TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

ロック・ダンディズム、柳ジョージの集大成BOX

ATLANTIC'S SOLO WORKS 1982-1993/GEORGE YANAGI

 柳ジョージが亡くなって早1年。10月10日の命日を前に、レイニーウッドを解散してソロになった柳ジョージの集大成とも云える特製ボックスがリリースされた。
 アトランティックに残した全オリジナル・アルバムを、ボーナストラックとしてアルバム未収録の11曲を加え、さらにボーナス・ディスク1枚を加えた13CDセット。全て最新デジタル・リマスタリングされた限定盤である。価格も13CDで15,500円は「大人世代への売らんかな的価格設定」じゃないところに好感をもてるのではないか。

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「夜をみつめて」*ブライアン・G・ハットン

1974-04_夜をみつめて
NIGHT WATCH
監督:ブライアン・G・ハットン
原作:ルシル・フレッチャー
脚本:トニー・ウイリアムソン、エヴァン・ジョーンズ
出演:エリザベス・テイラー、ローレンス・ハーヴェイ

☆☆☆ 1973年/イギリス/99分

    ◇

 世紀の美女エリザベス・テイラー主演としては珍しいスリラーで、男臭い戦争アクション映画のイメージが強かったブライアン・G・ハットンが、ルシル・フレッチャーの舞台劇を映画化したものだ。

 ロンドン郊外に住む富豪のエレン(エリザベス・テイラー)が、ある夜、無人の隣家の窓越しに惨殺死体を目撃するが、警察が調べても殺人の痕跡は見つからない。
 夫や警察から幻覚だと決めつかれるなか、エレンの前の夫とのトラウマなどで悪夢を見続けノイローゼになっていく。
 そして、現在の夫とエレンの友人との仲に不信感を募らせるエレンは、ふたりが共謀して自分を狂人に仕立てようとしていることに気づいた。
 そして、雷鳴の轟く夜、恐るべき事実が曝け出されるのだが………。

〈ラスト15分の恐るべき戦慄 あなたは“何分”たえられますか?
  この映画の想像を絶するラストは あまりにショッキングなため
    女性の方はなるべくお二人でご覧下さい〉

 公開時のキャッチはまさに惹かれるものがあったのだが、今となっては使い古されたトリック。それでも、当時41歳のリズの半狂乱の姿はなかなか恐いものがある。 
 翌年、リチャード・バートンと最初の離婚に至っているので、本作でストレス解消をしていたのかもしれないな。

映画チケットで辿る邦画マイベストテン[1984年]

1984-06_Wの悲劇
1.Wの悲劇
監督:澤井信一郎
出演:薬師丸ひろ子、三田佳子
☆☆☆☆ 初見1984年12月/角川・東映

 原作はとうに読んでいた。その原作自体を劇中劇にして、バックステージものに仕立てた大胆さとその構成の見事なこと。
 薬師丸ひろ子主演映画のベスト3の1本に間違いはない。
 失礼ながら、併映作は遠慮させていただき『Wの悲劇』だけで劇場を出てきた。


1984-03_お葬式
2.お葬式
監督:伊丹十三
出演:山崎努、宮本信子、菅井きん
☆☆☆☆ 初見1984年11月/ATG

 20歳の頃に読んだ伊丹十三のエッセイ「女たちよ!」をマイ・バイブルに、「ヨーロッパ退屈日記」や「再び女たちよ!」など伊丹イズムに信奉していた。
 俳優としても「修羅雪姫/怨み恋歌」の黒焦げにされる思想家や「悪霊島」でのアメリカ帰りの大金持ちなどかなり個性的だったが、1983年には「細雪」「家族ゲーム」でキネマ旬報助演男優賞を獲っているからね。
 そして、満を持しての映画監督デビュー。淡々と描かれるなかでの“儀式”の奥深さを知り、細部描写の充実度に感動を覚えた本作が、各映画賞を総なめしたのは当然のことだったろう。

