TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

歌謡曲外伝【あばずれ編】

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太田美鈴◆ バカヤローのあいつ/あなたさがして生きている 1971年

 1971年日活最後の一般映画『八月の濡れた海』との併映作『不良少女 魔子』の挿入歌で、太田美鈴自身もズベ公グル-プの早苗役で出演していた。
 歌手としてデビュー後、『不良少女 魔子』で女優デビューもしたのだが曲のヒットはなし。翌72年から73年の間に東映スケバン映画など6本に出演。

 ズベ公たちが賭けボーリングするたまり場の、ジュークボックス前でホットパンツ姿でふて節を披露していた。
 
    ◇

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山川ユキ◆ 新宿ダダ/街角の九月 1977年

 山川ユキのデビュー曲にして、新宿歌舞伎町通りを闊歩する昭和あばずれ歌謡の代表曲。
 ソウル歌謡って呼んでもいくらいの、ダイナミックな歌唱が魅力。

 ダダダダダダダダダダ 
 新宿生まれで新宿育ち

 一度オムニバスでCD化されたようだが、やさぐれ感いっぱいのダダは針音プチプチいっててもレコードで聴いた方がいいのだ。

    ◇


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五代マリ◆ 誘惑/ごめんねあなた 1977年

 どアップのモノクロ・ジャケットが、堂々たるあばずれ感を醸し出している。
 聴く者を痺れさせるに十分な凄みを持った21歳の悩殺歌唱が、希代の傑作を生み出した。

 なんて事ない歌詞なんだが、これが彼女の声から発せられると世界が一変する。
 「たンまらなッく たンまるぁッく好きぃぃ
 この巻き舌歌唱がエロを超越した獣の響き。どこか大陸的である。

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「弁護側の証人」小泉喜美子

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 この『弁護側の証人』は、1963年に書かれたミステリーの古典的名作のひとつで、長い間絶版状態だったものの復刊である。

    ◇

 ストリッパーのミミィ・ローイこと漣子は、八島財閥の御曹子と恋に落ち、結婚した。しかし幸福な日々は長くは続かなかった。義父である八島財閥の当主が殺されたのだ…………。

    ◇

 同年代のミステリーファンにはお馴染みであり、解説に“隠れファン”には複雑な心境だと書かれているくらい、読んだことのある者だけの愉しみな秘密といったことは、まさに同感。クリスティやクイーンなど正統派推理小説を読み耽っていた十代のころに、すっかり騙され驚かされた作品だ。

 ミステリー小説(映画)の紹介において、「どんでん返し」とか「意外な犯人」という言葉は、本来禁句である。
 当たり前の話だが、「意外」は何も知らないからこそ「意外」だし、「どんでん返し」は最後の最後まで白紙の状態だからこそ一撃を喰う快感に浸れるわけだ。
 しかし宣伝する側に、その面白さを伝えるためにこの「どんでん返し」「意外な犯人」という言葉が許容範囲に入っているのも仕方がない。惹句はその一文に惹かれてこそ伝わり、多くの読者や観客を生んでいくのだから、なかなか難しいものだ。
 
 さて、この復刊の惹句帯にも「伝説の“どんでん返し”がいまよみがえる……」と、堂々と印刷されている。
 1993年に発刊されていた紹介文にはトリックが施されていた。結末を知った読者が後で読むとなるほどと感心してしまうのだ。いろんなトリックがあると知るべしである。
 今回せめて「ミステリー史上に残る不朽の名作」程度でいいと思ったりしたのだが、新作でなく古典だから許すとして、小泉喜美子を知らないミステリー好きなひとにはどんな「どんでん返し」が用意されているのか、それを楽しみに読んでくれていいのかもしれない。

 初版が40年以上前でもまるで古さを感じることなく、ミステリーとしてとても洒落たものがある。
 「キノコのソースをあしらった肝臓料理を前にしたネロ・ウルフのように、義妹を眺めていた。」
 安楽椅子探偵で美食家の名前が出てくるなんて、いかにもミステリーを愛した小泉喜美子らしい一節だ。

    ◇

弁護側の証人/小泉喜美子
【集英社文庫】
定価 580円(税込)

