TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「魔都に天使のハンマーを」矢作俊彦

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傷だらけの天使:魔都に天使のハンマーを/矢作俊彦
【講談社】
定価 1,785円(税込)

    ◇

 『不良読本』の巻頭読み物として発表された『傷だらけの天使リターンズ/魔都に天使のハンマーを』が、早くも単行本として上梓された。

 内容については既に記事にしているので書かないが、ただ、単行本化に際して大幅な加筆修正がされている。
 登場人物の年齢が少しずつ変更されていたり、構成が変わって文章もスッキリして読み易くなっている。
 また、成城の老人とのエピソードや、織部探偵事務所の事務員だった京子の顛末が新たに書き加えられた。

 さて、有名なオープニングシーンを新しく作画した単行本の表紙。
 新しいヘッドホーンを身につけ髪の生え際に年齢を感じさせてはいるが、イメージとして、現在のショーケンで十分に夢が叶えられそうだ。

 ショ-ケン様
 このリターンズ、映画化も本ノリと受取ってもいいのでしょうか。
 嬉しい発表を待ちたい。

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ホトケの New Album!



スプーンフル/ブルーズ・ザ・ブッチャー

 永井“ホトケ”隆×浅野祥之×沼澤尚によるスリーピース・ブルーズ・バンド“ザ・ブルースパワー”が1stアルバムをリリースしたのが1年前。しかし、発売日の4月にギターの浅野祥之氏が48歳の若さで他界するという非運を背負ってしまった。
 この“ブルーズ・ザ・ブッチャー ”は、亡き浅野祥之氏の意志を受け継いだホトケと沼澤尚が、ハーピストのKOTEZとベースの中條卓を加え結成したスーパー・ブルーズ・バンドで、2007年6月からライヴハウス活動を続けていて、ついに、結成1周年を迎え完成させた1stアルバムがこれだ。

 正式グループ名の“blues.the-butcher-590213”とは、1959年2月13日生まれの浅野“ブッチャー”祥之を刻み込んだ名称だ。
 それだけに、このグループの演奏するブルーズは、これまでにないほどに魂のほとばしりを感じる。

    ☆
blues.the-butcher-590213  SPOONFUL

01. So Many Roads , So Many Trains
02. Mary Had A Little Lamb
03. Spoonful
04. Sittin' On Top Of The World
05. Killing Floor
06. Found Love
07. Help Me
08. I Want To Be Loved
09. Slippin'&Slidin'
10. Mystery Train
11. Ramblin' On My Mind
~bonus track~
12. I'm Still In Love With You(by The Blues Power)


 ブッチャー氏が愛したエヴァーグリーンなブルーズの数々……。

 オーティス・ラッシュ、ハウリン・ウルフ、バディ・ガイ、ソニー・ボーイらのBLUESの王道でもあるお馴染みの名曲ばかりだ。

 3月に名古屋・今池“TOKUZO”で見たライヴを思い出させるゴキゲンな演奏は、スタジオで一発録りされたような、ライヴ感覚あふれる剥き出しのブルーズとしてパッキングされている。

 ボーナス・トラックは、“ザ・ブルースパワー”のアルバム未収録曲で、浅野“ブッチャー”祥之と永井“ホトケ”隆ふたりだけの逸品である。


「東京島」桐野夏生



 桐野夏生の新刊を読んだ。

 女探偵・村野ミロのシリーズからの読者として、『OUT』や『柔らかな頬』『グロテスク』に比べると濃密さに欠けるかもしれないが、ノンストップの疾走感とエンターテインメントさでは、滅茶苦茶面白い。

 無人島に漂着したひと組の夫婦。3ヶ月後に23人の日本の若いフリーターたちが流れ着き、その後、11人の中国人グループが加わる。
 死んで行くものを除いて31人の男ばかりの閉塞された地で、たったひとりの中年女が生き抜いていく物語だ。

 生きていくために剥き出しにされる人間の醜さ、猜疑心、そして食欲や性欲の感情に圧倒されながら、どんどんページを捲るのが楽しくてしょうがなかった。

 無茶苦茶だが魅力的な登場人物たち。
 桐野夏生の書く人物って一筋縄ではいかない人間ばかりだ。

 島でただひとりの女は、島で一番太っている46才。若くないところがリアルで、島に君臨するためには何でもする小狡さや身勝手で根性悪は最たるものだけど、タフで、したたかな清子にはゾクゾクさせられる。

