TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

ザ・ヒットパレード

 先週の金曜日と土曜日の二日間にわけて『ザ・ヒットパレード/渡辺晋物語』というドラマが放送されていました。
 今現在の芸能界のかたちなるものを作り上げた、かのナベプロの誕生物語でした。

 前半のメインとしては、フジテレビの音楽番組『ザ・ヒットパレード』が生まれるまでのウラ話で、宮川奏、中村八大、ハナ肇、植木等など実在のミュージシャンに雰囲気の似た役者たちが扮していたし、作曲家すぎやまこういち氏が『ザ・ヒットパレード』のディレクターだったなんて初めて知る話もあり、面白く見ることができた。

ザ・ヒットパレード』はミッキー・カーティスの司会で、中尾ミエや森山加代子、ザ・ピーナッツを知った番組としてとても懐かしかったのだが、その中尾ミエや森山加代子が登場しませんでしたね。なぜ?
 
 そう思うと他にも芸能史的に見ていくつかの不満点も……。
 例えば、植木等の歌の誕生やクレイジーキャッツの曲に関して、作詞の青島幸男が登場しながら作曲家の萩原哲晶氏の名前が出てこなかったのはナゼなんだろう。
 当時の植木等(クレイジー)の曲はほとんど萩原哲晶氏が担当で、氏は重要な人物のはず。 

 キャンディーズが登場してドリフターズが全然扱われなかった。
 単純にドリフがホリプロだからか……そうなんだろうな。
 『スター誕生!』の攻勢も触れずじまい………。

 山下敬二郎の移籍問題やキャンディーズ引退には触れても、やはりザ・ピーナッツの引退結婚話はタブーなのですね。

 はて? あれから山下敬二郎はどうなったんでしたっけ。

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「嫌われ松子の一生」



監督:中島哲也
原作:山田宗樹
脚本:中島哲也
出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あすか、柄本明

☆☆☆☆★ 2006年/東宝/130分

    ◇

 映像クリエイター中島哲也監督が、『下妻物語』につづいて凄い作品を魅せてくれます。

 山田宗樹の原作は、川尻松子というひとりの才媛な女性が徹底的に堕ちていく様が描かれていく。読んだひとりひとりの頭のなかには正統派過ぎるほどにイメージできる転落劇なのだ。
 だからそんな三面記事的ストーリーをリアルにドラマ化しても、現実社会での多くの“事実は小説よりも奇なり”な事件の前ではちっともドラマティックなものではない。

 そこで中島哲也監督は、その波乱万丈な女の人生をジェットコースターのごとく疾走させ、ハイテンションな位置に松子を据えた。
 歌ものの音楽を多用し、ミュージカルシーンの挿入でテンポよく画面を切り替えていく。
 ヴィヴィッドな色彩とスピード感でエンターテインメントな世界に松子を放り込むことで逆に、創りものの主人公がリアルな人間としてスクリーンのなかを躍動し、それが素晴らしく魅力的なものになっている。
 
 中島哲也監督は、豊川悦司vs山崎努のサッポロ黒ラベルや木村拓哉でミュージカル風なJRA、SMAPガッチャマンのNTT東日本、Smap Short Filmsでの『ROLLING BOMBER SPECIAL』などを見ればわかるように確固たる作風を持っている映像作家で、テレビドラマ『私立探偵濱マイク』の第9話「ミスターニッポン」でも独特の映像の世界観を表現していた。
 たしかに広告クリエイターは、凝った映像イメージばかりが先行するきらいがある。
 しかし『下妻物語』では、そのビジュアル的映像美の世界のなかでしっかりと人間観察が出来上がり、ロリータファッションの少女とヤンキー娘の友情がきっちりと描かれていた。ラストの痛快さは鮮烈だった。

 今回はその『下妻物語』以上の膨大な映像カットに目を見張る。CGとアニメで溢れる過剰なまでの絢爛豪華さ。そしてファンタジーな世界のなかでは物語性をなるべく排除することで、松子の人生をリアルに創りあげている。