「モッカラ・ゴーゴー」沢知美

 チャンネルNECOで、和製007風の東宝B級アクション映画『100発100中』シリーズ2本が放映されていた。
 宝田明の殺し屋が活躍するコメディ・アクション映画の傑作だが、1作目の『100発100中』のヒロインは本場の007映画に出演した浜三枝がお色気を振りまいていたけど、第2作目『100発100中 黄金の眼』の沢知美も負けてはいない。
 後半のゴーゴーダンスと歌は必見なのだなぁ。

 「モッカラ・ゴーゴー」
 意味不明な言葉が60年代を匂わせるが、作詞は谷川俊太郎………傑作。


大野克夫 映画編

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 先日中古CD屋で安価で見つけた、大野克夫の映画作品だけを集めた好コンピレーション・アルバム。
 1996年にリリースされた【フィルムコンポーザーセレクション大野克夫 全4巻】のうちのひとつらしいが、大野轟二の「泳ぐひと」がCD化されていたとは知らなかった。

    ☆

木村家の人びと
01. メインタイトル
02. 商売開始!
03. 小学生・緊急出動!
04. ミッドナイト・イン・木村家
俺っちのウェディング
05. タイトルバック
06. ふたりのテーマ〈本編未使用曲〉
07. 深夜の訪問者
08. 再会・長崎

09. タイトルバック
10. 郁子のテーマ
11. 若者のテーマ
12. 剣持のテーマ
13. My Only Love (英語版)歌:大野克夫
水のないプール
14. 一瞬の夏
十階のモスキート
15. メインテーマ
16. Mad Policeman〈本編未使用曲〉
17. アフター・ザ・襲撃
コミック雑誌なんかいらない!
18. メインタイトル
19. 「ズームアップTODAY」のテーマ
20. Walking
21. 公園のテーマ
22. Dorinker
魚からダイオキシン!!
23. STEP!
エロティックな関係
24. 華やかな追跡
野獣刑事
25. タイトルバック「泳ぐ人」歌:大野轟二 演奏:大野克夫BAND
26. 恵子のテーマ 演奏:大野克夫BAND
27. 野獣刑事のテーマ
28. エンドテーマ「ROLLING ON THE ROAD(cinema ver)」歌:内田裕也

    ☆

 裕也さんの最強な映画作品を集めたところにも食指が動いたのだが、やはり最後に収録されている『野獣刑事』の4曲が一番魅力的なわけで、「学生街の喫茶店」で知られるガロのヴォーカルだった大野轟二の「泳ぐひと」は、ダルで切ない声が沁みて、何度も、何度でも聴いていたい傑作。シングル・レコードを見つけることができない現在、このCDは貴重だ。
 そして「ROLLING ON THE ROAD」は映画本編使用の劇伴ヴァージョン。アルバムの締めくくりとしても素晴らしい選曲である。
 
 このアルバムは amazon などでまだ購入可能なので、興味あるひと、お勧めするよ。
 

「われに撃つ用意あり」*若松孝二監督作品

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READY TO SHOOT
監督:若松孝二
原作:佐々木譲「新宿のありふれた夜」(「真夜中の遠い彼方」を改題)
脚本:丸内敏治
音楽:梅津和時
主題歌:「新宿心中」原田芳雄
挿入歌:「魂の1/2」原田芳雄
    「女一代」佐賀紀三江
    「風に吹かれて」
出演:原田芳雄、桃井かおり、ルー・シュウリン、蟹江敬三、石橋蓮司、室田日出男、山口美也子、西岡徳馬、小倉一郎、斉藤洋介、松田ケイジ、佐野史郎、麿赤児、山谷初男、下元史朗、又野誠治

☆☆☆☆ 1990年/松竹・若松プロ/106分

    ◇

 不夜城として多国籍な人種を飲み込んでいる新宿・歌舞伎町を舞台に、やくざに追われるひとりの少女を助けたことで、暴力団の抗争に巻き込まれた元全共闘闘士の一夜を描いたハードボイルド作品の傑作。
 原作は、新宿に巣食うアウトローたち、ボートピープル、不法滞在労働者などの社会問題を盛り込んだ佐々木譲のサスペンス小説で、若松孝二監督は大きなストーリーの流れはそのままにしながら、登場する人間たちに団塊の世代への深い思い入れを込めている。

