力団と闘う民間人たち。
 伊丹作品の楽しみは適材適所のキャスティングでもあり、今回はやはり〝ヤクザ顔〟。伊東四朗、小松方正、中尾彬、田中明夫など役者映えするそうそうたる強面をさらにカリカチュアしている。
 まぁ反対に、そういった型にはまったお約束事に満腹感を覚えはじめたりするのも事実ではあるが……。

 さて、映画公開2ヶ月前に「暴力団対処法」なるものが施工され、映画は見事に大ヒットするのだが、五社英雄が「やられるかもしれないよ」と危惧したとおりに、伊丹監督が本物の暴力団に襲撃される事件が起きてしまったのは残念至極であり、怒りを覚える事柄として記憶される映画となった。 



「あげまん」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1990_あげまん
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:山崎善弘
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、津川雅彦、大滝秀治、北村和夫、宝田明、金田龍之介、島田正吾

☆☆☆ 1990年/東宝/118分

 初見1990年6月。

 「可愛い男」と「可愛い女」の稚拙な恋愛物語は、当時、本作の前に観た黒澤明の『夢』よりは気分が上がったが、「あげまん=男に都合のいい女」にしか見えないヒロインには気分が下がる。
 インパクトあるタイトルはいかにも伊丹十三。「マルサ」が国税局の隠語だったように、この「あげまん」も花街での隠語。普通の人間が知ることもなかろう言葉で人を釣る、伊丹流呼び込みである。




「スウィートホーム」*伊丹十三製作総指揮

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1989_スウィートホーム
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
撮影:前田米造
音楽:松浦雅也
出演:宮本信子、山城新伍、NOKKO(レベッカ)、古館伊知郎、黒田福美、益岡徹、伊丹十三

☆☆☆ 1989年/東宝/102分

 初見1989年1月。

 「エクソシスト」で名を馳せた特殊メイクの巨人ディック・スミスがSFXを総指揮し、日本での特殊メイク第一人者の江川悦子の名前が邦画界に知れ渡ったホラー映画。

 監督は黒沢清。伊丹十三に自主映画の資金援助を仰いだ監督に「メジャーの舞台で撮りなさい」と伊丹十三が全面バックアップを買って出た作品で、伊丹十三は製作総指揮と出演を兼ねている。
 しかし映画製作は順調にはいかない。完成間際に伊丹十三と黒沢清監督の間で演出上のトラブルが起き、完成作品は黒沢監督の意向とは違うかたちで公開された曰くがある。
 後に、ビデオ販売に伴い著作権を巡る裁判沙汰にまで及んでおり、黒沢監督が敗訴している。そのためなのか、DVD化される見込みはない不遇の作品となっている。

 またこの作品は、日本映画において本格的ホラー映画の誕生と宣伝されていたのだが、実は、本作公開の前に池田敏春監督と石井隆脚本で『死霊の罠』と題した傑作ホラー映画が作られている。この『死霊の罠』こそ、B級度に吹り切れた低俗性ある日本初の本格スプラッターホラー映画だと云える。

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 低予算映画の最たるものだが、TVクルーが事件に巻き込まれるといった設定自体に似たものもあり『スウィートホーム』より『死霊の罠』を賞賛するホラーファンは多いと思う。因みにヒロインはお馴染みの名美であり、小野みゆきが演じている。
 また後年池田敏春がTwitterにて、この『死霊の罠』はスーパー16という安価な撮影方式だったためオリジナル・フィルムは既にジャンクされてしまい、唯一アメリカに1本だけ残っているらしいと言及。そのため、2000年に発売されたDVDはビデオからのネガ起こしであり、アメリカ版の方が綺麗な画像らしい。こちらも不憫な作品である。

「マルサの女2」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1988_マルサの女2
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、三國連太郎、津川雅彦、益岡徹、大地康雄、桜金造、マッハ文朱、加藤善博、洞口依子、不破万作、きたろう、上田耕一、加藤治子、小松方正、原泉、岡本麗、結城美栄子、南原宏治、丹波哲郎