 ストーリーはほぼ原作通りに展開し、数々のエピソードもカットなしの台本になっている。
 原作の半分を使って描かれる教師時代とトルコ嬢時代、そして刑務所時代のエピソードを見事なまでに音楽と映像のコラージュで彩り、その中で登場人物の言葉や行動のひとつひとつに切なさや優しさを味つけていくので、創りものに溢れ可笑しく笑ったあとでも、グッとくる瞬間が用意されているのだ。
 ミュージカルシーンが多かったり、数々の小ネタやキャスティングした芸人らを見て笑えるシーンもあるのだが、コメディではない。
 不思議と心打たれるシーンが多い。余韻に浸れる場面が多い。

 松子自身の人生観の欠如から始まる流転も、もとをただせば愛情の渇望。それを求めるために、松子は何に対しても常に一生懸命に生きている。
 人に尽くすことで自分のアイデンティティを確保しつづけるのだが、結局、いつも自分の帰る場所を無くすばかり。ひとりぼっちの部屋に「ただいま」と話し掛ける松子は、「おかえり」の言葉を待っている。
 
 小さなショートケーキを前に、ひとりで「誕生日おめでとう」と祝う切なさ。
 そして、「生まれてすみません」と壁に殴り書くほどに追い詰められてしまう松子。

 愛されたい、必要とされたい、と願う松子の思いは、ラストの魂の滑空で鮮烈に観客の心を揺さぶる。
 このパラグライダーによる空撮の美しさと、柄本明と香川照之の笑顔には胸詰まるものがある。
 素晴らしい。

やさぐれ歌謡★最前線/みなしごのブルース



 『女番長ゲリラ/やさぐれ歌謡★最前線』と同時に発売されたのが、この選りすぐりの“やさぐれ歌謡”のコンピレーション・アルバム。
 Hotwax @presentsの『やさぐれ歌謡★最前線/みなしごのブルース』です。

収録曲
01. みなしごのブルース/アワネ麻里
02. ナイト・トレイン/アワネ麻里
03. とても不幸な朝が来た/黛ジュン
04. 星の流れに/秋吉久美子
05. エリカの花散るとき/秋吉久美子
06. 涙のかわくまで/西田佐知子
07. やさぐれブルース/賀川雪絵
08. 野良犬/賀川雪絵
09. 海は女の涙/石川セリ
10. 街/桃井かおり
11. 尻軽女ブルース/桃井かおり
12. 怨み節/梶芽衣子
13. 欲しいものは/梶芽衣子
14. 酔いどれ女の流れ唄/加藤登紀子
15. いつか男は去って行く/川辺妙子
16. 野良猫/ガールズ
17. パンキー・ハイスクール・ラブ/ガールズ
18. LOVE JACK/ガールズ
19. 東京迷路/藤圭子


 70年代のグルーヴ感あふれる選曲です。
 特に、賀川雪絵。この人の曲だけで、即購入でしょう。
 長身で目鼻立ちがはっきりした容姿と、低くドスの効いた声で歌われる投げやり演歌。こんな男前な女には、泣けるねぇ。
 大映・東映のキワモノ映画からずっと出ていて、池・杉本の女番長以前のズベ公女優で名を知らしめてます。貫禄が違う。テレビは東映特撮!
 現在も、賀川ゆき絵の名で舞台女優・歌手として活躍中。素敵に年齢を重ね、ずっと今でもお綺麗です。

 吹きだまりの街ン中を流浪する『みなしごのブルース』もイイです。

 ♪どこで生きても かわりはしない
    あくびがてらの 人生だもの


 秋吉久美子は
 ♪泣いた女がバカなのか………『東京ブルース』も入れて欲しかった。

 桃井かおりは、やはり荒木一郎の曲が一番お似合い。

 梶芽衣子の『欲しいものは』は初CD化だと思うのだが、宇崎竜童&阿木耀子なら『袋小路三番町』も入れるべし。
 「青く変わった信号に 足を速める街ン中 云われたとうり このとうり」
 歌の途中のこの台詞こそ、やさぐれてます。
 やはり、LP『あかね雲』のCD化を強く望むところか………。

 西田佐知子の『涙のかわくまで』は文句ない選曲。『アカシアの~』『エリカの~』『女の意地』『くれないホテル』と数々あるヒット曲のなかでも、一番ですよ。

 藤圭子の『東京迷路』。探していました。これは嬉しいっ!

