TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

新たなレジェンド「エメラルドの伝説」



 2003年、ショーケンの『Enter The Panther Tour』において、30年封印してきた「神様お願い」と「エメラルドの伝説」をセットリストに組み込んだ時にも驚いたが、2009年再び、ショーケンが「エメラルドの伝説」を、それも、テレビで歌った。
 29日夜、マチャアキとのデュエットである。これを奇跡と云わずしてなんと云う!
 まぁ、もともとテンプターズはスパイダースの弟分的存在でデビューしたので、先輩としてのマチャアキとは旧知の仲。しかし、このふたりのデュエットとなると皆無なのではないか?
 それにしても久しぶりのTV出演、マチャアキに心許すショーケンが楽しそうだったし、声の調子もいいみたいで良かった。

    ◇

 さて、なかにし礼作詞、村井邦彦作曲の「エメラルドの伝説」は、その楽曲の良さで好きな歌。
 奥村チヨやブルー・コメッツ、近田春夫などがカバーしているけれど、なかでも好きなのがザ・ゴールデン・カップスの「エメラルドの伝説」。
 1969年発売の『なかにし礼作品集・四つの明星』というオムニバス・アルバムの中の一曲で、同じGSの曲をカバーするカップスはこのアルバムでしか聴くことはできない。故デイブ平尾が歌うショーケンの楽曲、いいよ。
 ちなみにこのアルバムではもう1曲、マモル・マヌーが歌う「花の首飾り」が収録されている。去年紙ジャケット仕様のCDで発売されているので、簡単に聴くことができるようになり嬉しい。興味のある方はお聴きくだされ。(但し、バンドは演奏をしていないらしい)

四つの明星




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フラワー・トラヴェリン・バンド“JAPAN TOUR 2009” 名古屋



FLOWER TRAVELLIN' BAND“JAPAN TOUR 2009”
at BOTTOM LINE, NAGOYA. Aug.25.2009

《SET LIST》
01. All The Days
02. What Will You Say
03. We Are Here
04. カミカゼ Kamikaze
05. Heaven and Hell
06. ウーマン(失われた日々の影) Shadows Of Lost Days
07. ダイジョーブ dYE-jobe
08. Will It
09. Love Is...
10. サトリ SATORI Pt.2
11. ヒロシマ HIROSHIMA
encore
12. メイク・アップ MAKE UP
13. Slowly But Surely
Closing theme ~ After The Concert


    ◇

 去年活動再開したフラワー・トラヴェリン・バンドの最新ツアーが8月から始まり、札幌、東京につづいて1年ぶりに名古屋のステージに5人が立った。
 今回の舞台は、去年のダイヤモンド・ホールよりフロアが小さい名古屋BOTTOM LINE。整理番号4番で会場入りして最前列のド真ん中に座る。7時07分から1時間40分のステージ、この上もない至福のロック・ライヴを楽しませてもらった。

 いやぁ、去年より凄い。5人の面々、メンバー全員の年齢を足して310歳だというのに、このエネルギーは何!
 「楽器は昔のままの音を出しているから、歌も楽器の一部だから昔のキーで歌うからね」
 今回も、衰えを知らないジョー山中の言葉通りに、出るわでるわのハイトーン・シャウトであった。

 ステージは、1973年の2枚組ライヴ・アルバム『MAKE UP』のオープニング曲「All The Days」から始まった。
 去年は『We Are Here』リリースの復活ライヴのため、新曲全曲の合間に昔の曲を挟んだ形だったのだが、今回のセットリストは『SATORI』から新アルバムまでの4枚のアルバムから満遍のないものになっている。
 『We Are Here』からの厳選5曲は、アメリカ・ツアーの敢行もありこなれた楽曲に変身していた。

 70年代ROCK特有のドラマツルギーで奏でる名曲の数々を、今、この時代に聴きたいファンは多いだろうから、「Kamikaze」「Slowly But Surely」そしてスローブルーズの「Shadows Of Lost Days」に(まるでレッド・ツェッペリンの'73年ライヴ「Since I've Been Loving You」を聴いているように)狂気乱舞である。