 
1984-05_麻雀放浪記
3.麻雀放浪記
監督:和田誠
出演:真田広之、大竹しのぶ、加賀まりこ、鹿賀丈史、高品格
☆☆☆☆ 初見1984年10月/角川・東映

 イラストレイター和田誠の映画演出第1作目であるハードボイルドな映画で、脇の人物にいたる細部の描写は、伊丹十三氏と同じく初めての演出とは思えないほどの老練さと安定感を感じさせてくれた傑作だ。
 長いこと多くの日活映画で個性的な敵役を演じてきた高品格が、この年の各映画賞で最優秀助演男優賞を獲得したのも嬉しいニュースだった。
  

tokimeki-ni-shisu_flyer.jpg『AGAIN~アゲイン』と同時上映だっため掲載写真はチラシ
4.ときめきに死す
監督:森田芳光
原作:丸山健二
出演:沢田研二、杉浦直樹、樋口可南子
☆☆☆☆ 初見1984年2月/にっかつ、ヘラルドエース

 原作は丸山健二。当初、この小説の映画化権は内田裕也が自分で製作するために持っていたのだが、原作に惚れ込んだ沢田研二が裕也氏に懇願し、前年『家族ゲーム』で一躍脚光を浴びた森田芳光を指名して映像化した作品だ。

 森田芳光監督の才能あふれる傑作なのだが、“賛否両論”を呼んだ。以後の作品群を見ていけば実に森田芳光らしいのだが、時代が才能に追いついていなかったのだろう。
 沢田研二と杉浦直樹の哲学的な台詞を、ふたりが朗読のように会話するのが当時としてはとても斬新で面白く、北野武の映画やジム・ジャームッシュの作品が評価されるよりもっと前に、この作品が創られていたことで森田芳光の才能を定めたい。
 音楽担当の塩村修が紡ぎ出すメロディも、この会話やスタイリッシュな映像に緊張感を漂わせ、不思議な空気を生み出している。サウンドトラック盤がCD化されないのが残念である。


1984-02_海燕ジョーの奇跡
5.海燕ジョーの奇跡
監督:藤田敏八
音楽:宇崎竜童
出演:時任三郎、藤谷美和子、原田芳雄、三船敏郎
☆☆☆☆ 初見1984年5月/三船プロ・松竹

 80年代に入って中年主役の映画が目立った藤田敏八が、久々に若者にスポットを当てた。どこかしら70年代の空気を漂わせた青春群像だ。
 原田芳雄や三船敏郎の役どころは絶妙であり、藤谷美和子が可愛い時である。


6.人魚伝説


1984-04_メイン・テーマ
7.メイン・テーマ
監督:森田芳光
出演:薬師丸ひろ子
☆☆☆★ 初見1984年7月/角川・東映

 原作は片岡義男。80年代特有のライト感覚瑞々しく、全編、森田芳光のマジック〈遊び〉に満ちたストーリーと映像に変わった。一般評価はかなり酷いものだったと記憶するが、空っぽの時代に弾んだアイドル薬師丸ひろ子に意味がある。
 角川映画のサントラは、この映画が一番好きかな。 
 因みに、併映の原田知世主演の映画も最後まで鑑賞した。


1984-07_すかんぴんウォーク
8.すかんぴんウォーク
監督:大森一樹
出演:吉川晃司、山田辰夫、鹿取容子、蟹江敬三、原田芳雄、平田満、宍戸錠
☆☆☆★ 初見1984年3月/東宝

 吉川晃司のデビュー作品は、吉川晃司(役者)、山田辰夫(シンガー)、鹿取容子(アイドル)らの青春群像劇。監督大森一樹、脚本が丸山昇一。主題歌『モニカ』の作曲はNOBODY。80年代の愛すべき奴らだな。
 故・山田辰夫が大阪映画祭最優秀助演男優賞を獲っているし、脇を固める蟹江敬三、原田芳雄、平田満らの描写もしっかりしている。

 同時上映はアニメ『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』。この2本立ては何?ってなもので、吉川晃司を見ただけで劇場をあとにした。


1984-01_アゲイン
9.AGAIN〈アゲイン〉


10.チ・ン・ピ・ラ
監督:川島透
出演:柴田恭平、ジョニー大倉、石田えり、高樹沙耶
☆☆☆★ 初見1984年12月/東宝

1983年『竜二』で急逝した金子正次の遺稿脚本を朋友・川島透が大幅に手を加えて映像化したアウトロー映画だ。
 遺稿の暗さをハッピーエンドに変えた川島透の演出がポップだったはずなのだが、いま観ると何とも気恥ずかしいだろう。バカ騒ぎ的80年代の軽さである。