    ☆    ☆

 同時発売でやさぐれ歌謡/男性編も発売されているが、おとこにゃ興味なしで買っていません。ただ、川谷拓三と待田京介が気になるかな?

女番長《スケバン》ゲリラ



 Hotwax Trax女番長ゲリラ/やさぐれ歌謡★最前線』として、70年代の東映ピンキー・プログラム・ピクチャーのサントラ盤が発売されました。

 杉本美樹のカッコいい仁義からはじまるやさぐれ演歌『女番長流れ者』をはじめ、思いっきりデンジャラスなピンキー映画のサウンドが華開いております。

 日活ロマンポルノよりも前に《ポルノ》と名打った映画『温泉みみず芸者』(なんちゅうタイトル!!)でデビューしたのが、当時17歳の池玲子と18歳の杉本美樹。日本映画で最初のポルノ女優誕生でした。
 そのふたりが東映ポルノの看板を背負い、東映主流のやくざ映画の併映作として、まさにタイマン張ったのが『女番長シリーズ』であり『恐怖女子高校シリーズ』。
 最初に観たのがタイトル作でシリーズ3作目の『女番長ゲリラ』。『新・網走番外地/嵐呼ぶダンプ仁義』の併映作にもかかわらず、こちらの方が断然面白かった。
 『恐怖女子高校シリーズ』の方は、より過激さが増し成人映画指定でした。

 池玲子は、そのグラマラスなボディと派手な顔立ちでエロス満開。実生活もスキャンダル塗れで終わってしまった。
 杉本美樹は、スレンダーで無口。最後まで棒読み台詞の女優だったけど、保母さんになるって云って引退。でもすぐカムバックしましたっけ。最後の作品『黒木太郎の愛と冒険』(ATG・森崎東監督)での聾唖妻役が印象的でした。あと、梶芽衣子の『さそりシリーズ』と同じ篠原とおるの原作『0課の女 赤い手錠(ワッパ)』が有名。しかし、梶芽衣子の後釜にはなれませんでした。惜しいな。

    ☆    ☆

 このアルバムには歌ものが5曲収録されていますが、全部がぜんぶ凄い!

 津和のり子が歌う『ほれてふられてブルース』の歌詞のアナーキーなこと。
 ♪ラリルレロラブ バビブベボ バイバイ
  シャバラシャバラ シャバなかぜ 
  ミーのハートは ダークブルーさ
  さよなら マイラブ ノーリターン

 成人映画の主題歌とは思えないほどの哀歌を聞かせる須藤リカの『冷えた世代』は、奥村チヨの『終着駅』を彷彿とさせるメロディ。作詞は伊勢正三です。
 『女番長ブルース』を歌う八田富子の、巻き舌でドスの効いた“ぶるうす”はクセになります。

 お馴染みの荒木一郎、広瀬健次郎、鏑木創に加えて、八木正生らが奏でるサウンドは、ジャスあり、ブルースあり、そしてソウルフル。マカロニ・ウェスタン風のメロもイカしてます。