 会場の空気が張り詰めたのは、1972年の『MADE IN JAPAN』に納められた日本ROCK史に残る鎮魂歌「HIROSHIMA」。

  ある夏の日 きのこ雲が盛り上がり 誰も見えない 誰も聞こえない………

 天空に轟く小林ジュンの重低音ベース、和田ジョージの正確無比なドラム、篠原信彦のうねり踊るキーボード、縦横無尽な石間秀機のシターラ、そしてジョーの叫び!
 15分近いロング・ヴァージョンは、いま尚、神がかり的。凄いパフォーマンスで魅了させてくれた。

    ◇

bottomline0825.jpg After The Concert

    ◆

伝説の日比谷野音から……




去年のライヴはこちら……


「女教師 私生活」*田中登監督作品



監督:田中 登
脚本:安部真理
出演:市川亜矢子、風間杜夫、梢ひとみ、島村謙次、鶴岡修

☆☆☆ 1973年/にっかつ/73分

 本文は、単行本 【映画監督・田中登の世界】に掲載された作品紹介を加筆修正したものです。

    ◇

 一般公募による女性ライターの脚本で撮られた“女教師”もの(シリーズとなる1作目となる)は、70年代に流行した自分自身に忠実に生きる女性像を、性の欲望に浮遊する孤独な女性教師の奔放でスキャンダラスな日常(性生活)としてクールに描いている。
 初々しい風間杜夫と、存在感で魅せる梢ひとみが光っている。

 高校教師のなおみ(市川亜矢子)は、ひとり暮らしの寂しさを癒すために教え子の啓二(風間杜夫)と同棲している。若い啓二をペットのように扱い、身体を貪ることで孤独を癒している。愛欲生活に嫌悪を抱きながらも離れることができない啓二。そんな啓二に想いを寄せている同級生の和子(梢ひとみ)は、自暴になる彼の心を癒すために処女を捧げた。
 なおみに後ろめたさを感じる啓二だが、なおみは淫らな本能のままに同僚教師(島村謙次)や啓二の兄(鶴岡修)との関係を始める……。

    ◇

 映倫審査の最も厳しい時期の作品でボカシの程度は滑稽なほど広範囲にわたるのだが、特異な映像美を好む田中監督は、登場人物の心象風景を数々のモチーフとシュールな画面構成で楽しませてくれる。
 風間杜夫と梢ひとみの初体験シーンで天井を漂う色とりどりの風船も、流れるアグネス・チャンの「ひなげしの花」も、シーツに残された血の上を滑空する模型飛行機も、映画的風景として観客を飽きさせない。
 なかでも、花々に囲まれた緑地公園のなかで行われる市川亜矢子と風間杜夫のファックシーンは奇異を極める。大量の桜吹雪が舞うなか、ふたりを見つめる赤い風船を持った少女の目の前には、画面半分を覆う真っ赤なボカシが大きく揺れている。官憲を嘲笑うかのようにシュールな画面である。

 ホテルで同僚とセックスをする市川亜矢子と、同時間軸で市川亜矢子の部屋のなかでフルーツを食い散らかす風間杜夫をシンクロさせた画面構成は、ふたりが躰を重ねる以上に官能的である。

 そして物語は、風間杜夫の感電自殺未遂と失踪となる。
 「死にたいとか、殺したいとか、殺されたいとか、どれにも当てはまらない女なの」と、うそぶく市川亜矢子。

 街を彷徨い渋谷駅前の鳩の群れのなかに佇む市川亜矢子には、『白い指の戯れ』の伊佐山ひろ子の姿がだぶって見えるものの、その眼差しの先にあるものが、決して若くない女の孤独だということでは大きな違いがある。

ロマンポルノを読もう

 14日深夜WOWOWで放送されたドキュメンタリー『ロマンポルノ伝説1971~1988』は、70年代のプログラム・ピクチャー群の奇跡がいかにして生まれ、育ち、朽ちていったか、日本映画の熱情と挑発の軌跡を垣間みることができた番組だった。
 ノスタルジーで語るには、あまりに刺激的な時代………やっぱ70年代って、パワーがあったんだよなぁ。

