TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「浪人街 RONINGAI」*黒木和雄監督作品



監督:黒木和雄
原作:山上伊太郎
脚本:笠原和夫
総監修:マキノ雅広
特別協力:宮川一夫
出演:原田芳雄、樋口可南子、石橋蓮司、杉田かおる、伊佐山ひろ子、賀川雪絵、絵沢萠子、水島道太郎、中尾彬、佐藤慶、長門裕之、田中邦衛、勝新太郎

☆☆☆☆ 1989年/日本・松竹/118分

    ◇

 吹きだまりに巣食っているアナーキーな素浪人たちが、お互いを干渉し合わずただ酒を飲むだけの関係にありながら、ひとりの女のために命を賭して修羅場へ飛び込んでいく姿を描いた傑作娯楽時代劇で、カメラマン宮川一夫が特別参加したラスト17分に渡る浪人4人vs悪党旗本120人の大殺陣はクライマックス・シーンとして血湧き肉踊る。


 江戸下町のはずれにある一膳めし屋には、夜鷹たちの用心棒をしている赤牛弥五右衛門(勝新太郎)、飲んだくれで風来坊の荒牧源内(原田芳雄)、刀の試し斬りで日銭を得ている母衣権兵衛(石橋蓮司)、帰参の夢を持ち鳥屋を営む土居孫左衛門(田中邦衛)といった行き場をなくした浪人や夜鷹たちが集まり享楽している。店の主人は夜鷹たちの面倒をみている侠客あがりの太兵衛(水島道太郎)。
 界隈には、この街で一番色香があり一目置かれているお新(樋口可南子)や、孫左衛門の妹おぶん(杉田かおる)と恋仲の佐吉らがいる。
 源内はお新のヒモのような生活をしており、そのお新に密かに心を寄せているのが母衣。そして太兵衛と赤牛にとって、街で夜鷹たちが次々に斬られているのが心配の種だった。
 憂さ晴らしの夜鷹斬りは旗本・小幡(中尾彬)一党の仕業で、それを嗅ぎつけた太兵衛は旗本たちに殺され、お新とおぶんが小幡らに立ち向かうが捕まってしまう。
 小幡は源内を誘い出す手としておぶんを逃がし、お新を衆人環視の中で牛裂きの刑に処することにした。
 飲んだくれの源内は佐吉に金で雇われ、母衣は恋するお新のために、孫左衛門は妹と己の存在を賭け、小幡一党が待つ子恋いの森へ駆け付けるのだった………。

    ◇

 黒木和雄監督の作品の中では、70年代の『竜馬暗殺』と『祭りの準備』の2本が優れた青春映画であり群像劇として、20代の時に観た映画のなかで強烈な印象を残している。『日本の悪霊』『原子力戦争Lost Love』『夕暮れまで』も観てはいるのだが結構内容を忘れているし、『夕暮れまで』においては主演の桃井かおりと黒木監督が撮影中に起こした大ゲンカの逸話しか記憶に残っていない。
 2000年に入ってからの黒木監督は『TOMORROW 明日』('88)にはじまる戦争レクイエムを連作し生涯を終えたが、全監督作品の中で娯楽映画と言えるのがこの『浪人街』で、“日本映画の父・マキノ省三追悼六十周年記念作品”として再映画化されたものだった。

 この映画が忘れられないのは、出演する俳優たちの存在感だ。

 原田芳雄は、むさ苦しいなりの女たらしで常に酔っぱらっている態だが、時には星座の書物を読んだりして想いを宇宙に馳せるインテリ男。
 ラストは5本差しの腰刀での大立ち回り。赤銅色に光る鍛えられた身体と散切り髪を振り乱しながら旗本たちを斬って斬って斬りまくる。無頼で体力まかせの破れかぶれなところが、いかにも原田芳雄のキャラクターである。