 こうしてサウンドだけを聴いていると映画の方も観たくなりますが、残念なことにどれも商品になっていない。B級、いやC級映画ってやつも、たまにはいいですよ。

収録曲
01. 女番長流れ者(唄:杉本美樹)
02. 女番長 タイマン勝負テーマ(音楽:広瀬健次郎)
03. 女番長 タイマン勝負M-17(音楽:広瀬健次郎)
04. ほれてふられてブルース(唄:津和のり子)
05. 女番長 タイマン勝負M-4(音楽:広瀬健次郎)
06. 女番長・感化院脱走 M-15(音楽:荒木一郎)
07. 恐怖女子高校 アニマル同級生 口笛のテーマ (音楽:鏑木創)
08. 恐怖女子高校 アニマル同級生M-12 (音楽:鏑木創)
09. 女番長ブルース Part.1(唄:八田富子)
10. 女番長 タイマン勝負M-21(音楽:広瀬健次郎)
11. 女番長 玉突き遊びM-23(音楽:クニ河内)
12. 恐怖女子高校 女暴力教室(音楽:八木正生)
13. 好きではじめた女じゃないが (唄:太田美鈴)
14. 女番長ゲリラM-5(音楽:津島利章)
15. 赤色エレジー(作曲:八洲秀章)
16. 冷えた世代(唄:須藤リカ)
17. 恐怖女子高校 不良悶絶グループM-11&18(音楽:荒木一郎)
18. 恐怖女子高校 暴行リンチ教室M-6(音楽:八木正生)
19. 女番長M-2(音楽:八木正生)
20. 地獄の天使 紅い爆音M-4A(音楽:忠治)
21. 女番長ブルース Part.2(唄:八田富子)
22. 番格ロックM-4(音楽:八木正生)
23. 恐怖女子高校 不良悶絶グループM-16B(音楽:荒木一郎)


    ☆    ☆

 ジャケット裏の表示に間違いがあります。
 1曲目の『女番長流れ者』は映画「女番長」ではなく、「女番長ゲリラ」の主題歌。
 16 曲目の『冷えた世代』は映画「恐怖女子高校 暴行リンチ教室」ではなく、'72年の第1作目「恐怖女子高校 女暴力教室」の主題歌です。(ライナーノーツ表示も誤りです)

ダ・ヴィンチ・ネタバレ・コード

 ツッコミどころの多い『ダ・ヴィンチ・コード』。
 全ての謎が解けたあとに感じるのは、結構雑なプロットでした。
 
 以下は、そんな映画は観に行きたくないという方へのネタバレです。
 ただし、ここは『ダ・ヴィンチ・コード』らしく暗号にします。


 712”34”191557192112"11214335543714"4
  3412612"1
   22923345543235034"4
    3"28634124521123443
     45133"286133"2036"3434"4
      PS 45836"1944412415561………

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  ルーヴル5542215254739362433"2  

「ダ・ヴィンチ・コード」



THE DA VINCI CODE
監督:ロン・ハワード
原作:ダン・ブラウン
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
出演:トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン、ジャン・レノ、アルフレッド・モリーナ、ポール・ベタニー

☆☆  2006年/アメリカ/150分

    ◇

 テレビによるダ・ヴィンチ関連の番組や、出版社の相乗り企画など公開前から話題十分なのだが、昔から、莫大な宣伝ばかりが目につく映画には興味を抱かないヘソ曲がりの自分としては、こんなもんでしょ、と云ったところか。
 様々な神を崇める日本人にはどこまで理解できるのだろうか不思議。
 だからキリスト教の知識がほとんどないのなら、映画としてのミステリーを楽しむしかない。
 が、それも何かあっさりしすぎ。原作が長編小説のため、映画としては説明不足なのは致し方ないが、それでも、結論ありきでただストーリーを進めているだけの感があった。

 ルーヴル美術館の館長の他殺死体が発見され、大学教授のラングドン(トム・ハンクス)が捜査協力を頼まれるのだが、実は彼が一番の容疑者になっていた。フランス警察の暗号解読官のソフィ(オドレイ・トトゥ)とともに逃走し、事件に巻き込まれながら歴史を揺るがす謎に挑む、というストーリー。

 ラングドンの友人の歴史研究家の富豪リー(イアン・マッケラン)の屋敷で、三人でキリスト教に関する話をするシーンは『正統派と異端派』の歴史が興味深い。
 そして時間旅行が出来る、聖地エルサレムや十字軍の歴史的シーンの映像にも感心をする。
 ただ、このシーンでは会話がどんどん進むので、取り残されないように注意。ここをはずすと全体像が見えなくなる。ここは出来れば吹替版の方がベター。