    ◇

 たまたま、この年のマイ ベストテンのうち7点(8作品)が前売券購入だったので、コレクション提示することができたわけで、1984年は邦画大作と言われるものもいっぱい公開された。
 松本清張原作の『彩り河』や、五社英雄監督『北の蛍』のような重厚作品。ふたたび『細雪』を狙ったかのような絢爛豪華な女優陣共演(京マチ子、松阪慶子ら)の『化粧』や、吉永小百合と大原麗子共演の『おはん』といった女優映画。深作欣二監督『上海バンスキング』、夏目雅子『瀬戸内少年野球団』、吉永小百合初の汚れ役『天国の駅』、初の劇場版『必殺!』といった話題作があるのだが、ヘソ曲がりには文芸ものや豪華さをあまり謳われすぎると遠慮したくなるきらいがある。食傷気味でもあり以後、大作映画は暫く観ないようになる。
 ロマンポルノも中原俊監督、石井隆脚本の『奇妙な果実』くらいしか観ていないか……。

 そんなわけで、1984年当時10本選んだものは、薬師丸ひろ子と新進監督などの小品ばかりになったわけだ。
 

 

「ラ・スクムーン」*ジョゼ・ジョヴァンニ

1973-04_ラ・スクムーン
LA SCOUMOUNE
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ
音楽:フランソワ・ド・ルーベ
出演:ジャン・ポール・ベルモンド、クラウディア・カルディナーレ、ミシェル・コンスタンタン

☆☆☆★ 1972年/フランス、イタリア/108分

 ジョゼ・ジョヴァンニ監督が若い頃監獄で知り合った実在の男をモデルにした作品で、1961年にジャン・ポール・ベルモンドが主演した『勝負〈カタ〉をつけろ』を、ベルモンドが再びリメイクした実録クライム映画の傑作。

 1943年の夏の終わり、南フランスの港町マルセイユ。当時は暴力が支配していたこの街で、ひとりの男ミシェル・コンスタンタンが敵対するボスの罠に嵌り投獄させられた。男の妹クラウディア・カルディナーレは、“死神”〈ラ・スクムーン〉と呼ばれる兄の弟分ジャン・ポール・ベルモンドに相談。脱獄計画を策略するが逆に捕まってしまい20年の刑を言い渡される。そして第二次世界大戦が勃発。1946年解放の日、兄と妹と〈ラ・スクムーン〉は再会するが、その後、平穏な生活を夢見る兄妹は組織に殺されてしまう。ジャン・ポール・ベルモンドはひとり、仇を討つためにモンマルトの丘に向う。その夜以来、彼の名前を聞くものはいなかった………。

 哀愁ある手回しオルガンの旋律を全編に……暗黒街に生きた一匹狼の友情と復讐が哀しく綴られていく。
 モンマルトの丘に消えていくベルモンドの後ろ姿に男の憂いを感じながら、クラウディア・カルディナーレの美しさと、無骨なミシェル・コンスタンタンとの友情に涙するフィルムノワールである。

「ロイビーン」*ジョン・ヒューストン

1973-10_ロイビーン
JUDGE ROY BEAN
監督:ジョン・ヒューストン
脚本:ジョン・ミリアス
音楽:モーリス・ジャール
唄:アンディ・ウィリアムス
出演:ポール・ニューマン、アンソニー・パーキンス、ジャクリーン・ビセット、ステーシー・キーチ、エバ・ガードナー

☆☆☆ 1972年/アメリカ/124分

    ◇

 19世紀末、無法がはびこるテキサスに颯爽と登場した実在の人物、史上名高き“首つり判事”ロイビーンの華麗なる活躍を、ジョン・ヒューストンが描いた異色西部劇だ。

 ある町に流れ着いたロイビーンは、無法者だった前歴ながら法律を独学でマスターし自称判事を名乗る。「俺が法律だ」と自分に都合よく裁くような反社会的でありながら、町の平和に尽くす主人公を軽妙に演じるポール・ニューマン。
 共演者の顔ぶれも豪華で、ロイにとって崇高な美のアイドルとなる踊り子リリーのエバ・ガードナーは貫禄勝ち。ジョン・ヒューストン監督はたった2日間の撮影に破格のギャラを約束したとか……。
 そして存在感を示したのが、西部劇史上初のアルビノ(白子)として登場した殺し屋ステーシー・キーチの悪役キャラクター。
 不思議な空気感が心地よいウェスタンである。


「暗殺の森」*ベルナルド・ベルトルッチ

1973-05_暗殺の森&激突
IL CONFORMISTA
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
原作:アルベルト・モラヴィア「孤独な青年」
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ジャン・ルイ・トランティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダ

☆☆☆★ 1970年/イタリア/115分

    ◇

 初見1973年1月。
 1928年のファシズム台頭から43年ファシズムが崩壊するまでのローマとパリを舞台に、ひとりの平凡な男を通してファシズムと退廃の世界を描いたベルナルド・ベルトルッチ監督1970年の作品で、日本では1972年に初めて紹介されたベルトルッチ作品でもある。
 性倒錯のトラウマを権力に委ねた男の生き様がスタイリッシュな映像で彩られているが、実は見終わっても簡単には理解できなかった……。
 忘れられないシーンはいくつもある。
 光と影の映像美、ふたりの女優の妖しい官能美………麗しき黒髪ステファニア・サンドレッリと妖艶な金髪ドミニク・サンダがダンスホールで踊るシーンは名高いし、クライマックスの森の中の沈黙と殺人シーンの薄ら寒さ……そして、ラストのジャン・ルイ・トランティニャンの振り向き顔…………

 名古屋の劇場では、スピルバーグ監督のデビュー作『激突!』と併せて上映されていた。


「AGAIN〈アゲイン〉」*矢作俊彦監督作品

1984-01_アゲイン
監督:矢作俊彦
脚本:矢作俊彦
構成:矢作俊彦
音楽:宇崎竜童
出演:宍戸錠、藤竜也、榎木兵衛

☆☆☆★ 1984年/にっかつ/102分

    ◇

 2012年9月10日に日活が創立100周年を迎えた。

 『AGAIN〈アゲイン〉』は、にっかつ70周年を記念して製作された日活アクション映画の名場面集で、ハードボイルド作家矢作俊彦が構成・脚本・監督を手掛けた。
 銀幕の中で暴れまわったヒーローたちと、美しく愛されたヒロインたちへの一大オマージュである。

 『太陽への脱出』主演の石原裕次郎が放つマシンガンの弾が、1984年当時の“にっかつ”マークを撃ち砕くシーンからはじまり、そして、一世風靡した『狂った果実』を場末の映画館で見ている年老いた殺し屋エースのジョー(宍戸錠)が登場。
 『アゲイン』がただの名場面集映画にあらずなのは、登場したエースのジョーがかつての良きライバルたちを探し求めて彷徨うといったストーリーラインで構成されていることだ。

 日活アクション映画の信奉者である矢作俊彦が、日活映画らしいアクションや銃撃戦、そして麗しき美女たちとのラブシーンなどを主眼に、1956年『太陽の季節』から1971年の『不良少女魔子』までの187本の作品から37本を厳選し、この過去のフィルムからまったく新しい作品を創り出している。日活アクション映画への愛と夢が込められているのがよく判る。

 石原裕次郎や小林旭の日活アクションはリアルタイムでは見ていないが、どうにか赤木圭一郎の作品をTVで観たのが日活アクション映画の見はじめかな。
 1961年2月、日活撮影所内で新作『激流に生きる男』撮影の合間にゴーカート事故で亡くなった赤木圭一郎。享年21。“トニー”の愛称で呼ばれた彼は、和製ジェームズ・ディーンになってしまった。
 この作品は、1967年に『トニーは生きている・激流に生きる男』のタイトルで未完成作品を監修したかたちで公開された。この時の、ちょっとしたトニー・ブームみたいなものが中学生の頃だ。写真集が出たり、レコードが再発されたり………『拳銃無頼帖シリーズ』や『霧笛が俺を呼んでいる』『紅の拳銃』をTVで見たのも、近所の小さな映画館でロビーカードを眺めたのもこの頃だ。歌は、決して上手くはないんだけど好きだった。LPレコードもシングル盤も買った。
 
