TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

マキャモンに飢えている

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 1980年代にスティーヴン・キング、ディーン・クーンツに次ぐモダンホラー小説界の第三の男といわれ颯爽と登場したロバート・R・マキャモン(Robert R Macammon)…

 2003年に「魔女は夜ささやく」を読んで以降13年間、新たな翻訳が出てこない…

 この「魔女は夜ささやく」も、前作「遥か南へ」から10年のインターバルからの見事な復活ぶりだっただけに、次を期待していたのだが…

 本書に登場するマシュー・コーベットを主人公にしたシリーズは本国で定期的に発刊されていると言われるので、単に日本では売れない作家になってしまったのかなぁ…

 読者は飢えているよ…


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 はじまりは「スティンガー」だった…
 B級感覚のハラハラドキドキが癖になり、遡って「奴らは渇いている」「アッシャー家~」とモダンホラー第3の刺客の虜になったわけで…


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 『スワン・ソング』は、スティーヴン・キングの「ザ・スタンド」の亜流と言われようが、こちらの方がテンポもよく、泣きもあり、十二分に面白さを堪能できる…


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 『マイン』
  超常現象を抜きにしたチェイス・サスペンスで、女たちの血みどろな執念の物語…


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 『少年時代』
 謎解きのミステリー部分はあるにせよ、本書は多彩な登場人物たちとノスタルジーな青春物語を楽しめるということ…

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 『遙か南へ』
  理不尽な世の中で蔑まれる異形者たちへの温かな視線で描かれるチェイス・ストーリーで、愛すべき登場人物たちが魅力…

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「11/22/63」スティーヴン・キング

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 読了は1月末。ツイートまとめに記したが、あらためてBook Reviewをしておこう。

 上下巻、各二段組500頁は『アンダー・ザ・ドーム』以来の超大作。相変わらずの一大エンターテインメントな世界を十二分に満喫できる傑作だ。


 ハイスクールの英語教師のジェイクは天職ともいえる教師の仕事に充実感を覚えてはいるものの、別れた妻との傷が癒えない毎日を過ごしている。
 ある日、行きつけのダイナーのマスターで友人のアルに呼び出され、アルの店の倉庫の奥にある秘密を教えられる。それは“過去への穴”で、1958年9月19日正午2分前に繋がっていると知らされる。そして、癌に侵されたアルは死ぬ前にジェイクに受け継いでもらいたいことがあると言う。
 それは、1963年11月22日のダラスで発生するジョン・F・ケネディ大統領暗殺という歴史的悲劇を阻止し、その後にくるベトナム戦争への流れを食い止めてくれということだった。
 アルの願いを承諾し過去に旅立つジェイク。
 “穴”の向こうに広がるのは古き良きアメリカだった。暗殺阻止までの5年間を過去の世界で教師として暮らすジェイクは、やがてセイディーという女性とめぐり逢い、初めて味わう幸福と充実の日々を過ごしていた。その一方、大統領暗殺犯となるリー・ハーヴェイ・オズワルドの動向を探る日々。
 しかしジェイクの前には、歴史の改変を拒む“時間”が立ちはだかる。それは思わぬ悲劇を巻き起こし、痛ましい出来事となってジェイクを苦しめるのだった……。

 運命の日、未来を変える銃弾が発射される。

    ◇

 タイムトラベルもののSFジャンルであろうが、単純に現代人が時間を遡り過去をいじってくるなんてちゃちな設定ではないのがキング。
 ディテール描写は詳細で、アメリカ人にとってはノスタルジーに浸るだけで感涙であろう時代設定。
 その世界で主人公がどう生きていくか……歴史を変えることの意味を考えながら悩み苦しむ主人公の生き方に、読者は歴史認識(ケネディ暗殺の事実)をすっかり忘れて共感してゆくだろう。

 タイムスリップの設定も面白い。その世界に何日、何ヶ月、何年も居ようと、一旦現代に戻ってくれば、それはたった2分間の出来事であり、過去の足跡は全てがリセットされる。この何度もやり直しが出来るという一見自由な約束事だが、実はこれが重要かつ厳しい足枷となる。