 歴史的謎が解かれていくところはワクワクドキドキさせてくれるのだが、開巻15 分あたりの謎解きは、あまりにあっさりと謎を解きすぎる。
 そして、彼らを追うファーシュ警部(ジャン・レノ)の執拗さも不可解。途中である程度説明はされるが、その動機には釈然としないし、ラストの彼の言動もおざなりで安直に見える。
 狂信者の殺し屋シラス(ポール・ベタニー)の背景もよく分からない。だから、彼に追われる恐怖が伝わらない。

 要はストーリーを進めるのに精一杯で、サスペンスの盛り上がりが欠ける状態なのだ。
 ある人物の意外な行動は唐突すぎて何者かの説明が全然ない。先を急ぐあまり次のシーンへの繋ぎに終わるだけで、その意外性に驚いている間がない。いったい彼は誰?

 結末に繋がる意外な秘密は簡単に想像がつく。しかし、その大きな秘密が暴かれたとたん、それを支えるリアリティが全然掴めない。これでは不自然さが多すぎる。

 それでも、映画のはじめにきちんと伏線が張られているエピローグはよく出来ている。
 あのシーンには少し感動をするかも、です。

「グッドナイト&グッドラック」



Good Night,and Good Luck
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ
出演:デヴィッド・ストラザーン、ジョージ・クルーニー、ロバート・ダウニー・Jr、パトリシア・クラークソン、フランク・ランジェラ、レイ・ワイズ

☆☆☆  2005年/アメリカ/93分

    ◇

 高度消費社会の到達点だった1950年代のアメリカは、電化製品や自動車を保有する家庭が増加し経済的にも恵まれ、我々がアメリカ的とイメージする“豊かな消費生活”の時代の始まりだった。
 しかし、政治的には最も暗黒な時代だ。

 ソ連がアメリカに次ぎ核保有を宣言し冷戦時代に突入、朝鮮戦争がぼっ発。
 それに伴いアメリカ国内では、集団ヒステリーのごとくアメリカ全土を占める勢いで“反共キャンペーン”が吹き荒れた。かの悪名高きジョセフ・マッカーシー上院議員による“赤狩り”であり、マスメディアも報復を恐れ自由な報道ができない状態になっていた。

 この作品は、CBSネットワークで長年報道キャスターを務めてきたエド・マローが、ジャーナリストとしてあるべき姿勢を守るために、マッカーシー上院議員に対して敢然と立ち向かった実話を描いた社会派ドラマ。

 真実がいかに貴いものか、ズシリとくる。
 
 美しいモノクロームの画面は、マッカーシーの実際の映像を使いながらドキュメンタリーのように創られており、削ぎ落とされた台詞とともにスタイリッシュな映像だ。

 テレビ局内とバーの中だけ(一部寝室)という室内劇で、全編BGMは使われず、音楽はテレビ放送用のブースの中のジャズコンボの歌と演奏のみ。
 台詞劇の趣きから画面が単調になりそうなところを、ダイアン・リーヴスの歌声が盛り上げる。これが実にいい。

 サラ・ヴォーンを思わせるような温かい歌声で、オリジナルスコアを伝えるように丁寧に歌うダイアン・リーヴスのおかげで、外の風景が一切映されないのに50年代の雰囲気やムードが良く出ているのだ。
 さすが、ジャズ・ヴォーカリストのローズマリー・クルーニーを叔母に持つジョージ・クルーニーのセンスと選曲!
 