 赤木圭一郎は、日活映画と云えば誰の心にも残る伝説の俳優であろう。
 だから『アゲイン』のポスター(前売券ほか)は、裕次郎や旭ではなく、トニーなんだよね。


[登場作品リスト](本編での紹介順)
◆太陽への脱出
◆狂った果実
◆拳銃は俺のパスポート
◆二人の世界
◆鷲と鷹
◆泣かせるぜ
◆霧笛が俺を呼んでいる
◆俺は待ってるぜ
◆勝利者
◆太陽は狂ってる
◆天と地を馳ける男
◆泥だらけの純情
◆錆びた鎖
◆嵐を呼ぶ男(1957年:石原裕次郎主演)
◆嵐を呼ぶ男(1966年:渡哲也主演)
◆トニーは生きている・激流に生きる男
◆嵐を呼ぶ友情
◆女を忘れろ
◆口笛が流れる港町
◆拳銃無頼帖 不敵に笑う男
◆拳銃無頼帖 抜き射ちの竜
◆鉄火場の風
◆大草原の渡り鳥
◆太平洋のかつぎ屋
◆黄金の野郎ども
◆骨まで愛して
◆南国土佐を後にして
◆赤いハンカチ
◆嵐の勇者たち
◆危いことなら銭になる
◆帰らざる波止場
◆夜霧のブルース
◆夜霧よ今夜も有難う
◆紅の流れ星
◆黒い賭博師 ダイスで殺せ
◆都会の空の用心棒
◆ギターを持った渡り鳥

「夢売るふたり」*西川美和監督作品

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監督:西川美和
原案:西川美和
脚本:西川美和
音楽:モアリズム
出演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏、木村多江、やべ きょうすけ、大堀こういち、倉科カナ、伊勢谷友介、小林勝也、香川照之、笑福亭鶴瓶

☆☆☆☆ 2012年/日本・アスミック・エース/137分

    ◇

 常に自分のオリジナル脚本にこだわり作品を撮りあげてきた西川美和監督の3年ぶりの新作は、可笑しく、愛おしく、そして、切ない男と女の愛の物語だ。


 東京の片隅で暮らす市澤貫也(阿部サダヲ)と里子(松たか子)夫婦は、十年以上頑張って念願叶って開いた小料理屋「いちざわ」を火事で失う。
 もう一度自分たちの店を持とうと、里子はラーメン屋で働きはじめるが、貫也は立ち直れない。
 ある夜、貫也は駅のホームで常連客だった玲子(鈴木砂羽)に会う。泥酔していた彼女をマンションに連れてゆき一夜を共にした貫也は、事情を聴いた玲子から前の日に不倫相手からもらった手切れ金を手渡される。
 金の次第を知った里子は、店を再開するための資金集めに結婚詐欺を思いつく。
 里子が隙のある女を探し計画し、貫也が言葉巧みに女たちの心の隙間に入り込む。
 仕事も恋もうまくいかない独身OL咲月(田中麗奈)、辞め時を探している孤独なウエイトリフティング選手ひとみ(江原由夏)、留学を夢見ながらも男運の悪い風俗嬢紀代(安藤玉恵)、息子を抱えたシングルマザー滝子(木村多江)。
 しかし同じ夢を見ていたはずの夫婦は、いつしか自分たちには気づかなかった一面と向き合うことになる………。

    ◇

 ゆったりしたアコースティック・ギターの調べに乗って、登場人物たちがスケッチされるタイトルバックから、今回もまた西川監督の人間描写を楽しませてくれるのだなと予感。

 西川監督として初めて“女の物語”を展開し、だます女にも、だまされる女にも、“女の心情”が痛々しく描かれ、女の意地や、女の凶暴さは、女の視線で描いているからこそで、日常のなかの女の“生と性”も生々しく曝け出されていく。

 貫也から渡された玲子の金を燃やしはじめ、貫也を風呂場の熱い湯船の中で問いただす里子のゾッとする凄み。里子の心に決意のスイッチが入るシーン。それまでの献身的な仕草や、自転車の二人乗りなど微笑ましかった里子の顔から笑顔が無くなる瞬間。徐々に貫也と心と身体が離れていく過程の表情の変化。
 健気で自分の感情を表に現さない里子を演じる松たか子の、眼の奥で演じる無表情の感情表現が素晴らしい。
 映画全体の雰囲気を、松たか子ひとりで女の恐さ、優しさ、エロティックさを感じさせているところが凄い。

 夫婦の夢を叶えるために女たちに夢を売っていたはずの貫也が、苦しくも叶わぬ夢を追いかけている女たちに自分を気づかされる。
 自分の心と身体そして夢を切り売りしていた淋しさと、女たちに自分を曝け出し安心感に包まれていた貫也は、里子が本当に欲しがっているものに気づく。

 それは、女のプライド。

 里子だって自分で判っている。でも、どうしようもないんだよな。里子のこころが切ない。
  
 嬉々として自転車で、女のところに出かける貫也の背中を見送る里子。そのあとの包丁のシーンにも里子のプライドが見える。
 しかし、それが衝撃の展開に繋がるだなんて誰も予想できない。
 雨の中の、赤い傘と光る包丁だなんて、いい小道具だ。

