TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「かたみ歌」朱川湊人



 第133回直木賞を受賞した朱川湊人の受賞後第一作で、昭和を舞台に、切なくて、だけど心に温かい七つの“不思議な物語”を収めた短編集。
 直木賞受賞の『花まんま』は未読なのだが、この本の腰巻きの惹句を見て、先にこちらを読んでみたいと思った。

 『つらい時、悲しい時、どこからか聞こえてくる
  あの歌声が、いつも私の支えだった。』

 この中の数々の物語には歌が流れている。それが、なんとも懐かしく、郷愁を誘います。
 ザ.タイガースの『モナリザの微笑』、吉田拓郎の『人間なんて』、佐良直美の「いいじゃないの幸せならば』などは、各物語の重要なファクターとなっている。

 三十年近く昔。アカシア商店街という名のメインストリートを持つ東京の下町には、いつも『アカシアの雨がやむとき』が流れている。そしてそこには、傷ついた人々をやさしく包む不思議な出会いと奇蹟の出来事が起きていた。
 七つの物語に登場するのが古本屋の『幸子書房』。一見気難しそうで芥川龍之介のような風貌をした店主が語るには、近くにある寺には“あの世”と“この世”を繋ぐ何かがあり、寺の近くで奇妙な事が起こるという。それぞれの登場人物は、この店主と出会うことで自分の姿を見つめ直してゆき、かけがえのない思い出を創ることになるのだが、それは読者への感動として伝わってくる。

 心にしっかりと滲みる七つの物語には癒されます。泣かされます。お勧めです。

かたみ歌/朱川湊人
【新潮社】
定価 1400円(税別)


★以下、簡単に七つの物語に触れます。

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PLAYBOY誌10月号

playboystones.jpg

 新アルバムが発表されたりツアーが始まったりすると、必ず一般誌でもこういった企画が組まれます。
 そしてぼくは、72年までの一番充実した、一番イカしてる、一番好きなストーンズが載っていれば、買ってしまうひとりです。
 
 ノーマン・シーフのオルタネイティヴな写真に満足。

 さて、いろいろあるストーンズサイトでは、初日・二日目のセットリストに変化がないことに不満の声が上がっている今回のツアーですが、42年間も活動しているバンドのスコアはとてつもない量なんだから、ファンひとり一人を満足させることは不可能です。
 大好きなバンドが、いまだにどれだけのグルーヴ感溢れる音を出してくれるのかを楽しめれば、いいな。

本誌の記事に倣って……
mickmacが選ぶ3曲
◆イッツ・オンリー・ロックン・ロール
◆ジャンピン・ジャック・フラッシュ
◆タイム・イズ・オン・マイ・サイド

mickmacが選ぶ3枚
◆ベガーズ・バンケット
◆スティッキー・フィンガーズ
◆12×5

どうということない話

 どうでもいいですが……。

 ジャイアンツが、星野仙一氏をゼネラルマネージャーとして招へいすることを決めたらしい。
 テレビ視聴率低下の問題や、清原・ローズなど問題児を抱えて、いままで何年も前から潔い断行さえできなかった球団改革を、ついに、星野氏に求めるのか!
 虚人(きょじん)のすることは、ホント、よ~わかりませんワ。

 しかし、この要請を星野氏が受けるか!?
 タイガースファンの納得がないとダメだって?
 ホントは虚人の監督をやりたいんでショ?

 星野氏がなるべきは、コミッショナーでしょ。 
 その地位でこそ、野球界にとって本当の意味での大改革ができるはずだ。

   ☆    ☆

 熟年離婚というのがある。
 子供が大きくなり社会人や大学生になったところで、どちらかから離婚を切り出されるという。ここ10年でもかなりの数の事例があるようだが、これ、圧倒的に妻から言い出すことが多いらしい。
 原因は夫婦のことだから、当事者でないと分らないところが多いです。