 マローは極度のヘビースモーカーで、テレビ画面には常に短くなったタバコを指に挟んだスタイルで視聴者に向き合っている。
 実際にはかなりの緊張を強いられていたのだろうが、知的な話し方が落ち着いた雰囲気をつくり出し、下卑なマッカーシーとの品位の差が表れたのがテレビという媒体の凄さ。
 デヴィッド・ストラザーンは、目線やタバコの持ち方で鬼気迫る演技を見せる。

 マッカーシーの自滅は、テレビの時代になっていたことだろう。

「白い指の戯れ」*村川透監督作品



監督:村川透
脚本:神代辰巳、村川透
撮影:姫田真佐久
出演:伊佐山ひろ子、荒木一郎、谷本一、石堂洋子、粟津號、五條博

☆☆☆☆☆ 1972年/日活/75分

    ◇

 村川透の監督デビュー作で日活ロマンポルノとして公開された本作は、スリを生業とした刹那的な集団のなかで日々を送る若者たちを描いた青春映画の傑作。
 神代辰巳のオリジナル脚本『スリ』に村川透自身が加筆修正を施し、72年度キネマ旬報ベストテン第10位を獲得している。
 この作品との出会いは、当時、同じように都会の片隅でフラフラと過ごしていた自分の分身のような錯覚を思わせるものだった。
 
 渋谷駅前の交差点。喫茶店で事故車のレッカー移動を見て「ペシャンコの車が可哀想」と涙ぐむ19歳のゆき(伊佐山ひろ子)。追い掛けられたスリを見て「捕まらないといいわ」と呟く。そんな姿に惹かれた二郎(谷本一)にゆきは処女を捧げる。
 二郎は窃盗の常習犯で、警察に捕まりしばらくは出て来れなくなると、今度は二郎のダチの拓(荒木一郎)のスリの片棒を担ぎ、仲間になり、抱かれる。そして次第に警察との追っかけっこにスリルを感じるようになるのだが、ある日拓が捕まると、身代わりにひとり罪を背負って逮捕されてしまう。

 男が変わろうが当たり前のように日常を生きていくゆきの姿を、この作品がデビュー作になる伊佐山ひろ子が演じる。繊細な感情をたたえながら独特の舌足らずな台詞まわしと、和製ベベのようなコケティッシュさは、鮮烈に魅力的である。
 このあと、主演2作目『一条さゆり 濡れた欲情』(神代辰巳監督・72年度キネマ旬報ベストテン第8位)においても見事な存在感で圧倒し、72年度キネマ旬報主演女優賞を獲得している。この時、ポルノ女優が賞を獲ると云うことで物議を呼んだのだが、桃井かおりと秋吉久美子と並んで70年代の特異な女優のひとりが生まれたのは確かだ。

 村川透の鋭い感性は、例えば大仕事の前の乱交シーン。真っ赤に塗られた浴室の壁と泡まみれの白という色彩の対比と、荒木一郎のギター伴奏で歌われるアングラ・ソングの迷曲『貫一お宮の唄』から阿波踊りのお囃子に変わる音の流れで、不安や緊張感といった感情の流れを感じることができる。

 都内でオールロケーションが行なわれた中、渋谷駅前の溜まり場となる喫茶店を舞台に、ワンカメラで主人公ゆきと、二郎、拓、洋子の出会いと別れを描くシャープな演出。また、渋谷と新宿の時空を無視した登場人物の大胆な往来や、ゆきの象徴性としてレッカー移動のカットを何度も挿入したりして、彷徨える若者たちの無頼性を見事に収めたカメラワークにも目を惹く。

 映画は、喧噪の街なかで刑事(粟津號)とすれ違う拓が、ゆきの近況を尋ねたあと天に唾を吐きかける顔のアップをストップモーションして終わる。


shiroiyubinotawamure_dvd.jpg 
 2014年にNEWパッケージで再リリースされた

愛の寓話 Vol.1



 久々に書店へ行き、素晴らしい本を見つけました。

 資料としての映画関係の書籍は、監督論とか作品論で数々出版されています。ジャンル別にしても、スリラーやホラーといったカルト的映画の集大成本も沢山あります。が、ことロマンポルノの本となると、いままでそんなにありませんでした。
 『官能のプログラム・ピクチャー』がそれまでのシネマ本としては詳しいものでしたが、ただ1983年出版のため、ロマンポルノ17年の歴史をコンプリートに収めてはいませんでした。