 J・F・ケネディ暗殺を阻止するために時間旅行する主人公の愛とサスペンスは、歴史を変えたあとには何が残されたのか……終章の思いがけない悲劇と、その後の展開に感動すること間違いない。
 超大作のキング特有の伏線の綾は、下巻のラスト・エピソードを読み終えたときに見事に集結され、長い、ながい読書の道のりの末に与えられるのは、涙と至福感………。
 まさか、こんなにも美しきラヴストーリーになっているとは……
 恐るべしキング帝王である。

     ◇

11/22/63(上)(下)/スティーヴン・キング
訳:白石 朗
【文藝春秋】
上巻:定価2,100円(税別)
下巻:定価2,100円(税別)

「チェイシング・リリー」マイクル・コナリー

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 『ハリー・ボッシュ・シリーズ』や『リンカーン弁護士シリーズ』が人気の、ハードボイルド作家マイクル・コナリーのシリーズ物ではない長編サスペンス。


 「リリーはいるか?」
 いきなり、ナノテクノロジーのベンチャー企業の科学技術者ヘンリー・ピアスの引っ越してきたばかりの新居に、間違い電話が次々とかかってくる場面からはじまる。一気に謎への渇望を抱かされる見事な導入部というほかない。
 腹を立てながらも、やはり気になる主人公と読者。リリーって誰なんだ?リリーってどんな女なんだ?
 調べてみると、リリーはアダルト・サイトを媒介にしている売春婦。黒髪にブラウンの瞳、スペインとイタリアの血が混じった美しい女性で、リリーへの連絡先電話番号がピアスの番号と同じだった。
 リリーに何かあったのではないか?

 ピアスが社長でもある企業では、革命的な発明による特許出願間近で、社運を賭けた出資者とのプレゼンテーションが週明けにあるというのに、彼はリリー探しに没頭してしまう。
 まずは、リリーが3Pを愉しむときのパートナーになるロビンという女に電話をして会いに行くのだが、やがて、自らに犯罪の嫌疑がかかり容疑者として追われるようになってしまう……。

 いかにリリーが美しても、たかが娼婦ひとりの行方。まさしく、妖しくアブナイ世界にわざわざ首をつっこんでいくピアスの行動にありえないと思い始めるころ、ピアスにとってリリーの行方を探すことが、彼の過去のある出来事に起因していると判明する。なるほど、巧いストーリー展開である。

 1本の間違い電話から、抜き差しならぬ泥沼にはまり込んでしまう男の話となると、巻き込まれ型サスペンスの典型。アルフレッド・ヒッチコックやブライアン・デ・パルマの映画への連想もできる。
 ブロンドで青い瞳のロビンの登場では、ヒロインではないにしろ偏執症的ヒッチコックの『鳥』('63)。あの映画では、ブロンドのティッピ・ヘドレンが生き残り、黒髪のスザンヌ・プレシェットは眼を烏にえぐられた。
 ロビンのキャラクターはデ・パルマの『ボディ・ダブル』('84)。まるっとメラニー・グリフィス(ティッピ・ヘドレンの娘)に果て嵌るじゃない。
 解説にも書かれているがリリーの題材は実在の『ブラック・ダリア』事件で、デ・パルマの映画『ブラック・ダリア』も連想してしまうのだが、リリーに偏ることなくもうひとつの物語として主人公のベンチャー企業の開発話が平行する。
 原題の『Chasing The Dime~ダイム(10セント硬貨)を追いかけろ』とは、主人公がスーパーコンピュ-タを10セント硬貨のサイズにまで小型化しようと開発を目指していることを指している。
 また〈Dime〉のスラングとして「10=パーフェクト=セクシーなほど完璧な美女」という意味合いがあるので、邦題で〈Dime〉を分かり易く〈リリー〉に変えたのも単に安易な変更ではないってことになる。

 窮地に追い込まれたピアスは打開策として科学者の論理のアプローチを活用する。この理論的推理で真相に迫るところがなかなか面白いし、大学時代の友人ハッカーとの会話に映画の台詞などを小道具に使うスタイルも洒落っ気がある。

