TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

月刊【シナリオ】8月号は石井隆特集!

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7月3日発売の月刊「シナリオ」8月号は石井隆特集だ!

シナリオ掲載は新作「フィギュアなあなた」と「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」の2本立て!

石井隆監督へのインタビューと大森氏勝プロデューサーの〈石井隆論〉も興味津々!

石井隆ファンよ、必読である!


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「フィギュアなあなた」*石井隆監督作品



監督:石井隆
原作:石井隆「無口なあなた」
脚本:石井隆
音楽:安川午朗
出演:柄本佑、佐々木心音、風間ルミ、桜木梨奈、壇蜜、間宮夕貴、伊藤洋三郎、山口洋行、飯島大介、竹中直人

☆☆☆☆ 2013年/角川書店、ファムファタル/112分

    ◇ 

 1988年デビュー作『天使のはらわた 赤い眩暈』以来、スクリーンの中を彷徨してきた石井隆監督の包括的世界が、豊潤な映像イメージを展開し、“性”と“死”のリアリティとファンタジーを観る者に突きつけてくる。
 官能による香しい夢犯である。



 フィギュア好きな内山健太郎(柄本佑)は出版社に勤める真面目なサラリーマン。ある日突然、会社からリストラを宣告され、その上、恋人にも逃げられどん底状態に陥った孤独なオタク青年だ。
 新宿でやけ酒を煽り、ゲイ(レズビアン)カップルにいちゃもんを付けたばっかりに、片方のスーツを着た巨漢女ヨッちゃん(風間ルミ)にボコボコにされる始末。
 こうして健太郎の地獄巡りがはじまった。

 迷い込んだのは歌舞伎町の廃墟ビル。螺旋階段を駆け上がった一室には、使い捨てられた裸のマネキン人形が山の様に積み重ねられ、まるで人間たちが焼却処理された墓場のよう部屋だった。
 健太郎は、真っ赤なネオンに照らし出されたマネキンの山の中に、セーラー服姿の美少女フィギュア(佐々木心音)を発見する。柔らかく、温もりのある肌、血管まで透けて見え、ヴィーナスの丘にはサワサワと陰毛まであるが、心音はしない。 
 身に降り掛かった不幸の数々を忘れ、フィギュア相手に至福の時を過ごす健太郎だが、しつこく追跡して来るヨッちゃんと宏美(桜木梨奈)が廃墟ビルにやって来た。
 しかしふたりは、海の底のような青い部屋のバー「イルカ」に潜んでいた得体の知れない3人組(伊藤洋三郎、山口洋行、飯島大介)と衝突。ヤクザから大量の覚醒剤を横取りして追われている3人は、ヨッちゃんを射殺。隠れていた健太郎も見つかり、命を狙われたその刹那、マネキンの山から美少女フィギュアが起き上がり、サイボーグのような強さで3人組と死闘を繰り広げ、奪った拳銃で3人を射殺する。

 雨の一夜が明けた静かな朝。
 目覚めた健太郎の隣には、彼の命を救った美少女フィギュアが裸で横たわっていた。
 健太郎の救いの天使となった美少女フィギュアを自宅に持ち帰り、“ココネ(心音)”と名付けてふたりの奇妙な共同生活が始まる。
 果たしてこれは健太郎の妄想なのか、美少女フィギュアの正体は………。

    ◇

 原作通りのラストカットに「なるほど」と………
 全編に「ラヴ・ミー・テンダー」の元歌であるジョージ・R・プルートン作曲の「オーラ・リー」が奏でられ、映画が終わっても、いつまでも頭の中から離れない………

 本作は、1992年に劇画作品としては最後となった『カンタレッタの匣』集の一編「無口なあなた」を原作にしながら、〈名美と村木の物語〉が確立されているデビュー映画『天使のはらわた 赤い眩暈』と、劇画【赤い眩暈】(’80/ヤングコミック掲載)を透し見ることができる。

