TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

鉛の飛行船、飛来 〜祭典の日〈奇跡のライヴ〉

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 ああ、そうだ……このブログを開設する前のぼくのハンドルネームは〝鉛船〟だった。このHNをご存知の方、まだ、おみえだろうか………。
 ZEPPELIN大好きおやじが、久々に興奮するブツがやってきた。

 2007年12月10日、ロンドンのO2アリーナに於いて、アトランティック・レコードの創設者アーメット・アーディガンへのトリビュート・コンサートが開かれ、大トリに登場したZEPの一夜限りのパフォーマンスが2時間、その一部始終が2CD+1DVDに納められている。
 このコンサート、ジミー・ペイジ、ロバート・プラント、ジョン・ポール・ジョーンズ揃い踏みの再結成から既に5年も経つというのに、あの時聞いたこのニュースの興奮が再び、いや映像を見れば、それ以上の至福の時をもたらすもの。いままではYouTubeでその一端を見ることができたが、音質的にもビジュアル的にも最高のものを堪能できるパッケージである。
 購入したデラックス・エディションにはボーナス特典のDVDがプラスされている。ロンドン郊外のシェパートン・スタジオで12月6日に行われたライヴ・リハーサルとニュース映像などが収録されているが、リハーサルは半端なく本番ステージそのままに進行するランスルー映像だ。遠目であるがワンカメで記録したもの。まぁ、コアなファンしか喜ばないのだろうが、本番との違いや、ある意味観客席に居る気分で観ることも出来るんじゃないかな。

 
 ドラムのジョン・ボーナムが亡くなった時点で、真のZEPPELINはどんなことがあっても再来することはないのだが、息子ジェイソン・ボーナムがその穴を見事に埋めている。
 1980年解散以来、再結成は1985年の「LIVE AID」と1988年のアトランティック・レコード創立40周年記念イヴェントでのパフォーマンスだった。「LIVE AID」は夜中まで起きてVTRに録画したりしたが、プラントの声の調子も、ツイン・ドラム(フィル・コリンズ&トニー・トンプソン)も散々たるもので、1988年はジェイソンがドラムを担当するということで大きな話題になったが、ブートレグでその演奏を聴く限りファンを失望させたことは確かだった。
 ぼくらには、9枚のオリジナル・アルバムと全盛期の演奏を焼き付けたライヴCD&DVDだけで十分満足だった。
 STONESのように常に現役を貫くバンドとは違うが、時代を超越したバンドとしては唯一無比の存在であるだけに、今回のような一夜限りのライヴも、実は、少しは懸念したパフォーマンスであったはず。
 それが、1曲目の「Good Times Bad Times」が聴こえた途端、そんな不安や懸念はすべて吹っ飛んでしまった。〈生きる伝説〉のまま、ぼくらの前に飛来している。メンバー全員が楽しんで演奏していることで、ぼくらに感動を与えてくれている。

 ロバート・プラントの肉体が変わったとはいえ、オリジナルよりキィーを1オクターブ下げているとはいえ、艶のあるあの歌声は健在。同じように現役で歌うミック・ジャガーのようにこねくり回した歌唱とは全然違うぞ。
 白髪、サングラスのジミー・ペイジのなんともカッコいいこと。ミスプレイは相変わらずでも(リハーサルの方が上手かったりして……)、会場を駆け回るギターの音の塊が聴衆の耳と目に最高のライヴを体験させてくれている。スライド奏法の「In My Time Of Dying」、バイオリン・ボウ奏法を挟んだ「Dazed And Confused」、ダブル・ネックで奏でられる「Stairway To Heaven」、テルミン奏法「Whole Lotta Love」………
 ジョン・ポール・ジョーンズの円熟の佇まいからは、ベース・ギターのクールなグルーヴとキイボードの荘厳な音色を醸し出している。
 親父の年を超えたジェイソン・ボーナムが、一生懸命ZEPに同化しようとする姿。『狂熱のライヴ』の中で、父親とドラムを叩いていたあの坊やの姿と重ね合わせると………涙するも決してオーヴァーではない。

 ジョンとペイジが時折ドラムの側に集まりジェイソンにアイ・コンタクトするシーンも微笑ましく、アンコールの最後「Rock And Roll」が終わったあとは感動…………