 勝新太郎は、金をもらい宮仕えができるなら旗本たちに犬扱いされるのも辞さない卑劣漢を演じるが、夜鷹たちに文字を教えたりする心優しい浪人の顔も見せる。
 長門裕之扮する屋台のうどん屋とのワンシーンも、心根の良さを醸し出している。重量感ある芝居はさすが勝新で、殺陣シーンはないが最後に見せ場をつくってくれる。

 田中邦衛は、上司の身替わりで浪人になってしまった気弱な侍。愚痴が多く卑怯なところもあるが憎めない。この手の役はやはり巧いなぁ。

 四人の浪人のなかで一番格好いいのが石橋蓮司で、ニヒルな素浪人を演じる。
 酒の飲み方もクールで居合いの腕前も凄いのに、一大決心で樋口可南子を抱こうとすれば「心が欲しいなら私を連れて逃げて」と云われるや、何もできなくなってしまうナイーブな男の純情さを見せてくれる。
 ラストの修羅場では、居合い抜きで何十人もの旗本たちを斬りまくり、白装束を鮮血で真っ赤に染める。田中邦衛が甲冑姿で騎馬戦をする可笑しさに対して、何と格好いい見せ場のことか。

 大人のオヤジたちが活躍するのも彼等の原動力になるのはイイ女がいるからで、夜鷹の樋口可南子はとにかく色っぽい。ろくでなしの原田芳雄とのくされ縁に翻弄されてはいるが、凛としたイイ女っぷりだから男たちは立ち上がるのだ。


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「氷の華」天野節子



 テレビ朝日開局50周年記念ドラマとして9月6日7日の2夜連続で放映されるということで早速読んでみた。

 いやぁ驚いた。齢60歳にしてのデビュー作とは思えない傑作ミステリーで、しっかりしたプロットで固められた謎解きとサスペンスの充実度は満点。大長編だが無駄な箇所もなく、読み始めたら止まらなくなり、一日で読了した。

    ◇

 結婚12年を迎える恭子は、美貌と財産に恵まれた女性でありプライドの高さも人一倍。周りからの賛辞を受けるための同窓会への出席に心を弾ませていた。
 そこに、夫の愛人を名乗る女から電話が掛かってきた。
 女が発した言葉に動揺し打ちのめされる恭子は、不倫相手を毒殺することを計画し、実行する。
 しかし、恭子が殺した女は本当に夫の愛人だったのか?
 疑心暗鬼になった恭子は真相を探り、反撃に出る。
 そして、執拗に恭子を追い詰めるベテラン刑事の戸田と恭子の知的対決が始まる………。

 ノンストップで疾走する展開は、第4章での戸田と恭子の対決でまずピークを迎える。張り巡らされた伏線の中で浮き彫りになる人間模様と、執拗に真相に近付いていく刑事とヒロインとの攻防。
 罠に落ちた恭子が仕掛けたわな。そのスリリングさは実に面白い。
 
 女の“性”か“業”なのか。“悪”に堕ちていく殺す女も殺される女も、そして傍観する女も、みんなクールだ。そして、氷柱のなかにひと際鮮やかに咲く“氷華”の如く凛としたヒロインの生き様が、ラストに大いなる余韻を残す。この最後の一行がいい。
 ミステリーとして斬新さがなくても、対立する人物像が丁寧に描かれているから完成度は高い。

 さて、ドラマ化は設定をがらりと変えているが、キャスティングは米倉涼子、葉月里緒奈、高岡早紀、鈴木杏樹、中島ひろ子、南野陽子、前田美波里といった豪華な女優陣に、舘ひろし、堺雅人、渡哲也らならば大いに期待したいところ。
 原作と異なるドラマ独自のラストもありか…………?

    ◇

氷の華/天野節子
【幻冬舎文庫】
定価 686円(税別)


グルーヴィー! リディア・ペンス最新ライヴ!