 『天使のはらわた 赤い眩暈』の話は、リストラされ行くあてもなく車を走らせていた村木(竹中直人)が名美(桂木麻也子)を撥ねてしまい、死んだものと思われた彼女をひとまず廃屋につれてゆく。なんとか一命を取り留めた名美も、恋人に裏切られ傷心のなか現実世界から逃避してきたひとり。ふたりは、隔離された空間で孤独と不安を紛らわすように肌のぬくもりを求め合う。束の間の幸福……車のガソリンを買いに行った村木が、ヤクザに因縁をつけられ殺されてしまう。廃屋のなかで待っている名美が、ラジカセから流れる「テネシーワルツ」にあわせて踊るシーンで終わる。
 〈魂の滑空〉と云われる、身震いするほど素晴らしいシーンを生み出したのはファンも承知であろう。因みに、村木を殺すヤクザに扮するのが本作の主人公柄本佑の父・柄本明というのも面白い符合。
 【赤い眩暈】の方は、地震に足をすくわれ転び、車に撥ねられた名美が数分間に見た冥界を描いた話。

 現実から逃避しフィギュアとの妄想の中に閉じ込められてしまう青年の夢想は、見世物小屋のショーやサーカスのようなクライマックスシーンへと導かれてゆく。
 このフェリーニ的興奮が、劇画家石井隆が70年代から描きつづけてきたタナトス(死)を踏襲した現世と冥界を彷徨う光景の再現にほかならないであろう。

 さて、観客も主人公の柄本佑と“共同夢犯”に陥るほどに、ヒロインの佐々木心音の肢体には見とれるばかりである。
 グラビア・アイドルの佐々木心音で映画を1本と依頼された石井隆は、完全女優主義。絶対的に女性を美しく撮るために、演技未経験の佐々木心音には男の妄想を実体化したフィギュアを演じさせた。
 死体のようなマネキンの山に積み上げられた“フィギュア”の佐々木心音の、綺羅綺羅した瞳、張りのある乳房、引き締まった脚、艶ややかな股間の翳りは、ハードでエロティックなアクションを行うなかでヴィーナスの如き輝きを放っている。

 尚、蛇足であるが『フィギュアなあなた』と題された石井隆作品はもう1本、2006年に「週刊アサヒ芸能」の販促品DVDとして流通した、杉本彩がフィギュアとして登場する作品がある。
 

63分50秒のACID MUSIC! PLAY IT LOUD、小泉今日子

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KOIZUMI IN THE HOUSE/小泉今日子

 1989年にリリースされた小泉今日子流ハウスミュージック。
 近田春夫をプロデューサーに迎え、ピチカート・ファイヴの小西康陽らと当時の最先端サウンドに真っ向から取り組んだ革新的意欲作であった。(既にCD時代にあったので歌謡曲のレコードとしては異例の収録時間になっている)
 アルバムは、ファンクなダンス・ミュージックのなかで小泉今日子のクールでセクシーな声が過激に誘発し合い、芸能人・小泉今日子の架空の日常生活が物語られる構成。
 淫靡に毒を吐く小泉今日子ここに在り。


SIDE A
01. Fade Out (作詞/作曲:近田春夫)
02. 好奇心7000 (作詞/作曲:近田春夫)
03. STAND UP (作詞/作曲:近田春夫)
04. マイクロWAVE (作詞/作曲:井上ヨシマサ)

SIDE B
01. CDJ (作詞/作曲:小西康陽)
02. Kyon Kyonはフツー (作詞/作曲:井上ヨシマサ)
03. 集中できない〈bonus track〉 (作詞/作曲:近田春夫)
04. 音楽〈bonus track〉 (作詞/作曲:近田春夫)
05. 男の子はみんな (作詞/作曲:小西康陽)
06. 水のルージュ(Break "ACID" Beats MIX) (作詞:松本隆/作曲:筒美京平)



 オープニングを飾る近田春夫作詞作曲の“アシッド・ハウス歌謡”の名曲「Fade Out」は、憂いと官能……セクシーな小泉今日子の歌声にぎゅっとハートを掴まれること必至。 
 かつて近田春夫は、自身がプロデュースした平山みきの「ドライマティニ」(1982年のアルバム『鬼ヶ島』に収録)という歌で、地下2階のナイトクラブで踊りもせずフロアを眺める女を登場させ、男の視線を一気に集め、おしゃべりは沢山だから名前も身の上も聞かない約束なら「今夜愛してあげる」と、男を誘う情景を創った。
 バブル絶頂期の本作では、ディスコで待つ友人との約束を破って男と夜のハイウェイをぶっ飛ばし、軀も心もスリルを求める大人の小泉今日子を、甘美な下心いっぱいに夜の街へと放り出すのである。 