 2005年10月より本格的なロマンポルノのDVD化が始まったことも起因して、ここに初めて日活ロマンポルノの全データと、現場の監督やスタッフの人物像を追った書籍が生まれました。
 十分に資料的価値のある書籍になっています。

ひさびさに映画漬け

 仕事に忙殺……と云うわけではなく、何かしら忙しかった一週間だった。

 GW中は、購入したまま溜まっていたDVDを見ることで大方の時間が過ぎていった。ただ、その大半がロマンポルノなのだが。
 このブログで取り上げた作品は全て購入しているのだが、これが、普段は見る事がないのだなぁ。
 CDもそうなのだが、購入して満足しているものが結構多い。それでなくてもここ1~2ヶ月はローリング・ストーンズの来日に関連したBootlegを聴くことばかりで、DVDはほったらかしの状態だったのだが、まさかロマンポルノで過ごすGWになるとは。

 実は、ここでよく取り上げるHotwax誌の次号の特集『日活ロマンポルノ』において、4作品のレヴューの依頼をお受けしたのです。

 と云うことで、神代辰巳、村川透、長谷部安春、田中登、小沼勝、石井隆らの作品に塗れておりました。石井作品のように何回も見ているものもあるのだが、当時映画館で見たままで本当に久しぶりの作品もあり、若い頃の見方と捉え方が違っていたりして結構面白かった。
 当時は趣味に合わなかった不条理な作品も、この歳になって見直すことで本質を理解できたものもあったのだ。

 今回はついでに、神代辰巳監督のポルノではない一般作品『噛む女』や『盗まれた情事』『青春の蹉跌』まで鑑賞したのだが、やっぱりいいねぇ、神代作品は……。

「チェケラッチョ!!」



監督:宮本理江子
原作/脚本:秦建日子
音楽:ORANGE RANGE
出演:市原隼人、井上真央、柄本佑、平岡祐太、伊藤歩、玉山鉄二、山口紗弥加、KONISHIKI、平田満、陣内孝則、松重豊、柳沢慎吾、ガレッジセール、筒井真理子、大島さと子、樹木希林

☆☆☆☆ 2006年/東宝/117分

    ◇

 直球ド真ん中の青春映画。王道を突き進んでいるから、気持ちイイ~さぁ。

 女にもてたいためにヒップホップバンドを結成する男の子3人と、格闘好きな女の子。沖縄を舞台に、高校生活最後の年に思いっきり熱くハジける同級生4人組。
 ああ、いつだって退屈な日々を抜け出す活力は異性の力さぁ。

 お調子ものとおバカさんと勉学に励む男の子3人組、それに絡むお転婆な女の子というバランスいい組み合わせに恋愛を振り掛けた題材はありきたりだけど、沖縄独特の温かい方言や空気感がうま~く混じり合い、楽しい作品に仕上がっている。
 沖縄方言のイントネーションからしてラップのように聞こえるのだから、余計に盛り上がる。

 市原隼人と柄本佑のお調子ぶりは相変わらず。ふたりとも存在感ばっちり。平岡祐太は『スウィングガールズ』よりしっかりしている役で、井上真央は可愛いし、みんな沖縄の方言が巧い。

 最も目を見張るのは山口紗弥加のキャラの凄さ。
 「妊婦様のお通りだぁ~い。どけ、どけぇい!」と闊歩する姿とその台詞まわしの見事さ。ハイテンションに突き抜けている。
 “憧れの綺麗なお姉さん”役の伊藤歩は、ハスキーな声が色っぽい。

 この映画のクランクイン1月7日は、ちょうど沖縄にいた日。
 本部町の海の見える丘の上のカフェに入ったとき、隣の席で店主と話をしていた若い男女の言葉に“宮本理江子”の名が上り、フジテレビが取材にきているんだなと思っていたのが、じつはこの映画の話だったのだ。そんなことを思いだした。