TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「雨やどり 新宿馬鹿物語 1」半村 良



 何度も読みかえす小説が誰にも一冊二冊はあると思う。
 ぼくで言えば、切ない気持ちに飢えるのだろうか、鷺沢萠の中・短編集『さいはての二人』の秀逸な人情噺を何度も読み返してはグッときている。

 そしてもうひとり、この半村良の連作短編集『雨やどり』も、1975年に単行本を購入してから幾度となく読み直している一冊だ。装丁の滝田ゆうのイラストもイイんだな、これが。
 
 半村良は「伝奇ロマン」なるジャンルを確立したSF作家であるが、実はSF作品は一冊も読んだことがなく『戦国自衛隊』でさえ映画でしか知らない。この“新宿馬鹿シリーズ”や『下町探偵局』『おんな舞台』『晴れた空』など、人情噺の小説だけに魅せられている半端な読者ということになるかな。


 舞台は新宿裏通りのバー街。
 バー〈ルヰ〉のマスターでバーテンダーの仙田を主人公に、彼のまわりに棲みつくホステスや客たちの人間模様は、男と女の昭和歌謡が聴こえてくるような世界感であり哀感あふれる。
 大半に不思議な女たちの生態が描かれるのだが、作家になる前には実際に新宿でバーテンダーを生業にしていた半村良だから、時代とともに変わりつつある新宿の街を舞台に、心根のやさしい夜の街の男と女の情景が温かく描写されている。
 

おさせ伝説
 常連客の室谷がホステスの多可子と結婚するという。しかし彼女は、誰から口説かれてもイヤとは言えず寝る女だった。そのうえ多可子の正体は……。

ふたり
 「まだ二十八」「もう二十八よ」おっとりした純日本美人の芳江と、何事にもドライな洋風美人の京子。バー〈ふたり〉の、二人のママの前に現れたひとりの男………。

新宿の名人
 仙田のバー〈ルヰ〉の開店祝いに尽力した中年紳士は、新宿のことならホステスや店の善し悪しに関して何でも判る“名人”と一目置かれている。その彼が〈ふたり〉の京子を引き抜いて店を出すという……。

新宿の男
 時代に合わない古くさい小さなバーを経営する周平が、過激派に追われる男を匿っていた。男は、かつて夜の街の住人たちから慕われた小さな食堂の女将の息子だった。聞きつけた仲間たちは周平の店に集まって………。

かえり唄
 バー〈ルヰ〉のピアニストは、かつてはヒット曲を書いた作曲家。彼の曲で一度は売れっ子になった元歌手と、彼のファンだという女の行く末は……。

雨やどり
 突然の雨に仙田のマンションに雨やどりしたホステスの邦子。仙田と親しい関係になり、仲間内でも公認となったふたりだったが、実は邦子はワケありの女だった……。

昔ごっこ(初出時『新宿西部劇』を改題)
 関西の金満家の資本が新宿に乗り込んできた。老舗キャバレー〈ゴールデン・ベア〉の土地を目当てに同業店を隣にオープンするが、新宿の古き良き時代を知る昔の仲間たちは悠然と受けて立つ……。

愚者の街
 我が身の愚かさを愛おしみ、人の愚行に同情する“莫迦たち”。作者が投影された男に愛しさを込めて語らせる“馬鹿物語”には、人生の真理が垣間見られる。

 1975年直木賞受賞の表題作「雨やどり」を含む8編の人情噺は、1977年に『新宿馬鹿物語』として続編が上梓されている。
 同じ1977年にその『新宿馬鹿物語』をタイトルして『雨やどり』は映画化され、主演の仙田役には愛川欽也。艶っぽい邦子には太地喜和子、おさせの多可子役は朝丘雪路が出演。脚本は神代辰巳で、中年男の哀感あふれる作品だったと記憶する。

    ◇

雨やどり/半村 良
【河出書房新社】
定価 780円(絶版)
1975年2月初版


amayadori_bunko.jpg【集英社文庫】
定価 600円
1990年8月


★晴れた空★

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「チャイナタウン」*ロマン・ポランスキー



CHINATOWN
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロバート・タウン
衣装:アンシア・シルバート
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン、ペリー・ロペス、ベリンダ・パーマー、バート・ヤング、ジョー・マンテル