    ◇

チェイシング・リリー/マイクル・コナリー
訳:古沢嘉通・三角和代
【ハヤカワ・ミステリ文庫】
定価 1,050円(税込)

「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン

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 2012年度の『このミステリがすごい!』『週刊文春ミステリーベスト10』『ミステリが読みたい!』で、海外部門第1位の3冠を獲得したミステリ。


 ポルノ小説や、SF小説、ヴァンパイア小説、ハードボイルド小説などをそれぞれ別名義で書いている三文小説家ハリー・ブロックは、ある日、12年前に4人の女性を惨殺した連続殺人鬼で死刑執行を3ヶ月後に控えているダリアン・クレイから、自分の告白本を書いてくれと依頼させる。
 世紀の殺人鬼の自叙伝なら一気に有名になれる。しかし、そのためにはひとつ条件があった。ダリアンを崇拝する女たちを取材して、ダリアンが読むために彼女たちを主人公にしたポルノ小説を書けというものだった。
 さて、ハリーが取材を続ける最中、その相手が次々と殺害される事件が勃発する。それも、殺人の手口が12年前のダイアンとまったく同じものだったことから、ダリアンが無実だった可能性が示めされてしまった。もし過去の事件がダリアンの手によるものでなかったら、いったい真犯人は誰? 
 FBIから容疑者として扱われるハリーは真実を追いはじめるが、今度はハリーが何者から命を狙われるようになる………。


 ミステリとして二転三転する展開は面白い。ハリーのビジネス・パートナーとなる女子高生クレアや、ダリアンの弁護人の助手テレサのキャラクターも魅力的で(特にクレア!!)好きになれる。

 前半は、ハリーを取り巻く女たち(クレア、テレサのほかに、被害者の双子の妹でストリッパーのダニエラ、元恋人のジェイン、そして女弁護士のフロスキー)の人間関係にかなりの頁を費やし、事件までなかなか進まない。
 その間、本作作中にはハリーが書くポルノ小説、SF小説、ヴァンパイア小説、ハードボイルド小説がチャプターとして挿入され、さらに著者の文学論芸術論なるものが記される趣向だ。それが本書のキモなんだろうが、冗長な記述は鬱陶しく感じることしばしば。
 著者のデイヴィッド・ゴードン自身の投影だというが、別名義で二流・三流な分野で小説を書き分けている有名作家はいっぱいいる。この自虐的な趣向は、ただの経験のひけらかしみたいで鼻についてしまった。
 もちろん無意味な作中作ではなく、最後の最後の場面にはある余韻をもたらしてはいるのだが、これでなくてはならないものでもないので、効果は薄い。
 
 まぁ、我慢して読みつづければ光も射すってもので、中盤の急展開から加速度をつけて物語が大きく動いていくあたりは読み応え充分で、後半はグロテスクに残虐なシーンが盛りだくさんの物語になる。

 そしてまさか、本作が上川隆也主演で映画化されるとは!
 でも映画の方が、監督と出演者の魅力で楽しめるのではないかな。6月15日の公開をかなり期待しているのである。

 翻訳版映画「二流小説家~シリアリスト~」の公式サイト

    ◇


二流小説家/デイヴィッド・ゴードン
訳:青木千鶴
【ハヤカワ・ミステリ文庫】
定価 1,050円(税込)

「ブルーマーダー」誉田哲也



あなた、ブルーマーダーを知ってる?
この街を牛耳っている、怪物のことよ

姫川玲子
常に彼女とともに捜査にあたっていた菊田和男
『インビジブルレイン』で玲子とコンビを組んだベテラン刑事・下井
そして、悪徳脱法刑事・ガンテツ

謎めいた連続殺人事件
殺意は、刑事たちにも牙をむきはじめる
超人気シリーズ、緊迫の新展開!   〈帯惹句より〉



 2012年1月から9月まで「小説宝石」で連載されていた姫川玲子シリーズの新作が早、単行本で刊行された。これは多分に、2013年1月26日公開の『ストロベリーナイト劇場版:インビジブルレイン』に照準を合わせたものだろうが、こんなに早い刊行は喜ばしいところだ。