 二十歳になった年、中学校からの友人の両親が離婚をした。母親の方が、自立するということで出ていったという。
 それから30年近くなったいま、その友人は父親と同じ経験をしている。そんな話を聞いた。
 友人の方には好きな人ができていたという。男の我が儘と、男の自尊心と、男の女性に対する見くびり………。社会的に彼の味方が正しいとは言えないかもしれないけれど、彼を応援する自分がいた。
 オレもおとこだ!ってか?(笑)

A Bigger Bang Tour 初日

 いよいよROLLING STONESの始動です。
 21日ボストンのフェンウェイ・パークで、北米ツアーの初日の幕を開けました。
 舞台上は立体駐車場のような造りがあり、一部をオン・ステージ・シートとして、ここにも観客席が造られています。

 初日のセット・リストは以下のとおり。
 全23曲で、初日に演奏する数としては少し物足りないかな。
 新作は*印の4曲で、カバー曲がひとつ。おお、レイ・チャールズだ。
 他はそんなに驚くような選曲になっていないので、コアなファンを満足させるようになるには、これからを期待したいところ。
 なにしろ、これからです。
 来年3月、また、あの武道館で会いたいものです。

《SET LIST》 8/21/05 BOSTON Fenway Park
1. Start Me Up
2. You Got Me Rocking
3. Shattered
4. Tumbling Dice
5. Rough Justice *
6. Back Of My Hand *
7. Beast Of Burden
8. She's So Cold
9. Heartbreaker
10. Night Time (Ray Charles)
~BAND INTRODUCTION
11. The Worst (Keith)
12. Infamy (Keith) *
13. Miss You
14. Oh No Not You Again *(B-Stage)
15. Satisfaction (B-Stage)
16. Honky Tonk Woman (B-Stage)
17. Out Of Control
18. Sympathy for the Devil
19. Jumpin' Jack Flash
20. Brown Sugar
21. Gimme Shelter
22. You Can't Always Get What You Want
23. It's Only Rock-n-Roll


※ステージ・セットはコチラ

「Aサインデイズ」*崔洋一監督作品

Aサインデイズ_pst

監督:崔洋一
脚本:崔洋一、斎藤博
原作:利根川裕「喜屋武マリーの青春」
出演:中川安奈、石橋凌、大地康雄、余貴美子、広田玲央名、SHY、中尾ミエ、川平慈英、亀渕友香、伊藤淳史(子役)

☆☆☆☆ 1989年/日本・大映/111分

    ◇

 アメリカの占領下にあった沖縄を舞台に、Aサインバーと呼ばれる米軍から風俗営業の許可をもらったバーでロックを歌う若者たちの青春群像劇で、沖縄に在住するロックヴォーカリスト喜屋武マリーの半生を描いた利根川裕の「喜屋武マリーの青春」を原作とし、『血と骨』の崔洋一監督が演出した音楽映画。

 1968年、定時制高校に通うハーフのエリー(中川安奈)は、Aサインバー「NEW STAR」のバンド“バスターズ”のリーダーのサチオ(石橋凌)に惹かれている。母親(中尾ミエ)は父親の国“ステイツ”に行こうと誘うが、エリーは自分の意志で沖縄に残る。一年後にサチオと結婚し男の子が産まれるが、女と金にだらしないサチオとの生活は苦しい。ある日大喧嘩をするふたり。サチオはエリーをたしなめ、彼女をバスターズのステージに上げることにする。

 血ヘドを吐き喉を潰しながらリハーサルをするシーンの緊張感が、エリーがヴォーカリストらしくなっていく様とともに心に残る。何度もくり返し歌われる『スージーQ』は最も印象深いだろう。

 エリーのヴォーカルで人気も上々になるバスターズだが、時代はロックンロールだけでは満足できないところに来ていた。新しい音楽の追究を目指すミュージシャン。メジャーを目指す仲間たち。そんな波に乗れないサチオはひとり孤立してゆき、いつしかバンドは解散。
 沖縄が本土に返還されることでいたるところで開発工事が始まり、サチオはそんな現場で肉体労働に従事するが、昔の仲間が尋ねてきたり、エリーが子どものために音楽を始めるたびに苛立つ。
 そしてある日、ダンプカーの交通事故でサチオが入院。
 
