TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「相棒 劇場版 II」*和泉聖治監督作品



~警視庁占拠!特命係の一番長い夜~
監督:和泉聖治
脚本:輿水泰弘、戸田山雅司
音楽:池 頼広
出演:水谷豊、及川光博、小西真奈美、小澤征悦、宇津井健、國村隼、石倉三郎、葛山信吾、平岳大、品川徹、江波杏子、川原和久、大谷亮介、山中祟史、山西惇、六角精児、神保悟志、小野了、片桐竜次、原田龍二、益戸育江、岸部一徳

☆☆☆☆ 2010年/東映・テレビ朝日/119分

    ◇

 面白い!
 『相棒』シリーズお得意の警察内部の腐敗や隠蔽体質、出世と利権を保守する官僚主義の“組織悪”を描いた骨太な映画になっており、TVシリーズを見続けてきたファンとしては、最後に暗転するまでの十二分の満足に「これぞ相棒!」と拍手を贈りたい。

 警視庁館内で、警視総監を含む各部署の幹部12名を人質にした篭城事件が勃発した。犯人は元 刑事の八重樫(小澤征悦)という男。SATなどが強行突破する寸前に室内から銃声が響き、八重樫は死亡。
 副総監(國村隼)らの正当防衛で事件収拾を図るなか、7年前に起きた公安がらみの警察官死亡事件とそこに蠢く組織防衛の暗い闇が浮かび上がり、それに伴い警察庁と警視庁との対立に拍車がかかることになる………。

    ◇
 
 事件は、12月22日にテレビ放送された第9話「予兆」のラストから繋がる。もちろんストーリーが繋がっているわけではなく、お馴染みの登場人物たちの行動がそのまま事件に導入していく仕組みだ。
 もともとドラマは、各エピソードの時系列はバラバラに放送されている。第9話「予兆」と映画のエピソードは、神戸尊(及川光博)と総務部の陣川(原田龍二)とが初対面となっているので、現在放送中の“シリーズ9”より前の事件だということが判る。
 また新しい視聴者に対して、神戸尊と大河内監察官(神保悟志)との関係や、杉下右京(水谷)と小野田官房室長(岸部一徳)の因縁を簡単に説明するといったフォローも行き届き、テレビと映画の連動を見せつけていた。

 「まさか、絶対的正義がこの世にあると、思っている?
    正義なんて、立ち位置によって変わるもんでしょ」

 警察庁を省に格上げする構想を持つ小野田官房室長の言葉は、権力者が“正義”をどうにでも出来るということだ。映画では、警視庁の人事を刷新しようとする動きが起きるが、現実に大阪地検のねつ造や隠蔽工作があっただけに、警察国家の暴走をも暗示する映画のテーマは恐ろしく現実的である。

 『相棒』シリーズは、テレビにおいて人間ドラマとして水準以上のエピソードを呈示してくれるドラマだけに(最近では12月15日放送の第8話「ボーダーライン」のメーセッジには胸が詰まる)、今回の映画版においても、“組織悪”という社会の矛盾を下敷きにした群像劇がいい具合に現実を想像させ、観客に共感できるように多くの登場人物のエピソードをきちんと整理して見せてくれている。
 『相棒』シリーズお馴染みのメンバーらをはじめ、事件の核心で右京と尊らと対立する立場にいる大河内監察官の葛藤や、角田課長(山西惇)らノンキャリア組の悲哀も効いており、『相棒』エッセンスは満点。

 そして『行きずりの街』につづいて、小西真奈美には魅了された。
 凛とした佇まいの彼女の、もう一面である愁いの表情。最近では珍しい品と情緒を感じさせる女優だ。子犬顔特有の人懐っこい表情が、多用されるクローズアップのなかで変幻する様は見ものである。


 ◆以下ネタバレはしないけれど、結末に触れます。

 