LYDIA PENSE & COLD BLOOD / LIVE BLOOD

 タワー・オブ・パワーと並んで70'ベイエリア・ファンク・ロックの代表格と云われた“コールド・ブラッド”の、2007年最新ライヴ・アルバムが発売された。

 ファースト・アルバムに納められていたウィリー・ディクソンの名ブルーズ曲「 I Just Wanna Make Love To You」から始まるラインナップは、2ndアルバム3rdアルバムの曲を交えながら、パワフルなホーン・セクションとグルーヴィーなギターサウンド、タイトなリズムのうねりから生まれるファンク・ミュージックをバックに、ソウル・シンガー、リディア・ペンスのシャウトに酔いしれることができる。

    ☆

01. I Just Wanna Make Love To You
02. Can't Take It
03. No Way Home
04. I'm A Good Woman
05. Funky On My Back
06. Back Here Again
07. Face The Music
08. Latta Good Lovin'
09. You Got Me Hummin'

    ☆

 “コールド・ブラッド”は、1969年“フィルモア”の主宰者ビル・グラハムに認められフィルモア・レーベルからデビューをし、メジャー移籍を経て1976年に解散するまで6枚のアルバムを出している。
 1989年に再結成され、現在もなお活動している現在進行形のリディア・ペンス&コールド・ブラッドは昨年4月に奇蹟の来日を果たし、2008年8月現在2度目の来日中なのだが、東京“COTTON CLUB”だけのライヴなのが何とも残念だ。

 アルバムとして、ブルーズ/R&B色の強い1stアルバム『COLD BLOOD』が一番好きなのだが、今回のこの最新ライヴを聴くと、張りのある20代の声に決して負けていない歌声に驚かされる。

COLD BLOOD : 1st

 リディアはますます円熟味を増し凄みが増している。
 バンド名が“コールド・ブラッド”とは云え、フロント・ヴォーカルのリディアが発する歌声はいつも熱い。
 リディアのヴォーカルを支えるバンドは結成当初からメンバー・チェンジをくり返し当然現在もオリジナル・メンバーではないが、ホーン・セクションをバックにリディア・ペンスがシャウトをすれば、すなわちそれが“コールド・ブラッド”なのだ。

 1971年に閉鎖されたロックの殿堂フィルモア・ウエストとフィルモア・イーストのファイナル・コンサートを収めたドキメンタリ-映画『フィルモア 最后のコンサート』('72)において、初めてステージに立つリディアを見た。
 1stアルバムから「 You Got Me Hummin'」と「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」の2曲を歌うブロンドで美しい顔だちのリディは、黒のパンタロン・ジーンズ姿で腰を落としたガニ股スタイルでシャウトする。
 デビュー以来リディア・ペンスのヴォーカルはジャニス・ジョプリンと比較されてきたが、小柄な体躯(身長150cm足らず)から振り絞るように発っするソウルフルな歌声は、まるで女ジョー・コッカーを思わすアクションも含め聴く者を痺れさせ、とにかく格好よかった。

 そして、今もその面影は変わっていないはず。

からまわり


どうしてあそこで岩瀬なんだ

同点にされて振り出しに戻ったのだから

上原でも ダルビッシュでも マーくんでも

使える先発陣をなぜ使わない

3位決定戦でダルビッシュを出しても意味ないじゃないか

残されたのは死闘だったのだ

岩瀬は2度屈辱を味わっている

ドラゴンズファンであり 岩瀬のファンだからこそ哀しいが

公式戦とは違う

リベンジを与えることはない

心が折れている者をコロシアムに上げることはなかった


女子ソフトボールの方が 余程感動しただけに残念なのだよ

「反撥」

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REPULSION
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラシュ
撮影:ギルバート・テイラー
音楽:チコ・ハミルトン
主演:カトリーヌ・ドヌーブ、イヴォンヌ・フルノー、ジョン・フレイザー、イアン・ヘンドリー、パトリック・ワイマーク

☆☆☆☆ 1965年/イギリス/105分/B&W

    ◇

 カトリーヌ・ドヌーブ22歳。恐ろしいほど美しい。
 まさに“美しきブロンドの狂気”である。

 思春期の少女のセックスへの興味と嫌悪が狂気に変わっていく様を淡々と描くロマン・ポランスキー監督の心理ドラマは、『シェルブールの雨傘』で可憐な少女を演じ一躍大スターになったカトリーヌ・ドヌーブを、一転してモダン・サイコ・ホラーのヒロインとして輝やかせている。
 アンドロイドのような無機質さで、色気を感じさせないカトリーヌ・ドヌーブではあるが、それがとても儚く、壊れていく様が美しい。