 ドラムのミッキーがもう一度バンドを再開させようと持ちかけるのは、サチオが元気な姿になってからのこと。エリーは承諾。しかしサチオには、錆びついてしまった自分の指先しかなかった。
 ベトナム戦争が終結した年。バンド活動の再開の場には、優秀なプロデューサーでマネージャーとなるサチオの姿があった。

 ウッドストックが過ぎたあたりからは、バンドマンのスタイルも長髪となり音楽はニュー・ロックへと変貌していく。時代の息吹きの只中にいる男と女の生々しい姿が、音楽に陶酔する姿として画面のなかに十二分に映し出され、観る者にも熱いパッションが伝わってくる映画だ。

 石橋凌と中川安奈の熱演も伝わる。そしてバンドのメンバー以外にも印象深い登場人物が多い。
 Aサインバーのオーナーの大地康雄は見事なイントネーションでウチナンを演じていたし、ネーサンと呼ばれる余貴美子も、イントネーションうまく低く掠れた声で貫禄あるサチオの愛人役を演じる。彼女はこれ以後何本もの沖縄を舞台にした作品に出ることになり、自身も大の沖縄好きになっている。これが最初の沖縄作品ということだ。
 中尾ミエの、エリーと別れるシーンの笑顔。チンピラから一人前のミュージシャンになるハーフのサブには川平慈英が扮する。
 
 そんな俳優陣を配置してもっとも凄いのが、Aサインバーの雰囲気だ。その騒然たる内部は、ベトナムという死地へ飛び立とうとする若い兵士たちでいっぱいだ。罵声、歓声、喧嘩、泥酔、金と女と薬漬けの中で、修羅場を生き抜くバンドマンたちの迫力は、まさにオキナワンロッカーたちの真の姿だったのだろう。
 沖縄の光と闇を、少しは感じることができるだろう映画だ。

Hotwax vol.3



 8月25日に発売のHotwax vol.3です。

 今回の第一特集は、深作欣二。
 part.3として、1975年から77年までの作品がメインに紹介されています。
 「仁義なき戦い」全5部作のあとを受けた「新・仁義なき戦い」3部作と渡哲也の東映初主演の2作がこの時期のもの。特に渡哲也の2作は傑作ですから、この特集を読んでまた観たくなりました。
 東映京都が生んだ脚本家高田宏治氏と、カメラマン中島徹氏のロング・インタビューは興味深いものです。
 また、深作作品といえばピラニア軍団。彼らの面白い話が満載です。

 他の特集としては、歌謡映画アルティメイト・コレクションとして、グループサウンズ映画と日活の歌謡映画が詳しく掲載されています。和泉雅子と山内賢のデュエット「二人の銀座」は忘れ難いなぁ。中学生のアイドルとしては、日活の女優さんが多かったです。

 ロックの特集としては、トラブルとトランザムの作品ガイドとディスコグラフィ。トラブルは「ロード」の虎舞竜の前身バンドです。

 創刊も3号目。ますますコアな特集ばかりで、いやぁ、本当に面白い70年代です。

◆Hotwax vol.3 発行元:ウルトラ・ヴァイヴ 
         発売元:(株)シンコーミュージック
         定価:1600円+税

 私事ですが、今回も拙い文章を採用して頂きました。
 aii time my best10を、併せて楽しんでくださると嬉しいです。

仁義なき戦いシリーズ

 現在WOWOW で放送されている『仁義なき戦い』シリーズ全11作。新シリーズ、番外篇、そして21年ぶりの新作等と『仁義なき戦い』と名打たれていても、やはり1~5作目でシリーズは一応の完結をしている。
 その全5作を、久しぶりに観た。

 『広島死闘篇』は、以前に書いているように何度見直してみても大傑作のフィルム・ノワールだ。
 5作全体をみて印象的なのは、やはり、台詞無しの役から実に個性的な風貌で要になる役柄にまで上りつめた川谷拓三の姿だった。