☆☆☆☆★ 1974年/アメリカ/130分

    ◇

 「Forget it, Jake. It's Chinatown」

 ロマン・ポランスキー監督の最高傑作と言えるフィルム・ノワール。
 開発途上の1930年代のロサンジェルスが舞台だが、ハリウッド製ハードボイルド映画全盛だった1940~50年代のいかがわしさと妖しさに満ちたムードとストーリーで、1970年代の作品にしてフィルム・ノワールの古典ともなった映画である。


 ロス警察のチャイナタウン管轄に勤務していた元警官のジェイク・J・ギテス(ジャック・ニコルソン)は警察に失望して退職し、今は浮気調査専門の私立探偵をしている。 
 ある日、ミセス・モーレイと名乗るダム建設技師の妻から夫の浮気調査を依頼され、ギテスは捜査活動をはじめる。
 モーレイ技師のことで判ったことは、地盤が弱くて危険だという理由で町をあげてのダム建設に反対し、枯れかけたロサンジェルス川に異常な関心を示していたこと。そして肝心の浮気の調査は、確かに若い娘とデートをしていてアパートに出入りしているところを写真に収めることができた。
 ところが、モーレイの浮気がゴシップ新聞に漏れ記事になったことで、モーレイ夫人が弁護士同伴で名誉毀損で訴えるべくオフィスに乗り込んできた。それも、やって来たのは最初に仕事を依頼した女とは違い、イヴリン(フェイ・ダナウェイ)と名乗る美しい貴婦人だった。
 その後、貯水池でモーレイの水死体が上がる。

 ギテスの第六感が、仕事抜きでこの不可解な事案を確かめるべく行動をさせるが、深夜の貯水池でふたりの男に襲われ、小男(ロマン・ポランスキー)に鼻をナイフで切られるにいたっては、もはや後には引けないギテス。 
 次第にイヴリンに惹かれながらも、不可解な行動をするイヴリンと謎の愛人の存在。ついに、LA開発の利権に絡む汚職と近親相姦というおぞましい秘密を知ったギテスの前に、イヴリンの父親で町を牛耳る実力者ノア・クロス(ジョン・ヒューストン)が立ちはだかる。
 そして夜の帳のチャイナタウンに、病める人間たちが集まり、幕は下ろされる………。

    ◇

 しがない浮気調査などケチな仕事ばかりの探偵ジャック・ニコルソンのダンディな装いとクールな振る舞いが実にセクシーだが、ハードボイルドのタフガイににありがちな自己陶酔的美学の格好良さがまるでなく、それどころか、まったくカッコ悪い探偵像であり、挫折した警官時代の心の傷を引きずりながら、またも悲劇に突き進む男の無力感を漂わす人間臭いところがニコルソンの味わい。

 ノワールもので肝心なのが主人公を虜にするファムファタール。退廃的で、絶えず妖しさを漂わすフェイ・ダナウェイの、屈折した内面を病的に演じる芝居が素晴らしく、1930年代のファッションに身を包み、キャサリン・ヘップバーンやディートリッヒ、グレタ・ガルボに比肩する存在感で魅せてくれる。
 何事にも妥協しないダナウェイは、ギテスがイヴリンから娘の真実を聞き出すクライマックスシーンにおいて、ニコルソンに本気でぶつよう要求したかと思えば、ロマンポランスキー監督とは役柄について衝突し、ついには監督の頬を平手打ちをした逸話も残っている。

 そして、強欲で冷酷な悪役クロスを演じる巨匠ジョン・ヒューストン監督の風格がこの作品の要であろう。
 古典的ハードボイルドの名作『マルタの鷹』('41)からはじまり、ハンフリー・ボガードとのコンビで“タフだが人情に弱い”主人公を何人も形成してきた監督が、ここでは、映画史上最も悪辣な男を演じているのが興味深い。

 脇の役者もいい。70年代ジェームズ・カーンとの共演が多かったバート・ヤングは、ずんぐりムックリした冴えないルックスでいつも特異な雰囲気を漂わせてくれるが、オープニングでギテスから妻の浮気を知らされるだけの彼と思いきや、ラスト近くにはもうひとつ出番が設けられている。

 ヒッチコックばりに自身の映画にチョイと出てくるロマン・ポランスキー監督の殺し屋が、ニコルソンの鼻を切る不気味な場面。その後、主人公の顔に大きな絆創膏を貼ったままの奇妙な姿に、不穏な物語のムードを常に意識させられるアイデアだ。眼光をギラギラさせるニコルソンが凄い。

