TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「ボディ・ダブル」*ブライアン・デ・パルマ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。


BODY DOUBLE
監督:ブライアン・デ・パルマ
原案:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ、ロバート・J・アヴレック
撮影:スティーヴン・H・ブラム
音楽:ピノ・ドナッジオ
劇中歌:「リラックス」フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド
出演:クレイグ・ワッソン、グレッグ・ヘンリー、メラニー・グリフィス

☆☆☆★ 1984年/アメリカ/114分

 初見1985年2月。
 ヒッチコックの『裏窓』と『めまい』をモチーフにしたサスペンスは、デ・パルマ流を全開にしたエロティック満載のB級タッチの傑作に仕上がっている。
 相変わらずの長回し、俯瞰撮影、スローモーション、そして360度回転のカメラワークなど、〝映像の魔術師〟ヒッチコッキアンの独断場である。
 ミステリーとしての筋立てはかなり乱暴なものだが、これも、ある意味ファンタジー映画。観客も一緒に〝のぞき〟を愉しめばよし。


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「殺しのドレス」*ブライアン・デ・パルマ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1981_殺しのドレス
DRESSED TO KILL
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ
撮影:ラルフ・ボード
音楽:ピノ・ドナッジオ
出演:マイケル・ケイン、アンジー・ディッキンソン、ナンシー・アレン、キース・ゴードン、デニス・フランツ

☆☆☆★ 1980年/アメリカ/105分

 初見1981年4月。
 エロスとサスペンスを兼ね備えたブライアン・デ・パルマの代表作。
 スローモーションや長回し、俯瞰撮影など、あざといほどの視覚描写を堂々と振りかざす潔さこそ、〝映像の魔術師〟デ・パルマのヒッチコッキアンたる所以。
 ミステリーとして致命的な部分があるにせよ、これはある意味ファンタジー映画。ナンシー・アレンのシャワーシーンに魅了されながら、最後にぞっとする趣向を楽しもう。



「フューリー」*ブライアン・デ・パルマ

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

1978_フューリー
The FURY
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ジョン・ファリス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:カーク・ダクラス、ジョン・カサヴェテス、エイミー・アーヴィング

☆☆ 1978年/アメリカ/119分

 初見1978年10月。
 ブライアン・デ・パルマ監督は偉大なるB級作品監督であると思っているし、そのB級感を映像にこだわることで補っている姿勢が好きなのだが、この作品はデ・パルマ流こけおどしを見ることができても、映画的面白さは味わえなかった。『キャリー』につづいた超能力ものが災いしたかな……。
 この後の『殺しのドレス』『ミッドナイトクロス』で再びデ・パルマの感性を確認する。

「ファム・ファタール」*ブライアン・デ・パルマ

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FEMME FATALE
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ
編集:ビル・パンコウ
衣装:オリヴィエ・ベリオ
音楽:坂本龍一
出演:レベッカ・ローミン=ステイモス、アントニオ・バンデラス、ピーター・コヨーテ

☆☆☆☆ 2002年/アメリカ・フランス/115分

    ◇

 自分とそっくりな女性と入れ代わり新しい人生を歩もうとする女と、事件に巻き込まれ翻弄されるカメラマン。何が飛び出すのやら、驚きとトリックだらけのヒッチコック型サスペンスは、全編フランスを舞台にしたブライアン・デ・パルマ流フィルム・ノアールとなっている。


 舞台は華やかな各国のスターが入り交じるカンヌ国際映画祭。
 ロール・アッシュ(レベッカ・ローミン=ステイモス)は、ゲストの一人が身に付けている1,000万ドルの「蛇のビスチェ」の強奪に手を貸すが、相棒を裏切り「蛇のビスチェ」を持ってパリに高飛びする。パリで偶然に遭遇した自殺事件。その女が自分にそっくりなことでロールは女に成り代わりパリを発った。
 7年後、ロールはリリー・ワッツという名でアメリカ大使夫人に納まって、再びパリに戻って来た。そこで、元パパラッチのスペイン人の写真家ニコラス(アントニオ・バンデラス)が美しいロールに魅せられ、カメラを向けシャッターを押した。
 ロールの素性を探ろうとするニコラス。悪女の本性を表しニコラスに近づき誘惑するロール。だが、そこには驚きの運命がロールを待ち受けていた……。

    ◇

 ファム・ファタールものの古典的名作『深夜の告白』('44/ビリー・ワイルダー)のクライマックス・シーンがオープニングに映し出され、多分に、ここからデ・パルマ流の遊びが始まっていく。

 冒頭の15分間、本物のカンヌ国際映画祭会期中のレッドカーペットで撮影された強奪シーンは、流麗なカメラワークと、坂本龍一の音楽のパッキングが緊張感を高め、ゆったりと流れる“ボレロ”に昂揚することは間違いない。
 そして、本編の半分あたりでは、堂々とトリックを解く鍵が映される大胆さである。