 4人だけの演奏。4人の一体感。本物だった。伝説はつづく。


[収録曲]は以下

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「ブルーマーダー」誉田哲也



あなた、ブルーマーダーを知ってる?
この街を牛耳っている、怪物のことよ

姫川玲子
常に彼女とともに捜査にあたっていた菊田和男
『インビジブルレイン』で玲子とコンビを組んだベテラン刑事・下井
そして、悪徳脱法刑事・ガンテツ

謎めいた連続殺人事件
殺意は、刑事たちにも牙をむきはじめる
超人気シリーズ、緊迫の新展開!   〈帯惹句より〉



 2012年1月から9月まで「小説宝石」で連載されていた姫川玲子シリーズの新作が早、単行本で刊行された。これは多分に、2013年1月26日公開の『ストロベリーナイト劇場版:インビジブルレイン』に照準を合わせたものだろうが、こんなに早い刊行は喜ばしいところだ。

 姫川玲子が『インビジブルレイン』の最後に迎えた大きな転機から1年。
 姫川班は解散され、所轄に移動になった玲子の管轄で、残忍な連続殺人事件が起こる。
 一方、菊田も脱走犯を追っていた。
 ベテラン刑事の下井は、彼のもとでSとして働き7年前に行方不明になった木野の行方を追っていた。
 裏社会のダニばかりを狙い打ちする殺人犯“ブルーマーダー”は、玲子と菊田と下井を結びつけ、やがて刑事たちにも牙をむきだした。
 果たして“ブルーマーダー”とは…………?

    ◇

 誉田作品は、小説世界が現実の時間と同じように進んでおり、そのほとんどのシリーズ作品の時間軸に整合性を持たせ展開している。

 『インビジブルレイン』での玲子と菊田の不本意な関係性が、本作ではクライマックスで大きな感動を生むようになっている。
 その流れ、素晴らしい展開に、思わず感嘆!
 相変わらずグロテスクな殺人シーンもますますエスカレートしており、それも含めて傑作である。

 第1章において、まったく予想だにしなかった記述に出くわす。プロット上必要ならば主要人物でさえ死亡させてしなう誉田哲也らしく、この展開にまず「やられた」なのである。

 竹内結子の連続ドラマ『ストロベリーナイト』でファンになったひとたちは、とりあえず映画『ストロベリーナイト:劇場版〈インビジブルレイン〉』を観てからか、『インビジブルレイン』を読んでからがいいだろう。
 そして、テレビドラマのシーズン2があるとするならば、シーズン1を裏切る展開にファンはどんな反応をするのだろうか。

ブルーマーダー/誉田哲也
【光文社】
定価 1,680円(税込み)

★Book Review「女の敵」★
★Book Review「感染遊戯」★
★Book Review「インビジブルレイン」★
★Book Review「ソウルケイジ&シンメトリー」★

「ミスターグッドバーを探して」*リチャード・ブルックス

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LOOKING FOR MR.GOODBAR
監督:リチャード・ブルックス
原作:ジュディス・ロスナー
脚本:リチャード・ブルックス
主題歌:「Don't ask to stay until tomorrow」マリーナ・ショウ
出演:ダイアン・キートン、チューズデイ・ウェルド、ウィリアム・アザートン、リチャード・カイリー、リチャード・ギア、トム・ベレンジャー
☆☆☆☆ 1977年/アメリカ/135分

 〈愛なんて探しはしない〉
  シングル・バーの片隅で
  何を求め、待つ…………
  テレサはひとり…………

 70年代はウーマンリブによる性の解放の時代でもあった。
 1974年の『アリスの恋』から始まった“女性映画”と言われる作品にも、30代以上の女性の自立した生き方として、それまでタブーでもあった女性の“性”に踏み込んだ作品が数作られた。
 本作の原作は、マンハッタンで実際に起きた殺人事件を題材にしたジュディス・ロスナーのベストセラー『ミスターグッドバーを探して』(翻訳は推理作家の小泉喜美子)。大都会で孤独に生きる女性の赤裸々な性意識を扱ったもの小説で、映画も、女性の新しい倫理観を持ったヒロインが、さらに新しい性の倫理の前に哀しい運命を迎えるドラマだった。