 音楽は名匠ジェリー・ゴールドスミス。忘れがたいメロディ・メーカーであり、オープニングとクロージングに流れるテーマは、物語全体を包む悲しみをノスタルジックに、切なく、30年代の退廃ムードを醸し出すジャジーな旋律で魅了させてくれる。
 本作以前では『野のユリ』('63)『猿の惑星』('68)『パピヨン』('73)、本作以後は『オーメン』('76)『エイリアン』('79)『ランボー』('82)『氷の微笑』('92)『L.A. コンフィデンシャル』('97)等々、幅広いジャンルに多し。
 

 「忘れろ、ジェイク。ここはチャイナタウンだ」

 夜のチャイナタウンに銃声と悲鳴が響くなか、立ち尽くすギテスに同僚のウォルシュ(ジョー・マンテル)が、ここは“見て見ぬフリをする街” と告げる衝撃的な終幕。この台詞がAFI選出のアメリカ映画名台詞100選に選ばれているのも納得できるほど、感慨深いラストシーンになっている。

 レイモンド・チャンドラーやダシール・ハメットなどの探偵小説にオマージュが捧げられたロバート・タウンのオリジナル脚本(1974年度アカデミー賞オリジナル脚本賞受賞)では、ジョン・ヒューストンが死ぬラストが用意されていたのだが、ポランスキー監督はハリウッド映画の常識を無視して、非情な結末に変更したのだった。

 過酷で無力な人生、絶望の渕を歩んできたポランスキー監督の「現実の世界には正義などない。陰険であくどい者たちがのさばるだけだ」とでも言いたげな、絶望感が集約されたラストなのである。

1975-12_チャイナタウン


「フリックストーリー」*ジャック・ドレー

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FLIC STORY
監督:ジャック・ドレー
原作:ロジェ・ポルニッシュ
脚本:アルフォンス・ブーダール、ジャック・ドレー
撮影:ジャン・ジャック・タルベス
音楽:クロード・ボラン
出演:アラン・ドロン、ジャン=ルイ・トランティニャン、クローディーヌ・オージェ、レナート・サルバトーリ、モーリス・バリエ、アンドレ・ブッス、マルコ・ベラン、フランソワーズ・ドルネール、ポール・クローシェ、モーリス・ビロー

☆☆☆★ 1975年/フランス/108分

    ◇

 生涯に36件も殺人事件を起こしたフランス犯罪史上最も凶悪なギャングと、彼を追いつづけた敏腕刑事の3年間に渡って繰り広げられた死闘を綴った実録小説の映画化。
 原作者のロジェ・ポルニッシュは、国家警察に勤めた12年間に567人もの凶悪犯を逮捕し“スーパーデカ”の異名を持った刑事で、脱獄してパリ市内に潜伏した凶悪犯エミール・ビュイッソンの足取りを辿り、逮捕するまでを映画は描いている。
 派手なアクションはなく、追う者と追われる者との人間関係に重点をおいた犯罪ドラマである。
 直接ポルニッシェに会い、映画化権を獲得したアラン・ドロンが製作も兼ねている。


 1947年9月、フランス国家警察の刑事ロジェ・ポルニッシュ(アラン・ドロン)は、脱獄したエミール・ビュイッソン(ジャン=ルイ・トランティニャン)の逮捕を命じられた。主任のポストを狙っていたポルニッシュには絶好のチャンスである。ビュシェーヌ署長(マルコ・ベラン)には、ライバルのパリ警視庁との対抗意識むき出しで、自分の出世の糸口にしようとする魂胆があった。
 実兄(アンドレ・ブッス)らの手引きで脱獄したビュイッソンは、まず、かつて自分を密告したクラブのアコーディオン弾きを射殺するといった大胆な行動にでた。そして次には、高級レストランを襲いブルジョアたちの金品を奪い、逃亡の途中、追跡してきた白バイ警官を躊躇なく射殺した。
 仲間たちの隠れ家を転々として、大胆で冷酷な犯行を繰り広げるビュイッソン。捜査は難航し、国家警察全体に焦りが見えてきた。
 ポルニッシュは地道にビュイッソンの仲間たちを洗い出し、じりじりと捜査の輪を狭めていくのだが、上司からの圧力を受けながら後手後手になる捜査の責任を問われ捜査班から外されてしまう。
 ケチな犯罪の係を言い渡されたポルニッシュだったが、郊外の小さな殺人事件の死体がビュイッソンの手下のイタリア人マリオ(レナート・サルバトーリ)だったことから、それをきっかけに、マリオの仲間で小心で初老の男ポロ(ポール・クローシェ)に辿り着く。肺病で重症患者である妻をもつポロに密告者になることを要請するポルニッシュ。その巧みな取引が功を得、ついにビュイッソンの所在を掴むことができた。
 その日、1950年6月10日、ポルニッシュは恋人のカトリーヌ(クローディーヌ・オージェ)と同僚ふたりを連れて、ビュイッソンが隠れる郊外のB&B(シャンブル・ドット=旅館)に向かい、たまたま通りがかった気さくな4人連れを装い大芝居を打つ。
 ビュイッソンは逮捕され、1956年2月に死刑が執行された。