 1968年当時、医学部の学生で全共闘に身を投じていた郷田(原田芳雄)は、ドロップアウトして新宿で20年間JAZZバーを営んできた。そんな彼が、今夜で店を閉めることにしていた。
 夜には少し早い時間、ヤクザに追われる台湾人少女メイラン(ルー・シュウリン)が郷田の店に逃げ込んできた。街は、血眼で女を探す暴力団と、女を重要参考人とする警察の捜査で包囲されていた。

 夜の始まり。閉店パーティーに多くの常連客が名残り惜しく出入りするなか、かつての活動家仲間が集った。
 フリーライターの李津子(桃井かおり)、不動産屋の有本(西岡徳馬)、広告代理店のプランナー馬場(斉藤洋介)、区議会議員の江里子(山口美也子)、予備校講師の三宅(小倉一郎)。そして、アル中で定職のない秋川(石橋蓮司)がいつもの席で酔いつぶれている。
 教え子たちに機動隊と闘った話を吹聴する小倉一郎、東南アジアでの女遊びを自慢する斉藤洋介、外国人難民の救済運動に力を入れている山口美也子、バブル景気の地上げで成功した西岡徳馬など、それぞれの取り巻く社会的立場や環境が変わってしまったかつての活動家たちは、酔っぱらうにつれて相互批判をはじめるのだが、この室内劇での団塊の世代の自己矛盾的応酬が面白い。

 斉藤洋介の口元を見ながら石橋蓮司がクダを巻く。
 「機動隊に折られた歯が勲章だったんじゃないか?真っ白な歯にしやがって、バ~カッ」
 そう云われた斉藤洋介の侘しい表情が何とも云えない。

 中でも、台詞は少なく酔っぱらってばかりの石橋蓮司の存在が光る。
 石橋扮する秋川は、女房とこども3人がいる困窮する立場でありながら生活の糧は新聞配達しかしない。一日中ひとの情けだけで生きているダラしない落伍者なのだが、郷田がいつも面倒を見ている様がわかる。共に本当の闘士として、ドロップアウトしたふたりだけにしか分からない友情関係が渋く描かれており、心にジワっと沁みてくる。
 「石橋蓮司は最高の役者だ」と、昔から賛辞を送る原田芳雄と桃井かおりに挟まれてスクリーンに映れば、この組み合わせだけで云うことなしではないか。
 この作品を含めこの年、石橋蓮司はいくつかの最優秀助演男優賞を獲ったと記憶する。

 若松監督は、映画のエンドロールに1968年10月21日に起きた新宿騒乱事件のフィルムを流し、主人公たちを全共闘に重ね合わせ共感しているが、ポスト団塊の世代となるぼくには、70年代に反体制あるいはアウトローとして、スクリーンを駆け抜けた俳優たちの役柄に重なって見えた。
 『赤い鳥逃げた?』で行き場を失い自滅して行った原田芳雄と桃井かおり。『あらかじめ失われた恋人たちよ』で自分の言葉を捨てた石橋蓮司。『新宿乱れ街』で新宿に別れを告げる夜に、「女は長い糸に繋がった凧」と呟きバーのカウンターでストリップをする山口美也子。
 そして『天使のはらわた/赤い教室』の裏通りでたったひとりの女さえ救えず絶望に打ちのめされていた蟹江敬三は、原田芳雄と因縁の関係となる新宿署のマル暴デカを演じている。

 新宿を牛耳るボスとやくざ仲間には状況劇場出身の麿赤児と佐野史郎。やくざの患者を相手にしている朝鮮人の病院長山谷初男も、情報屋でポン引きの下元史朗も、魑魅魍魎とした70年代の新宿に縁のある役者ばかりではないか。リアルな空気感を醸しだす配役だ。
 
    ◇

 さて終盤。実はメイランはベトナム難民で、偽造パスポートで入国し新宿で働いていたところを暴力団に目をつけられ、拉致され売春を迫られていたのだが、その組長を弾みで撃ち殺してしまい、ある重大なビデオテープを持って逃げていたことが分かってきた。
 郷田はメイランを高飛びさせようと奔走するが、やがて香港マフィアのリュウ(室田日出男)たちが郷田の店に姿を現わす。メイランを連れ去ろうとしたとき、いままで酔いつぶれていた秋川がひょいと起きあがり、彼らに立ち向かうのだが、あっけなく銃弾に倒れてしまう。この現実を目の当たりにした仲間たちは、ただうろたえるしかない。
 郷田は、秋川の弔い戦とメイランの救出を決意する。それこそが、20年経った郷田の総括であり、アイデンティティそのものなのだろう。