 ファンキーに歌う「好奇心7000」は、アイドル小泉今日子が芸能界の楽屋裏を暴露する態の架空の手記。ある意味、虚像の姿を装った「なんてったってアイドル」の仮面を引っ剥がしたウラ歌で、芸能界を茶化す近田と小泉が爽快だ。

 官能度の高い「STAND UP」では、「あなたのオフィスで 私の部屋で 人目をさけて 朝まで抱いて」と秘密の匂いを漂わせたかと思うと、そのあと「この頃 そう言うのバカバカしくなったわ」と男をスポイルする。そして高らかに「おもちゃになんてさせないわ 言いなりになんてならないわ」と、うそぶくのである。

 ………私はフツー らしく生きる 私はフツー………
 「Kyon Kyonはフツー」も「なんてったってアイドル」のアンサーソングとして自虐ネタに邁進する。
 
 ……気になるウワサ 尾ひれがついて 私の耳のまわり 虫になって囁きつづける……
 女の子のイライラを爆発させる「集中できない」

 ……こんなこと 毎日してたら死んじゃう……
 そっと囁いて終わる「音楽」は元タイトルを「麻薬」と名付けられ、強烈な邪悪性が見え隠れする。 
 そして、大ヒット曲「水のルージュ」を木っ端みじんに粉砕してKYON2ワールドの完結である。

 小泉今日子は自分自身の糧として、常に新しいことに興味を持ちチャレンジしてきた。それはときに過激性を帯びていたりもしたが、本作では実像の小泉今日子を吐露したかのような実録性で、“成熟した女”を浮かび上がらせたのであろう。
 いま、30歳40歳と歳を重ねてきた小泉今日子は“ありのまま”の“しぶとさ”で、女優として、歌手として、その輝きを魅せつづけている。

「二流小説家 シリアリスト」*猪崎宣昭監督作品



監督:猪崎宣昭
原作:デイヴィッド・ゴードン
脚本:尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭
音楽:川井憲次
主題歌:「手紙」泉沙世子
出演:上川隆也、武田真治、片瀬那奈、平山あや、小池里奈、黒谷友香、賀来千香子、でんでん、高橋惠子、長島一茂、戸田恵子、中村嘉葎雄、佐々木すみ江、本田博太郎、伊武雅刀

☆☆☆ 2013年/東映/115分

    ◇

 映画初主演となる上川隆也の、ベストセラー海外ミステリを翻案したサスペンス映画。
 監督は『だます女だまされる女シリーズ』「女タクシードライバーの事件日誌シリーズ』などの2時間ドラマや、『ゴンゾウ~伝説の刑事』『相棒』『遺留捜査』など人気TVドラマを手掛ける猪崎宣昭が21年ぶりにメガホンをとった。


 エロ本の連載で食いつないでいる売れない小説家の赤羽一兵(上川隆也)のもとにある日、連続殺人犯の死刑囚呉井大悟(武田真治)から「告白本を書いて欲しい」という執筆依頼が舞い込む。この告白本を書けば一流の小説家になれるかもしれない、と欲望に駆られた赤羽は呉井に会いに行く。
 しかしこの話にはひとつ条件があった。
 それは、呉井を主人公にして彼を崇拝する女性たちとの官能小説を書くこと。しぶしぶ承諾した赤羽が女性たちの取材を始めたある日、頭部を切断され花をあしらわれた女性の死体と出くわす。しかも、その手口は12年前に呉井が起こした事件の殺害手口とまったく同じであった。 
 刑務所にいる呉井に犯行は無理。第一発見者として警察に容疑者として追われる赤羽は、身の純白を照明するために犯人を追うことになるが、果たして呉井は本当に12年前の事件の犯人だったのだろうか……。