 昼は聾唖学校に通い、夜は酒場で行きずりのセックスを求めるといった二重生活をするテレサ(ダイアン・キートン)。
 6歳のとき小児麻痺が原因で片足が不自由になったが、大手術により歩けるようになった。彼女は病気が遺伝性のものと感じ、いつ再発するかもしれないという不安にさいなまれている。
 短大に通っているとき、クラスで憧れの的だった妻子持ちの教授と付き合いヴァージンを捧げるが、ふたりの仲は長持ちはしなかった。
 テレサの姉キャサリン(チューズデイ・ウェルド)はドラッグや乱交パーティに明け暮れる奔放な女だったが、テレサは姉を理解しようと努めていた。姉の生き方に染まっていくテレサに対して厳格な父親は怒り、それをきっかけに家を出ることになったテレサは一人暮らしをはじめる。
 以来、昼は聾唖学校の教師になるための教習所、夜はシングルバーでの生活がつづいているのだった。何かを期待するでもなく、ただ孤独の中で過ごすテレサは、ある夜、トニー(リチャード・ギア)という若者と知り合い、ドラッグを使っての激しいセックスで初めてエクスタシーを味わう。粗暴で暴力的なトニーだが、彼から与えられるドラッグの虜となるテレサは、神学校に通う真面目な若者ジェームス(ウィリアム・アザートン)と知り合い、何とかトニーと別れることができた。
 しかし、テレサが得た性の倫理観は彼女の病気による不安から生まれたもので、自分と同じような子供を産む恐怖から不妊手術までして性の解放を体現しているなかで、トニーのような無軌道な男には共感できても、セックスにコンドームを使用するジェームスは古い倫理観の男にしか映らなかった。テレサの気持ちは冷める一方だった。(但し、これは未だHIVが発見される数年前の話だということ)
 ふたたび夜の街にくり出すテレサ。ゲーリー(トム・ベレンジャー)という男を誘うが、彼はホモの中年男の情夫。テレサはベッドでエレクトしないゲーリーを嘲笑う。侮辱され逆上したゲーリーは、テレサを血まみれになるほど殴りつづける。そして、暴力に興奮し、テレサを犯し、ナイフでテレサの胸を刺しつづけるのだが、テレサの顔には安息を得た笑みさえ浮かんで見えるのだった……。

    □

 『ゴッドファーザー I & II』『ボギー!俺も男だ』で注目され、アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得した『アニー・ホール』で知的女性の代表格のようになったダイアン・キートン。『アニー・ホール』撮影後に主演したこの作品では、ヌードも厭わずセックス依存症の女性に挑んだわけで、なにもアカデミー賞を受賞する前だからと言うこともなかろうが、その体当たりの姿勢に感服する。

 監督のリチャード・ブルックスは、エド・マクベイン原作の『暴力教室』('55)で監督デビューをし、テネシー・ウィリアムズの『熱いトタン屋根の猫』('58)、トルーマン・カポーティの『冷血』('67)など、社会派の問題作を多く手がけた監督。
 この映画はリチャード・ブルックスが65歳の時の作品で、テレサのような女性のモラルを非難するのではなく、一生懸命に生き抜いた女の姿を見つめることで、不完全な人間だからこそ引き起こす人間模様や男と女の心理に注視している。それが、汚れ役ともなるダイアン・キートンから最高の演技を引き出すことに成功している。

 映画出演2作目のリチャード・ギアは翌年に出演した『天国の日々』('78)で注目され、『アメリカン・ジゴロ』('78)や『愛と青春の旅だち』('82)へと繋がっていく。
 トム・ベレンジャーは、残念ながらまだまだ長い下積み生活がつづく。

 映画のエンディングに流れるのは、メランコリックでありドラマティックな語り口で情感が盛り上がるマリーナ・ショウの名唱「Don't ask to stay until tomorrow」。ほかにも劇中にはボズ・スキャッグスの「Lowdown」や、ライオネル・リッチーが在籍していたコモドアーズのインスト曲「Machine Gun」、バリー・マニロウが作詞作曲したドナ・サマーの大ヒット曲「Could it be magic(恋はマジック)」などが流れ、1970年代の空気全開である。