☆☆☆★ 1988年/東宝/127分

 初見1988年1月。

 「マルサの女」の大ヒットから生まれた「パート2」ではあるが、構想は既に「パート1」時から考えられてきたもので、「1」が国税査察の入門編として小市民の金にスポットを当てたものなら、本作「2」のターゲットはバブル期真っただ中の宗教団体と政治家と地上げ屋たち。権力に集る「金の亡者」たちが相手になった。

土砂降りのドブ川シーンから始まる「パート2」(「マルサの女」のオープニングは雪だった)。シリーズでありながら「マルサの女」とは全く違うテーマ曲(劇伴においても)を使うという大胆さには驚くのだが、ターゲットが大物になったのに対し映画のパワーは下がった印象。なんだろう……今回も痛快なところもあり面白いのだが、終盤、歯切れの悪さは歪めない続編なのである。

 無名の新人で伊丹のお目に叶ったソープ嬢役の村井のり子は、現在ものまねタレントで実力を発揮している〝なかじままり〟(旧芸名:中島マリ)。彼女が演じる中島みゆきや鬼塚ちひろ、椎名林檎は絶品だ。


「マルサの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1987_マルサの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、山崎努、津川雅彦、大地康雄、室田日出男、志水季里子、松居一代、マッハ文朱、伊東四朗、大滝秀治、芦田伸介、小林桂樹、岡田茉莉子

☆☆☆☆☆ 1987年/東宝/127分

 初見1987年2月。

 〝死〟を扱った『お葬式』、〝食欲と性欲〟を扱った『タンポポ』につづき、伊丹十三が次に取り組んだのは〝金欲〟。
 伊丹流ピカレスク・ムーヴィーの誕生だった。
 痛快さはコメディとしてもサスペンスにおいてもその完成度は高く、リズミカルな劇伴も心地よく、伊丹十三のセンスに脱帽。まさに〈映画〉! 伊丹作品の最高傑作であろう。

 本作で、エロティックな肢体で魅了させてくれたのが志水季里子。股間にティッシュを挿みながら裸で歩く彼女は絶品。当時タレント名鑑に名前を載せていなかった志水季里子が、たまたま紹介された伊丹にキャスティングされたのも、幸薄そうな表情を持つ彼女のリアルな存在感であろう。志水季里子の代表作の1本になった。

「タンポポ」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。



監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
音楽:村井邦彦
出演:山崎努、宮本信子、渡辺謙、安岡力也、役所広司、黒田福美、大滝秀治、桜金造、洞口依子、津川雅彦、藤田敏八、大友柳太郎、岡田茉莉子

☆☆☆☆ 1985年/東宝/115分

 初見1986年1月。

 伊丹作品第2弾は“ラーメン・ウエスタン”の惹句がついたコメディ。
 伊丹十三著作の書籍「ヨーロッパ退屈日記」「女たちよ!」で紹介されたような食のアイテムを伊丹流儀で次々と俎板にあげる。面白いのは、伊丹監督の興味は「食」にあるのではなく、「食に興味を持つ人間」に興味があることだ。
 そこには〝食欲〟と〝性欲〟を同一視した生々しさがあり(岸田秀氏は「これはポルノ映画である」と記す)、役所広司と黒田福美が卵の黄身を口移しする映画史に残る名シーンをはじめ、牡蠣を取る洞口依子と役所広司、歯科助手の南麻衣子と患者の藤田敏八等々、絶妙のキャスティングは伊丹十三のエロティックな演出で倍増の愉しみとなるのである。

チケット「いつかギラギラする日」

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。



過去レヴューあり
★いつかギラギラする日★

「お葬式」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1984-03_お葬式

監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:湯浅譲二
出演:山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、津川雅彦、財津一郎、江戸家猫八、奥村公延、友里千賀子、海老名みどり、金田明夫、尾藤イサオ、岸部一徳、横山道代、高瀬春奈、井上陽水、小林薫、笠智衆

