TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

ヒヲフクヒノテル「白昼の襲撃」

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~白昼の襲撃~Originai Soundtrack

 60年代後半に絶大な人気で時代のヒーローになっていた日野皓正。
 彼が全編に関わった映画『白昼の襲撃』の全テイクが初リリースされた。


01. タイトルバック
02. オン・ザ・コーナー(スネイク・ヒップ)
03. スーパーマーケット(白昼の襲撃のテーマ)
04. 海
05. ピストル
06. 電話
07. タクシー
08. 足音
09. ブルース
10. 仲間
11. 桟橋のトランペット
12. 深夜の街
13. ジョニーの船
14. ゲッタウェイ


 愛聴するシングル盤「スネイク・ヒップ/白昼の襲撃のテーマ」とは別テイクとなる2曲は、まさに完全オリジナル劇伴である。
 
 「スネイク・ヒップ」は「オン・ザ・コーナー」と題され、高橋紀子が踊るゴーゴー喫茶のステージ演奏から始まり、黒沢年男が現れ、桑山正一が高橋紀子を指名し出情児に金を払い、トイレで黒沢が桑山から金をふんだくり、出情児が黒沢に拳銃を手渡すまで、特に、画面を真っ赤な照明で覆うトイレの中に流れ込むファンキーなメロディは異様空間へと誘ってくれる。
 映画は6分あたりで突然無音になるため、このサントラ盤で初めてノーカット・ヴァージョンを聴くことができるわけだ。劇伴を超えたステージングに近い生々しい音は必聴である。

 「白昼の襲撃のテーマ」も荒々しい演奏だが、こちらは逆に3分足らずのシーン(スーパーマーケットやタクシーを3人が襲う)のため、シングル盤の方がロング・ヴァージョンの演奏になっている。効果音を入れたシングル「白昼の襲撃のテーマ」も断然カッコイイので、どちらも外せない代物だ。

 ラスト・シークエンスで流れる「ゲッタウェイ」も、12分間のノーカット・ヴァージョンである。

 未使用曲などはなかったが、映画に使われたままの音源が、40年以上経って発掘されたことはやはり快挙。素直に喜ばしい。


白昼の襲撃postcard

★白昼の襲撃★


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Some Girlsに戻ったクロディーヌ



Some Girls : Deluxe Edition / The Rolling Stones

 「ミス・ユー」「ビースト・オブ・バーデン」「ジャスト・イマジネーション」など有名曲が多いストーンズの1978年のアルバムが、アウトテイクを引っ提げて2枚組CDで戻ってきたぞ。
 この時期のレコーディング・セッションでは数多くのアウトテイクが存在し、また多くの名曲が生まれていて、今回このデラックス・エディションにおいて、その中から未発表音源12曲(「ソー・ヤング」は既に別ヴァージョンがリリースされていたが)が公式にリリースされた。
 ストーンズ・ファンの世間では、蔵出し映像の『Live in Texas '78』や音楽配信された幻のライヴ音源『Brussels Affair '73』で盛り上がっているが、ぼくはとりあえずこのアアウトテイクに満足している次第。
 12月7日に日本盤がリリースされるが、アウトテイクが目的でボーナス曲を気にしなければ安い(日本盤の半額)輸入盤で十分だ。(『Super Deluxe Edition』は『Exile on Main St.』同様パスした)

DISC.2
01. Claudine
02. So Young
03. Do You Think I Really Care?
04. When You’re Gone
05. No Spare Parts
06. Don’t Be a Stranger
07. We Had It All (Troy Seals/Donnie Fritts)
08. Tallahassee Lassie (Bob Crewe/Frank C. Slay/Frederick A. Picariello)
09. I Love You Too Much
10. Keep Up Blues
11. You Win Again (Hank Williams)
12. Petrol Blues
13. So Young [piano ver]
〈日本盤ボーナス曲〉