 「ざまぁみろ、生きていくってぇのは生易しいもんじゃねぇぞ」て具合にキレてる女に比べ、極限の中で仮想の世界に逃避したり、キチ●イになるしかない男たちが哀しいが、それも、生き抜いていくための術か。
 だから、記憶喪失のGMことユタカ、亀の甲羅を背負うワタナベ、ゲイになる最年少の犬吉、小説家志望のオラガ、“セックスマシーン”のカスカベさえも、愛らしい奴らばかりだ。

 棘を持った人間がそこら中に毒を振りまいてばかりで、とてもじゃないが感情移入がし難いかもしれないが、これが人間の本質だろうな。
 無人島での“力”関係が、コロコロ変化していく様が面白い。
 
    ◇

東京島/桐野夏生
【新潮社】
定価 1,470円(税込)

    ◆

 よくぞこんな話を書いたものだと思いきや、これは、大平洋戦争末期の昭和19年にサイパン付近の孤島“アナタハン島”で実際に起こった事件がモデルのようだ。
 名匠ジョセフ・フォン・スタンバーグが監督・撮影をした日本映画「アナタハン」('53)として有名で、主役は、2008年3月に亡くなった根岸明美。妖艶な悪女役が多かったが、どんな映画でも印象に残る女優のデビュー作だった。

「ザ・マジックアワー」



監督:三谷幸喜
脚本:三谷幸喜
美術:種田陽平
撮影:山本英夫
出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、西田敏行、綾瀬はるか、伊吹五郎、戸田恵子、小日向文世、寺田進

☆☆☆ 2008年/日本・東宝、フジテレビ/135分

    ◇

 一日のなかで、陽が落ちた直後のわずかな時間帯がもっとも美しく見える幻想的瞬間を、映画用語で「マジックアワー」と呼んでいる。

 そして
 「マジックアワーを見逃したら………」
 「明日、また見ればいいじゃない」
 この言葉が、ひとに勇気を与えるのだ。

 三谷幸喜監督第4作目は、映画を題材にした“人生のマジックアワー”が描かれ、誰もが心優しい気持ちになれる三谷コメディの傑作である。

 ノスタルジックで、どこか映画のセットのような港町。街のボス(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)と恋仲になった備後〈ビンゴ〉(妻夫木聡)は、命惜しさにボスが探している“伝説のスナイパー”デラ・富樫を知っていると、口から出任せで命拾いをする。
 が、5日間の期日が迫っても富樫を見つけることができない備後は、無名の三流役者村田大樹(佐藤浩市)を替え玉に仕立てるといった奇想天外な手にでる。
 映画の主役に浮かれる大樹は、すべてが映画の撮影だと思い込んで街にやってくる………。

 ピンチを脱するために嘘をつき、その嘘がバレないように嘘で嘘を膨らませていく………この三谷幸喜が最も得意とするパターンは、ドラマとして視聴率は悪かったが『合い言葉は勇気』という傑作があり、今回はそのテイストを映画の世界にてんこ盛りしたもので、面白くないわけがない。
 4作目にして初めて“三谷流コメディ映画”を完成させたと云ってもいい。

    ◇
 

 エンターテインメントは虚構性が強いものだ。
 『ザ・マジックアワー』の舞台になる街は、大通りをはじめ、波止場、ホテルやクラブの内装にいたるまで、三谷幸喜が敬愛してやまないビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』や、ジョージ・ロイ・ヒルの『スティング』のような“映画的風景”に満ち満ちており、世界に誇れる種田陽平の見事な美術セットだ。
 エンドロールでは、その巨大セットの建築風景を見ることができる。

 そのいかにもセット然とした街を、観客がいかに不自然さを感じないでいられるか。
 それは、映画のはじめにセットというネタばらしをして、“架空の街”をアリスのワンダーランドにしてしまったことで、映画のなかのリアリティが生まれている。

 “架空の街”に住む備後にそそのかされる大樹が、身の上に起こる事すべてが“映画”のなかの出来事と思い込んでいる可笑しさや、その大樹に騙される“架空の街”のボスたちがリアルに勘違いする間抜けさも、観客にとってはどちらも“映画的風景”なのだから、セットの世界だからこその面白さになる。これが“映画”なのだ。