 さて番組より先に、ロマンポルノの面白さを伝える本が2冊刊行されていた。興味深いものなので、甘ったるい日本映画に辟易しているご仁には、是非ともおススメの本である。

    ◇



作家を育てた日活ロマンポルノ~シナリオ選集/シナリオ9月号別冊
【シナリオ作家協会】
定価1,800円(税込)

    ◇

[記事]「日活ロマンポルノの全貌」北川れい子

[対談]佐々木志郎×桂千穂

[エッセイ]荒井晴彦、白坂依志夫、中島丈博、佐藤忠男ほか

[収録シナリオ]
 荒井晴彦 「新宿乱れ街 いくまで待って」
 いど・あきお 「(秘)色情めす市場」
 桂 千穂 「ズームアップ 暴行現場」
 加藤正人 「SM教室・失禁」
 神代辰巳 「一条さゆり 濡れた欲情」
 白坂依志夫 「赤い花弁が濡れる」
 大工原正泰 「さすらいの恋人 眩暈」
 田中陽造 「おんなの細道 濡れた海峡」
 中島丈博 「淫獣の宿」
 中野顕彰 「牝猫たちの夜」

 資料データとして、巻末に「日活ロマンポルノ全作品リスト」が掲載されている。


   ★    ★    ★


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ロマンポルノと実録やくざ映画/樋口尚文
【平凡社新書】
定価945円(税込)

    ◇

 もう一冊は、“禁じられた70年代日本映画”と副題がつけられた一冊。タイトルは厳めしいが、100本あまりの紹介作品のなかでポルノと実録やくざ映画は3分の1にすぎない。
 70年代に狂い咲いた無数のプログラム・ピクチャー群。薄暗い映画館のなかへ引き入れるのに十分なほどの、猥雑で刺激に満ちた作品群と時代を作り上げた俳優たち。その魅力が紹介されている。

 「天使のはらわた 赤い教室」の名美を演じた水原ゆう紀の章では、彼女自身の言葉が記述されている。彼女があまりに名美役にのめりこみ、憑依したまま立ち直れなかったこと。そのため、次編の田中登監督作品「天使のはらわた 名美」へのオファーを断っていたこと。堕ちてからの名美の髪に付けられた赤いリボンの曰く。そして、曾根中生監督の消息がいまだ不明なことに囁いた言葉。代表作にとことん生き急いだ女優の姿が見えてくる。

    ◇

■実録やくざ路線のバイオレンス
 「顔役」「人斬り与太 狂犬三兄弟」「仁義なき戦い 代理戦争」
 「実録・私設銀座警察」「仁義の墓場」「北陸代理戦争」


■ロマンポルノ路線の挑発と抒情
 「濡れた欲情 特出し21人」「(秘)色情めす市場」「犯す!」
 「人妻集団暴行致死事件」「さすらいの恋人 眩暈」「昼下がりの女 挑発!」


■性が起爆させるバイオレンス
 「女地獄 森は濡れた」「やくざ観音 情女仁義」「やさぐれ姐御伝 総括リンチ」
 「レイプ25時 暴姦」「天使の欲望」


■青春のニヒルな彷徨
 「八月の濡れた砂」「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」「急げ!若者」
 「四畳半青春硝子張り」「新宿乱れ街 いくまで待って」「トルコ110番 悶絶くらげ」


■アクションの新生面とカンフーブーム
 「白昼の襲撃」「豹は走った」「野獣狩り」
 「直撃地獄拳 大逆転」「資金源強奪」


■エロスと残酷の時代劇
 「蜘蛛の湯女」「戦国ロック 疾風の女たち」「将軍と二十一人の愛妾」
 徳川セックス禁止令 色情大名」「御用牙 かみそり半蔵地獄責め」
 「子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎」「ポルノ時代劇 忘八武士道」
 「下苅り半次郎 (秘)観音を探せ」


■スケバンと戦闘少女の割拠
 「O課の女 赤い手錠(ワッパ)」「番格ロック」「野獣狩り」
 「横須賀男狩り 少女・悦楽」


■カーアクションの模索
 「3000キロの罠」「ヘアピン・サーカス」「爆走パニック 大激突」
 「狂った野獣」「ダブル・クラッチ」


■メロドラマとラブロマンスの光芒
 「ボクは五才」「ママいつまでも生きてね」「挽歌」
 「スリランカの愛と別れ」


■本格探偵ミステリと社会派サスペンスの競作
 「影の車」「内海の輪」「動脈列島」「実録三億円事件 時効成立」
 「錆びた炎」「不連続殺人事件」「江戸川乱歩の陰獣」