 おお、歌手クロディーヌ・ロンジェの銃事件を歌いお蔵入りした「クロディーヌ」を冒頭にもってきたか………。


 クロディーヌは再び刑務所に戻る
 週末に刑務所に戻る

 スパイダーだけが知っている
 しかし彼は何も語らない

 山小屋に血液  雪の中にも血痕
 彼の頭を一度撃った  彼の胸を2度撃った
 でも裁判官は それは事故だと言う

 おおクロディーヌ
 事故は起こるだろう
 おおクロディーヌ
 クロディーヌは再び刑務所に戻る


 クロディーヌ・ロンジェを知ったのは「恋の面影~007/カジノロワイヤル」か「恋は水色」だったかな。舌足らずで、決して歌が巧いとは云えないけれど、可憐で、囁くような歌声が日本でも人気が出た歌手だった。当時、アンディ・ウイリアムスと結婚していたというのは(かなりの年齢差に)ビックリした。
 そしてアンディと離婚後の1976年、オリンピックのアメリカ代表のスキー選手で“スパイダー”の愛称で親しまれたウラジミール・サビッチが、当時の恋人だったクロディーヌの銃により死亡した事件が起きる。コカインや諸々のことで起訴されたクロディーヌだったが、ミランダ警告を無視した警察の捜査が彼女を過失致死罪(銃の暴発)にとどめ、さらに、3人の子供の養育を鑑み週末だけ刑務所に入るという温情判決が、世界中にスキャンダラスに報じられた。

 この「クロディーヌ」はブートレグで何度も聴きなれている曲だが、キースの荒々しいギターとテンポいいヴギ・ピアノがやっぱり素晴らしい。

 そう云えばクロディーヌ・ロンジェの最後のアルバムは「Let's Spend the Night Together」('72)というタイトル。ストーンズの「夜をぶっ飛ばせ」以外に、ビートルズ(「ドント・レット・ミー・ダウン」)、ニール.ヤング、ポール・マッカートニー、ビーチ・ボーイズ、クリス・クリストファーソンなどの曲をカバーしていたっけ。


 さてストーンズだが、ゴキゲンな曲がつづく。
 ダルなブルース「ウエン・ユア・ゴーン」「キープ・アップ・ブルース」にシビれるのは云うまでもなく、キースが歌うトロイ・シールズとドニー・フリッツ共作の「ウィ・ハッド・イット・オール」は涙もののカントリーバラードだ。
 ロックンロール全開のフレディ・キャノンの「タラハッシー・ラッシー」、ハンク・ウィリアムスの「ユー・ウィン・アゲイン」などカバー曲も素晴らしく、ヴァラエティに富んだルーツ・ミュージックのオンパレードはカントリー・フレイバーに溢れ、ぼくはミックが歌うカントリー・ソングが好きだなと再認識した。
 

 ところで、この時期のセッションにはイアン・マクレガンが参加していたはずなのだが、クレジットにはピアノはすべてイアン・スチュワートとなっているのが不思議なのだが…………

 今回のアウトテイクのほとんどが1978年5th January - 2nd MarchのフランスPathé Marconi Studiosでのセッションなのだが、このセッションにはイアン・マクレガンが参加していないことを知った。だから、すべてのピアノは“STU”で正しく、『Some Girls』には“STU”の代りに“MAC”が参加していたというだけの情報を持ったぼくの、大いなる勘違いだった…………
 ちなみにイアン・マクレガンが参加したのは、1977年10th October - 25th November と 5th - 21st DecemberのフランスPathé Marconi Studiosでの「Miss You」と「Just My Imagination」だけ……… 

「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」*大森立嗣監督作品



監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
音楽:大友良英
主題歌:「私たちの望むものは」阿部芙蓉美
出演:松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、宮崎将、新井浩文、柄本佑、洞口依子、美保純、多部未華子、山本政志、小林薫、柄本明

☆☆☆ 2010年/日本・リトルモア/131分

    ◇

 現代版『イージー・ライダー』だろうか?