    ◇
 
 二転三転する原作の面白さを知っているなかでは、原作にはないミスリードとか伏線の張り具合を楽しみながら、穿った見方ではあるが無邪気な平山あやや生意気で可愛い小池里奈をはじめ、美しい高橋惠子、ヒステリックな本田博太郎、不気味な伊武雅刀と個性的な俳優陣に注目していた。
 もちろん上川隆也と武田真治の数回ある面会シーンでの対決も、気迫あるふたりの演技は見応え充分であった。

 さて、ミステリの部分はほとんど原作に忠実に映像化されていたが、原作のキモである“文学論”“芸術論”など小説への強いリスペクトや作中小説は、当然ながらバッサリと省いてあった。表現のしようがないであろうから致し方ない。
 ただ、多様な登場人物と主人公との人間関係が充分に描かれていたかというと、残念ながらそうでもなかった。元婚約者(黒谷友香)や、原作で魅力的なキャラクターだった女子高生や弁護士助手と主人公のやりとり、母親(賀来千香子)へのマザコンぶりなど、描き足りない部分が多かった。
 多分、興行的に上映時間を2時間に納めたための弊害だろう。片瀬那奈と中村嘉葎雄の関係などはなかった方がよかったのではないか。脚本に4人もの名前が連記されているのだ、もっと練り込んで欲しかった。
 時系列の時間的配分や簡単に銃を手に入れるなどのご都合主義には目を瞑るとして、良きも悪しきもTVのサスペンスドラマ然となってしまっているのが至極残念なのである。
 クランクインが今年の1月で、ほぼ1ヶ月でアップし、公開が6月というのも問題あるのでは……?

 映像的には、斬首死体の残虐な殺人現場を真っ赤な薔薇の花びらに囲まれた美しき全裸の女性死体としてソフティケイトに映像処理がされ、曇天のモノクロームの中に浮かぶ真っ赤なマントや黒鍵と白鍵に飛び散る血しぶきなど、回想イメージの色彩処理は素晴らしく耽美だ。
 妖しく揺れる森、風に流される雲、自然現象に狂気を孕み、暗く重い真相に深みを持たせる巧みさが伺え、日本映画独特の情念と風土描写が施された辺りは、過去の名作ミステリ映画を想起させるとしても、美しい描写だった。


★「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン★

「快盗ルビイ」*和田誠監督作品

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監督:和田誠
原作:ヘンリイ・スレッサー「怪盗ルビイ・マーチンスン」
脚本:和田誠
音楽:八木正生
主題歌:「快盗ルビイ」小泉今日子
挿入歌:「たとえばフォーエバー」小泉今日子、真田広之
出演:小泉今日子、真田広之、水野久美

☆☆☆ 1988年/東宝/96分

    ◇

 デザイナーでありイラストレーターの和田誠がその多才ぶりを見せつけた映画作品第1作『麻雀放浪記』は、戦後混乱期を舞台に主人公の成長とアウトローに生きる男たちの生き様を描いたピカレスク・ロマンの大傑作であったが、本来の生業であるイラストレーションやショート・アニメーションの和田誠作品としては、本作のようにビリー・ワイルダー映画やハリウッド黄金期の映画を彷彿とさせる都会的で遊び心の効いたロマンティック映画の方が、いかにも和田誠の〈シネマワンダーランド〉らしくてほっとする感じだ。


 平凡なサラリーマンのボク、林徹(真田広之)は母親(水野久美)と二人暮らし。夏の終りのある朝、彼の住むマンションの部屋の真上にお洒落でチャーミングな女の子が引っ越してきた。
 彼女の名前は加藤留美(小泉今日子)。仇名は〈ルビイ〉。職業はフリーのスタイリストということだ。徹はすっかりルビイの虜になる。ある日、ルビイは驚くようなことを打ち明けた。
 「あなたにだけ本当のことを教えてあげる。わたしは、犯罪者よ」
 「どんな犯罪?」
 「とりあえずはドロボーね。サムシングがあるの。協力して!」
 ルビイの魅力以外に、引越しの最中にルビイの水着写真をポケットに入れていた徹は、後ろめたさもあり否応なくルビイの協力者になる……。

