TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「プロデューサーズ」



THE PRODUCERS
監督:スーザン・ストローマン
脚本:メル・ブルックス、トーマス・ミーハン
出演:ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ユマ・サーマン、ウィル・フェレル、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バート

☆☆☆  2005年/アメリカ/134分

    ◇

 2001年にブロードウェイ・ミュージカルとして上演され、トニー賞を12部門も受賞をした驚異の大ヒット作品が映画化された。
 主演のネイサン・レインとマシュー・ブロデリックは舞台のオリジナル・キャストで、監督のスーザン・ストローマンも舞台の演出と振付けを担当していた人間だから、この映画は正真正銘のブロードウェイ・ミュージカル映画といっていいだろう。主演以外にも、ほとんどのキャストが舞台でなんらかの役を演じた役者ばかりだから、同じように大ヒットしたミュージカル『CHICAGO』の映画化とはだいぶん違う。

 原作は1968年に作られたメル・ブルックスの初映画監督作品で、アカデミー賞のオリジナル脚本賞を獲ったコメディ映画で、ゼロ・モステルとジーン・ワイルダーが演じていた。ブロードウェイ・ミュージカル化にあたりメル・ブルックス自身がプロデュースと作詞・作曲も手掛けており、メルの才人ぶりがうかがえる

 メル・ブルックスは70~80年代にかけコメディ映画の傑作を生んできた監督でもありコメディアンで、彼の得意はパロディ。『ヤング・フランケンシュタイン('74)』では『フランケンシュタイン』を、『新・サイコ('78)』ではヒチコックを、『ヌード・ボム('80)』は『007』を、『スペースボール('87)』では『スターウォーズ』をパロディのネタにし、『サイレントムービー('76)』は映画界を、そして『プロデューサーズ('68)』でショー・ビジネス界をドタバタ喜劇として強烈に風刺している。

 落ち目のプロデューサーと小心者の会計士が、大失敗なミュージカルを作って制作費の差額を持ち逃げしようと目論む。最低の脚本、最低の演出家、最低の出演者で挑むのだが予想に反して大ヒットしてしまう。
 まずこのプロット自体が、何が当たるか判らないショー・ビジネス界を批判風刺している面白さだ。

 コメディとしての内容はかなり強烈で、少し、いや、かなり下品で笑いもベタなものばかり。冒頭のプロデューサーと会計士のやりとりなど、例えれば大阪なんば花月で吉本新喜劇を見るようなものか。ぼくの時代でいうと、花紀京と桑原和男を思い浮かべてもいい。

 そのベタな笑いは少し日本人には理解できないようで、観客はじつにおとなしい。しかし、ゲイのシーンになるととたんに笑い声が多くなってきた。これはもう爆笑の嵐になり、痛快に面白くなってくる。
 主人公ふたり以上に、この“最低の演出家”のゲイたちが怪演で魅せてくれるのだ。すごいぞ。いやいや、そればかりではなく、“最低の脚本家”のナチス信奉男の暴走ぶりも見もの。
 そして紅一点、お色気ムンムンのスウェーデン美女ウーラ役のユマ・サーマンの変身ぶりには目を見張る。

 ニューヨークやロンドンに行くと必ず1本はミュージカルを見るのだが、実はこの作品はまだ観ていなかった。2004年と2005年にNYへ行ったときにも観る機会はあったのだが、英語力の無さではとうてい面白さが理解できないだろうと思っていた。ましてやコメディとなるとストーリーを知るだけでは楽しめない。この映画の風刺とパロディは、差別の笑いと性の笑いで満ちているのだから、ニュアンスだけでも嗅ぎ取らないと面白さは半減だ。だから、主人公のマックスとレオ・ブルームのふたりがユダヤ名だと云うことは最低限知っておいた方がいい。この作品に関しては、前もってある程度の知識を入れてから見ることをお勧めする。

 映画としてのミュージカルの醍醐味もいくつかある。歌いながらアパートのセットから実際のセントラル・パークまで飛び出していく爽快感。
 同じくセントラル・パークを南下しながら、老婦人の大群が歩行器で踊るダイナミズムは映画ならではの趣だ。