 工事現場の壁を壊す解体屋で働く施設育ちのケンタ(松田翔太)と弟分・ジュン(高良健吾)。ロリコンを馬鹿にした先輩の裕也(新井浩文)をカッターナイフで傷つけ逮捕された兄のカズ(宮崎将)に会うために、収監されている網走刑務所に向って旅をする。
 出かけに、うっぷん晴らしに解体会社の事務所を荒らし、裕也の高級車を叩き壊していく。
 少し前にナンパして付き合っていたジュンの女カヨ(安藤サクラ)も連れ立って、カズに会えばこの行き詰まった毎日に風穴が空き、光を与えてくれるに違いないと車を走らせる。
 途中のドライブインでカヨを捨てて身軽になったケンタとジュンは、道中、闘犬を育てる男(小林薫)や、施設時代の仲間で母親に片目を潰された洋輔(柄本佑)や、絵空事の夢を語るキャバ嬢のゆみかチャン(多部未華子)らと出会いながら、盗んだオートバイで旅を続けていく。
 やがて辿り着いた網走刑務所でカズに再会するが、「希望」も何もなく壊れてしまった姿に絶望感を募らせるケンタは、自らも壊れていくのだった………。
 
    ◇

 嗚呼、なんて気が重くなる映画だ。作品的に悪くはないのだが、こうも気分を打ちのめしてくれる映画は久しぶりだな。
 どうしようもない社会のどんずまりで喘ぐ無知な若者たちが、その未来に何も明るいものがない憤りをボソボソと綴っていくだけのドラマだ。もったいぶったモノローグで淡々と進行していくから、131分はちょいと長かった。

 「壁」を壊した向こう側には、やっぱり希望なんて全然見えてこない展開と終幕。「希望」が失われたあとの「無力感」。何も変わらず、何も始まらないと思えるエンディングを迎える。が、しかし、何度も何度も捨てられては立ち上がる安藤サクラのクローズアップに「私たちの望むものは」が流れてきたときには、なぜだか凄く心が揺さぶられていた。
 何なんだ、この感動は。

 阿部芙蓉美というシンガーソングライターがカバーした「私たちの望むものは」は、岡林信康の『見る前に跳べ』に収録されていたメッセージソング。ぼくら世代には1970年の中津川フォークジャンボリーで、はっぴいえんどをバックに従えての熱唱が心に響いている。
 当時の若者のメンタリティを歌い、人が幸せを求めるときには、己の心が変わらなければ社会は変わらないと、岡林信康が自らの在り方をメッセージした名曲だ。

 「私たちの望むものは社会のための私ではなく 私たちの社会なのだ」と歌い
 「今ある不幸せにとどまってはいけない まだ見ぬ幸せに今跳び立つのだ」と“生きる歓び”と“あなたと生きる”ことを謳ったあと
 「私たちの望むものはあなたと生きることではなく あなたを殺すことなのだ」と、逆転する屈折感で締める歌詞は、そのまま映画のラストに反映される。

 “ブスでバカで誰とでも寝る”カヨちゃんの「愛されたい」という思いだけで行動する一途さと、捨てられても殴られても逃げないタフさを見せてくれた安藤サクラが、場をさらっていったな。

再び「白昼の襲撃」、ジャズとの融合

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監督:西村潔
原案:菊村到「真昼の襲撃」
脚本:白坂依志夫、西村潔
撮影:黒田徳三
音楽:日野皓正
主題曲:「白昼の襲撃のテーマ」日野皓正クインテット
出演:黒沢年男、高橋紀子、出情児、岸田森、緑魔子、殿山泰司、石井くに子、桑山正一、若宮大祐、岩崎トヨコ

☆☆☆☆ 1970年/東宝/89分

2005年に書いたレヴューを大幅に改訂したものです。


 日野皓正の気怠いトランペットの音色が流れ、主人公たちの顔写真がカラー単色のモノクロでフラッシュされる洒落たタイトルが終わると、横浜の港や公園を風景に、岩崎トヨコの街頭インタビューが寺山修司の『初恋地獄篇』('69・羽仁進)や浅川マキのレコードのように挿入され、修とユリ子の出会いがスケッチされる。