    ◇

 英国で働くポーランド人姉妹。姉のヘレン(イヴォンヌ・フルノー)は外交的で、コスメティック・サロンに勤める美しい妹のキャロル(カトリーヌ・ドヌーブ)は内気な少女。キャロルはヘレンを保護者のように慕いながら日々を送っている。
 ヘレンには妻のいるマイケルという愛人がいて、最近は毎夜部屋に連れて来ては夜を過ごしているのだが、キャロルにとっては不快な人間。洗面所に置かれた、男が使う剃刀や歯ブラシを見ては嫌悪している。
 毎晩のように隣の部屋から聞かされる情事の喘ぎ声に恐怖と憎悪を募らせていくが、その一方で、男性への官能を妄想するようになり、次第に精神を狂わせていくようになる。
 ヘレンとマイケルがイタリアへ旅行をすることになり、10日間のあいだキャロルはひとりで過ごす事になる。心細さも加わり、キャロルは幻覚を見るようになる。
 そして、彼女の強迫観念がついに…………。 

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 ドヌーブの目のクローズアップにキャスティング・クレジットが流れるようにスクロールするオープニングや、アパートメントの一室の壁に突然起こるヒビ割れや無数の手。そして、ウサギ料理の腐敗とキャロルの心的状況の時間経過や、数々のキャメラ・ワークの工夫など、後々、多くの映画にシンパシーを与えたスリラーである。

 映画はほとんど密室劇といっていいが、職場とアパートメントの往復で何度か映される街を彷徨うシーンでは、キャロルの心的状況の変化が見てとれる。
 街でキャロルに声を掛ける肉体労働者が、次に、寝室に侵入する暴漢としてキャロルの妄想に登場し、キャロルはいつしか、嫌悪と期待を入り交じりながらその暴漢を待ちわびるようにまでなる。

 空想癖と妄想で内向する子供のままのキャロルだから、自分の手の甲を舐めながらポットに映る自分の顔を眺めるシーンなどは、とにかくイッちゃってる女の子なわけで、大部分で台詞の少ないドヌーブの演技は、すべて目の動きに集約されている。
 閉ざされた空間で、叫び声ひとつ上げずにいるキャロルのなんて狂おしいことか。

 床に置いたキャメラのアングルや、チコ・ハミルトンのシンプルなジャズと力強いパーカッション、そしてチクタクチクタクと静かなる効果音が、観るものの心まで不安定にさせる。

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「哀愁の花びら」



VALLEY OF THE DOLLS
監督:マーク・ロブソン
原作:ジャクリーン・スーザン「人形の谷」
脚色:ヘレン・ドイッチュ、ドロシー・キングスリー
撮影:ウィリアム・ダニエルス
音楽:ジョニー・ウィリアムス
主題歌:ディオンヌ・ワーウィック
主演:バーバラ・パーキンス、パティ・デューク、シャロン・テイト、スーザン・ヘイワード、リー・グラント、ポール・バーク、トニー・スコッティ

☆☆☆ 1967年/アメリカ/123分

    ◇

 華やかなショービジネス界の裏側で、嫉妬や駆け引き、傲慢と挫折、そして性と酒と薬にまみれ壊れていく3人の女たちを描いたドラマで、原作はジャクリーン・スーザンの世界的ベストセラー小説「人形の谷」。


 大学を卒業し、ニュー・イングランドの片田舎ローレンスビルからニューヨークへ出てきたアン・ウェルズ(バーバラ・パーキンス)は、ブロードウェイのマネージメント会社に秘書として雇われた。
 経営者が面談で「美人はすぐに辞めてしまうから雇えない。」といきなり下すのが面白い。女性差別やセクハラまがいなのも当たり前な時代で、ウーマン・リブが起こるのはほんの数年後だ。実際、アンは共同経営者のライオン(ポール・バーク)を振ったあと、クライアントの化粧品会社の社長に引き抜かれ、TVCMの人気モデルとなってしまう。