 この映画を観る前の知識としてもうひとつ。
 メル・ブルックスが声の出演をしている。鳩のヒルダ黒猫のトムなのだが、ぼくには鳩はわかっても黒猫がよく分からなかった。

 そしてもうひとつ。エンド・クレジットが出ても絶対に、絶対に席を立たないように。舞台にはアンコールってものがあるのだから、クレジット・ロールが終わっても映画は終わっていないのだ。そして最後の最後に顔を見せる、故アン・バンクロフトのダンナを見逃さないように。

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びっくり箱-姉妹編-

◆原作:向田邦子
◆脚本:中島淳彦
◆演出:福島三郎 
◆出演:沢口靖子/余 貴美子/永島敏行/佐藤重幸
    草村礼子/小宮孝泰/琵琶弓子
◆公演:2006年4月3日 愛知厚生年金会館 B列15番
◆上演時間:130分

  ☆     ☆

 70年代に向田邦子によってテレビドラマ用に書かれた『びっくり箱』は、大竹しのぶと京塚昌子による母娘の設定だったのだが、今回の舞台化は姉妹に設定を変えての上演になっている。

  昭和50年頃の一軒家が舞台で、隣家のおばさんの通夜から翌日のお葬式までの時間が、ちゃぶ台のある茶の間の中でテンポよく進んでいく。
 向田邦子的世界を浮かび出させるのは昭和の家の茶の間。『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』『あ・うん』が忘れられないように、茶の間という空間で話が形成されていく空気が何とも懐かしい。
 
 会場の照明が落とされ、2階からミシンを踏む音が聞こえてくる。足踏み式ミシンの音も昭和の郷愁を誘い、すんなりと向田邦子の世界に入り込むことになる。
 見事なはじまり。

 幼いころ父親を亡くし、母親の腕ひとつで厳しく育てられた姉妹。3年前に母親を亡くしてからは、29歳の妹厚子(沢口靖子)は東京で看護士の仕事を。36歳の姉とし子(余貴美子)は母の後を継ぎ実家で洋服のリフォームを生業にしている。
 ふたりは、母親から常にひとつのことを言い聞かされていた。
 『夫として選ぶ男性は、きちんとした学歴とりっぱな職業に就いていること』
 しかしふたりとも、お互いがその言葉を守っているものと思いながら、自分が惚れ込んでいるのはグータラ男だった………。

 ◆以下、ネタバレを含んでいるのでご注意を。


「死ぬにはまだ早い」*西村潔監督作品

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監督:西村潔
原作:菊村到『閉じ込められて』
脚本:石松愛弘、小寺朝
出演:黒沢年男、高橋幸治、緑魔子、小栗一也、若宮大佑、草野大悟

☆☆☆☆ 1969年/東宝/83分

      ◆        ◆

 60年代後半から70年代にかけ加山雄三や黒沢年男を主演においた東宝ニュー・アクション映画が製作され、これは西村潔の監督第一作目にしてそのシャープな感覚が見事に結実している最高傑作である。

 東京近郊のドライブインの一室だけで繰り広げられる密室劇で、閉じ込められた人々の人間性が剥き出しになるハードボイルドなサスペンス。映像的効果の音楽は一切使われずに、流れるのは劇中音としてカーステレオやジュークボックスの歌謡曲だけ。流行歌はひどく日本的な趣にはなるが、全体のトーンはフランス映画の粋さだろうか。ラストへ向かって集結される伏線の張り方も巧い。

 冒頭の高橋幸治と緑魔子のベッドシーンは、時折挿入されるカーレースシーンからジャン・ルイ・トランティニアンとアヌーク・エーメの『男と女』の情事を想像させる。
 かつて名レーサーと呼ばれ今はアクセサリー・ショップを経営する男(高橋幸治)と、平凡な結婚生活に収まっている元ファッション・モデルの女(緑魔子)の逢い引きも、私生活での倦怠を埋め合わせるには至らないほど空虚な男と女。東京へ帰る車中のラジオからは殺人犯の男のニュース。カセットからは越路吹雪の歌が流れてくる。会話はとてもクールだ。
 警察の非常検問を通りながら、二人がドライブイン『エンプティ』に入るのが深夜11時を少し過ぎたころ。開巻10分を過ぎ、このあと映画は長廻しが多用される室内劇としてリアルタイムに近い感じで進む。
 
 店内にいたのはマスター(小栗一也)の他に、常連の中年医師(若宮大佑)、新婚の男女、ジュークボックスの音楽に合わせて踊るフーテン娘がふたり、顔色の悪いタクシー運転手とカウンター奥でマッチ棒を積み上げている男(草野大悟)の8人。