 因に〈MR.GOODBAR〉とはスラングで男性性器のこと。
 キワモノ映画のような不当な扱いで、2012年現在DVD化もブルーレイ化もないのが寂しいのひと言である。(ビデオ化は一度された)


1978_03_ミスターグッドバー
★アリスの恋★
★結婚しない女★


「ザ・ドライバー」*ウォルター・ヒル

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THE DRIVER
監督:ウォルター・ヒル
脚本:ウォルター・ヒル
撮影:フィリップ・H・ラスロップ
音楽:マイケル・スモール
出演:ライアン・オニール、イザベル・アジャーニ、ブルース・ダーン
☆☆☆★ 1978年/アメリカ/91分

 ウォルター・ヒル監督の第2作目で、夜のロサンゼルスを舞台にしたスタイリッシュなハードボイルド映画の傑作。


 真夜中のロサンゼルス。
 その男(ライアン・オニール)は、カジノの裏口に車を止めて誰かを待っている。
 女(イザベル・アジャーニ)は、ポーカーでの勝ちを換金して裏口から帰るところ。
 そこに、カジノを襲った賊ふたりが男の車に飛び込んで逃走。男は銀行強盗やギャングたちの逃走を請け負うプロの“逃がし屋”。完璧なドライバーテクニックとLAの裏道に精通した男は、今夜も、鮮やかなハンドルさばきでパトカーを振り切り賊たちを逃がすことに成功。
 女に顔を見られていた男だが、どこか心が通じ合うふたり。
 一方、男を執拗に追い続ける刑事(ブルース・ダーン)には証拠が掴めない。男を誘い出すために刑事は、故意に銀行強盗を仕組むのだが……。


 登場人物の全員に固有名詞がない。
 ライアン・オニールは孤高でクールな“The Driver”[逃がし屋]。美しいイザベル・アジャーニはミステリアスな“The Player”[賭博師]。狂気をムキ出しにするブルース・ダーンは執拗な“The Detective”[刑事]。そして3人に絡む男や女も、“The Connection”[連絡屋]、“Glasses”[眼鏡]、“Teeth”[歯]などと呼ばれるだけだ。
 甘い夜気に包まれたロサンゼルスの闇を疾走する女と男たちを、見事にアメリカン・フィルム・ノワールとして創りあげたウォルター・ヒルのセンスに脱帽!
 
 人物背景を取っ払い、ドラマを簡潔にし、台詞は最小限に削ぎ落とされ、見どころのカーチェイス・シーンにも余計な音楽はない。タイヤの軋みとパトカーのサイレンが主役の如く夜の大都会に響くだけだ。
 寡黙なライアン・オニールとアンニュイなイザベル・アジャーニの関係も、ふたりが親しくなってもそこに愛情関係を芽生えさせない。ムダなものを省き、あくまで“The Driver”と“The Detective”との対決に終始しているヒルの脚本がスマートだ。

 ライアン・オニールは、ウォルター・ヒルが脚本を書いた『おかしなおかしな大泥棒』('73)出演中にこの映画のアイデアを聞いていて、“The Driver”役を希望していたという。
 
 ファムファタルな“The Player”に抜擢されたフランス女優のイザベル・アジャーニは、『アデルの恋の物語』に惚れ込んだウォルター・ヒル監督が熱望しての出演。英語の猛特訓が見事に実っている。当時22歳、美貌と演技力はさすがである。


1978_01_ザ・ドライバー
 この刺激的なキャッチ・コピーは映画前売券のみ。タイトルよりも大きいという大胆さである。

「グッバイガール」*ハーバート・ロス

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The GOODBYE GIRL
監督:ハーバート・ロス
脚本:ニール・サイモン
音楽:デイヴ・グルーシン
出演:マーシャ・メイソン、リチャード・ドレイファス

☆☆☆☆ 1977年/アメリカ/110分

    ◇

 ニール・サイモンが、当時の夫人マーシャ・メイソンとリチャード・ドレイファスのために書き下ろした都会派ラブ・コメディの傑作。

 子連れの元ダンサーと、彼女の住むアパートメントに越してきた売れない俳優との恋模様がハートウォーミングに描かれるもので、ニューヨークの小市民の人情を温かく見守りながらホロっとさせたり笑わせたりの作劇術こそ、ハーバート・ロスとニール・サイモンのコンビによる名人芸。アメリカ映画の伝統を感じる秀作といえる。