    ◇

 何度も天才的な犯罪計画をたてるルビイと、毎回断りきれない徹が実行役をするも、何度も何度も大失敗の繰り返しのシチュエーション・コメディ。

 公開当時の和田誠のコメントはこんなだった。
 「血の流れない犯罪映画であり、ベットシーンのない恋愛映画であり、コメディアンが出ないコメディ映画」

 ヘンリイ・スレッサーの原作を翻訳したものだけに(主人公の青年を少女に変更)、気の効いた台詞とお洒落でスタイリッシュな作品に仕上がり、見終わった後の心地よさは格別。

 なにより、小泉今日子のキュートでチャーミングな可愛らしさ。
 映画は決してアイドル・小泉今日子の姿ではなく、気の強いヒロイン像を22歳の等身大の小泉今日子がカッコよく演じるコメディエンヌとしてのKYON2を映しとっている。
 そして、KYON2に引っ張られ犯罪を犯してゆく気弱な青年を演じる真田広之のコメディアンぶりも新鮮だ。このシチュエーション・コメディは、ふたりのやりとりが絶妙。

 セット撮影を多用し、ミュージカル風に劇中で歌い踊るヒロインとヒーロー。
 和田誠のイラストレーションそのままに〈お楽しみ〉が一杯の映画は、出演者の顔ぶれにもひと工夫されており、公開前まで小泉今日子と真田広之、母親役の水野久美以外の出演者名は伏せられていた。
 まさに〈お楽しみはこれからだ〉といった遊び心に飛んだゲストは、岡田真澄、木の実ナナ、陣内孝則、富士真奈美、伊佐山ひろ子、高見恭子、吉田日出子、斉藤晴彦、秋野太作、名古屋章、天本英世、奥村公延ほか自由劇場のメンバー………エンディングのカーテンコールの〈お楽しみ〉も一興である。
 そんなこの映画のエッセンスは、後の三谷幸喜の映画に受け継がれているのだろう。


「夏のタイムマシーン」小泉今日子

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小泉今日子◆ 夏のタイムマシーン 1988年

 空梅雨のなか、夏に向けて聴いていたい曲として、この歌をひっぱりだしてみた。

 夢は何色 愛は何色 幸せは何色

 真夏の強い日差し輝く街角で 16歳の私とすれ違う自分
 恋にときめき 恋に泣き 未来に揺れる少女に 22歳の自分がメッセージを送る
 そんな自分は 「今も一生懸命頑張っているじゃない」と 
 自分自身を見つめ直し 未来の自分にエールを送る

 短篇小説のような田口俊の詞と、筒美京平の流麗なメロディが、“過去” “現在” “未来”を結ぶ次元を構築したKYON2の名曲である。

 あまり売れなかったシングルとして「ハートブレーカー」「Fade Out」とともに好きなこの曲は、1988年7月にリリース。9分44秒というアイドルとしては異例の長さのシングル盤で、いわゆる12インチのマキシシングルとしてリリースされたのだが、80年代は古今東西ロングヴァージョンブームでもあり、洋楽も日本のアーティストたちもこぞってリミックスヴァージョンと称しリリースしまくったのだが、そのほとんどが冗長なものが多かったりした。KYON2自身、通常シングルをリミックスした12インチシングルを何枚かリリースしてはいるが、この「夏のタイムマシーン」はまったく別物。
 終盤、松原正樹のギターソロが華を添えながら壮大に歌い綴られる世界観は、KYON2ならではの説得力で心を揺さぶり、老若男女の共感を得られるものなのだ。

 22歳の自分が16歳の頃に思いを馳せる………
 浜田省吾が「路地裏の少年」の完全版を12インチでリリースしたのもこの時期だったろうか………。

薬師丸ひろ子 vs 小泉今日子

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紳士同盟
監督:那須博之
原作:小林信彦
脚本:丸山昇一
主題歌:「紳士同盟」薬師丸ひろ子
出演:薬師丸ひろ子、時任三郎
☆☆★ 1986年/東映/102分