 佐藤浩市が売れない俳優を演じる面白さは、大真面目なバカっぷり(仮面剥がしは究極)が三流俳優という設定で生きてくるから、佐藤浩市の弾け方が大爆笑になる。
 三谷監督が作品の出来を左右すると一番気にかけていた佐藤浩市と西田敏行が初めて対面するシーンは、佐藤浩市のコメディアンぶりが想像以上の効果をあげ抱腹絶倒だ。

 映画通の三谷でもあるから、劇中映画も見どころ。
 最後の姿となる市川崑監督の出番も、市川氏の映画『黒い十人の女』をパロッた『黒い101人の女』や日活アクション映画風『暗黒街の用心棒』も、その撮影現場が映画を愛する映画人たちへのオマージュとみていいだろう。

 唐沢寿明と佐藤浩市のシーンには、かつての映画界での大物俳優と大部屋俳優のワンシーンを想像させるほどほろ苦い一場面ではあるけれど、終盤の大樹のシーンに繋がっている。

 日活アクションの悪役で定評のあった榎木兵衛は、弾着の名人として味わい深く大活躍する。

 天海祐希の喪服で拳銃を構える姿には、石井隆の『黒い天使vol.2』がダブる。しかし、三谷監督が石井作品を観ているとは思えないので偶然だろう。

 ストリート・ミュージシャン役の某タレントはご愛嬌だし、ほかのカメオ出演のキャスティングにも無駄がなく、また、三谷組の梶原善や阿南健治、甲本雅裕が光っているのも嬉しい。

 これは銀幕のお話。
 絶対に、まずはスクリーンで観るべき作品である。


ザ・三谷幸喜アワー

 つい先日まで、水谷豊がテレビや雑誌を独占していたかと思いきや、代わっていまは、三谷幸喜が大量出没している。
 もちろんそれは、新作映画『ザ・マジックアワー』のプロモ-ション活動。

 テレビへの出演はほとんどのヴァラエティ番組に顔を出し、果ては「ガキの使い」での悲惨な姿も披露するほど。
 『相棒ー劇場版ー』であらためてメディア・プロモーションの凄さを実証したのだが、今回の三谷幸喜のメディアへの露出も、これまで以上に凄いものがある。



 このマガジンハウスとの共同企画のBRUTUS
 雑誌関連では情報量の多さは一番だろう。全部に目を通すことが出来てはいないが、なかなか読み応えがあるので三谷ファンは買い逃しのないように。
 立川談志師匠との対談は興味深い。

 映画は、初日に鑑賞。
 これまでの3作品とちがい、これは銀幕映画って感じにあふれているので、まずは絶対にスクリーンで観るべき作品。
 すべてのものに愛がある三谷幸喜の創作が、一番に映画から始まっていることがよくわかる。

山口富士夫、幻の音源


Over there

 反骨のギタリスト山口富士夫の、幻の音源が発売された。

 60年代後半、実力派グループサウンズで知られた“ザ・ダイナマイツ”でその名を高め、70年に今は亡き柴田和志(vo)と結成した伝説のロックバンド“村八分”で熱狂的支持を得た山口富士夫。
 4年あまりの活動の後“ティアドロップス”を結成したりしているが、どこか孤高のロッカーと呼んでもいいギタリストだ。

 現在の山口富士夫は、糖尿病とすい炎の合併症でリハビリに励みながらの闘病中だが、自身のブログには音楽活動再開への意欲満点な決意が漲っているので、復活をゆっくりと待ちたいものだ。

 さて本CDは、1991年のソロ・アルバム『Atmosphere』制作時のアウトテイクと未発表3曲を含む音源で、山口富士夫プロデュースによる新レーベル「Fjo Records」の発足記念第一弾として、1000枚プレスの完全通販限定というファン必須のアルバムになっている。

    ◇

01. オルゴール ★
02. Fun in the Sun ※
03. ひとさじの愛 ★
04. しじまの中 ※
05. Sky High ※
06. 蒼い夜 ※
07. 今夜はおやすみ ※
08.石の想い ★

 ★未発表曲 ※未発表テイク

    ◇

 「オルゴール」はピアノ伴奏だけで歌うバラードで、山口富士夫がここまで歩んで来た道、そして、これから歩んで行く道筋が浮かび上がる名曲だ。

 8曲中7曲がスローナンバーで、スタジオ・セッション的なダラダラ感はあるとしても、うねりのあるギターを聴くことができるし、これはやはり貴重盤だ。

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