 リチャード・ドレイファスは1978年アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得し、マーシャ・メイソンはゴールデングローブ賞[ミュージカル・コメディ部門]の最優秀主演女優賞を、そして同賞の最優秀主演男優賞もリチャード・ドレイファスが受賞している。

「おかしなおかしな大泥棒」*バッド・ヨーキン

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THE THIEF WHO CAME TO DINNER
監督:バッド・ヨーキン
原作:テレンス・L・スミス
脚本:ウォルター・ヒル
撮影:フィリッピ・H・ラスロップ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ライアン・オニール、ジャクリーン・ビセット、ウォーレン・オーツ、ジル・クレイバーグ、ネッド・ビーティ
☆☆☆ 1973年/アメリカ/105分

 お洒落でスマートな泥棒たちを描いた都会派コメディ。
 『夕食にやって来た泥棒』という原題を「おかしなおかしな~」の冠をつけた邦題は、ライアン・オニールが前年にバーブラ・ストライザントと共演した『おかしなおかしな大追跡』の大ヒットにあやかったもので(翌年には、ジャクリーン・ビセットがジャン=ポール・ベルモンドと共演した作品に『おかしなおかしな大冒険』と邦題がつけられた)、決して大笑いするコメディではなくシニカルな作品。ラストの落としどころは70年らしい甘さだが楽しめる映画である。
 

 コンピュータ・エンジニアをクビになったマッキー(ライアン・オニール)は、何を思ったか突然宝石泥棒になる決心をする。
 独学で泥棒のノウハウを習得し、宝石の古売屋(ネッド・ビーティ)と社交界の名花ローラ(ジャクリーン・ビセット)とタッグを組み、狙った獲物は必ずいただく連戦連勝の日々。金庫にチェスの駒と動きを示すメモを残すことで、世間からは“チェス泥棒”と呼ばれ注目される。
 保険会社の調査員デイヴ(ウォーレン・オーツ)が彼らを追いかけるのだが……。


 逃げる美男ライアン・オニールと美女ジャクリーン・ビセット、追いかける個性派ウォーレン・オーツは絶妙なキャスティングだ。

 『ある愛の詩』で世界的にスターになったものの、私生活はゴシップだらけだったライアン・オニールはシリアス路線から『おかしなおかしな大追跡』でコメディに乗り出し、本作と同時期の『ペイパームーン』も大成功している。

 ウォーレン・オーツは西部劇のならず者専門で、サム・ペキンパー作品の常連脇役。『ワイルドバンチ』('68)では主役4人のひとりになり、『ガルシアの首』('74)で念願の主演!(この作品は最高だった)
 強面役者が都会派コメディに出るなんて!それも、つまらない男、情けない男の役だ。だからこそ痛快。

 ジャクリーン・ビセットは『ブリッド』('68)で注目されたが、個性派台頭、美人女優不要のアメリカン・ニューシネマの時代に重なり、彼女はヨーロッパに居場所を移しトリュフォーの『アメリカの夜』('73)に出演。これが大成功だった。クールとエレガントを兼ね備えたセクシー美人である。

 お洒落でクールな音楽はヘンリー・マンシーニ。脚本は『ゲッタウィ』で注目された当時新人のウォルター・ヒルで、このあと『ストリートファイター』で監督デビューし、『ザ・ドライバー』『ロング・ライダーズ』『ストリート・オブ・ファイヤー』』とつづくハードボイルドな映画で評価をあげていくのだった。

 40年ちかくも前のコンピュータの扱いは、常人にとっては扱いきれるものではなかったわけで、まさにぼくらは、あの頃から途方もない未来にいるのだ…………。


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 70年代の前売券には、邦題名が載っていないものがたまにあった。

「レディ!レディ」*太田圭監督作品

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READY! LADY
監督:太田圭
脚本:丸山昇一
音楽:安西史孝
主題歌:「Windy Boy」薬師丸ひろ子
出演:薬師丸ひろ子、桃井かおり、近藤敦、高橋ひとみ、清水綋治