 修(黒沢年男)はユリ子(高橋紀子)を街で見かけた。ユリ子の大きな黒い瞳と風になびく長い黒髪、ミニスカートから伸びた白い長い脚が、修に眩しい女性に映った。
 ユリ子は横浜のゴー・ゴークラブ“夜の海”の踊り子。小さな運送会社で働く修は、集金した一万円をポケットにユリ子の店に走った。
 少年院で兄弟分の約束を誓った左知夫(出情児)に“夜の海”で再会した修は、左知夫から一丁の拳銃をもらった。
 拳銃をちらつかせながら面白半分に恐喝をつづける三人。彼らにとって拳銃は、お伽噺に出てくる打ち出の小槌のようなものだ。
 ある日湘南の海に出かけた修とユリ子と左知夫は、2人の大学生が乗ってきた高級車を盗むことを考えたが、実行中に現れた2人に殴り掛かられ、咄嗟に修は拳銃の引き金を引いていた。格闘した際に大怪我をした修を担ぐ左知夫の前に、鳴海という男(岸田森)が通りかかり助けてくれた。
 鳴海は服役中の街の顔役佐伯(殿山泰司)の片腕だが、彼の妻・令子(緑魔子)と同様、やくざとは思えぬ知的な物腰と端正な生活に修は不思議な魅力を感じ、傷が癒えると鳴海の部下になった。
 やがて、刑期を終えた佐伯が出所してくる。佐伯を抹殺して後釜に座ろうとする一味は、鳴海に佐伯の殺しを承知させるが、鳴海はその裏をかき佐伯を救った。裏切り者を絶対に許さない佐伯は、裏切り者の殺しを修に命じ、修は佐伯商事の一員になった。

 しばらくして、街のどぶ川に鳴海の死体が上がった。インテリの鳴海は、実は政治的な暗殺を目的にしたアナーキストで、組を利用して資金を調達していたのだ。佐伯に腕を買われた修は、鳴海の後釜として外人バー“ライジング・サン”の経営を任され、ユリ子も踊り子を辞めバーのママとしての生活に有頂天の毎日である。
 大学生射殺事件を追及する刑事の動向に感づいて修は、逃亡を決意した。左知夫と彼の友人で父親のヨットを持ったジョニーに、サモアへの逃亡計画を打ち明け、その準備にとりかかった。
 修たちは佐伯を急襲して大金を奪い、ユリ子を迎えに行くと「左知夫と私とどっちを選ぶの」と詰め寄られる修。
 「佐知夫を捨てたら、俺の値打ちは無くなっちまうんだ」
 修は左知夫を選び、ユリ子を捨てた。
 「俺たちは逃げ出すんじゃない!戦いに行くんだ!新しい敵に向かって行くんだ!」
 夜明けの埠頭へ急ぐ3人。
 しかしそこには、愛する修に捨てられたユリ子の密告で捜査網が張られていた。捜査陣に向かって拳銃を乱射する三人だが、応戦する警官隊の無数の銃弾が彼らの躰を貫くのだった…………。

    ◇



 1970 年2月、加山雄三主演の『蝦夷館の決闘』(柴田錬三郎原作)の併映作として公開された「白昼の襲撃」は、東宝ニュー・アクション映画の担い手となった当時新進気鋭の西村潔監督が抜擢され、デビュー作「死ぬにはまだ早い」('69)に続いて黒沢年男と組んで(西村監督と黒沢年男の作品はこの2作品しかない)製作したハードボイルド映画の代表作だ。
 竹中直人が西村潔監督3作品(『死ぬには早すぎる』『白昼の襲撃』『豹《ジャガー》は走った』)を邦画のオールタイム・ベストテンに挙げているのだが、同い年として納得のいく選出。こんなにも惨めで、無様に死にゆく、それがまたカッコよく映る主人公たちの日本映画をそれまでに見たことがなかった。
 波止場で疾走する車を土管越しに見る横移動のカメラワークや、被写体トリミングのシャープな映像感覚は、低予算のなかで新人監督が好きなように撮った感じだ。
 スピーディーな展開も申し分なく、モダンジャズ愛好の西村監督が起用した日野皓正が奏でるジャズが、乾いた若者の心情を象徴するように倦怠と焦燥感を漂わせ、緊張感を高めながら見事に映像とマッチングしているから、当時高校生だったぼくらには堪らないほどインパクトのある映画だったのだ。