 ☆   ☆

 第1作の群像劇以上に登場人物が増えた第3作『代理戦争』は、バイオレンスシーンを極力控えヤクザ組織の構図と複雑な人間関係をじっくりと描いている。やくざの狡猾さと愚かさがくっきりと浮かび上がってくる秀作で、広能昌三(菅原文太)が孤立していく次作品への重要な一作になっている。
 広能組の若い子分(渡瀬恒彦)の最後のエピソードが、やっと広能にギラギラしたエネルギーを表出させ、今までひとり守り通してきた“仁義”の、まさに崩壊の一瞬だった。

 第4作『頂上作戦』は、前回真っ二つに分かれた金子信雄、田中邦衛、小林旭らと、菅原文太、梅宮辰夫、小池朝雄らとの本格的な抗争を描いている。実際に1963年から1964年にかけて起こった広島抗争で、やっと暴力団壊滅に動き出した広島県警との戦いでもあり、シリーズ中もっともバイオレンスシーンが多い。
 第1作目のように、ここでも若者群像が要所で光り血まみれのアダ花を満開させる。
 小林稔侍、黒沢年男、志賀勝、みんな若いなぁ。世話になった松方弘樹を、貧乏な母と弟たちのための金欲しさで射殺するチンピラ小倉一郎こそ、ヤクザ世界の人間の悲哀に溢れたエピソードだ。
 そして、この映画の名場面がラスト。冬の雪降る刑務所の廊下で、裸足に雪駄姿の菅原文太と小林旭の台詞がシリーズを締めくくった。

 文太「俺らの時代も終わりよ」
 旭「辛抱せえや」

 この台詞を吐いてしまっての第5作『完結篇』は後始末的展開でもある。広島やくざの世代交代、広能と武田の引退までを描くこの作品も、菅原文太の台詞が印象的で心に残る。

 旭「身を引いて落ち着いたら一緒に飲まんか」
 文太「そっちとは飲まん。死んでいったモンに済まんけえのぉ」

 さて、同じ役者が違う役で出てくるのはシリーズ物では仕方がないことで、それを承知で観ているのだが、この完結において『広島死闘篇』で千葉真一が演じた大友勝利の役が宍戸錠に代わっているのと、早川役の室田日出男の出演も代役になっているのが残念だった。


原作:飯干晃一
監督:深作欣二
脚本:笹原和夫、高田宏治(『完結篇』)
出演:菅原文太、小林旭、成田三樹夫、梅宮辰夫、金子信雄、田中邦衛、宍戸錠、北大路欣也、松方弘樹、室田日出男、川谷拓三、山城新伍、渚まゆみ、池玲子、野川由美子、黒沢年男、渡瀬恒彦、

仁義なき戦い
☆☆☆☆ 1973年/東映/99分
仁義なき戦い・代理戦争
☆☆☆☆ 1973年/東映/103分
仁義なき戦い・頂上作戦
☆☆☆★ 1974年/東映/101分
仁義なき戦い・完結篇
☆☆☆★ 1974年/東映/98分

ブルース・ギタリスト、ふたり

ANA!.jpg

 アメリカには、女性のブルースギタリストっていっぱいいます。
 これはana popovicの最新ライヴアルバムですが、日本では知っている人はほとんどいないでしょう。
 ましてやこのジャケットでは、シャンソンのCDと見間違えるかもしれない。ブルースのコーナーに置いてあっても、少しとうが立った女性シンガーにしか見えないので、誰も食指を動かさないかもしれないな。

 アナ・ポポヴィチ。旧ユーゴスラビアのベオグラード出身の29才の美人ブルース・シンガー&ギタリストです。
 このアルバムが3枚目で、前2作もお気に入りのアーティスト。

 けっこう野太いソウルフルなヴォーカルを聞かせてくれるし、ギターはジミ・ヘンドリックスばりのファンクな感じで、スライドギターもスティーヴィー・レイ・ヴォーンを思わせるほどタイトだ。
 このライヴでは、ジャジーなインストゥルメンタル・ナンバー「Navajo Moon」を8分以上披露してくれる。
 公式サイトで見る演奏スタイルも格好良く同時発売されているDVDも欲しいのだが、リージョンが違うので現在持っているプレイヤーでは見ることができない。残念だな。