    ◇

 アラン・ドロンがプロデュースをする作品では、ドロン自身は常に一歩引いた感じで主演を務めている。
 始終タバコを口にくわえたドロンは、グリーンのコートを着て少し冴えない雰囲気をだし、逃げるビュイッソンを追って窓から飛び降りるも、あえなく屋根からもんどり落ちる格好悪さも見せたりする。
 上司に尻をひっぱたかれ、仲間の刑事には気をつかう役どころでありながら、どんな役を演じても存在感を醸し出すのが、やはり一流のスターであるアラン・ドロンだ。

 そのドロンの相手役が、『男と女』('66)で世界中に名を馳せた演技派ジャン=ルイ・トランティニャン。
 70年代に入っての作品『暗殺の森』('70)『流れ者』('70)『刑事キャレラ/10+1の追撃』('71)『狼は天使の匂い』('72)『離愁』('73)はどれも名作ばかりで、今作がアラン・ドロンとの初共演。渋いながらも演技巧者の役者だから、存在感ではドロンをも圧倒している。
 彼が演じるビュイッソンは、極貧の家庭に育った暗い過去を背負った男で、荒んだ心を抱えて生きている強烈なキャラクターとなる。だから、これまで温厚な役柄が多かったトランティニャンが演じる不気味さは強く印象に残る。とにかく冷血ぶりが圧巻なのである。
 一貫して無表情だったビュイッソンが、最後、カトリーヌがピアノで弾く「ラ・ヴィアン・ローズ」に聴き入り、ふと顔をほころばせるところは、ここ以前にもビュイッソンが部屋でエディット・ピアフの「ラ・ヴィアン・ローズ」のレコードを聴いているカットが挿入され、冷徹な男の唯一人間的ふるまいが見られるシーンとなっている。微笑の中に冷酷さが見え隠れするトランティニャンの芝居が光る。
 この最後のポルニッシュがビュイッソンを捕まえるシークエンスが、実際に行われたことなのかどうかはわからないが、息づまる緊張感が漂う名シーンであろう。

 ドロンの恋人役のクローディーヌ・オージェも男ふたりの間で堂々たる存在ぶり。
 なんと神秘的で、美しく、麗しいことよ。
 『007/サンダーボール作戦』('65)のボンドガール、ドミノで世界中が注目した女優だが、小学生時分に劇場で観た時にはすっかり虜になり部屋にピンナップをした女優のひとりだ。やはり好きな女優キム・ベイシンガーのデビューがリメイク版(『ネバーセイ・ネバーアゲイン』)のドミノ役だったが、上品な美しさという点でクローディーヌ・オージェには全然叶わないな。
 いまだ007全シリーズ中最高のボンドガールは、クローディーヌ・オージェだと思っている。

 さて、ビュイッソンの仲間を演じるレナート・サルバトーリや、ポール・クローシェ、モーリス・バリエら、70年代のアラン・ドロンの映画ではお馴染みの俳優たちが脇を固めているのも嬉しい作品なのだ。


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※「フリック」とはフランス語で「デカ=刑事」の意味

★狼は天使の匂い★

「アウトバーン~組織犯罪対策課 八神瑛子」深町秋生



 きれいごと並べた正義漢なんてクソくらえ。
 タフで、非情で、冷酷なヒロインに喝采を。

 洋の東西を問わず悪徳刑事ものってのは昔からいろんなものがあったが、美貌の女性刑事がダーティーに活躍するノアール小説は珍しい。
 「アンフェア」の雪平夏見刑事を少し思わせるや、もっとクールで、タフなヒロインの登場である。