 20年住み続けているボロアパートで、李津子とともに襲撃の準備をする。何も変わっていない部屋。20年の時間が止まったままの部屋。裏返しにされたゲバラの写真立て。「今さらゲバラでもないけど」と李津子。マグカップにジンを注ぎ飲み干す李津子もまた、新たな決意を胸に秘めたのだ。ただ生きているだけではダメなんだ。どう生きていくかだ。再生の時が来た。

 原田芳雄と桃井かおりの、最強にして最高のコンビネーションを見せる殴り込みシーンは注目。リボルバー片手に、室田日出男や蟹江敬三らとの銃撃の末、無事にメイランを逃がすことに成功する。
 夜が明けた新宿の街を、負傷した身体を互いに支え合いながら彷徨う原田芳雄と桃井かおり。コマ劇場前、ストップモーションの画面に、ふたりの呟きがかすかに聞こえ…………。

「俺にさわると危ないぜ」*長谷部安春監督作品

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BLACK TIGHT KILLERS
監督:長谷部安春
原作:都筑道夫「三重露出」
脚本:中西隆三、都筑道夫
音楽:山本直純
タイトル・ソング:「アリペデルーチ・レオパルーダ・カリーナ」小林旭
エンディング・ソング:「泣くなさすらい」小林旭
挿入歌:「わが愛の詩」 高見アリサ
出演:小林旭、松原智恵子、北あけみ、西尾三枝子、加茂こずえ、浜川智子、可能かづ子、斎藤仁子、高品格、郷えい治、左卜全、二本柳寛

☆☆☆ 1966年/日活/86分

    ◇

 “日活ニューアクション”の旗手で、『野良猫ロック』シリーズや“日活ロマンポルノ”においてのアクションある作品で魅了させてくれた長谷部安春の、監督デビュー作品である。

 ベトナム戦争の従軍カメラマン本堂大介(小林旭)は、休暇で日本に帰って来る飛行機の中でフライトアテンダントのヨリ子(松原智恵子)をナンパ。デート中のナイトクラブでヨリ子が怪しい外国人に狙われ、その外国人は謎のブラックタイツの女性グループ(西尾三枝子、加茂こずえ、浜川智子)に殺された。本堂が警察に電話をしているスキにヨリ子は何者かに誘拐され、本堂は殺人の容疑で捕まってしまう。容疑が晴れヨリ子を探し始める本堂は、戦時中に隠された10億の金塊をめぐるギャング一味とブラック・タイツの美女軍団の争奪戦に巻き込まれていく……。

    ◇

 めちゃ面白い! 
 鈴木清順に師事していた長谷部監督の腕前は、スタイリッシュな映像美とコミカル・アクションが入り交じり、面白さを存分に堪能できる出来映え。エンターテインメントな遊び心に満ちた、オシャレで痛快な傑作である。

 オープニングの戦場シーンは、いきなり大量の火薬を使った爆破アクション。そのサービスぶりは、普通ならクライマックスに使うような大技を、巻頭で惜しげもなくさらしてしまう長谷部監督の意気込みといったところだろう。

 お揃いのウィッグとブラック・タイツで黒い目隠しの仮面をつけた6人の女性たちが、それぞれ色分けされたブラジャー姿で踊りまくるタイトルバックは、当時流行の007映画のタイトルバックを倣した洒落っ気で、美女軍団の色とりどりさが映画全体のトーンを作り上げていて面白い。そして、タイトル・ソングとして流れる旭のイタリア語のエレキ歌謡も聴きものだ。
 スポーツカーを走らせた背景や、街なかのライティングは鮮やかな色彩が効果的で、旭が松原智恵子を夢見る妄想シーンでの大胆な色彩感覚も秀逸。色とりどりのホリゾントの空間で、凝った演出と縦横に動くカメラワークは必見。