 突然若い男(黒沢年男)が飛び込んでくる。高橋幸治に「ひとりか?」と聞きながら誰かを探しているようだ。若い男は見回りにきた警官を突然撃ち殺すことで、ドライブインを狂気の空間に一変させる。
 若い男は浮気をした恋人を撃ち殺して来たと云う。恋人の洋子が浮気相手と11時半にこのドライブインで待ち合わせをしたのを知り、その相手をも殺しに来たのだ。

 この映画の中で唯一、殺された恋人だけが洋子という名前で呼ばれ、出演者に名前はない。狂気の空間のなかで生死の自由がない人々には、人間性だけが浮き彫りになり個々の名前など必要はないのだ。
 また、外部の警官隊の描写は排除されている。急病になったタクシー運転手を外に運び出し、手伝った男たちがまた引き返してくる。警察との打ち合わせなりが出来るだろう事柄も一切ない。
 閉じ込められた10人の濃密な時間だけを描く事で、結末を想像させない緊迫感あふれるサスペンスとなっている。

 この作品はビデオ商品化もされていない。西村監督の次作『白昼の襲撃』や、『狙撃』など東宝ニューアクション映画のDVD化をぜひとも願うのです。
 こんな傑作を埋もれたままにしちゃマズイでしょ。

    ☆    ☆

 ギラギラと狂気に上り詰める様の黒沢年男がいい。
 11時半よりも早くやって来たことで殺す相手がいないと知ったあと、ジュークボックスに寄り掛かる姿をロングで撮らえたカメラからは虚無感がいっぱいだ。ジュークボックスから流れる森進一の『花と蝶』が異質で、そのあと狂暴化する彼はサディスティックに一人ひとりに激情をぶちまける。

 中年の医者には新婚の女を犯せと強要し、新婚の男にはその復讐をけしかける。クールに事態を見つめていた高橋幸治の目の前では緑魔子に裸になれと命じる。

 そして修羅場に転じた密室に一発の銃声が響く。

 カウンター奥でマッチ棒を積み上げていた草野大悟の手に拳銃。黒沢年男の胸には鮮血。「いい加減にしときなっ」黒沢年男の胸に一発二発三発と銃弾を打ち込むと、カメラが一気に俯瞰になるこのシーンは強烈だ。

 連続警官殺しで指名手配犯の草野大悟。ラジオニュースにしろ検問にしろ、観客へのトラップが見事に冴える。
 事件のあと、三々五々と散る人質たち。ドライブインの前に一台のスポーツカーが停まり、何かあったのかと男が訪ねる。
 「ちっ、せっかく今晩がチャンスだったのになぁ。ツイてねえや」と立ち去る中山仁(出演者としてクレジットされていない)。「運のいい奴もいるもんだ」とマスターの独り言。
 車の助手席に座る緑魔子の顔がブレ、ストップモーションで終わる。


※初見は1974年。池袋文芸座地下の『東宝ニューアクション映画・オールナイト5本立て』にて鑑賞。

Hotwax vol.5



 Hotwax vol.5が発売されました。

 今回の大特集は、昭和40年代の小林旭です。
 リアルタイムではアキラも裕次郎も見ていない世代なので、読んでいて何とも悔しい感じがします。見ていないことに、です。
 東宝の加山雄三や日活の青春路線映画を見ていた子供には、アキラの映画は無縁でした。明星の付録の歌本で『自動車ショー歌』を憶えて歌っていたクセに(笑)。色気づいた高校時代には『女の警察』や『ネオン警察』などの映画の立て看板は目の毒でしたねぇ(笑)。関根恵子の『おさな妻』や増村保造作品の立て看板にドキッとしていたのとおんなじ感覚でした。
 長谷部安春監督の傑作と云われる『爆弾男といわれるあいつ』がDVD化されるようなので、機会があればぜひ見なくては……。

 第2特集は、ビクターのSFシリーズ。この辺りのレコードはあまり買っていなかったなぁ。

 中島貞夫監督の『まむしの兄弟』シリーズ。これは面白かった。

 また、巻末にHotwax ☆ trax のインフォが掲載されていますが、なかなか魅力的なものが並んでいます。
 「やさぐれ歌謡戦線」としてコンピレーション・アルバム『ふうてんブルース』と、映画女番長シリーズのサントラ盤『女番長ゲリラ』の2枚が5月に発売。杉本美樹の唄声や安田南の『愛情砂漠』が収録されているのがなんとも楽しみ。