 薬師丸ひろ子のアイドル映画としては最後の作品。
 小林信彦の原作は、洒落た詐欺師たちの話として痛快なコン・ゲーム小説だったのだが、映画はキャラクターだけを借りたオリジナル・ストーリーとなっていた。
 小林桂樹や財津一郎、伊武雅刀など脇の人物は面白いのに、コン・ゲームの爽快感がなく残念な出来上がりであった。

    ◇

ボクの女に手を出すな
監督:中原俊
原作:桑原譲太郎
脚本:斉藤博、中原俊
主題歌:「木枯らしに抱かれて」小泉今日子
出演:小泉今日子、石橋凌
☆☆ 1986年/東映/95分

 にっかつロマン・ポルノで活動していた中原俊監督の初の一般映画で、小泉今日子は映画主演2作目の作品。
 ひょんなことから大富豪の孫の家庭教師になった孤児院育ちの不良少女が、誘拐事件に巻き込まれてゆくストーリーなのだが、タイトルの「ボクの女に手を出すな」が意味を成さない、これもダメな映画だったな。

 “不良”だった小泉今日子が“不良少女”に見えないのでは、主演女優としてのインパクトがまったくない。
 KYON2目当てだけの、まさしくホントのアイドル映画だったのかな……。


 さて、同時代にアイドルとして活躍した薬師丸ひろ子(映画ではKYON2の大先輩ではあるが)と小泉今日子は、もちろんTVでも映画でも共演作はない。
 この併映映画がなんとか2枚看板的にファンを喜ばせたのだが、ま、映画は散々なものだったわけ……。

 そのふたりが、NHK『あまちゃん』の後半・東京編で初共演。これは凄いことでしょ!
 お互い既にクドカン・ドラマの常連みたいなもので、クドカンにとってドンピシャのアイドルがこのふたりだし、『あまちゃん』の劇中映画『潮騒のメモリー』が1986年の正月映画ってのも、クドカンはちゃ〜んと判ってらっしゃる。
 ひろ子とKYON2、どんな絡みを見せてくれるのか楽しみである。


横須賀から大阪まで、寄ってらっしゃい竜童ブルーズ

 宇崎竜童の音楽活動40周年の今年、[宇崎竜童&御堂筋ブルースバンドwith野本有流]名義で『NOTHING BUT a BLUES BAND』と『海賊盤Ⅱ:BEAT OF SOUL』の2枚のアルバムが同時リリースされた。

 自主制作となる2枚のアルバムの販売はライヴ会場、いわゆる“手売りCD”だ。ほかに竜童サイトでの通販とamazonのみで手に入るのだが、芸能生活40年以上経つ宇崎竜童が、ダウンタウン・ブギウギ・バンドを結成した頃の「自分のやりたいことを、聴きたいひとだけに届ける」バンドスタイルに戻り活動を始めたようだ。

 宇崎竜童の35周年アルバム『ブルースで死にな~go to heaven by the blues』やライヴなどで共演してきた御堂筋ブルースバンドは、ヴォーカルの野本有流が宇崎ブルースへのリスペクトとして結成したバンドで、2006年頃から宇崎竜童がバンド活動するときは[宇崎竜童&御堂筋ブルースバンドwith野本有流]としてステージに立っている。先月もBlue Noteでライヴがあったのだが、ぼくは2010年の名古屋のライヴハウス「TOKUZO 」で見たのが最後。肌合いが良いのは「TOKUZO 」なので、7月の「TOKUZO 」ライヴにはまた出かけてみたい。

 さてアルバムだが、『NOTHING BUT a BLUES BAND』は“Bluesアルバム”、『海賊盤Ⅱ:BEAT OF SOUL』は“R&Bアルバム”と名打たれ、日本のメンフィスとも言えるブルーズの街・大阪でレコーディングされている。
 『NOTHING BUT a BLUES BAND』は全体にモノラルっぽい音の作り方で、なんの小細工もないライヴ感覚そのままの“一発録り”。
 『海賊盤Ⅱ:BEAT OF SOUL』は[沸騰ハラミホーンズ]というホーンセクションを加えたメンフィス・ソウルさながらのソウルフルなサウンドが心地よく、どちらもブルースをプリミティヴに伝えてくれる好盤である。