 旭の敵として現れたブラック・タイツ団は、実は沖縄戦で軍部に一族を殺された生き残りで、一族の財産だった金塊を取り戻すために従姉妹同志が集まった“くの一軍団”。彼女たちが操る荒唐無稽な“忍法”が可笑しい。シングルレコード盤を手裏剣代わりにする「忍法空飛ぶ円盤」や、相手の目をガムで塞ぐ「忍法ガムガム弾」は可愛いもので、「忍法オクトパスポット」は色っぽい。北あけみとのベッドインでは旭のアソコに吸い付いて、動きがとれないところにほかの美女たちが襲い掛かるわけで、逃れ方は笑いガス弾で筋肉をゆるませるとは……。

 清楚で可憐なヒロイン松原智恵子は白い下着姿で縛られ、郷えい治によって全身に白色の塗料を吹き付けられる。この大胆なシーンはドキッとする。21歳、松原智恵子のエロティシズムである。
 このシーンは、会社側からのクレームはなかったが松原智恵子からは嫌われたと、後年、監督がインタビューで語っている。そうだよなぁ。
 マイトガイは、バーナーの火で敵を蹴散らし助けに入るが、いつのまにかどこかに連れ去られているお間抜けぶり。その旭は何かとブラック・タイツ団の美女たちに助けられるのだが、一人ひとり旭の腕のなかで死んでいく展開はシリアスだ。 

 クライマックスは孤島での銃撃戦。
 1967年に公開されたフランス青春映画の傑作『冒険者たち』のラストを思い出すのだが、ヘリコプターとの撃ち合いは『007/ロシアより愛を込めて』の完全パロディである。
 原作者の都筑道夫は東宝のカルト映画『100発100中』シリーズで脚本を書いているが、こちらはフランスのアクション映画『ファントマ』シリーズに似たドタバタ・コメディ・アクションだった。
 60年代は、和製スパイ・アクション映画の花盛りだったのだ。

 さて長谷部監督はこの後、大掛かりなアクションとカット数の多さで大幅に予算をオーヴァーしたため、1年以上干されていたという。

Dear Mr. Blues ~原田芳雄

New York City Big City

シビレてくだされ
Dear Mr. Blues …………

「ライブ」原田芳雄



Side. A
01. B級パラダイス
02. 横浜ホンキートンク・ブルース
03. センチメンタル・ボクサー
04. 10$の天使

Side. B
01. ジンハウス・ブルース
02. Get Out Of My Life Woman
03. 山猫スト
04. ブルースで死にな

Side. C
01. Going Down
02. マッカーサーのサングラス
03. Every Night Woman
04. When A Man Loves A Woman

Side. D
01. シュートピースとハイボール
02. レイジー・レディー・ブルース
03. I Saw Blues ~ Ending

    ☆

 俳優原田芳雄が、30年以上歌いつづけているBlues。
 酒とBluesがこんなにも似合う男。
 Bluesを唄い演ずる役者は原田兄貴しかいない。

 男は黙ってBluesよ…………
 絵になる男の、紛れもなくこれが完全無敵の“Blues”!

 1982年10月7・8・9日の渋谷パルコ・part3でのライブ音源を収めたLP2枚組で、バックの演奏をつとめるのは、元キャロルのリード・ギタリスト内海利勝とダウン・タウン・ブギウギ・バンドの初代ギタリストだった蜂谷吉泰らから成るサッキングルージュ。
 「山猫スト」では宇崎竜童がトランペットで参加しているのだが、イントロで竜童とテンポが合わず、やり直しをしたテイクをそのまま収録しているのが面白い。
 やっぱ、バーボンばかすか飲みながらのステージングこそ原田芳雄らしい。アルバムとは全然違って演じ語り唄うBluesは素晴らしいのだ。
 名古屋HEARTLAND STUDIOの最前列で見た時の記憶しかないけれど、ライブはいいぞ。

 哀愁の「横浜ホンキートンク・ブルース」「ブルースで死にな」………
 気怠い「レイジー・レディー・ブルース」「I Saw Blues」………
 完璧のBlues!