→<ANA POPOVIC> ☆オフィシャルサイトはこちら☆

  ☆   ☆   ☆



 なんともレトロなジャケットは、同時に購入した TEN YEARS AFTER の2004年のCD。

 『NOW』とタイトルされたアルバム、懐かしさでスリーヴを見てみると………。 
 キーボードのチック・チャーチル、ベースのレオ・ライオンズ、ドラムのリック・リー。オリジナル・メンバーは揃っている………が、えっ! ギター&ヴォーカルがアルヴィン・リーじゃないの?
 おいおい、フレディのいないクイーンかいな。スティーヴィーのいないダブルトラブルってか?
 ウーン、冷静に、冷静に。肝心の音を聴いてみよう。
 ……………………
 おぉ、少し反省。
 考えてみるとフォガットのふたりのギタリスト、ロンサム・デイヴとロッド・プライスはもうこの世にいないし、キャンド・ヒートに至ってはドラムのフィト・デ・ラ・パラしかいないけど、両バンドは現在も活動中……フロントマンがガラリと変わったバンドでも、リズム隊がしっかりしていれば往年のバンドのテイストは受け継がれるようです。ギタリストの名前に惑わされてはいけないということだ……。

 この新生TYAのギタリストJoe Goochは若干28歳。ストレートでエッジの効いたハードな音がなかなかいい。
 ボーナス的に往年の名曲「Change The World」と「Going Home」の2曲がライヴ演奏で収録されているが、10分以上の「Going Home」……こりゃ、悪くないぞ。驚くことに、アルヴィン・リーのような早弾きテクニックも備えております。ヴォーカルも、アルヴィンに似せようとした感じがないではないが、十分に満足できる声です。
 先述の言葉は撤回しよう(笑)。
 公式サイトを見てみると、2005年のライヴが2枚組で出ているではないか。これは買わなくては………。

→<Ten Years After> ☆オフィシャルサイトはこちら☆

 それにしても、肝心のアルヴィン・リーはどうしちゃったのでしょう。

「恐怖の報酬」*アンリ=ジョルジュ・クルーゾー



LE SALAIRE DE LA PEUR
監督・脚本:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
原作:ジョルジュ・オルノー
主演:イヴ・モンタン、シャルル・ヴァネル、ペーター・ヴァン・アイク、
   フォルコ・ルリ

☆☆☆☆☆  1953年/フランス/149分/B&W

    ◇

 フランスのヒチコックとも呼ばれているアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督が創りだしたこの傑作は、サスペンス映画の古典とも原点とも云われている。
 ストーリーはいたってシンプル。
 4人の男たちが高額な報酬のために危険なニトログリセリンを目的地まで運ぶ話だ。そのニトログリセリンがいつ爆発するか判らないという恐怖が、サスペンスとスリリングさを生み出し観客に緊迫感をもたらす。
 人物造形もしっかりと描かれ、ありがちなサスペンスだけの薄っぺらなドラマになっていないのは、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したことで証明されている。

 この映画を最初に知ったのは小学6年の時だった。クラス担任のK先生は無類の映画好きで、ホームルームの時間には気に入った映画の話をよく語っていたのだが、一番記憶に残ったのがこの昔の映画の話だった。K先生の語り方が上手だったと思うのだが、本編を見ることなく語りだけでゾクゾクしてしまった。それは、何年か経ってから実際に映画を見ても、何ら変わらないスリリングさだったのだから驚く。

 中南米のある町。吹きだまりにいる何十人もの男たちは、故郷を遠く離れた流れ者たち。仕事もなく、気怠い生活を送るだけの彼らには、郷愁があるだけで帰郷する金もない。暑くイライラする日常の倦怠と、彼らの閉塞感がじっくりと描かれるこの前半の1時間がとても重要だ。