    ◇


 さて、すでにネタバレ的発言でネットを騒がせている賛否両論の事案。
 とは云ってもエンディングのエピソードは、『相棒』スタート時からのライター輿水泰弘の独擅場だろう。予想できない出来事だったが『相棒』だからこそ可能な展開だったと納得がいく。『相棒』スタッフでしか描けない結末、こういくことを平気でやってしまうのが『相棒』なわけだ。

 政治的駆け引きでうやむやになる現実的解決をもドラマで描いてきたシリーズだが、ラスト、杉下右京なりの“正義”を、けじめとして発する言葉は力強い。
 尊が特命係に残る決意をした直後の大きな事件であろうから、ここから現在の“シリーズ9”へと繋がり、今後、“シリーズ10”ではもっと大きなことが待っているのかもと、新たな『相棒』ワールドを想像する楽しみができたと考えたい。


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「禁猟区」乃南アサ



 迂闊だった。
 同業(ガイシャ)の隠密(インスペクター)に追われていたとは。
 監察官………
 それは刑事(プロ)を網にかけるプロ。  

 捜査情報が漏れている?
 刑事が立場を利用して金を動かしている?

 警察内部の犯罪を追う監察官はあくまで陰の存在。
 隠密行動を貫いて「密猟者」を狩り出してゆく。

 尾行される刑事は意外にも無防備。獣道に沿って仕掛けられた罠に気づきもしない。プロとしての自負が邪魔するのだろうか。

 監察チームの頭脳プレーを描く本邦初の警察インテリジェンス小説、ここに誕生!  “帯惹句より”

    ◇

 2010年は乃南アサの単行本が4冊発刊されたが、11月に出た『地のはてから』(上下巻)以外は連作短編集で、なかでも本作は、警視庁警務部人事一課つまり警察内部の犯罪を追う監察官の物語で、なかなか面白い題材を扱った傑作である。

 物語は、ふとしたことがきっかけで転落していく警察官の様子と、若い女性監察員沼尻いくみの視点から顛末が語られ、監察対象となる人物造形もしっかりしているからシリアスな人間ドラマが展開していく。
 
禁猟区
 かつて補導した少年に再会した生活安全課の女性警察官。彼がホストになっていたことで、ホスト遊びの泥沼に嵌り込み、そして………。

免疫力
 組織犯罪対策課の刑事が、不治の病の息子に効いた健康食品を馴染みの組長に紹介したことで、組のシノギの一端を担うことになってしまう……。

秋霖
 時効まで1ヶ月になった殺人事件を追う老練な刑事は、捜査当初からクロと睨んでいた男に対し、情報リークと偽の証拠品で揺さぶりをかけようと画策する………。

見つめないで
 引っ越したばかりの女性監察員沼尻いくみのマンションにストーカーの魔手……。


 音道貴子シリーズにつづく新たな女性警察官を主人公にしたものとして、次なる物語も読みたい。

    ◇

禁猟区/乃南アサ
【新潮社】
定価 1,400円(税別)
2010年8月初版

「橘京子の調査報告書」

本文は、閉鎖中の余貴美子非公式応援サイト「Y's Passion」に綴ってきた余貴美子出演作品レヴューを再録・加筆修正したものです。敬称略。

~盗聴撃退!完全マニュアル~
脚本:高橋 美幸
監督:猪崎 宣昭
出演:余貴美子、石橋蓮司、岸田今日子、本田博太郎、小倉一郎、川越美和、長谷川朝晴、岸本裕二、平淑恵、十軒寺梅軒、大西麻恵

初回放映:2005年10月15日 テレビ朝日「土曜ワイド劇場」


 情報社会に埋もれている我々は、知りたいことは何でも手に入れることができるのと同じだけ、自分たちのプライバシーをいとも簡単に手放している。
 ドラマの中でラブホテルの盗聴・盗撮のことが描かれていたが、これらは昔から裏の世界のプロの仕業だった。しかし今では、個人がその世界を自由に行き来できる時代のようだ。ここ10年ぐらいの間に盗聴器に類する機器の販売台数が大幅に増えており、素人でも簡単にこの卑劣な盗聴・盗撮行為が出来る社会になっている。そこで現れたのが盗聴駆除(盗聴バスター)といった仕事。大きな探偵社では盗聴駆除専門の部署もあるし、それ専門の会社も多数出来ている。このドラマで行われていることが、単に絵空事ではない現実がある。