 このアルバムでしか聴くことができない曲が、大木トオルの「Every Night Woman」と浅川マキの訳詞で有名な「ジンハウス・ブルース」。
 特に「ジンハウス・ブルース」は、ブルース・ハープを加えたスロー・ブルースが心地よい。

 哀しきは、原田芳雄のアルバムが、ベスト盤以外にCD化されていない。
 いつか、この『ライブ』も含めて、すべてのアルバムがリリースされることを願っている。

「さらば愛しき女よ」内田裕也


“Farewell, My Lovely”

 1982年にリリースされた内田裕也&トルーマン・カポーティ・ロックンロール・バンドのアルバムは、タイトルをご覧のようにハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの世界を描いたコンセプト・アルバムになっており、稲越功一撮影のモノクロ・ジャケからもクールな香りが漂ってくる名盤。

    ◇

[Criminal Side]
プレイバック
PLAYBACK 作詞:東海林良/作曲:井上大輔
雨の殺人者
KILLER IN THE RAIN 作詞:東海林良/作曲:宇崎竜童
さらば愛しき女よ
FAREWELL, MY LOVELY 作詞:東海林良/作曲:大野克夫
かわいい女
THE LITTLE SISTER 作詞:東海林良/作曲:ジョニー大倉
真珠は困りもの
PEARLS ARE A NUISANCE 作詞:東海林良/作曲:沢田研二

[Detective Side]
赤い風
RED WIND 作詞:礼 門土/作曲:梅林茂
湖中の女
THE LADY IN THE LAKE 作詞:田口道明/作曲:BORO
大いなる眠り
THE BIG SLEEP 作詞:東海林良/作曲:井上堯之
長いお別れ
THE LONG GOODBYE 作詞:礼 門土/作曲:大野轟二
ローリング・オン・ザ・ロード
ROLLING ON THE ROAD 作詞:東海林良/作曲:大野克夫

    ◇

 作品提供の作家陣は裕也さん所縁の豪華な面々で、作詞が東海林良・礼門土・田口道明、作曲が井上大輔・宇崎竜童・大野克夫・ジョニー大倉・沢田研二・梅林茂・BORO・井上堯之・大野轟二ときたもんだ。井上堯之、井上大輔、BOROらは演奏にも参加している。

 一度CD化はされているのだが現在は廃盤で、中古でもめったに出回らない。出てきてもかなりの高値が付くのだろうから、早く紙ジャケCDで再発して欲しいアルバムのひとつなのだが、せっかくA面を[Criminal Side]犯罪篇、B面を[Detective Side]探偵篇と題しているのだから、アナログ盤で片方づつ聴くのもいいものである。
 (2013年9月タワーレコード良盤発掘隊により、デジタルリマスタリングされリイシューされた。)

 「雨の殺人者」は、宇崎竜童主演の『TATTOO〈刺青〉あり』のオープニングに使用された曲で、「長いお別れ」同様にシングル・カットされている。
 レイモンド・チャンドラーの書籍と曲を照らし合わせてみると、「雨の殺人者」と「赤い風」「真珠は困りもの」は短編からのタイトルで、「大いなる眠り」「湖中の女」「さらば愛しき女よ」「かわいい女」「長いお別れ」「プレイバック」がフィリップ・マーロウ物だ。
 
 そして、唯一チャンドラーに関連はしていないがハードボイルドな男にぴったりな「ローリング・オン・ザ・ロード」は、さきに紹介したように『野獣刑事』のエンディングに流された名曲。宇崎竜童、沢田研二、大野克夫、井上堯之、井上大輔、安岡力也、BOROらをバックコーラスにしたアルバムヴァージョンを、そのままTV『夜のヒットスタジオ』(1982年4月放送)でもこの軍団を従えての凄い画を見せてくれたのを思い出す。

 録音された1981年の裕也さんは『ヨコハマBJブルース』『嗚呼!おんなたち 猥歌』へと役者稼業が続いた年で、このあと、『水のないプール』『十階のモスキート』『戦場のメリークリスマス』と、ますます映画の世界で泳ぎだしていくのだが、俳優として決して上手いわけではなく、演技というより存在感で語られる御仁なわけで、何をしようが、どこに居ようが、裕也さんは裕也さんでしかなく、そのパワーに圧倒される唯一無二のひとだ。
 2~3年前に汐留の某ホテルのエレベーター前でお見かけし、圧倒されながらも、気軽に握手をして頂いたときのことは一生忘れられない。

 さて、もちろんROCKの世界ではロッケンロールに殉じた御仁。
 声量のない裕也さんではあるが、世界観はきっちり表れていて、このチャンドラーの世界では、歌い演じている。
 なんて切ない声。まさにハードボイルド。
 大人のROCKを感じずにはいられないのだ。
 