☆☆☆ 1989年/アルゴ・プロジェクト/104分

    ◇

 1978年に13歳でデビューし、着実に“映画女優”を歩みつづけてきた薬師丸ひろ子の主演映画10本目にあたる作品。『メインテーマ』以来の桃井かおりとの共演で、薬師丸ひろ子はそれまでのお嬢様イメージを見事に払拭。このふたりのバトルが見もののシチュエーション・コメディである。

 東京、大手都市銀行で支店長次長としてバリバリ仕事をこなしているキャリア・ウーマン菅野萌子(桃井かおり)のもとに、突然、姪っ子の高橋亮子(薬師丸ひろ子)が田舎からバイクに乗って転がり込んで来た。
 独身の優雅なライフスタイルをおくっていた萌子には、「飲む」「打つ」「買う」が趣味の自由奔放な亮子ではソリが合うわけもなく、いちいちカンにさわる。顔を合わせれば口論するばかりの共同生活がはじまった。
 萌子からデザイン会社の就職口を紹介されても気に入らずブラブラしている亮子は、ある日、偶然入ったパン屋で吉野喜一(近藤敦)と知り合い、彼に興味を覚えてそのパン屋で働くことにする。
 一方、女性初の支店長として九州転勤の話が持ち上がった萌子は、仕事と中年ハスラーとの恋の行方に悩んでいた。
 そして吉野は、借金苦で自殺した父親の復讐のため、萌子が勤める銀行を爆破する計画をたてていた…………。


 一見、ひろ子の自由奔放な女の役は桃井のキャリアウーマンと反対のように見えるのだが、そのギャップが面白い。
 脚本の丸山昇一は、ニール・サイモンの『おかしな2人』の女性版を狙って書き始めたという。『おかしな2人』は1965年にブロードウェイで初演され、1968年にはジャック・レモンとウォルター・マッソーで映画化されたシチュエーション・コメディの大傑作だ。
 ウォルター・マッソー扮する妻と離婚したズボらなスポーツ記者と、ジャック・レモン扮する妻に逃げられた几帳面なニュース記者との絶妙なコンビネーションは、やもめになった男性ふたりだったから面白かった。
 それでも、本国ブロードウェイでは1985年にニール・サイモンの手による女性編が上演されているから、まんざらキャリアウーマンの女性がコメディの素材になったということだろう。
 日本でも『おかしな2人』の女性編は、2002年に小泉今日子と小林聡美で上演され、男性編(陣内孝則&段田安則)と同時上演だった。当時マチネーと夜の部で2編とも観劇したが、男性編を巧く女性編に生かし、ラストは男と女では大きく違って描いていた。

 さて本作は、性格のちがう女2人が共同生活を送りながら、そして、別々に旅立っていく。80年代に男女雇用機会均等法が制定され、女性が仕事を持ち自立していくのが当たり前になってきた時代。“女の時代”が流行したのだけど、“女の時代”というキャッチは男が生みだしたもの。映画を観て、女の自由を本気にするかどうかは、観客次第なわけであり………。

 バイクを乗り回すワイルドなイメージの薬師丸ひろ子は新鮮だった。(バイクシーンはスタントだろうが……)

「ジョニーは戦場へ行った」*ダルトン・トランボ

1973-02_ジョニーは戦場へ行った
JOHNNY GOT HIS GUN
監督:ダルトン・トランボ
脚本:ダルトン・トランボ
音楽:ジェリー・フィールディング
出演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ドナルド・サザーランド、ダイアン・ヴァーシ

☆☆☆☆ 1971年/アメリカ/112分

    ◇

 第一次世界大戦で両手、両足、眼、口を失いながら、15年近く生き抜いた実在の英国人将校をヒントに書かれたダルトン・トランボの小説を、トランボ自身が脚本・監督した作品。

 1918年、ヨーロッパ戦線に勇んで出征した青年ジョー(ティモシー・ボトムズ)が、変わり果てた姿でアメリカに帰ってきた。
 心臓が動いているものの、耳(聴覚)、眼(視覚)、口(言葉)を失い、さらに両手両足まで切断された、性器と延髄だけの肉の塊でしかないジョー。彼は医学研究のためのみに生かされる存在となる。
 しかしジョーには意識がある。思考もある。夢を見ることも出来る。自分のおかれている状態を知ったジョーは絶望の底に堕ちる。暗黒の世界。
 4年の月日が過ぎた。ジョーは生きている実感を示すために、わずかに動く頭でモールス信号を送ることを思いついた。
 12月のある日、ジョーに涙する心優しい看護婦が、ジョーの胸に指で「メリークリスマス」となぞる。ジョーの意識も「メリークリスマス」と応えている。人間同士としての“会話”が出来た瞬間だ。首の動きが何かの信号だと気づいた看護婦は、モールス信号がわかる軍人を連れてくる。