    ◇

 橘京子(余貴美子)は元演歌歌手で盗聴駆除会社「サイレンス&ピース」の代表者。チームは探偵の久保田(有福正志)の依頼で岩蔵建設の創立50周年記念パーティー会場に仕かけられた盗聴器を駆除する。するとその夜、岩蔵建設の社長が殺され、さらに京子と妹で弁護士の加奈子(川越美和)と共同で仕事をしている事務所が荒らされ盗聴器まで見つかった。そして、依頼者の久保田までが死体で発見される。

 京子は高校の同級生の園子(平淑恵)と再会。娘の亜紀(大西麻恵)と市の職員との結婚が間近な彼女だが、市役所の建設課課長だった夫の勇次(十軒寺梅軒)が一年前に自殺しており、今でも夫の死を乗り越えることができず、霊媒師・山崎法天(本田博太郎)に夫の霊を降臨してもらい話をしている。心配する亜紀の依頼で、京子は園子に付き添い法天のもとを訪れるが、そこでは奇声を上げる法天が「私にはやり残したことがある……」と勇次の言葉を京子らに授けるのだった。勇次の自殺には市庁舎の耐震工事の不正落札が絡んでいると噂されていたが、勇次と同期の木島(小倉一郎)はそれを否定していた。
 京子と仲間の鯨岡(石橋蓮司)らは、法天の透視力のトリックを信者らの家に仕掛けた盗聴器だと見抜き、園子の家からもいくつかの盗聴器を発見する。園子は夫の死の真相を探るために、保険外交員として岩蔵建設に入り込んでいて、岩蔵建設の創立50周年記念パーティー会場に盗聴器を仕掛けたのは園子だった。勇次の遺品からはマイクロテープが見つかり、やがて、岩蔵と久保田の殺人事件と一年前の勇次の自殺との関わりが浮かんでくる………。

    ◇

 余貴美子を筆頭に、元音効マンの石橋蓮司、元自衛隊通信部で盗聴探知のエキスパートの岸本祐二、そして元盗聴マニアのオタク長谷川朝晴の3人の仲間を有したこのチーム構成が巧く出来上がっている。そのため、京子の妹の女弁護士や故・岸田今日子演じる母親との描き方も含め、探偵とは違う技術のプロフェッショナルとして、各人の個性をもっと膨らませることで十分にシリーズ化も出来ただろうが、残念ながらこの作品のみで終わってしまった。

 ドラマに流れるテイストは、同じく余貴美子主演ドラマ『女タクシードライバー・シリーズ』と同じくハードボイルド。当然、春成衿子とは違ったアプローチで、都会に住む人間の闇と孤独をクールなタッチで描いている。

 「人に頼ることも、ひとつの勇気よ」

 春成衿子がたったひとりの都会の傍観者であるのとは違って、橘京子には仲間と家族がいる。見つめる先が人間の闇であっても、彼女の人への優しさで光明が見い出されるのは、頼れる仲間たちの心強さがあるからだ。

 「アンタたちさぁ~、なにヌルいこと云ってるの。売られたケンカは買うのよ!」

 スタイリッシュでハードボイルドな余貴美子はカッコいい。
 今回は短かめな髪に、衿が大きく開いたブラウスに濃い色のジャケットとデニムパンツ姿。要所要所でアップになる眼光の鋭さに魅力が集約し、クールである。