 2008年の2枚組アルバム『ブルースで死にな~go to heaven by the blues』での御堂筋ブルースバンドとの演奏曲は「沖縄ベイ・ブルース」「哀しみの河」「ええねん」「マッカーサーのサングラス」「ベースキャンプ・ブルース」だったので、今回はあらためて「沖縄ベイ・ブルース」と「マッカーサーのサングラス」がリメイクされている。
 

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NOTHING BUT a BLUES BAND/宇崎竜童&御堂筋ブルースバンドwith野本有流

01. アンタがいない
02. うらぶれた部屋で
03. スモーキン・ブギ
04. 横浜ホンキートンク・ブルース
05. 逝(Gone)
06. 夜光虫
07. マッカーサーのサングラス
08. ブルースで死にな
09. ノーギャランティ・ブルース
10. ロックンロール・ウィドウ
11. レイジレディー・ブルース
12. トラック・ドライヴィング・ブギ
13. HEY! BLUES
*Bonus Track
14. 竹田の子守唄・元歌

 「アンタがいない」「スモーキン・ブギ」「トラック・ドライヴィング・ブギ」と快調なブギやライヴのアンコール定番「ロックンロール・ウィドウ」と、「横浜ホンキートンク・ブルース」「マッカーサーのサングラス」「ブルースで死にな」のスローブルースなど毎度のセルフ・カヴァーではあるが、全体のライヴ演奏の流れがステージ前にいるような感覚で楽しめる。
 「横浜ホンキートンク・ブルース」の、“たとえばブルースなんか聞きたい夜は”の部分は今回エルモア・ジェームスの登場。いままでのカヴァーの中では、一番ゆったりとしてるんじゃないか。

 「ノーギャランティ・ブルース」は、実体験にあったギャラの不払いを面白く聞かせるトーキング・ブルース。御堂筋ブルース・バンドのギタリスト田中春之を織り込んだ「HEY! BLUES」も、B.B・キング風の語り具合がいい。

  しかし本盤での白眉は3分足らずの曲「逝(Gone)」だろう。

 He has gone!

  原田芳雄やジョー山中ら朋友たちへ、そして何より桑名正博への鎮魂歌だ。これぞブルーズ。



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海賊盤Ⅱ:BEAT OF SOUL/宇崎竜童&御堂筋ブルースバンドwith野本有流

01. おまえの為のブルース・シンガー
02. 沖縄ベイ・ブルース
03. 住めば都
04. アダムな夜
05. スウィートホーム横須賀
06. B級パラダイス
07. OIRA JAPANESE BAND MAN 08. GOD BLESS TOKYO
09. 今日から他人
10. ちっちゃな時から
11. 侍BLOOD
12. イカサマジョニーのLove Song
13. シャブ・シャブ・パーティ
14. 生きてるうちが花なんだぜ

 35周年記念のベスト盤『BLOSSOM-35th』で初CD化された「住めば都」はスウィンギーに跳ね、「シャブ・シャブ・パーティ」はCDS化されているようだ。
 鈴木雅之の1995年のシングル「アダムな夜」はアダルトな歌謡ブルースの世界で、ソウルバラッドに仕上げた「今日から他人」とともに珠玉の作品。
 2010年に大西ユカリのアルバム用に作った「イカサマジョニーのLove Song」もソウル・ミュージックの本領を聴かせてくれる傑作である。

 『NOTHING BUT a BLUES BAND』の5曲目に応えるように本盤の5曲目に配置された「スウィートホーム横須賀」は、「生きてるうちが花なんだぜライヴ」前に逝ってしまった桑名正博の「スウィートホーム大阪」を「ヨコスカ」に替えたもの。桑名の生前からの約束があったらしい……泣けてくるではないか。
 そして浅川マキの初期の代表曲「ちっちゃな時から」の選曲には驚いた。ホーンセクションが効いた軽快さは、ライヴハウスで聴ければより愉しいい曲になりそうだ。


★「ブルースで死にな 」宇崎竜童★
★宇崎竜童、ブルーズ・ライヴ!2010★
★「やたら綺麗な満月」大西ユカリ★