 ★ここからは人物設定や見せ場などのネタバレがあります。ただし、ラストはバラしません。 





 コルシカ生まれでパリにも住んだことのあるマリオ(イヴ・モンタン)は、メトロのピガール駅の切符を宝物にしている若者。この切符ひとつでマリオの人物像がわかる。ピガールはパリの下町の歓楽街。東京新宿歌舞伎町のような猥雑で危険な街。チンピラのマリオが、夢か一獲千金を狙ってこの土地に流れ着いたということだ。
 新しくやってきた年長者ジョー(シャルル・ヴァネル)はパリではかなりの顔役で、マリオは当然ジョーを慕う。ジョーの大物ぶりが随所に見られ、ここでのマリオとの上下関係が後半の大きな展開へと繋がる。
 陽気なイタリア人のルイジ(フォルコ・ルリ)は、真面目に働いていたのに肺の病気で余命がない。早く故郷で優雅な生活を送りたいと願う。
 クールなビンバ(ペーター・ヴァン・アイク)は父親をナチスに殺害されたドイツ人。いつも冷静沈着だ。

 ある日、男たちにとってここから逃げ出す大きなチャンスが来た。アメリカの石油会社の油田で大爆発が起こり、その火災を爆風で消すために必要な大量なニトログリセリンをトラックで山奥まで運ぶ仕事だった。報酬は故郷に帰るに十分な大金だ。
 4人の男が選ばれ、真夜中に2台のトラックは“死”を乗せて走り出す。
 前半の男たちの心情や動機づけの静かな画面から一転、いよいよ緊張の時間がはじまる。

 難所として「なまこ板」と呼ばれる道を一気に駆け抜けるシーンや、崖っぷちでの切り返しシーンが続くなかで、徐々に4人の人間性が露になってくる。
 恐怖で何もしなくなったジョーの姿を目の当たりにしたマリオは、すっかりジョーを軽蔑するのだが、「報酬は運転だけじゃない、俺は恐怖で報酬を得るのだ。」とか「歳をとればお前にもわかるさ。」というジョーの言葉は実に強烈だ。シャルル・ヴァネルはこの映画で、カンヌ国際映画祭男優賞を獲得している。

 寡黙なビンバは最も危険な箇所で腹の据わったところを見せる。道を塞いだ岩石を積み荷のニトロで爆破しようとするのだが、ここでのカメラワークが素晴らしい。マッチ箱を弾く指や葉巻を噛み潰す口元など、このクローズアップによる緊張感の表現方法はサスペンスの手本だ。
 そして同じクローズアップでも、この一難去った後のジョーの巻き煙草のアップには感心する。

 そして最も印象的な原油の池を渡るシーンから、トラックはパリの想い出を乗せて一気にラストまで駆け走る。

 

マイトガイ・アキラ

 団塊の世代にとっての銀幕スターはダントツに石原裕次郎なんだろうが、日活全盛時代を知らないぼくは、石原裕次郎よりも小中学生のときにテレビで見た赤木圭一郎や小林旭の映画の方に魅了されていた。
 到底考えられないような設定の映画に現われる、マイトガイ・アキラはカッコよかった。

 そして歌も、突拍子もなくコミカルな歌を唄っていたことが子供ながら好いた理由かもしれない。
 「自動車ショー歌」「恋の山手線」(元ネタの柳亭痴楽の綴り方教室もバカ受けでした)「アキラのズンドコ節」は子供の頃の愛唱歌で、加山雄三を歌うかアキラを歌うかどちらかでしたね(笑)………ビートルズが来るまでは………。
 コミカルソングをなんのけれんみもなく歌えるのがマイトガイ。まさしく歌う銀幕スターです。

 とは言っても熱烈なファンだったわけではない。アキラの映画をすすんで見たわけでもなく、レコードだって1枚も持ってはいない。(赤木圭一郎のアルバムは持っていますが。)それでも、テレビなどに出演していると見てしまう。聴いてしまう。
 映画は、世代的にリアルタイムの『仁義なき戦い・代理戦争』から『完結篇』までの3作で演じた武田明役が印象深い。