 強面の人物像からコメディタッチの軽さまで持ち備えた石橋蓮司と、同じように演技の幅が広い余貴美子とのコンビネーションが見どころである。
 石橋蓮司扮するクジさんが演歌歌手時代からの橘京子の大ファンで、彼女を仄かに慕っている様が何とも可愛いらしく、中でも、夕刻の桟橋を歩くシーンの京子とクジさんのシルエットは情感があっていい。
 オレンジ色のトーンに逆光線の中、クールな話しぶりのあとに「お守り頂いていますから…」と表情を崩してステップを踏む石橋蓮司の姿と、それに応える余貴美子の照れた仕草が何とも可愛いふたりなのだ。
 ドラマ内で余貴美子の衣装チェンジが多い本作では、小道具として出てくる京子の演歌歌手時代のポスターやカセットのジャケット写真がご愛嬌だ。

 インチキ霊媒師の法天役の本田博太郎の怪演ぶりも楽しい。
 オーヴァーアクションの祈祷には大笑いさせられるし、そのあと、インチキを見破られ京子とクジさんに問いつめられるシーンでの小悪党ぶりも見ものだ。

「友よ、静かに瞑れ」*崔 洋一監督作品

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LET HIM REST IN PEACE
監督:崔 洋一
原作:北方謙三
脚本:丸山昇一
撮影:浜口穀
音楽:梅林茂
出演:藤竜也、倍賞美津子、六浦誠、宮下順子、高柳良一、中村れい子、伊藤麻耶、ジル・ジェイド(Personz)、室田日出男、林隆三、佐藤慶、原田芳雄

☆☆☆★ 1985年/角川映画・東映セントラルフィルム/103分

    ◇

 1980年代はじめ、北方謙三のハードボイルド小説にハマり、よく読んでいた。
 この『友よ、静かに瞑れ』は、原作の舞台を日本海に面した温泉町から沖縄に移したことで、異国の不穏な空気が充満するハードボイルド映画になっている。

 東京から沖縄の小さな港町・多満里に、新藤剛(藤竜也)という中年男がやってきた。ホテル〈FREEIN〉の経営者で旧友の坂口(林隆三)が、この町のリゾート開発を計画している下山建設の社長(佐藤慶)にナイフで襲いかかり、警察署に逮捕されたことを知っての来訪だった。〈FREEIN〉は下山建設の買収に応じず、執拗ないやがらせや脅迫にも屈していなかった。その坂口を逮捕したのは、下山建設と癒着している徳田刑事(室田日出男)だ。進藤は坂口の一人息子の竜太(六浦誠)を伴い、坂口にレモンを差し入れる。
 〈FREEIN〉には、留守をあずかる若いフロント係の小宮(高柳良一)、町でクラブ〈KENDO〉を経営する坂口の愛人・志摩(倍賞美津子)、そこでホステス&娼婦で生計をたてる時枝(宮下順子)、静子(中村れい子)、留美(伊藤麻耶)、冴子(ジル・ジェイド)らが住み着いていた。
 徳田刑事の言動から事件の裏に何かあると感じた新藤は真相究明に乗り出す。下山建設は、ボクサーくずれの高畠(原田芳雄)を使い、かなり汚い手口で土地買収を行っており、坂口に対しては息子の竜太を誘拐まがいの手を使って脅しをかけていて、息子の救出に乗り込んだところで罠に嵌ったのだった…………。

    ◇

 80年代の角川映画って、『野獣死すべし」('80)をはじめ『スローなブギにしてくれ』('81)や『探偵物語』('83)や『キャバレー』('86)などカッコつけた作品が多い。『汚れた英雄』('82)は最たるもので、当時はベストテンに上げるほどスタイリッシュな作品として賞賛していたのだが、近年観た折りには恥ずかしくて最後まで観ていられなかった。

 さてこの映画、パンフレットの表紙を見ても判るように、藤竜也をどれだけカッコよく見せるかに終始している。どこまでも気障な丸山昇一のシナリオは、派手な銃撃や濃厚なラヴシーンなどを排し、男同士の関係のなかでの男の生き様と、少年が男に成長していく過程をクールに見せていく。
 異国情緒な梅林茂の音楽も、北方ハードボイルド精神にお似合いである。