「野獣刑事」*工藤栄一監督作品



監督:工藤栄一
脚本:神波史男
撮影:仙元誠三
音楽:大野克夫
主題歌:「泳ぐ人」大野轟二
エンディングソング:「ローリング・オン・ザ・ロード」 内田裕也
出演:緒形拳、いしだあゆみ、泉谷しげる、川上恭尚(子役)、益岡徹、小林薫、蟹江敬三、藤田まこと、絵沢萌子、阿藤海、麿赤児、岩尾正隆、日高久、成瀬正、遠藤太津朗、成田三樹夫、芦屋雁之助

☆☆☆☆★ 1982年/東映/119分

    ◇

 “刑事〈デカ〉は通り魔を追い、
   刑務所〈ムショ〉帰りは またシャブに狂い、
     気のいい女は ろくでなしを愛しつづけた……。”

 降りしきる雨の夜、人通りのない道。家路を急ぐ赤い傘をさした女子短大生が何者かに刺殺された。
 大阪・釜ヶ崎地区を我が物顔に歩き回る捜査一課刑事の大滝(緒形拳)も、この事件の捜査に駆りだされた。犯罪者はもちろん、同僚からさえ恐れられる一匹狼のデカだ。大滝は、かつて逮捕して刑務所に送り込んだ男の情婦でピンク・キャバレーのホステス恵子(いしだあゆみ)と同棲に近い暮らしをしている。恵子には一人息子で7歳の男の子がいるが大滝には慣つこうとしない。
 通り魔事件は大滝独自の捜査で、被害者由美子が昼はノーパン喫茶、夜はコールガールとして働いていたという隠された生活をつきとめたが、犯人の正体は見当さえつかなかった。
 その頃、恵子のかつての情夫阪上(泉谷しげる)が出所し、恵子の家に転がり込んで奇妙な三角関係が始まる………。

    ◇

 “野獣刑事”というタイトルから、警察組織をはみ出したアウトロー刑事のアクション映画を想像すれば、それは見事に裏切られるだろう。
 この作品は、男と女の、狂気と憎悪の、美しくも哀しい物語なのだ。

 60年代に集団群像時代劇で注目を浴びた工藤栄一監督は、70年代の東映実録やくざ路線ではたった2本の佳作を撮っただけで沈黙。作品発表の場をテレビに移行し、『傷だらけの天使』をはじめ『祭りばやしが聞こえる』『探偵物語』『必殺シリーズ』などの傑作・名作で多くの支持を集めていた。スクリーン復帰は、79年の『その後の仁義なき戦い』で、70年代のやくざ映画の終焉を飾ったことになる。
 『影の軍団・服部半蔵』『ヨコハマBJブルース』につづいて発表されたこの作品は、工藤監督お得意の映像の光と影の煌めきを存分に堪能できるし、人間の光と影をもしっかりとスクリーンに刻み込んだ傑作であり、工藤作品の中で一番好きな作品だ。

 80年代はじめの殺伐とした時代を、ドキュメントのように書き上げたオリジナル・ストーリーは、『その後の仁義なき戦い』で脚本を担当した神波史男。ハードボイルドの極致を感じる。
 工藤監督vs松田優作の傑作『ヨコハマBJブルース』のカメラマン仙元誠三が、光と影の映像美をシャープに捉えているのも興味あるところ。
 そして、そのカメラワークに合わせた劇伴とテーマ曲担当の大野克夫のスコアも、素晴らしいの一言である。

    ◇

 映像の魔術師と云われる工藤監督の得意技は、ブルートーンの画面と逆光に煌めく濡れた路面をロングショットで見せる構成。それは、オープニングから惜しげもなく見せてくれる。この画(絵)で惹き込まれるのは必至。
 雨合羽に帽子をかぶった男のシルエットからはじまり、家路を急ぐ女子短大生。その後方からくる自転車。男が飛びかかる。雨の路上に転がる赤い傘。映画の中で一番印象的なこの赤い傘は、後半の囮捜査のシーンでは凄い効果をあげている。文句ない演出である。この作品以後、どれだけの映画、ドラマで赤い傘が風に舞ったことか。