 アンの最初の仕事は、ブロードウェイの大女優ヘレン・ローソン(スーザン・ヘイワード)の契約更新。アンが楽屋で目の当たりにするのは、プライドの高い気性の激しい大女優の姿だった。自分の舞台に出る駆け出しの若い才能ある女優ニーリー・オハラ(パティ・デューク)を、自分の舞台から下ろすことを条件に契約を承諾するヘレン。 
 その後ニーリーは、TVのヴァラエティ番組やナイトクラブの歌手として頭角を現わしてくる。 

 ニーリーと親しいジェニファ・ノース(シャロン・テイト)はグラマラスだが売れない女優。ナイトクラブの人気歌手トニー・ポーラー(トニー・スコッティ)と結婚して、トニーの姉ミリアム(リー・グラント)と共に映画入りのためにハリウッドへ行く。人気スターになるジェニファだが、トニーはパッとせず契約を切られてしまう。
 
 大スターになったニーリーは日ごと我が儘になり、長年マネージャーをしていた夫とも離婚。いつとはなしに睡眠薬とピル(覚醒剤)を常用するようになり、深酒で映画出演も怠り、転落の道を辿り始める。
 ジェニファは、不治の病に倒れた夫の治療費のためにポルノ映画出演のため渡仏する。しかし自らも乳癌を患い、肉体美を売り物にしている彼女の決断は睡眠薬自殺だった。

 芸能界に巣食う薬物。
 映画のタイトルバックは、三色のピルからこぼれだした白い粉とニューヨークに降る雪をシンクロさせる象徴的な画だった。

 サナトリウムから退院し復帰したニーリーも、結局、ヘレン・ローソンと同じ道を歩むかのように、自分の作品に出る有望新人たちを次々と排除していくが、またしても酒と薬に耽溺し、舞台の初日すら出演できずに、遂には劇場裏の路地で意識を失ってしまう。

 芸能界に失望し故郷に帰るアン。追ってきたライオンが求婚するも、アンは故郷でひとり生きていくことを決心する。

    ◇

 芸能界の舞台裏に渦巻く人間たちの愛憎劇には、それぞれにモデルの姿が透けて見える。
 ヘレンのモデルは“ブロードウェイの女王”と呼ばれたエセル・マーマン。ニーリーは酒と薬物でサナトリウム入りしたジュディ・ガーランドで、ジェニファはマリリン・モンロー。ほかに、フランセス・ファーマー、フランク・シナトラ、ディーン・マーチン等らしい人生が巧みに織り込まれている。

 メロドラマであり、ソープドラマ(昼メロ)的内容が多分に下世話なゴシップ的裏話なので、映画の評価はあまり高くないのだが、面白い。
 カルト・ムービーとして名前を残している映画だ。

 ベテラン女優と若い女優との才能への脅威と嫉妬は、映画の終盤に「品性のない女だけど、才能はある」と認めるヘレンの姿によく表れていた。
 ここは、16歳で『奇蹟の人』('62)でアカデミー助演女優賞を受賞したパティ・デュークと、大ベテランのスーザン・ヘイワードとのバトルが見物である。
 
 バービー・ドールのようなシャロン・テイトは悲劇性が美しい。それだけに、2年後に起きた実際の悲劇は痛まし過ぎる。

 品の良い美貌の持ち主バーバラ・パーキンスは、タイトルクレジット的には主役だが、競演女優の多いなかでは目立たない存在になってしまった。代表作となっているだけに惜しい。

 またこの作品は、リチャード・ドレイファスの映画デビュ-作でもある。当時は大部屋俳優の彼の役柄は、リー・グラントに電報を届ける郵便配達人。ドア越しに顔がちらりと映り、台詞もあった。