 主人公の修を演じる黒沢年男は当時26歳。キャバレーのボーイやトラック運転手を経て東宝ニューフェイスに合格した苦労人は、その体躯も面構えもハードな男ぶりで、ギラギラと満たされない若者像を奔放に演じている。
 ヒロイン的存在の高橋紀子は当時24歳。黒沢とは同期でデビュー作も同じ。大きな瞳と愛らしさがキュートで、当時、東宝の女優では酒井和歌子とともに好きな女優だったが、人気絶頂のこの年に、俳優寺田農と結婚して引退してしまったんだな。惜しいかったな。
 オカマの左知夫役の出(いで)情児は、この後俳優を辞め、井出情児と改名しロック・ミュージシャンの写真や映像を撮るカメラマンに転向。「村八分」や「RCサクセション」など、代表作のすべてが有名なロック写真家だ。
 岸田森と緑魔子のふたりは、これ以上にない絶妙な配役。

 サントラ盤は映画公開の前年の1969年11月にリリースされていて、定かな記憶ではないのだが映画を観る前にこのシングル盤を買っていたと思う。60年代は日野皓正が絶大な人気を誇っていた時期で、スイング・ジャーナル誌の人気投票では常にトップに位置し、ロックしか聞かなかった高校生でもヒノテルはカッコイイ存在だった。

 ロック感覚のダイナミックな「スネイク・ヒップ」は、オープニングのゴー・ゴー喫茶で当時の日野皓正クインテット(tp:日野皓正、ts:村松健、b:稲葉国光、p:鈴木宏昌、ds:日野元彦)のステージ演奏で聴くことができる貴重な映像。
 B面の「白昼の襲撃のテーマ」は、修たちが拳銃をちらつけさせながら暴走しているシーンに、疾走感をほとばしりながら豪快に奏でられるのだが、本編ではこのワンシーンでしか聴けない。感覚としては何度も流れていたような気がするのだが。
 シングル盤には効果音として、エンディングに銃声音と修の咆哮が挿入されていたのが強い印象としてあるので、実は2005年に再見するまで、ラストの銃撃戦にもこのテーマ曲が流れていたと思っていたのだ。実際は違った。
 修がユリ子に別れを告げるシーンからラストまでの約8分間、バックグラウンドには日野皓正クインテットによるインプロヴィゼーションが繰り広げられる。これが凄い。

 CD化(『GO! CINEMA REEL3 ワイルド・サイケを歩け』)において、銃声の効果音はそのまま入っているのだが、修の息づかいと叫び声がカットされていた。効果音など演奏を聴くに何の意味もないなんてどこかに書かれていたことがあるが、サントラ盤として聴き慣れ親しんできたものには、この絶望感のカットアウトがないとどうにも不自然さを感じるのだが……。



hakuchunoshugeki_cd.jpg ★オリジナル・サウンドトラック

 11月23日に『白昼の襲撃』のサウンドトラックCDが発売される。これまで「スネイク・ヒップcw白昼の襲撃のテーマ」のシングル盤しかリリースされていなかったので、全編日野皓正クインテットの劇伴がマスターテープから商品化されることは、快挙だ。
 ただし、多分「テーマ」のエンディングの効果音はカットされているだろうな。代りに未使用曲とか、ノーカット演奏のレア音源が収録されていることを楽しみにしよう。