 交差点で、事の始点となった玲子と目があう里子。自分の中だけで、苦しみ溺れた里子の背負ったものの大きさが少し判った気がする。
 
 夢を叶えようが、夢に破れようが、女たちはしっかりと次の道を歩んでゆくラスト。貫也が見る空と里子が見る空に、未だふたりの夢は残されているよ、と西川監督は言いたげだ。

 阿部サダヲの情けなさと、笑福亭鶴瓶の得体の知れなさも良かった。


★ゆれる★
★ディア・ドクター★
★きのうの神さま★

「完全な遊戯」*舛田利雄監督作品

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THE TRAGEDY OF TODAY
監督:舛田利雄
原作:石原慎太郎
脚本:白坂依志夫
出演:小林旭、芦川いずみ、葉山良二、梅野泰靖、岡田真澄、白木マリ、高野由美

☆☆☆★ 1958年/日活/94分/B&W

    ◇

 石原慎太郎が仕掛けた〈太陽族〉。その末路をクールに描いた犯罪映画の傑作で、マイトガイとしてブレイクする前の小林旭のシリアスな演技が見もの。


 裕福な学生たちがゲーム感覚で始めた遊戯が発端だった…………

 東京学院大学の四年生・大木壮二(小林旭)ら4人が麻雀をしている。話はいつも金儲けの話だ。リーダー格の戸田(梅野泰靖)が、競輪のノミ屋を出し抜いて儲ける話を持ち出した。
 川崎の競輪場とノミ屋のある吉祥寺では距離があり、直通電話のない両間では、ノミ屋にレースの結果が知らされるまでに約5分のタイムラグができ、結果が出ている時点でもノミ屋では発券していると云う。直通電話を確保すれば吉祥寺でいち早く情報が入手でき、間違いなく勝てるから大金を賭けようという話だ。
 戸田たちは、必要な頭数として色男のカズ(岡田真澄)も引き入れ綿密な計画をたてる。そして、見事にノミ屋から高配当を奪い、場末のノミ屋を破産させる。

 その後、ノミ屋の松居鉄五郎(葉山良二)は残金をなかなか払う気配がなかった。そこで、残金のカタに鉄五郎の妹の京子(芦川いづみ)を誘拐しようと大木が言い出す。
 戸田の命令で大木がデパートに勤める京子を誘い出し、デート中に戸田たちが襲う計画で決行する。
 翌朝、戸田たちがたむろする屋敷から逃げ出そうとした京子を、留守番をしていたカズが犯してしまう。

 鉄太郎兄妹には寝たきりの母親がおり、金の都合に当てがなかった。そんな家庭環境を知った大木は、何か気になるものがあった。
 やがて追いつめられた鉄太郎は、ノミ屋の常連だった男の工場の給料を奪い逃走。戸田たちに金を振り込み警察に追われる身になってしまった。
 約束どうり京子は家に戻ったが、大木が戸田たちの仲間と知り「わたし、騙されていたのね……」とひと言去って行った。
 翌朝、アパートの一室で京子が母親と枕を並べ睡眠薬自殺を遂げていた。
 
 戸田の情婦ミエ子(白木マリ)がママのバー「モンシェリ」に集まる男たちが、京子や鉄五郎らのことなど何の気もかけずに金の分配をしている。あとから現れた大木は、京子への仕打ちを察知し仲間たちをなじるが、結局は自分も共犯者なのだと痛感……金はいらないと店を出て行く。
 数日後、戸田が大学の校門前で鉄太郎に刺殺された。逮捕された鉄太郎は、戸田以外の仲間のことは一切口にしなかった。

 入社試験を受ける大木。大手貿易会社の子息ということで何の心配もない身分の大木に、事件の共犯がバレないでホッとしたカズたち3人がノーテンキに寄って来る。
 その様子を見ていた大木は、近くの公衆電話から刺殺事件に関係する仲間たちの名前を新聞記者に告げ「大木壮二……大木壮二も忘れないように」と念を押すのだった…………

    ◇

 原作は石原慎太郎の極悪小説として有名な短編。不良学生たちが精神薄弱の女性を遊ぶために拉致・監禁し、来る日も来る日も弄ぶ。そして、売春婦に売り飛ばすが持て余し、挙げ句の果てに殺してしまうという話。20年後のロマン・ポルノならいざ知らず、当然、映画はまったく別のものになっている。