    ◇



 この映画を初めて観たのは70年代以降なのだが、1968年の日本公開当時には父親が買ってきたサントラ盤をよく聴いていた。

 ♪思いきってここを立ち去ろう このレールから下りよう
   でも、これだけは守り通したい 私のプライドは決して捨てない♪

 中学生時分のこと、映画の内容を知らないのに「哀愁の花びらたち」というタイトルの華やかさと、ジャケットの3女優に惹かれお気に入りのシングル盤になっていた。曲としてはカップリングの「あなたに祈りをこめて」がお気に入りだった。



 主題歌を歌うディオンヌ・ワーウィックはバート・バカラックに見い出され、ディオンヌのために書き下ろされたヒット曲「I Say A Little Prayer(小さな願い)」('67)が、このサントラ盤のカップリングでは邦題が「あなたに祈りをこめて」になっている。
 日本でのヒット前のリリースだったのだろう。


ハコが唄う流行歌

 山崎ハコがレコーディングした阿久悠作品は、デビュー時に書き下ろされ2001年まで未発表だったオリジナルの「男と女の部屋」と、最新トリビュート盤で披露した「ざんげの値打ちもない」を含むカヴァー曲3作品があり、そのカヴァー曲どれもが、見事にハコの歌として成立している。

 70年代初頭の阿久悠の傑作『本牧メルヘン』と、沢田研二の不朽の名曲「時の過ぎゆくままに」が納められているカヴァー集『十八番(おはこ)』は、昭和の流行歌を歌う“うた唄い”山崎ハコの実力を聴くことができる好アルバムで、1994年の日本レコード大賞企画賞を受賞している。

 伝説のテレビドラマ『悪魔のようなあいつ』('74)の主題歌で、退廃的で耽美なジュリーが男と女の儚さを歌った「時の過ぎゆくままに」。
 ハコの唄からは、男なら誰でも包まれていたい思いにかられる女の姿が透けてみえる。
 艶かしさと生々しさが可愛い女となり、温もりを与える女の姿として浮び、浮遊する女と男のいじらしさが感じられ、見事にハコ流に歌い紡がれている。

 それは「本牧メルヘン」も同じ。暗い歌詞のオリジナルは、流行歌として70年初めの世相を鋭く切り取っていた。
 アコギとキーボードだけで唄うハコの歌唱は、70年代そのままの空気を醸し出しながら、孤独という刃を突き付けてくる。

 つづけて唄われるこの2曲は最高だ。

    ☆

 十八番(おはこ)

収録曲
01. アカシアの雨がやむとき(西田佐知子)
02. 今夜は踊ろう(荒木一郎)
03. みんな夢の中(高田恭子)
04. 上を向いて歩こう(坂本九)
05. 再会(松尾和子)
06. 東京ブギウギ(笠置シズ子)
07. 圭子の夢は夜ひらく(藤圭子)
08. さらば恋人(堺正章)
09. 本牧メルヘン(鹿内タカシ)
10. 時の過ぎゆくままに(沢田研二)

 「本牧メルヘン」と同じように、ギターの弾き語りで唄う「再会」や「圭子の夢は夜ひらく」は、どこをどう聴いても山崎ハコの歌。
 文句の付けようがない。

ハコが唄う「ざんげの値打ちもない」

 1970年に北原ミレイによって世に出た「ざんげの値打ちもない」は、これまでに幾多の歌手にカヴァーされ続けてきた。
 藤圭子、日吉ミミ、坂本冬美、天童よしみ、いしだあゆみ、梶芽衣子、内藤やす子、大西ユカリ、三上寛、クミコ…………

 藤圭子や内藤やす子、梶芽衣子のようにいかにも個性あらわに表現したもの、どれも歌の持つ力に惹かれてはいるが、どこかしっくりこない。
 やはり本家、北原ミレイに勝るものなどない。
 
 が、あえてそれを承知でいうならば、先日発売された『歌鬼(Ga-Ki)~阿久悠トリビュート』に収録された山崎ハコの「ざんげの値打ちもない」は、鳥肌が立つくらい素晴らしい。