 「俺も坂口も、もう捨てるもんなんかないと思ってたんだ。ところが、アイツは何かを背負ってた。ずり落ちそうなら、俺が支えてやろうかと思ったわけだ」藤竜也のセリフに
 「俺もあんたも下り坂だけどサ。何か背負ってないと、転がり落ちてすぐにジジイになっちまう」と原田芳雄が応える。
 70年代日活ニューアクションさながらのふたりの対峙にはドキドキする。
 原田芳雄は佐藤慶に義理がある立場だが、男として、藤竜也と林隆三の心情が理解できる男前だ。
 そんな思いで藤竜也と殴り合う後半のアクション。藤は大学時代剣道部の医者くずれ。原田は大学のボクシング部の強者。どう考えても原田と渡り合うのは無謀。しかし、男は男を尊敬して闘う。どこまでもタフで無口で行動力のある男たちの物語なのだから。
 しかし、ここでのスローモーション撮影は古臭さを感じるな。

 「最初から負けると判っているのに、馬鹿みたいなことしてもしょうがないよ。強い奴は、絶対強いんだから」と、冷めた言葉を吐き父親をけなす臆病な息子への荒療治は、男にしか理解できないような男の行動として、父親の死に様を見せつける。
 少年が男となる決心の象徴にレモンが使われるのが、少し気恥ずかしい気もするが……。

 そして、男に漂う女たちも素晴らしい。

 「目に見えないものに命を賭けて………男はそれでいいわよ。でも、女はどうなるの? 女はどうなるのよ!」
 当時『生きているうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』('85)、『恋文』('85)と充実期の倍賞美津子の貫禄は言うまでもない。







「ヴェロシティ」ディーン・クーンツ



 本国アメリカでは2005年に発表されたクーンツの日本最新刊(10月発刊)で、クーンツらしい不条理サスペンスの傑作だ。

 カリフォルニアのナパ・ヴァレー。
 主人公ビリー・ワイルズは、少年期に両親との間に起きた出来事をトラウマを克服しながら小説家として歩み始めたが、その矢先に、恋人のバーバラが事故により昏睡状態となってしまった。以来、ビリーは小説家の道を閉ざし、人とのコミュニケーションを極力避け、バーバラを見守りながらバーテンとしてひっそりと暮らしていた。
 静かに日常を過ごしていたある日、一通の不審なメモからビリーの生活は一変した。それは殺人予告。
 「おまえがこのメモを警察に届けないと、金髪美人の教師が死ぬ。おまえがこのメモを警察に届けたら、慈善活動に勤しんでいるばあさんを殺す。6時間以内に決断しろ。どちらを選ぶかは、おまえ次第だ」
 否応なく犠牲者を選ばせる脅迫状だった。そして正体不明の犯人の予告通りに、事件の容疑者をビリーに仕立て上げるような痕跡を残しながら連続殺人がはじまる……。

 自分が狙われるのではなく、自分の行動で必ず誰かが死ぬのだから、そこに生まれるのはビリーの良心の呵責。
 この正体不明で異常な殺人者に、絶体絶命のビリーはどう立ち向かうのか。

 また、4年もの軽い昏睡状態にある恋人が、時々口走る不可解な単語は何を意味するのか。
 不利な状況が速度〈ヴェロシティ〉を増し続ける恐怖に立ち向かうのも、逃げ場のない状態での孤軍奮闘も、この眠れる恋人の存在がある。
 主人公の行動は、進むか否かで悩むより、正義のために自分の存在理由を定め突き進む。
 後半、性急過ぎる終わりを迎えるが、ラストの数行はいいぞ。

    ◇

ヴェロシティ(上)(下)/ディーン・クーンツ
訳:田中一江
【講談社文庫】
定価 各838円(税別)