☆☆☆☆ 1984年/ATG/124分

初見1984年11月。

 20歳の頃に読んだ伊丹十三のエッセイ「女たちよ!」をマイ・バイブルに、「ヨーロッパ退屈日記」や「再び女たちよ!」など伊丹イズムに信奉していた。

 俳優としても「修羅雪姫/怨み恋歌」の黒焦げにされる思想家や「悪霊島」でのアメリカ帰りの大金持ちなどかなり個性的だったが、1983年には「細雪」「家族ゲーム」でキネマ旬報助演男優賞を獲っている実力派俳優だった伊丹十三、満を持しての映画監督デビュー作である。
 淡々と描かれる“儀式”の奥深さと、細部描写の充実度に感動を覚えた本作が、各映画賞を総なめしたのは当然のことだったろう。
 人の死という荘厳な雰囲気のなかで、喪服姿のグラマラスな高瀬春奈が、雑木林で下半身剥き出しにして主人公にセックスを強要するエロ。死とセックスの対比も、ユーモラスな人間の営みとして描写するのが伊丹映画。以後、伊丹エンターテインメントのなかにあるエロも俄然面白いのである


「ラウンド・ミッドナイト」*ベルトラン・タヴェルニエ



ROUND MIDNIGHT
監督:ベルトラン・タヴェルニエ
脚本:ベルトラン・タヴェルニエ、デヴィッド・レイフィール
音楽:ハービー・ハンコック
出演:デクスター・ゴードン、フランソワ・クリュゼ、ロネッテ・マッキー、マーティン・スコセッシ、ハービー・ハンコック、ボビー・ハッチャーソン

☆☆☆☆★ 1986年/アメリカ・フランス/133分

 初見1986年10月。

 〝バド・パウエルとレスター・ヤングに捧げる〟

 パリを舞台に、伝説のジャズ・ミュージシャンと彼をサポートする若き青年の友情を描いた人間ドラマで、1950年代末から60年代にかけてパリで活躍していたモダン・ジャズ・ピアニストの第一人者バド・パウエルと、彼を支援していたフランス人デザイナーのフランシス・ボーリエとの実話をベースにしたもの。


 1959年、パリ。
 ニューヨークから初老のサックス奏者デイル・ターナー(デクスター・ゴードン)がジャズ・クラブ[ブルーノート]にやってくる。
 今や酒に溺れる生活を送る彼だったが、その演奏は健在で、仲間達と毎晩素晴らしいステージを展開してゆく。
 そんなある夜デイルは、彼の古くからのファンでクラブに入る金もない貧しいグラフィック・デザイナーのフランシス(フランソワ・クリュゼ)と出会い意気投合。翌日から彼を伴ってクラブに行くようになる。
 しかしデイルは、仲間から止められている酒を飲んでは病院の世話になるようになり、彼の身を案じたフランシスは別れた妻から借金までして、デイルを自分のアパートに住まわせ、愛娘とともに献身的なサポートをつづける。
 そしてついに、デイルの音楽は全盛期の輝きを取り戻すところまできた。身も心も完全復帰を果たしたデイルは、アメリカのプロモーターのグッドリー(マーティン・スコセッシ)からオファーを受け、伝説のジャズメンの復帰としてニューヨーク公演を大成功させる。
 そして、そのままニューヨークに留まったデイルだったが、彼を待っていたものは荒廃した街に潜む“麻薬”と言う悪魔だった。
 ほどなくして、パリのフランシスの元にグッドリーからデイルの死を伝える電報が届く。

 数年後、デイルが死の直前に書いた曲を演奏するパリの仲間たちの姿があった……。

    ◇

 数ある音楽映画のなかでもジャズを真正面から捉えた作品は少なく、それだけに本作は熱心なジャズ・ファンに応えるだけの見どころを持ったジャズ・ムーヴィーと云える。

 主人公には、実際、同時期にヨーロッパで活動しバド・パウエルともレコーディングを行っているジャズ・テナー・サクソフォン奏者のデクスター・ゴードンが扮し、ジャズ界の巨人レスター・ヤングの晩年とデクスター・ゴードン自身のイメージをオーヴァーラップさせて創り上げられている。(50年代のゴードンも酒とドラッグに溺れたジャズメンだった)
 その時代に生きてきたミュージシャンの圧倒的な存在感とリアリティを映し出すデクスター・ゴードンの好演は、彼の強烈な個性をしてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのも道理であろう。