■怪談からオカルトへ
 「怪談昇り竜」「血を吸う薔薇」「怪猫トルコ風呂」

■洋画ふうソフィスティケーション
 「卒業旅行Little Adventure」「雨のアムステルダム」「パリの哀愁」

■おまけ短篇と編成の妙
 「太陽の恋人アグネス・ラム」「池沢さとしと世界のスーパーカー」
 「BLACK EMPEROR」「宇宙人は地球にいた」「激突!」「イエロー・ドッグ」


■マンガ・劇画への挑戦
 「あしたのジョー」「銭ゲバ」「玉割り人ゆき」「玉割り人ゆき 西の郭夕月桜」
 「嗚呼!花の応援団」「博多っ子純情」


■歌謡曲・演歌・ポップスの抒情
 「夜の歌謡曲シリーズ なみだ恋」「昭和枯れすすき」
 「濡れた欲情 ひらけ!チューリップ」「帰らざる日々」


■文芸作品の触発
 「二十歳の原点」「櫛の火」「北の岬」

■撮影所の外からの新しい波
 「HOUSE」「ボクサー」「オレンジロード急行」「高校大パニック」

■時代を浮遊する女優たち
 秋吉久美子「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」
 梶芽衣子「女囚さそり けもの部屋」「ジーンズブルース明日なき無頼派」
 桃井かおり「赤い鳥逃げた?」「エロスは甘き香り」
 山梨ゆり「昼下がりの情事 古都曼陀羅」「濡れた荒野を走れ」
 原田美枝子「恋は緑の風の中」
 水原ゆう紀「天使のはらわた 赤い教室」
 島村佳江「西陣心中」「十八歳、海へ」

■新型アイドルの誕生
 山口百恵「伊豆の踊子」
 高沢順子「新・同棲時代 愛のくらし」「本陣殺人事件」
 泉じゅん「感じるんです」「犬神の悪霊」
 岡田奈々「青春の構図」「暴力戦士」

■社会からはぐれゆく男優たち
 萩原健一「青春の蹉跌」
 松田優作「あばよダチ公」「最も危険な遊戯」
 原田芳雄「悲愁物語」
 郷ひろみ「さらば夏の光よ」「突然、嵐のように」

「黄金の腕」



The Man With The Golden Arm
監督:オットー・プレミンジャー
原作:ネルソン・アルグレン
脚本:ウォルター・ニューマン、ルイス・メルツァー
音楽:エルマー・バーンステイン
タイトル・デザイン:ソウル・バス
出演:フランク・シナトラ、エレノア・パーカー、キム・ノヴァク、グレン・マクギャヴィン、アーノルド・スタング、ロバート・ストラウス

☆☆☆☆ 1955年/アメリカ/119分

    ◇

 50年代当時のハリウッドでは、絶対的タブーとされていた麻薬問題を初めて題材にした作品で、麻薬中毒者を主人公に薬物の恐ろしさを描いた社会派ドラマ。
 二枚目歌手のシナトラがシリアスな演技派として認められ、「地上より永遠に』('53)につづきアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた作品でもある。

 映画は、エルマー・バーンスタイン作曲のクールなモダン・ジャズの主題曲と、“腕”を幾何学模様にデザイン化した印象的なタイトル・バックではじまる。
 映画音楽にジャズが使用された初めての作品であり、映画のなかで流れる楽曲も、暗黒街シカゴの雰囲気を歯切れのいいリズムで伝えているのが素晴らしい。中学の頃にNHKテレビではじめて見て、ジャズが格好イイと思った作品でもある。
 グラフィック・デザイナーのソウル・バスが手がけたタイトル・デザインも秀逸。ソウル・バスは、この作品以外にも『北北西に進路を取れ』『サイコ』『めまい』『ウエスト・サイド物語』と、強烈な印象を残しているものが多い。