 さて今年は、小林旭の芸能生活50周年だそうだ。最近テレビやステージと活動が活発なマイトガイ。記念公式サイトもオープンしての大々的な動きとともに、デビューからの全シングルを、各レコード会社からリリースするプロジェクトも進行している。



 この『小林旭コンプリートシングルズvol.7 アキラ』は、1993年から1999年までのソニーからリリースされた全シングルとアルバム名曲、ライヴ音源が収録されている。
 興味は、ディスク2のセルフカバー名曲群。
 特に、
・ダイナマイトが150屯
・アキラのダンチョネ節
・アキラのズンドコ節
・アキラのツーレロ節
・恋の山手線
・自動車ショー歌
 クレージーキャッツなどのコミカルサウンドを手掛けた宮川奏と、東京スカパラダイスオーケストラのアレンジの聴き比べができて面白い。
 スカパラとのライヴでの、『仁義なき戦い』のテーマをイントロに「ダイナマイトが150屯」をパワフルに歌うマイトガイは、やっぱり凄いぞ。

日活ニューアクションのサウンドファイル

 70年代の日本の映画とROCKと歌謡曲をディープに掘り下げるHotwax誌が、Hotwax TraxとしてCDを発売した。
 題して『日活ニューアクションの世界
 各シリーズから主題歌、BGM、挿入曲など貴重な音源が網羅されている。

野良猫ロック stray cat rock 


 まず1曲目の青山ミチの「恋のブルース」でノックアウトされる。天才歌姫でありながら破滅型の道を歩んでしまった青山ミチが唸る、この濃厚な歌謡ブルースには聞き惚れてしまう。
 青山ミチは弘田三枝子と同時期にデビューしていて、パワフルでソウルフルな歌唱力には定評があった。ただミコとちがいあまりヒット曲はなかったけれど、2002年に大西ユカリと新世界が「恋のゴーカート」「恋はスバヤク」「ミッチー音頭」などをレパートリーにカヴァーしており馴染み深い。ソウル演歌のイメージのひとですね。

 主演女優梶芽衣子の歌声も、ワイルドジャンボでの弾き語りが収録されているのが嬉しい。劇中歌のためタイトルが不明だったが、「C子の唄」ってタイトルはこのCDのためにつけたのでしょうか。
 全体を通しては、やはりセックスハンターに使われた鏑木創作曲のビート感溢れる楽曲らが群を抜いて素晴らしい。

 ひとつ残念なのは、予定されていた太田とも子の「とおく群衆を離れて」と「恋はまっさかさま」の2曲が収録されなかったこと。太田とも子の曲が初CD化(多分、未CD化だと思います)されるのは、梶芽衣子との姉妹共演したこのシリーズで実現して欲しかった。

収録曲
01. 恋のブルース(唄:青山ミチ)
02. マシン・アニマルPS5-1(演奏:ピーターパン)
03 .明日を賭けよう(唄:梶芽衣子)
04. 禁じられた一夜~ソロ・ヴァージョン(唄:安岡力也)
05. セックス・ハンター BGM (音楽:鏑木創)
06. マシン・アニマルPS7A-1(演奏:ピーターパン)
07. 禁じられた一夜~デュエット・ヴァージョン 
   (安岡力也&梶芽衣子)
08. C子の唄(唄:梶芽衣子)
09. ワイルド・ジャンボのテーマ(音楽:玉木宏樹)
10. セックス・ハンターのテーマ (音楽:鏑木創)
11. ひとりの悲しみ(唄:ズーニーヴー)
12. マイ・ボーイ(唄と演奏:沢村和子とピーターパン)
13. セックス・ハンターPS-C (音楽:鏑木創)
14. 暴走集団'71のテーマ~スキャット・ヴァージョン
   (音楽:玉木宏樹)
15. 御意見無用(唄:モップス)
16. 暴走集団'71 BGM(音楽:玉木宏樹)