 前半45分はクールでありコミカルな展開。
 犯罪遊戯の手口は、電話を借りたり手旗信号や合い言葉の符号で情報を受け渡したりと、現代社会に鑑みれば実に幼稚で古くささを感じるはずなのだが、犯行をコンピュータ画面で簡単に操作したりするよりも、携帯電話もなくネット社会でないからこその面白さと、テンポの良さがサスペンスを生み出している。
 犯行手順を説明するシーンを白い覆面を被った人間で再現したり、タイトル文字の手書きのレタリングや、BGMのジャズなどにもセンスを感じながらどんどん惹き込まれてしまう。
 
 そして後半、虚無感にあふれた哀しい話になる。裕福で悪びれない若者と、貧しい家族の崩壊の対比はかなり残酷だ。若者と社会との在り方を考えさせるクライム感いっぱいの演出と構成が光る。

 小林旭が芦川いづみを誘い出し遊園地でデートする場面は、後半唯一のほのぼのした甘酸っぱい青春ムードを感じさせるシーン。
 勝気だが健気な京子を演じる麗しき芦川いづみは、本当に可愛い。バーのママ白木マリより年長だとは思えない。
 一貫してポニーテイル姿だった芦川は、岡田真澄に乱暴された後からは髪を下ろし悲劇性が強調されるが、小林旭が男たちの仲間と知った時の哀しい表情も目に焼き付く。
 

 冷徹なインテリを演じる梅野泰靖に注目。自分のしでかした事への後悔と、こころの葛藤をみせる小林旭も悪くない。


「津軽じょんがら節」*斎藤耕一監督作品

1973-21_津軽じょんがら節
監督:斎藤耕一
脚本:中島丈博、斎藤耕一
音楽:白川軍八郎、高橋竹山
出演:江波杏子、織田あきら、中川三穂子、寺田農、西村晃

☆☆☆☆ 1973年/日本、ATG/103分

 今週から、東海テレビ制作の『赤い糸の女』の放送がはじまった。ご存知、昼ドラである。この帯で10本目、ドロドロした愛憎劇を書き連ねてきたのが脚本家・中島丈博氏。
 日活ロマンポルノに作品を提供してきた氏が、一躍高く評価されたのが1973年にATGで発表された『津軽じょんがら節』だ。

 東京で水商売をしていた女が、敵対組織の幹部を殺した若い愛人を連れて故郷の津軽に戻り、海辺の小屋で生活をはじめる。男にとってはやりきれない単調な日々だったが、盲目の少女や、地元のやさぐれた若者たちと親しくなり、津軽の自然に自分の故郷を見いだしてゆく。一方、女は故郷から受け入れられない…………。

 荒涼とした津軽の情景と荒れ狂う日本海の姿………『約束』('72)で見せたような画面全体から漂う孤独感は、映像作家斎藤耕一の“絵”と、全編に鳴り響く津軽三味線の音色により感情が揺さぶられる。
 『祭りの準備』('75)同様、どんよりとした人間の業が暗く重く描かれる。

 イタリア女優のように美しい江波杏子である。

★約束★
★祭りの準備★
 

「バラキ」*テレンス・ヤング

1972-01_バラキ
VALACHI
監督:テレンス・ヤング
原作:ピーター・マース
脚本:スティ−ヴン・ゲラー、マッシモ・デ・リータ、アルドゥイーノ・マイウリ
出演:チャールズ・ブロンソン、リノ・ヴァンチュラ、ジル・アイアランド

☆☆ 1972年/イタリア・フランス/125分

 『ゴッドファーザー』によりマフィア映画が全盛を誇った70年代。コーザ・ノストラ(通称マフィアと呼ばれるイタリア系犯罪組織の者たちの呼称)の準幹部だったジョゼフ・バラキの半生記(1930年代~1960年代)を描いたこの作品は、ラッキ−・ルチアーノやピート・ジェノヴェーゼら、かつてのマフィア5大ファミリーが実名で登場し、事件もすべて本物。実際の3つの抗争で有名なシーン(床屋やレストランでの惨殺)は、後の『仁義なき戦い』でも引用されている。
 『ゴッドファーザー』では「マフィア」「コーザ・ノストラ」という表現は一切しないフィクションとして製作されたのだが、この作品はまさに実録映画の原点と云える。
 ストーリーの核になっているジェノヴェーゼとバラキが亡くなってから撮影に入った気の使いようでも、ニューヨーク・ロケにはファミリーのドンからの忠告がありロケ地を変更したりと、70年代に入ってもその影の政府の力は絶対だったようだ。
 それは、ヨーロッパでの公開タイトルは『コーザ・ノストラ』で、アメリカ公開は『バラキ』となったことでも伺い知れるエピソードがある。
 本作がピークであろうバラキ役のチャールズ・ブロンソンの迫真の演技と、ジェノヴェーゼ役のリノ・ヴァンチュラの存在感は素晴らしいのだが、ただただリアルで殺伐とした作品だったかな。