 姫川玲子が『インビジブルレイン』の最後に迎えた大きな転機から1年。
 姫川班は解散され、所轄に移動になった玲子の管轄で、残忍な連続殺人事件が起こる。
 一方、菊田も脱走犯を追っていた。
 ベテラン刑事の下井は、彼のもとでSとして働き7年前に行方不明になった木野の行方を追っていた。
 裏社会のダニばかりを狙い打ちする殺人犯“ブルーマーダー”は、玲子と菊田と下井を結びつけ、やがて刑事たちにも牙をむきだした。
 果たして“ブルーマーダー”とは…………?

    ◇

 誉田作品は、小説世界が現実の時間と同じように進んでおり、そのほとんどのシリーズ作品の時間軸に整合性を持たせ展開している。

 『インビジブルレイン』での玲子と菊田の不本意な関係性が、本作ではクライマックスで大きな感動を生むようになっている。
 その流れ、素晴らしい展開に、思わず感嘆!
 相変わらずグロテスクな殺人シーンもますますエスカレートしており、それも含めて傑作である。

 第1章において、まったく予想だにしなかった記述に出くわす。プロット上必要ならば主要人物でさえ死亡させてしなう誉田哲也らしく、この展開にまず「やられた」なのである。

 竹内結子の連続ドラマ『ストロベリーナイト』でファンになったひとたちは、とりあえず映画『ストロベリーナイト:劇場版〈インビジブルレイン〉』を観てからか、『インビジブルレイン』を読んでからがいいだろう。
 そして、テレビドラマのシーズン2があるとするならば、シーズン1を裏切る展開にファンはどんな反応をするのだろうか。

ブルーマーダー/誉田哲也
【光文社】
定価 1,680円(税込み)

★Book Review「女の敵」★
★Book Review「感染遊戯」★
★Book Review「インビジブルレイン」★
★Book Review「ソウルケイジ&シンメトリー」★

静かに、深い闇、まほかる

宮部みゆきの『ソロモンの偽証』3部作を読み終えた

これだけの分量のものを読んだあとは しばらく燃え尽き症候群になっているので

つぎは短編集でも……と思い

おんな友だちに薦められた沼田まほかるの「痺れる」を読み始めた

ところが これは軽くいなせる代物ではなかった

淋しさが狂気になる瞬間 濃密な情景描写

ざわざわとしたおぞましさ 心の中を徘徊する妖しさ

この やばい読み物はクセになる


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林檎曼陀羅
レイピスト
ヤモリ
沼毛虫
テンガロンハット
TAKO
普通じゃない
クモキリソウ
エトワール


「ソロモンの偽証:第I部 事件」宮部みゆき



 遂に「ソロモンの偽証」が刊行された!
 全3部作で第II部は9月、第III部は10月に発売を分けた大長編である。

 早速購入、とにかく待ち遠しかった。
 どれだけのものかと云えば、『小説新潮』への初出が2002年10月号で、完結したのが2011年11月号……足掛け10年の大作、2000頁を超える小説なのである。
 基本的に、連載モノでも単行本になってから読む派なので、ここまでの道のり長かったぞ。
 1990年代半ばに刊行されていた書き下ろしシリーズ『新潮ミステリー倶楽部』での告知からはじまったのだから、構想だけでも長期に渡るのである。

 クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。
 中学校で起きた飛び降り事件の真相を、大人には任せられないと、中学生たちが自分で法廷を開き真実を求めてゆくストーリー。

 例によって人物相関図がいるほどの登場人物の多さ。相関図をコピーして栞代わりで、いざ………741頁の第一巻。S・キングの「アンダー・ザ・ドーム」以来の厚くて重い本を持ち歩き、楽しさを満喫致しやしょう。

    ◇

ソロモンの偽証〈第I部:事件〉/宮部みゆき
☆第II部:決意(9月21日発売)☆第III部:法廷(10月12日発売)
【新潮社】
定価各1,890円