 フランキー・マシーン(フランク・シナトラ)は、仲間内から“黄金の腕を持つ男”と呼ばれるポーカー賭博のディーラーだったが、麻薬中毒に陥り長い入院治療を終え、シカゴに帰ってきた。
 アパートでは、フランキーの飲酒運転事故がもとで不自由な身体になった妻のゾシュ(エレノア・パーカー)が、車椅子の生活で待っていた。フランキーはそんな妻のために、入院中にドラムの練習をし、ミュージシャンとしてまともな生活を送るためにとプロダクションへの紹介状を持っていた。しかしゾシュは、フランキーが“黄金の腕”を棄て、今さら新米ドラマーの貧乏な暮らしになるのに反対だった。実は、ゾシュの脚は完治していて、負い目のあるフランキーに金を稼がせるために嘘をついているのだ。稼ぎのいいディーラーに復活させようと画策する、そんな女だった。

 美しいエレノア・パーカーは、本来なら男をつなぎ止めておきたい女の気持ちが痛々しい悲劇のヒロインだが、裏の顔を映画が始まってすぐに観客に明かしてしまう展開によって、身勝手でわがままなイヤな女として描かれる。そこは、大女優としての貫禄で演じている。

 ふたたび、フランキーのカード配りの生活がはじまる。そんな生活のなかで、唯一の憩いは大衆キャバレーで働くモリー(キム・ノヴァク)。だが、不自由な妻を捨てモリーを愛することはできない。

 キム・ノヴァクは当時22歳。愛人関係にあったシナトラのお陰で出演したとはいえ、ハリウッドが作りあげたミューズとして、妖艶な姿とハスキーな声に魅了される。

 苛立ちと不安が“黄金の腕”のフランキーの手に震えをもたらすようになり、これが最後の一度だけと、麻薬売人のルイ(グレン・マクギャヴィン)の許を訪れる。
 賭博の胴元(ロバート・ストラウス)から大きな仕事を請け負い、一昼夜をかけたゲームがはじまるのだが、フランキーにとって次の日は、念願のドラマーへのオーディションが控えている。
 裸電球ひとつぶら下がった部屋で、小さなテーブルを囲んだマラソン・ポーカーのシーンは、疲れ切った男たちの熱気を、クローズアップの多用で臨場感を生み出している見せ場のひとつだ。

 過酷な時間がフランキーにヘマを導き、金がないことで麻薬の注射を拒否したルイを殴り倒してしまう。あげくの果て、オーディションは失敗。フランキーは、麻薬を買う金を求めて家を飛び出していく。
 入れ違いにルイが仕返しに部屋にやって来た。突然ドアを開けた部屋には、両足で立っているゾシュ。彼女の秘密をバラすと脅迫するレイを、ゾシュは階段の踊り場から突き落とし殺してしまった。嫌疑はフランキーにかかった。

 モリーだけが頼りのフランキーは、もう一度生き返ることを決意し、彼女の部屋で苦しい荒治療をはじめる。
 禁断症状に苦しむフランキーの壮絶な姿は迫力があり、クスリを求めるあまり何もない部屋で無理からにゴムバンドで腕を縛ってしまう姿は、見事にジャンキーの生態を捉えている。暴れ、泣き叫び、震え、眠る。その繰り返しの恐怖。ワンシーン・ワンカットによるシナトラの熱演である。

 献身的な愛情を見せるモリーがいたことで、禁断症状を収め、正常な意識に戻ることに成功したフランキーは、妻のゾシュに別れを告げに帰る。
 車椅子から思わず立ち上がり彼を追いかけるゾシュは、戸口でフランキーを追ってきた刑事の姿を確認し、身を翻しベランダから外へ飛び降りるのだった。

 原作では、フランキーがルイを殺し自殺する話になっているらしいのだが、それではあまりに悲惨すぎる。映画はハリウッドらしく、立ち直った主人公と恋人が街を去るところで終る。ただし、決してハッピーエンドではない。いつまた麻薬に溺れる日々がやってくるのか永遠にわからないのだから………。