 警視庁上野署組織犯罪対策課に勤める警部補・八神瑛子35歳は、誰もが認める美貌の持ち主だが、3年前に最愛の夫を亡くし、身籠った娘を流産したときから、修羅の道に入った。
 真実を追うためなら、金で同僚を飼い、躊躇なく暴力を駆使し、暴力団や中国マフィアと癒着する。
 その胸には、夫の死を自殺と断定した警察組織に対する、不信と憎悪が渦巻いていた。
 
 上野署管内で女子大生刺殺事件が起きた。捜査本部に組み入れられない瑛子は、若手の部下・井沢と暴力団事務所の見張りをしていた。そんな折り、別の管内で同様の手口で若い女性が殺される。被害者は中国人女性。連続殺人事件の様相から合同捜査本部が立ち上がるが、そんなとき、瑛子が見張っていた事務所を仕切る戸塚と云う男から話があるからと誘いがくる。実は最初に殺された女子大生は大組織の組長の娘で、犯人の行方が判ったら教えて欲しいというものだった。
 一方瑛子は事件とは別に、親しくしている英麗という中国人女実業家の依頼で、ある男を探していた。英麗はかつて中国マフィアのボスの情婦で、夜の女たちの間では生ける伝説の女性だ。
 瑛子が関わるふたつの事案が結びついたとき、ひとつの真相が白日に曝されるのだった……。


 シリーズの第一話として今後への顔見せ的なところがあり、そのため、テレビドラマをノベライズしたような展開は否めないが、エンタテインメント性豊かなアクション、筋立て、伏線、そしてその回収がきちんと出来ているから、十二分に惹き込まれ、面白く読み終えることができる。
 もちろんシリーズを通しての謎も用意されているし、瑛子を取り巻く人間関係も面白く設定されている。ヤクザの戸塚や弟分の甲斐、女傑の英麗、蛇頭の幹部の郭ら悪党の強烈なキャラクターは当然に、瑛子を監視する上司の富永や、瑛子と反目する捜査一課の連中もいろいろ魅力的に描かれている。
 瑛子に協力する元女子プロレスラーの里美が登場してくる箇所に至っては、『ワニ分署』って劇画(横山エミーの映画版はヒドかった)を思い出したりして………。 

 今後おおいに期待したいシリーズだけに、キャスティングをしてみた。
 30代後半でアクションが出来るヒロインなら、水野美紀が最適でなかろうか。
 

アウトバーン~組織犯罪対策課 八神瑛子/深町秋生
【幻冬舎文庫】
定価 533円(税別)

「前科おんな 殺し節」*三堀篤監督作品



監督:三堀篤
脚本:松田寛夫、神波史男
音楽:八木正生
主題歌:「ふうてんぐらし」池玲子
出演:池玲子、杉本美樹、片山由美子、風間千代子、宗田政美、葉山良二、地井武男

☆☆☆ 1973年/東映/83分

    ◇

 ここ何年かの間で、東映ピンキー・ヴァイオレンス映画が次々とDVD化されるようになり、今年はついにB級カルトの傑作「0課の女 赤い手錠」がリリースされた。そして、つづいて待ち遠しかったこの作品のパッケージ化が叶った。
 70年代に徒花として咲き乱れた池玲子と杉本美樹、最後の競演作である。


 覚醒剤の売人をしていた父親を殺されたマキ(池玲子)は、愚連隊あがりの新興やくざ大場興業の社長(葉山良二)を仇として襲うが、失敗。逮捕され女子刑務所に送られる。

 雑居房には、白バイ警官2人への傷害でマキと一緒に送られてきた夏子(風間千代子)をはじめ、強姦(嫌がる男を無理強いしたことで女にも強姦罪が適用)と恐喝罪のかおる(片山由美子)、女スリの雪江(宗田政美)、イカサマ女賭博の政代(杉本美樹)らがいる。ふてぶてしいマキと政代の間で決闘がはじまり、長い死闘の末、マキの根性を認めた4人との間に友情が生まれる。