 「何か望みがあるか?」
 「僕をサーカスに売ってくれ。見せ物にしてみんなに僕の姿を見せてくれ。できなければ殺してくれ」


 この作品が公開された当時(本国製作は1971年。日本公開は1973年だった)は、まだベトナム戦争がつづいていたときで、反戦映画というくくりで語られるようになった作品だが、これは人間の“尊厳”をテーマにしていると言った方がいい。

 他言を禁じた軍人が退出したあと、あの優しい看護婦は自分が人殺しになることもいとわずジョーの空気管を閉じるのだが、戻ってきた軍人に気づかれ追い出されてしまう。
 カーテンの敷かれた暗い病室には、ジョーのS.O.S(殺してくれ) のモールス信号だけが響いている………。

 救いのない映画だが、こういう映画もなくてはならない。

 ジョーが持ち得る人間としての最後の自由(死)を奪う人間たちの残酷なこと。
 安楽死の是非論を持ち出すまでもなく、ヒューマニズムってなに?

 ジョーを演じたティモシー・ボトムズはこの作品でデビュー。この年は弟のサム・ボトムズとともにピーター・ボグダノヴィチ監督の『ラスト・ショー』にも主演しており、ティモシー・ボトムズを語るには残念ながらこの2作しかないのだな。

★ラスト・ショー★


静かに、深い闇、まほかる

宮部みゆきの『ソロモンの偽証』3部作を読み終えた

これだけの分量のものを読んだあとは しばらく燃え尽き症候群になっているので

つぎは短編集でも……と思い

おんな友だちに薦められた沼田まほかるの「痺れる」を読み始めた

ところが これは軽くいなせる代物ではなかった

淋しさが狂気になる瞬間 濃密な情景描写

ざわざわとしたおぞましさ 心の中を徘徊する妖しさ

この やばい読み物はクセになる


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林檎曼陀羅
レイピスト
ヤモリ
沼毛虫
テンガロンハット
TAKO
普通じゃない
クモキリソウ
エトワール


「黒い賭博師」*中平康監督作品



THE BLACK GAMBLER
監督:中平康
原作:野村敏雄
脚本: 小川英、中西隆三
撮影: 山崎善弘
音楽: 伊部晴美
主題歌:「賭博唱歌」小林旭
挿入歌:「遠い旅」小林旭
出演: 小林旭、冨士真奈美、小池朝雄、益田喜頓、横山道代、谷村昌彦、榎木兵衛、野呂圭介、玉川伊佐男、高橋昌也

☆☆☆ 1965年/日活/86分

    ◇

 1964年の『さすらいの賭博師』から始まった“ギャンブラー氷室浩次シリーズ〈全8作〉”の第6作目で、映像のモダニスト中平康が監督したコミック・アクションの快作。


 何年ぶりかに東京に舞い戻った氷室浩次(小林旭)は、某国大使歓迎レセプションでギャンブラー犬丸(小池朝雄)と情婦の玲子(冨士真奈美)をセブンブリッジの大勝負で打ち勝った。腹の虫が納まらない犬丸は、玲子に氷室を誘惑して彼のテクニック(イカサマ)を見破ってこいと命じる。

 玲子に付きまとわれる氷室だが、ある日、命を狙われているという白人女性ニーナを助けるべく、中国人ギャンブラーのモノクルの楊(高橋昌也)とポーカー対決をするのだが、楊のイカサマを見破ることが出来ず大敗してしまう。
 氷室は資金集めに奔走する一方、相棒の一六(榎木兵衛)に楊の身元を探らせる。しかし数日後、馴染みの刑事花田(谷村昌彦)から一六の死を知らされる。
 バーのママ時子(横山道代)のベッドの中で楊のトリックのヒントを見つけた氷室は、楊と再戦し見事にイカサマを看破し雪辱を果たす。
 楊は国際賭博団[マルコム]のひとりで、実はニーナも賭博団の仲間で一六は彼女に殺されたのだった。