 また、リアリティにおいて群を抜いているのが、そうそうたるジャズ・プレイヤーたちが多数出演したライヴ演奏の醍醐味。
 音楽監督のハービー・ハンコックを筆頭に、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズ、ウェイン・ショーター、ジョン・マクラフリン、フレディ・ハバード、ビリー・ヒギンズ、ボビー・ハッチャーマンら、こんな豪華な面々がご機嫌なスタンダード・ジャズを聴かせてくれるのだからたまらない。20世紀最高のジャズ・ムーヴィーと云われた所以でもある。
 スタンダード・ナンバー中心なのも、熱烈なジャズ・ファンばかりでない観客に向けてのもので、これも映画の作法であり音楽の魅力を聴かせるに十分なセレクションになっている。

 映画のラストは、いかにもフランス映画的余韻を残すもの。
 デクスター・ゴードン自身はこの映画から4年後の1990年4月に他界している。享年67。



 デクスター・ゴードンのアルバムはブルーノート盤(「Our Man in Paris」「Doin Allright」「A Swingin Affair」「GO」)など数枚しか持っていないが、一番のお気に入りはこの映画で人気再熱して初CD化として再リリースされたモンマルトルでのライヴ『モンマルトル・コレクション』だろうか。

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 1967年7月20・21日の2日分のステージを納めた2枚組で、バックのケニー・ドリュー・トリオといい、選曲といい、ワン・ホーン・カルテットのゆったりと、そして豪快に響くサックスの音色に聴き惚れるアルバムである。

Disc 1
1. ソニームーン・フォー・トゥ 15:50
2. フォー・オール・ウィ・ノウ 8:43
3. デヴィレット 12:46
4. ドキシー 7:12
5. ライク・サムワン・イン・ラヴ 12:29
6. ボディ・アンド・ソウル 9:29

Disc 2
1. 貴方無しでは 12:23
2. ブルース・ウォーク 13:19
3.降っても晴れても 11:15
4. ミスティ 9:22
5. バット・ノット・フォー・ミー 15:25
6. A列車で行こう 10:51


「U2 魂の叫び」*フィル・ジョアノー

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

1989_U2魂の叫び

U2 : Rattle and Hum
監督:フィル・ジョアノー
出演:ボノ、エッジ、アダム・クレイトン、ラリー・ミューレン、B.B.キング

☆☆☆☆ 1988年/アメリカ/99分

 初見1989年2月。

 1987年にはじまったU2の『ヨシュア・トゥリー・ツアー』を追ったライヴ・ドキュメンタリーで、U2の迫力あるライヴを映画館で追体験できた映画だった。

 モノクロ映像ではじまるメンバーのインタビューやスタジオ・レコーディング風景が、一転してカラー映像のライヴ・ステージに……。エッジの小気味いいカッティング・ギター、「魂の叫び」に準ずる熱いボノのヴォーカル、肚の底に重く響くアダムのベース、的確なリズムを操るラリーのドラミングと屋外・屋内での怒濤のステージングは、たとえスクリーンと云えど圧倒的な熱量に火傷するくらいの凄まじさに鳥肌が立ち、感動した。

 サントラ盤扱いとなる6作目のアルバム『Rattle and Hum」は、現在まで幾度となく聴くマイ・ベストなロック・アルバムとなっている。
 この年の11月、『LOVE COMES TO TOWN TOUR』としてB.B.キングを伴い日本に降り立ったU2を、大阪城ホールまで日帰りで観にいったのが生体験だった。

「イマジン」*アンドリュー・ソルト

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。



IMAGINE : John Lennon
監督:アンドリュー・ソルト
脚本:アンドリュー・ソルト、サム・イーガン
出演:ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、ジュリアン・レノン

☆☆☆☆ 1988年/アメリカ/106分

 初見1989年2月。

 ファンの凶弾に倒れたニュースが全世界に衝撃を与えたジョン・レノン。
 彼のインタビューやフィルムを駆使して作成された人間ジョン・レノンの記録。
 完璧ではなかった彼の姿を見ながら、神格化されたジョンの嘆きをすくい取りたい。

 ROCK'N ROLL……