 数年後、マキの出所をかおると夏子と雪江が迎えた。マキは3人とともに町に舞い戻り、大場への復讐をはじめる。
 大場興業と敵対する浜安組の狂犬・鉄(地井武男)に近づき、喧嘩をけしかけたりして幹部をひとり一人始末していく。
 そんなある日、マキが大場興業に捕まってしまい、リンチを受けるマキを助けてくれたのが、実は大場の情婦だった政代だ。友情に免じて一度だけの手助けと、大場の覚醒剤の取引情報を掴み、無事逃げ出すマキだった。

 マキたちは鉄らを装って覚醒剤取引現場を急襲し、覚醒剤を横取り。あとはマキの筋書きにあわせ、鉄の居場所を大場に持ちかけ大金をせしめ、ふたつの組の殺し合いを画策。生き残った鉄と大場に、武装した4人のオンナたちが襲いかかるのだった。
 マキの復讐は終わり、あとは政代との対決。再びふたりの死闘がはじまる………。

    ◇

  ♪ろくでなし 風が気ままに 吹くように ひとり 気ままにいきるのさ

 やさぐれた節回しが耳につく池玲子の「ふうてんぐらし」をタイトルバックに、女子刑務所からはじまる。虚無感にあふれる池玲子の歌声は絶品。

 雑居房での池玲子が梶芽衣子を真似たように口を一切きかない展開は、この年伊藤俊也監督が『さそりシリーズ』を降りた恨めしさか、『女囚さそりシリーズ』の脚本家松田寛夫と神波史男らしい手の内。(年末に高倉健の『ゴルゴ13』併映作として長谷部安春監督による『女囚さそり 怨み節』が公開される)
 片山由美子が雑居房のボスかと思いきや、あっさり仲間意識を見せるところなどが他の女子刑務所ものとは違う展開。それでもまずは、お約束のように新入りの池と先輩格の杉本とのキャットファイト。ダチとして友情が結ばれる決闘シーンは、運動場のライン引き用の石灰に塗れたアクションがラストのキャットファイトへの伏線ともなり、見せ場としては十分。

 ポルノチックな場面が少ないので成人指定を免れ、大人のガールズアクション映画を目指したのだろう、オンナたちのオトコたちへの徹底したいたぶりがワクワクするように進んでいく。
 劇画チックな4人の幹部のオトコたちを次から次に狙い、狂犬・地井武男らと衝突させる展開は黒澤明の『用心棒』的作戦で面白い。

 2度の池玲子と杉本美樹のタイマン勝負は、結局、決着がつかないまま、次なる獲物を狙って去って行く5人のオンナたちであるが、シリーズのつもりで製作したこの作品も単発のまま終わってしまったわけだ。
 姐御気取りの池玲子の存在感と、杉本美樹のクールな佇まいは見逃せない。


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★杉本美樹vs池玲子 ~女番長流れ者/ふうてんぐらし~★

You were here、ジョーさん

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   ある夏の日 きのこ雲が盛り上がり 誰も見えない 誰も聞こえない………


 フラワー・トラヴェリン・バンドの名曲『HIROSHIMA』を流している

 “ヒロシマ”を過ぎた7日 ジョー山中さんが天空へ駆けてった

 2010年3月の肺がん宣告以降 長い闘病生活を経て 
 ショーケンの新作アルバム「ANGEL or DEVIL」に参加し
 コンサートにも元気な姿をみせていた
 本気で ふたりが競演した大人のサウンドだった
 ショーケンとのユニゾン「愚か者よ」は 格別よ 
 サイコーだった

 東日本大震災の復興支援活動の活動にも精力的に参加していた

 日本ROCKが一番熱かった時代を突き抜けてきたひとりが また消えてしまった

 波乱の人生
 多くのロック・ミュージシャンの仲間たちから 誰からも愛されていたジョーさん

 願わくば もう一度フラワー・トラヴェリン・バンドのステージを観たかった

 享年64 
 早すぎるけど 
 向こうでゆっくりと 
 そうだな 
 原田芳雄さんと一緒にヨコハマ・ホンキートンク・ブルースでも口ずさんでいてください
 

★フラワー・トラヴェリン・バンド“JAPAN TOUR 2008” 名古屋ライブ★
★フラワー・トラヴェリン・バンド“JAPAN TOUR 2009” 名古屋ライブ★
★萩原健一/ANGEL or DEVIL★