歌謡曲外伝【大橋恵子】



LOVE LESSONS / MIDNIGHT TOKYO
大橋恵子◆ 愛の教室/真夜中・東京 1971年

 TV『全日本歌謡選手権』において、第11代チャンピオンに輝いた大橋恵子は1951年7月2日生。東京都新宿出身。大橋巨泉事務所で下働きなどをしながら、歌手を目指していたという。
 1970年から日本テレビ系で放送されたこの『全日本歌謡選手権』は、実力第一の厳しい審査と辛辣な批評で有名なオーディション番組で、五木ひろし、八代亜紀、中条きよし、天童よしみ、真木ひでとなどが再生デビューしたことは有名である。八代亜紀と中条きよしの勝ち抜きはよく覚えているし、この大橋恵子も注目して見ていた。
 グラマラスなボディは審査員の淡谷のり子が絶賛し、湯川れい子はその歌唱に折り紙をつけたほどの、本格派女性歌手のひとりである。ただし、当然ながらヒットに恵まれるかどうかは別で、あまり知られていないところが、ぼくの趣味に合っているのである(笑)。
 ジャケットのケバさが時代を感じさせるが、こんなにもバチバチの付けまつげの女性なら、今、ゴロゴロと街を歩いてるよな。

 「愛の教室」は、ちあき哲也の作詞、宇崎竜童の作曲。もちろん竜童氏が世に出る前のサラリーマン(マネージャー)時代の作品で、太田とも子の「とおく群衆を離れて」「恋はまっさかさま」「ねむいのは悲しいからさ」と同じコンビの楽曲だ。

 女性の自立の時代。男を翻弄しながら社会をわたる女のツッパリである。

 B面「真夜中・東京」は湯川れい子作詞、ながいじゅん作曲のフォーク歌謡。
 堕ちて荒んだ女には、帰る故郷もなく、ただ漂うしかないと歌ってる。

    ◇

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SHADOW OF YOUR MEMORIES / BLUES FOR A GIRL
大橋恵子◆ 幸せのおもかげ/女の世界 1971年

 第2弾シングル「幸せのおもかげ」は、湯川れい子作詞、宇崎竜童作曲、クニ河内編曲のフォークタッチなさすらい歌謡で、スチールギターの音色とピアノが心地いい。
 B面「女の世界」はR&B歌謡だ。
 それにしても、このジャケットでは売れないでしょ。

    ◇

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ROSE IS A GIRL IN LOVE / FAREWELL TO LOVE
大橋恵子◆ 花びらは恋する女/愛のわかれ 1971年

 「花びらは恋する女」は小川知子のカバー曲で、橋本淳作詞、筒美京平作曲のグルーヴの効いたファンキー歌謡である。

    ◇

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大橋恵子◆ 停車場 1996年

 時は流れ、銀座のジャズ・ライヴ・ハウスのオーナー兼ママとして、そして、ジャズ・シンガーとして活動していた大橋恵子が、1996年にお店のレーベルで自主制作したCDシングル。
 何枚か出しているようで、この「停車場」は、たまたま中古屋で見つけたもので、熟成された歌声を聴くことができる。
 ライヴ・ハウスは残念ながら何年か前に閉じられ、その後オーストラリアへ留学。現在はふたたび、ジャズ・ヴォーカリストとして活動していると思われる。



大原麗子さん 逝く



哀しすぎますよ

2週間も 誰にも看取られず 逝ってしまわれたなんて

…………

むかし

渡瀬恒彦さんと一緒になられましたね

義兄の渡哲也さんと共演した「大幹部・ケリをつけろ」

故・范文雀さんの方がヒロインでしたが

麗子さん 薄幸でした

……………

市川崑作品でもお馴染みでした

……………

TVドラマだって ざっと思い出してみて

「たとえば愛」

「獅子の時代」

「離婚ともだち」

「女の中にいる他人」

「さりげなく憎いやつ」

「浮浪雲」

VTRが切れて結末を見れないままの「町」

嗚呼

…………

すこし愛して、なが~く愛して

享年62って 短いっスよ

安らかなお顔で逝かれたのでしょうか

ご冥福をお祈りいたします


「太陽は泣いているセンセーション'78」山内恵美子

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山内恵美子◆ 太陽は泣いているセンセーション'78/涙は紅く 1978年