 [マルコム]が日本の市場を荒らすためにやって来た。
 世界一のギャンブラーになるチャンスと発奮する犬丸は、敵視する氷室の左手を痛めつけるが、氷室は痛めつけられた左手を克服し[マルコム]が仕切る秘密パーティーに乗り込むのだった……。

    ◇

 本作以前のシリーズ(渡り鳥シリーズを引きずった孤高のヒーロー)とはうって変わって、当時花盛りだったスパイ・アクション映画を下敷きに、中平監督の洒落っ気の効いたドライな感覚で創りあげたスーパー・ギャンブラーの登場である。

 首都高速での追跡シーンでは、オープンカーから大量のパチンコ玉をこぼしながら敵の車をかわすアクションとか、冨士真奈美や横山道代らがボンドガール的存在でアキラに絡んだりと、まさに『007』からのアイデア拝借が楽しく、中平監督のスピーディなテンポとカッティングも冴え、スタイリッシュでコミカルな作品に仕上がっている。

 本作で撮影中に落下事故を起こし生死を彷徨う大怪我を負ったアキラであるが、以後もスタントなしのアクションでマイトガイは健在。
 翌年、長谷部安春監督のデビュー作「俺にさわると危ないぜ」でのオシャレ感覚といい、アキラは何をやっても超然としてスマートだ。

 洒落っ気で言えば、オープニング・タイトルの主題歌「賭博唱歌」が「自動車ショー歌」の歌詞をもじったもので、聴きもの。

  スマートボールでハンサムで    
  チョボイチけんかにスゴロクで
  コイコイ嫌いの色嫌い     
  サイコロリングとしゃれこんで 
  ダイスきダイスの一人旅 
  これぞ男の手本引き

  ブリッジヒップでグラマーで
  ペースはスロット遅いけど
  コイコイ狂いの色狂い
  オイチョカブった猫かぶり
  バッタバッタの男狩り
  これぞ女の手本引き

 レコードにはならなかったが、2005年リリースのCD『小林旭マイトガイトラックス 日本クラウンイヤーズ1964〜1970』に初収録されている珍品である。

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 元伯爵の益田喜頓が博打で身を崩し、借金のカタに娘の冨士真奈美を小池朝雄に差し出した謂れから、必至にギャンブルに打ち込む冨士真奈美は次第にアキラの虜になる。
 敵になったり味方になったり、妖艶なヒロイン冨士真奈美が美しい。

 コメディリリーフの横山道代も絶妙だし、モノクル(片眼鏡)を嵌めた高橋昌也の胡散臭さもいい。
 テンション高い小池朝雄は敵役ながら憎めない存在。最後、益田喜頓からのリベンジに負けて娘を親に返すも、やっぱりギャンブラーは素人になんか負けないのだ。ステキな勝負師である。

 映画のクライマックスは「ダイス・スタッキング」と「カードシャッフル」。
 「ダイス・スタッキング」とは、5個のダイスを机の上に置き、それをダイスカップで広いながらシャッフルし、カップを持ち上げた時、5個のダイスが積み重なっているというテクニック。
 最上なのはダイスの目が全部揃うことだが、ホントにそんなことできるのかって?
 昔はバーなどで見かけたテクニックで、子供の頃繁華街に住んでいたぼくは、父親が馴染みにしていた近所のバーで見たことがある。カードマジックさながらに子供でも虜になる遊びだ。

 アキラたちがイカサマ勝負をする「カードシャッフル」は、マジシャンたちの必須のテクニック。バラバラのカードを何度もシャッフルしながら、キングからエースまで順番に揃えるものだ。どれもテクニックの問題で、ギャンブラーとマジシャンは紙一重である。

 本編でのアキラのダイス・テクニックはカット割があるので実際に本人が演っているのかどうか定かではないが、昔、TVで「ダイス・スタッキング」を披露したところを見たような記憶があるのだが……。

★俺にさわると危ないぜ★

[中平康監督作品]
★月曜日のユカ★
★泥だらけの純情★
★猟人日記★
★砂の上の植物群★