 そうそう今回もおマケCDが付いています。
 小林旭の映画から選りすぐりのジャジーな曲ばかり。これ聴くだけでも映画を観たくなりまする。
 
◆Hotwax vol.5 発行元:ウルトラ・ヴァイヴ 
         発売元:(株)シンコーミュージック
         定価:1895円+税

STONES Live at ナゴヤ

 セットリスト21曲に特別なサプライズはなかったけれど、最高の夜を満喫できました。
 最前ブロックという席の印象もあるのだろうが、60年代から聴いているファンとしてはRuby TuesdayGet Off My Cloudを大声で一緒に歌えることが何ともし難い喜びで、You Can't Always Get What You Wantでの大合唱にも、いつも涙モノです。
 ありがとうよ、ストーンズ。

Set List
01. Jumping Jack Flash
02. It's Only Rock’N Roll
03. She's So Cold
04. Oh No,Not You Again
05. Ruby Tuesday
06. Rain Fall Down
07. You Got Me Rocking
08. Gimmie Shelter
09. Tumbling Dice
10. This Place Is Empty
11. Happy
12. Miss You (Going to B-Stage)
13. Rough Justice
14. Get Off Of My Cloud
15. Honky Tonk Woman (Back to Main Stage)
16. Symphathy For The Devil
17. Paint It Black
18. Start Me Up
19. Brown Sugar
- Encore -
20. You Can't Always Get What You Want
21. Satisfaction


     ☆    ☆

 今回はさいたまとナゴヤでの観ショーだったが、She's So Cold、Let's Spend The Night Together、Sway、Wild Horses………そして最高にセクシーだったMidnight Rambler………と、至高のステージに感激しております。

 ミック、キース、チャーリー、ロンよ、また来てネ。

STONES Live at さいたま

 4月2日、初めて荒川を渡り東京より北へ遠征。今回は翌日の朝一番で帰名しなくてはならないので、JRのシングル一泊《新幹線プラン》を利用。最近は東京と云えば品川ばかりに泊まることにしている。

 さて、埼玉新都心へ行く前に今回はもうひとつ目的があった。腰の辺りまで髪を伸ばしていた70年代、高円寺や吉祥寺で一緒に遊んでいた女友達と何十年ぶりかの再会だ。まずは彼女が住んでいる川口へ。どんなに変化しているのか恐いくらいの再会だったが(笑)……いやぁ、お変わりなく、でした。自分もあまり変わっていないので、お互いすんなりと昔の時間に戻ることができたよね。

 さてさてストーンズですが、さいたまスーパーアリーナの会場の大きさに驚きました。小さいのだ。ストーンズを見るのにはこれくらいまでが限度でしょ。ほど良い広さなのです。

Set List
01. Jumping Jack Flash
02. It's Only Rock' N Roll
03. Let's Spend The Night Together
04. Oh No,Not You Again
05. Sway
06. Wild Horses
07. Rain Fall Down
08. Midnight Rambler
09. Tumbling Dice
10. This Place Is Empty
11. Happy
12. Miss You (Going to B-Stage)
13. Rough Justice
14. Start Me Up
15. Honky Tonk Woman (Back to Main Stage)
16. Sympathy For The Devil
17. Paint It Black
18. Brown Sugar
-Encore -
19. You Can't Always Get What You Want
20. Satisfaction




 感激したのは、なんと云ってもSway
 東京初日にサプライズしたので今回さいたまで聴けるとは思わなかった。
 つづくWild Horsesとともに胸にグッときたね。
 で一番の見どころはMidnight Ramblerか………。
 60過ぎたミックの益々のアクティヴさには、身体に震えがくるほどに男のぼくにも感じるほどのセクシーさです。
 最高の演奏と歌とダンスを見せつけられたら、これが最後のステージなんて口が裂けても云えないね。3~4年後にまた来日するような気がします、絶対に。チャーリーさえ元気なら………。要だからねぇ。

 さあ、明日はいよいよ日本公演のファイナル、ナゴヤ決戦。
 今度は最前ブロックで暴れさせて頂きます。
 オープニングはStart Me Upか?
 As Tears Go Byを聴きたいゾ。


    ☆    ☆




 東京からの帰り、天気晴朗山高し……、富士山が綺麗に拝めました。