 そして興味深いのは、この山崎ハコヴァージョンで、あの幻の4番の歌詞が唄われていることだ。
 阿久悠氏が描き上げた愛と狂気のストーリーは、まるで山崎ハコを充てて書かれたか如く、あの4番の歌詞があることで一段と深くなった情念がハコ独特の世界と共鳴し合っているのだ。
 
 山崎ハコが唄うこの歌は、まぎれもなくブルーズだ。

 さて、北原ミレイもテレビで完全ヴァージョンを披露したことで、今後、「ざんげの値打ちもない」はこのヴァージョンでレコーディングされるのだろう。
 山崎ハコに先を越されたとはいえ、北原ミレイの新版「ざんげの値打ちもない」も早くリリースして欲しい。

    ☆

歌鬼(Ga-Ki)~阿久悠トリビュート

収録曲
01. ジョニイへの伝言/鈴木雅之
02. 白い蝶のサンバ/一青窈
03. 思秋期/森山直太朗
04. たそがれマイ・ラブ/中西圭三
05. 熱き心に/元ちとせ
06. ペッパー警部/Mizrock
07. 恋のダイヤル6700/音速ライン
08. 時の過ぎゆくままに/工藤静香 feat. 押尾コータロー
09. 朝まで待てない/甲斐よしひろ
10. ざんげの値打ちもない/山崎ハコ
11. ひまわり娘/杏里

 このアルバムは山崎ハコを聴いているだけで充分なのだが、4ビートの「たそがれマイ・ラブ」、小節コロコロの「熱き心に」、ハードロックに決めた「朝まで待てない」も何度でも聴いていられる。歌唱の好みの問題になるからなぁ、あとは、申し訳ないがどうでもいい。過去に山口百恵を、そして今回沢田研二をカヴァーしたひとに至っては……………。


「ざんげの値打ちもない」幻の歌詞

 阿久悠氏が亡くなって1年。
 先週は日テレで『ヒットメーカー 阿久悠物語』が放送され、17 日(日)にはNHK BSで『阿久悠 ~時代を語り続けた作詞家』が放送される。

 その合間の今晩、NHK『歌謡コンサート』で『阿久悠特集 歌よ時代を語れ』が生放送されていた。
 出演は、小林旭、尾崎紀世彦、都はるみ、石川さゆり、山本リンダ、森昌子、ささきいさお、八代亜紀、五木ひろし、北原ミレイら。みなさんお馴染みの曲を披露。
 そして若手歌手として、ジェロが『本牧メルヘン』『朝まで待てない』、松浦亜弥が『わたしの青い鳥』を歌っていたのだが、今晩の目玉は何といっても北原ミレイの『ざんげの値打ちもない』だった。

 かの噂の幻の4番の歌詞を、テレビで初歌唱したのだ。

 あれは何月 風の夜  とうに二十歳も過ぎた頃
 鉄の格子の空を見て  月の姿がさみしくて
 愛というのじゃないけれど  私は誰かがほしかった

 この歌詞、レコーディングまで済ませてあったがレコード化はされなかったのだが、映画『ずべ公番長~ざんげの値打ちもない』の劇中では歌われていた。
 そしてほんの2ヶ月前に、Hotwax trax としてこの劇伴と主題歌が初CD化され、この幻の歌詞が陽の目を見たばかりだった。

ずべ公番長★ざんげの値打ちもない


 今回生放送で歌われたヴァージョンは、38年経っても変わらぬ歌唱と素晴らしいアレンジが施されて、この初CD化の事実を軽く一蹴してしまった。

 北原ミレイが歌う『ざんげの値打ちもない』は、フルコーラス全ての歌詞を通して聴いてはじめて完結したことになる。間違いなくドラマチック歌謡の金字塔である。

 いやぁ、本当に素晴らしかった。完全保存版だ。

 尚、映画『ずべ公番長~ざんげの値打ちもない』は8月8日に初ソフト化DVD発売される。