★死ぬには早すぎる★
★白昼の襲撃★
★豹《ジャガー》は走った★

原田芳雄、追想 そして、曽根中生、語る



 『映画芸樹 2011年秋号』は芳雄さんの特集。
 追悼じゃない、追想……。

《座談会》 石橋連司・佐藤浩市・阪本順治
~その広々とした人格の間に

《インタビュー》 桃井かおり
~どんなに不様なときでも生きるほうを選択させてくれた
 芳雄は、そういう人魂だった

《座談会》 宇崎竜童・山崎ハコ・早坂紗知・大木雄高
~芳雄さんにありがとうって言おう

《対談》 森崎 東・近藤昭二
~本気で死んだと言ってくれ

《追悼文》
内田裕也  献杯!
小野武彦  兄貴、偉いよ
柄本 明  ヨシオさんのこと
田辺泰志  永遠のアンチヒーロー
黒崎 博  他者への敬意に満ちている人
森本佑司  「熊野」と感応した役者

《論考》
原田芳雄、その軌跡を辿る  上野昂志

《原田芳雄全映画 1968~2011》



 「仕事を遊ぶ」ことで仲間を増やしていった芳雄さんの「遊び仲間」が語る“原田芳雄像”からは、やっぱり、唯一無二の俳優であり、シンガーであり、人間芳雄の凄さ、素晴らしさ、カッコよさしか見えてこない。あらためて、失ったものの大きさを実感してしまう文章の数々。
 原田芳雄を愛するすべての映画ファンと、すべての音楽ファンが読むべき本だと思う。

 荒井晴彦氏のインタビューで、朋友・桃井かおりは今まで語ったことのない真情を吐露している。
 「デビューで蓮司さんと一緒で、次に『赤い鳥逃げた?』で芳雄さんと一緒で、その後、クマちゃん(神代辰巳)に移行しているから、普通には育たない(笑)」などと、自らを野生の女優と云う桃井かおり。彼女の中心にあったものが原田芳雄という大きく太い柱だったことは自明の理であり、彼女の言葉ひとつひとつに原田芳雄に捧げる愛情の深さが表出していて、読み終えたときは心の揺さぶりが大きくて涙が滲んでくる。

 いま桃井かおりは仕事の拠点をアメリカ西海岸に移して、外国人映画作家と映画に携わっている。文中で語っているように、芳雄さんも桃井かおりも台本どおりにやらない俳優。ショーケンもそうだけど、台詞を巧く覚えるだけの役者じゃなくて身体で台詞を生む役者は、いまの日本映画では使いづらいんだろうな。
 パキさん(藤田敏八)も、クマさんも、黒木(和雄)氏も、優作も、芳雄さんもいない。なんだかひとり、ポツンと残されてしまった感覚が、ぼくらファンにも大きく伝わってくるインタビューだった。

 内田裕也御大のあふれる愛情、俳優座一期後輩の小野武彦さんのやさしさ、柄本明さんの羨望と嫉妬に再び涙が浮かぶ次第………。
 松田優作と夏目雅子と芳雄さんのアクション喜劇や、蓮司さんとコンビの喜劇など芳雄さんに向けてホンを書いていたという田辺泰志氏(清水邦夫氏とともに『竜馬暗殺』の脚本を執筆)も、大きな夢で遊んでいたのだなぁと感慨。
 
 ブルーズ・シンガーでもあった芳雄さんに共鳴した宇崎竜童さんと山崎ハコ嬢の想いも素敵だな。芳雄バンドでサックスを吹いていた早坂紗知さん、プロデューサーの大木雄高氏、ホント、有り難うですね。

 告知として、待ち遠しかった森崎東監督の映画『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』が来年の1月21日にDVD発売される模様。
 そうだよ いつでも、また会えるんだ。



 そして、再来した曽根中生を気心知れた荒井晴彦氏がインタビュー。これも必読。
 相米慎二や池田敏春を育てたと言っても過言ではない天才・曽根中生氏。言っちゃ悪いが『映画秘宝』や『キネマ旬報』のインタビューより、断然読み甲斐のある座談会である。
 映画しかなかった中生氏が映画に叩きのめされ、突然映画と決別しなければならなかった事情を淡々と語る、浦島太郎が海辺に戻って来たような曽根中生氏。
 新しく情熱を傾けるものに出会い、映画に冷めていることには少し残念で寂しいな。
 
    ◇

映画芸樹 2011年秋号
【編集プロダクション映芸】
定価 1,500円