「脱出」*ジョン・ブアマン

1972-03_脱出
DELIVERANCE
監督:ジョン・ブアマン
脚本:ジェームズ・ディッキー
出演:ジョン・ヴォイド、バート・レイノルズ、ネッド・ビーティ、ロニー・コックス

☆☆☆ 1972年/アメリカ/109分

 詩人ジェイムズ・ディッキーが書いた長編小説を、ディッキー自身が脚色し、『ポイント・ブランク』のジョン・ブアマンが監督した人間ドラマ。

 都会から来た4人の男たちが、ダムによっていずれ消えてしまう河の激流を開拓時代のようなカヌーで冒険をしようと計画。遊び半分の軽い気持ちで始めた冒険が、ささいなことで山の住人とトラブルになり、それが殺人にまで発展する………。
 自然を前に、人間の狂気と恐怖が表出する変貌が恐く、スリルとサスペンス……そして、冒険映画の異色作だった。

★ポイント・ブランク★


「時計じかけのオレンジ」*スタンリー・キューブリック

1972-02_時計じかけのオレンジ
A CLOCKWORK ORANGE
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
音楽:ウォルター・カーロス
出演:マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、マイケル・ベイツ

☆☆☆★ 1972年/アメリカ/136分

    ◇

 アンソニー・バージェスの原作をスタンリー・キューブリックが脚色・監督したSF映画で、近未来は憎悪に埋め尽くされた世界しかない、という目線で描かれた秀作。
 暴力とSEX……キューブリックのシュールな表現力とインパクト、その衝撃度は大きく、映像と音楽のセンスを感じるだけで満足した映画だったかな。

「ダーティハリー」*ドン・シーゲル

1972-04_ダーティハリー
DIRTY HARRY
監督:ドン・シーゲル
脚本:ハリー・ジュリアン・フィンク、ジョン・ミリアスほか
音楽:ラロ・シフリン
出演:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、アンディ・ロビンソン

☆☆☆☆ 1971年/アメリカ/102分

    ◇

 初見1972年2月。
 「弾が残っているか、考えているな……賭けるか?今日はついているか、どうか……」
 決めの言葉となった名台詞は、病んだアメリカの堕し子とも云える冷酷無比なヒーローから発せられた。
 刑事ドラマの主役が、ある意味、悪役キャラだと証明した殺人鬼〈スコルピオ〉のアンディ・ロビンソンも含め、刑事映画の金字塔となったシリーズ、やはりこの第一作に尽きる。

「招かれざる客」*スタンリー・クレイマー

1968-01_招かれざる客
GUESS WHO'S COMING TO DINNER
監督:スタンリー・クレイマー
脚本:ウィリアムズ・ローズ
出演:スペンサー・トレーシー、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ヘップバーン

☆☆☆☆ 1967年/アメリカ/108分

    ◇

 人種問題を提起した作品だが、スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘップバーンの演技に釘付けになる。
 スペンサー・トレーシーはこの作品が遺作であり、キャサリン・ヘップバーンはアカデミー賞主演女優賞を獲得している不朽の名作だ。

「卒業」*マイク・ニコルズ

1968-02_卒業
THE GRADUATE
監督:マイク・ニコルズ
原作:チャールズ・ウェッブ
脚本:バック・ヘンリー、カルダー・ウィリンガム
音楽:ポール・サイモン、デイヴ・グルーシン
出演:ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト

☆☆☆☆ 1967年/アメリカ/105分

    ◇

 世代的に青春映画の代名詞でもあり、サイモン&ガ-ファンクルの主題歌は心の中までに残っているが、細かなところはあまり覚えていない。とにかく映画館を出るときの、あのラストの痛快さと、冷静になったダスティン・ホフマンのうつろな眼が忘れ難く、アン・バンクロフトとの密会シーンにもドキドキしたものだ。