 1978年7月リリース。ご存知、筒美京平の「太陽は泣いている」と「涙は紅く」を、ダイナミックなディスコアレンジでリメイクした山内恵美子の傑作ディスコ歌謡。

 「太陽は泣いている」は、筒美京平自身によるスパニッシュ・アレンジが豪快に決まっているし、鍵山珠里や山本リンダが歌った「涙は紅く」はマリアッチ風味で雄大な世界に変身している。
 このいしだあゆみの名曲「太陽は泣いている」のディスコ・ヴァージョンは、実は安西マリア用に用意されていたのだが、安西マリアにまつわる事件とその後の引退によって山内恵美子にお鉢が廻ったようだ。

 山内恵美子のデビューは1973年、二十歳のときに東映映画『ネオンくらげ』に山内えみことして主演。梶芽衣子のような眼ぢからとグラマラスなボディで、その年はつづけて『番格ロック』など主演作が3本。翌74年に多岐川裕美のデビュー作『聖獣学園』に準主役として出演して一気に名前が知られ、歌手デビューを果たしている。
 1977年リリースの中島みゆき提供曲「笑わせるじゃないか」(B面「ほっといてよ」も中島みゆきの楽曲)から“山内恵美子”名義となり、このカバー曲がシングル通算6枚目となる。

 この曲をリリースした1978年には、横山博人監督の『』に出演しているが、あの眼光鋭い表情が見事に生きた役柄であった。

「紹介」川辺妙子



川辺妙子◆ 紹介/今日もわたしは 1970年

 1970年に筒美京平作曲の「ミッドナイト東京」でデビューした川辺妙子は、1949年7月18日生。都会に生きる女性を歌ういしだあゆみや西田佐知子系の女性歌謡で、歌唱力の豊かさが魅力だ。
 この「紹介」は彼女の3作目で、作詞麻生ひろし、作曲井上かつおのビート歌謡の逸品。

 あなたは知らずにいるけれど 今夜 あなたの彼が
 電話でわたしを好きだといったの 今すぐ会いたいと
 どんなつもりで電話など教えたの どんなつもりで紹介したの

 B面「今日もわたしは」も、麻生ひろし作詞、井上かつお作曲で、純に生きる夜の女のあきらめが歌われる。

 まぶしい朝を避けながら生きる暮らしに もう慣れたの
 香水つけては鏡の前で 明日のドレスを並べて見てるだけ
 ……………

 ジャケットの、少し乱れた髪とポーズがいいんだなぁ。

 第4弾シングル「いつか男は去って行く」は、『やさぐれ歌謡★最前線/みなしごのブルース』でCD化されており、未練に絡み付く歌唱が忘れがたい傑作である。


「天使のすすめ」倉元恵子



THE ANGEL CALLS / BLOW UP THE SORROW
倉元恵子◆ 天使のすすめ/勝手にしやがれ 1971年

 1951年6月2日生まれの倉元恵子は、タレント活動をしながら神津善行に歌のレッスンを受け、1970年7月、「悪女のすすめ」で、CBSソニーから歌手デビューをした。これは、若い男を弄びながら底なしの世界に誘うエロティック歌唱の逸品だった。
 この「天使のすすめ」は、両面とも吉岡オサム作詞、神津善行作曲、佐々木治編曲による第2弾シングルで、バロック音楽のイントロからギターのアルペジオに導かれ、スキャットがはじまる。

  Sha Ba Dubi Dubi A …… Sha Ba Dubi Dubi A

 「Sha」と「Ba」との間が徐々に吐息に変わっていく繰り返しが素晴らしい。彼女のフェロモン全開となるこのスキャットは、まさに淫靡な天使の囁きである。

 B面の「勝手にしやがれ」は、うって変わってのロック歌謡。
  
   勝手にしやがれ  今夜の汽車で
   くにへ帰ろう 九州へ チェッ

 “ミス・ダイナマイト”ブレンダー・リーばりに、鼻にかかった声にドスを効かせた歌声には快感。歌詞の合間に吐き捨てる「チェッ!」とか「ヘッん!」とかが、あばずれ感たっぷりでいいのだなぁ。

 美しい顔立ちと、均整のとれたプロポーションでモデル活動などもしていたが、その後、コロムビアに移籍し“くらもと恵子”名義で1973年、アクション歌謡で再デビューしている。

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