日活ニューアクションの世界/無頼・殺(バラ)せ


 これも1曲目の、フラワーズの「君恋し」が凄い。
 フラワーズは内田裕也が1960年代後半に結成したバンドで、ヴォーカルの麻生レミはジャニス・ジョプリンばりの声の持ち主だった。のちのフラワー・トラヴェリン・バンドになるわけで、日本のロック草創期の重要なバンド。この年に出したファースト&ラストアルバムのジャケットが、メンバー全員のヌードということで話題にもなった。
 そのバンドに、フランク永井のナツメロ歌謡曲を劇中で歌わせることが、ニューアクション映画のメチャかっこいいところだろうか……もちろん当時のフラワーズは新人バンドなんですけどね(笑)。

 さて、この「君恋し」は麻生レミのハスキーな声が素晴らし過ぎる。フル・ヴァージョンで収録されているこの一曲だけで、このアルバムを買う価値があります。続くモップスの「アイ・アム・ジャスト・ア・モップス」もニューロックヴァージョンのガレージロックと云うか、今でも十分にカッコいい曲だ。青江三奈が唄う「上海帰りのリル」もいいしね……。
 全体的にロック、ソウル、ジャズ、そして歌謡曲と、ヴァラエティ豊かな楽曲で傑作揃いです。

収録曲 
01. 君恋し(唄:フラワーズ)
02. アイ・アム・ジャスト・ア・モップス(唄:モップス)
03. 反逆のメロディM-10 (音楽:玉木宏樹)
04. ワイルド・クライ(唄:尾藤イサオ)
05. 大幹部・ケリをつけろのテーマ (音楽:小杉太一郎)
06. 流血の抗争 M-11 (音楽:鏑木創)
07. イン・マイ・ワールド(唄:沢村和子とピーターパン)
08. 野獣を消せ M-11 (音楽:坂田晃一)
09. 無頼のテーマ~無頼・人斬り五郎M-21(音楽:伊部晴美)
10. そよ風のバラード(唄:スイング・ウエスト)
11. 関東幹部会 M-4 (音楽:玉木宏樹)
12. 反逆のメロディM-6(音楽:玉木宏樹)
13. 上海帰りのリル (唄:青江三奈)
14. 新宿アウトロー M-3 (音楽:玉木宏樹)
15. からだの中を風が吹く(唄:水原弘)
16. 無頼のテーマ~オリジナル・ヴァージョン(音楽:伊部晴美)

 各盤とも豪華デジパック特殊仕様で、初回特典としてオリジナルポスターが復刻封入されている。そしてレア写真満載の映画紹介ブックレット付きです。

怪獣現わる!?

 8月に入り、このムシ暑い名古屋で7日から角川映画『小さき勇者たち ~GAMERA~』の長期ロケが始まります。
 名古屋に殺人怪獣(名前はまだ不明)が上陸をして、大暴れの末、ガメラとの壮絶なクライマックスが繰り広げられるようです。
 これも、去年あたりからの名古屋ブームのお陰なのでしょうか。ありがたいことです(笑)。

 少し前から、怪獣から逃げまどう人々のエキストラを募集していました。
 実は、仕事場のマンションの下がロケ地のひとつになっているのです。こんな間近でロケをするのならエキストラに参加をしたかったのですが、平日の早朝から日没まで拘束されるので、残念ですが仕事場から眺めるだけにします(笑)。

    ☆      ☆

 ちなみに、過去に名古屋が怪獣に襲われる映画と云うと『モスラ対ゴジラ』('64)が思い出される。
 東宝の怪獣映画を小学生のとき初めて映画館で観たのが『モスラ』('61)で、そのこころ優しきモスラが名古屋駅前の“大名古屋ビルヂング”を壊す徹底的に悪役だったゴジラとの対決だった。 
 1992年の『ゴジラvsモスラ』でも、怪獣が名古屋の街に上陸しました。

 さてゴジラですが、一番面白かったのは1964年のお正月映画『三大怪獣 地球最大の決戦』だろうか。
 キングギドラの凶暴さや誕生シーン、ゴジラとモスラとラドンの見せ場とか名場面が多いです。