 ゴシック体の書体でタイトル名が浮かび、ブルージーな主題歌「泳ぐひと」が流れるなか、西成のあいりん地区の風景と、大阪の街を歩く緒形拳の姿が映し出されていく。あいりん地区は車中からの隠し撮りだが、全体に、他のロケ現場もリアルなのがいい。

 緒形拳が粗末な木造アパートに入っていくところで歌が終わり、2階の一室で全裸のいしだあゆみと緒形拳がからむ姿を外のカメラが捉えるのだが、このような窓越しのカットは、鉄格子越しの益岡徹の取り調べや、シャブで発狂し暴れる泉谷の長回しなどに何度も出てくる。

 刑事と、ピンク・キャバレーのホステスと、ムショ帰りのシャブ中男の、奇妙なラブストーリーを築き上げているのが、個性豊かな三人の俳優。
 粗暴で横柄だが孤独な男の造型が見事な緒形拳だが、終盤、女を死なせてしまった後、子供とカレーライスを食べる姿に、人間臭さと悔恨の姿が表れていて素晴らしい。
 いしだあゆみは、蹴られても裏切られても健気に男に依存しなければ生きていけない女。ひっそりと生きる女の寂しさが、画面いっぱいに感じられる。
 泉谷しげるは、狂気のリアル感に圧倒される。見所はシャブ中の妄想で大暴れするシーン。そのリアリティは、ロケ現場近くで現実に火事が起こったことだろうか。カメラマン仙元誠三はその模様をカメラに収め、泉谷は「シャブには火事が一番だ」とつぶやき、そして狂っていく末、バットを振り回しながらいしだあゆみを追いかける。ロングショットの撮影がリアリティを増幅させる凄いシーンである。

 そして、緒形がいしだあゆみを使っての囮捜査。不安げないしだあゆみの姿は、ブルートーンが効いている。橋の上を所在なげに赤い傘をさして歩く彼女に、橋のたもとで見張る緒形がライターの火で合図をする。いしだは小さく手を振り、ぎこちなく微笑む。寂しい女の情感が絶品である。

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 そのあと、車のヘッドライトが目くらましになり、あとに残されるのは赤い傘ひとつ。
 雨に濡れた路面と逆光の中、瀕死のいしだを背負って走る緒形の引きの画。「痛い。痛い。」と、いしだあゆみのつぶやきがとてもリアルだ。
 
 緒形に女を寝取られても卑屈にペコペコしていた泉谷は、このあと豹変。いしだの写真を胸に抱き、車で街中を走り廻りながら無差別殺人を引き起こす。フロントガラスに何度も唾を吐き苛立つ様が怖い。
 80年代に入ると、団地などで覚醒剤汚染が広まり、覚醒剤による事件が頻繁に起こった時期でもある。ここに描かれるシャブ中毒症状の陰惨な模様は、現代社会の病理への警告でもあったはず。世の中どこが狂っているのか。悪意と、憎悪と、狂気は、いまだに何も変わってはいない。

 「恵子を殺した大滝を呼べ」と、住宅地で主婦を人質に篭城する泉谷しげる。ひとり乗り込む緒形。銃声のあと、突入する警官隊。夜明けの街に、川俣軍司の事件を思わす猿ぐつわ姿の泉谷。足を撃たれた緒形。「かあちゃん殺したんは、おっちゃんやろ!」と、いしだの息子稔の声。

 エンディングは内田裕也が歌う「ローリング・オン・ザ・ロード」をバックに、稔の元気な姿が映しだされる。
 万引きした果実を母親の遺骨に供養する稔。アパートの部屋に入ろうとする緒形を拒絶し、しょぼくれた緒形の背中を窓から見つめる稔の眼差しで、映画は終る。



 この「ローリング・オン・ザ・ロード」は、裕也さんのアルバム『さらば愛しき女よ』('82)に収録されていて、宇崎竜童、沢田研二、大野克夫、井上堯之、井上大輔、安岡力也、BOROらがバックコーラスに参加している名曲である。当時、予告編で流れていたのを見たときから、この映画にピッタリだと感じていただけあり、エンディングでの使われ方は絶品である。この歌はショーケンも歌っているが、裕也さんの方が味わいがあって好きだな。
 劇中音楽で云えば「大阪で生まれた女」が流れる。オリジナルのBOROの歌だと思うのだが(セリフに被るので聞き取りにくい)、ここはショーケンの歌を使用して欲しかったところ………。