 ヒロインとなるロールが平然と仲間を裏切り、身を隠し、出し抜く悪女ぶりと、幾度となく映されるフォト・コラージュや小さなトリックが仕掛けられ、その幾重にも張られた伏線が、ジグソーパズルの最後のワンピースの如く嵌ったところで、完全ノックアウトされる。
 使い古されたトリックも、これがデ・パルマ流儀。デ・パルマの仕掛けた罠は、掛かった後から効いてくるから堪らない。

 公開当時、評価は真っ二つだった。確かに“映画の夢”が醒めた観客からは「そりゃあ、ないよ」と怒る人もいた。醒めない“夢”を抱えたまま、今でも醒めてはいないのは、ヒッチコックの映画同様に“女優”と“トリック”にハマる快感が楽しいからだ。
 スプリットスクリーン(分割画面)やスローモーション、俯瞰カメラの多用など、デ・パルマ的緊張感に満ちた華麗なビジュアルで、映画芸術の粋を堪能しよう。
 デ・パルマ流儀「映画は遊び」は、映画でないとできない、映像のマジックなのだから。


「ブラック・ダリア」

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THE BLACK DAHLIA
監督:ブライアン・デ・パルマ
原作:ジェイムズ・エルロイ
脚色:ジョシュ・フリードマン
出演:ジョシュ・ハートネット、スカーレト・ヨハンソン、アーロン・エッカート、ヒラリー・スワンク、ミア・カーシュナー、ジョン・ガバナー、フィオナ・ショウ、ビル・フィンレイ

☆☆☆☆  2006年/アメリカ/121分

    ◇

 最高のヴィジュアリスト、ブライアン・デ・パルマ監督が描く極上のフィルム・ノワールである。

 原作はジェイムズ・エルロイの、1940~50年代のL.Aの暗黒部を描いた『LA四部作』の第1作目。1997年の映画賞を総なめし、キム・ベイシンガーの妖艶さで魅了された『LA コンフィデンシャル』はこのエルロイの『LA四部作』の3作目だった。

 1947年のロサンゼルスを震撼させた実際の迷宮入り猟奇殺人事件を下敷きに、エルロイが書き上げたこの犯罪小説は、まさにデ・パルマのために用意されたような素材だ。

 アメリカで一番有名な死体の名前はエリザベス・ショート。女優を夢見ながら、田舎からハリウッドへ出てきた黒髪の美人。しかし、ハリウッドではひと山いくらの存在でしかなく、安バーで男漁りをし、サンセット大通りを黒服で歩きまわる彼女を指して、当時の映画"THE BLUE DAHLIA"から『ブラック・ダリア』と呼ばれていた。

 発見された全裸の死体は、腰から胴を真っ二つに切断され、内蔵を取られ、血液はきれいに洗い清められており、顔は口から耳にかけて切り裂かれていた。

 デ・パルマ監督の70~80年代の作品『愛のメモリー』や『悪魔のシスター』『殺しのドレス』に通じるような、いわゆるタブロイド紙が競い合うゴシップネタに満ちた犯罪だ。
 映画はミステリーの形式をとりながら、決してミステリーだけに終始しているのではなく、特異な死体を介して、その周りにいる魑魅魍魎な人間たち、性と狂気に魅了された人間たちの暗い闇を浮かび上がらせている。
 セピア調の色彩とギミックな映像は、まさにデ・パルマらしい香りに満ちている。

    ☆    ☆

 ミスター・アイスことバッキー・ブライカート刑事と、ミスター・ファイア=リー・ブランチャード刑事はともにボクシングのリングで闘った間柄。バッキーがリーを恩人と慕う要因や、リーの恋人ケイ・レイクとの三角関係が、映画の前半三分の一を使って語られなかなか事件が起こらないのだが、ここでいろんな伏線が張られているから要注意だ。

 ケイ役のスカーレト・ヨハンソンが素晴らしく美しい。バッキーとの恋愛模様もスリリングで魅惑的だ。

 後半、『ブラック・ダリア』に魅せられたリーを含め、エリザベスに関係した人物が次々と登場する中で、エリザベスにそっくりな大富豪の娘マデリンの存在がバッキーをも狂わせていくことになる。
 このマデリン役のヒラリー・スワンクが、『ミリオンダラー・ベイビー』とはうって変わって妖しい魅力を振りまいている。

 そして、40年代のハードボイルドな雰囲気も魅力的だ。
 紫煙漂わせるダンディな男たちと、眩しいくらいの赤いルージュで官能を振りまく女たち。
 バッキーが聞き込みに行くレズビアン・クラブのなんと退廃的なことか。ここでは、実生活でもレズビアンを公言している歌手のkd.ラングが、颯爽と『Love for Sale』を披露している。

    ☆    ☆

 デ・パルマお得意の流麗なカメラワークは冒頭からも見ることはできるが、ピークを迎えるのが、ふたりの刑事がある事件の張り込みをしているところから始まる。
 2羽の鴉の不気味な鳴き声を合図に、カメラはまるで神の目線であるかのように天空高く昇り、エリザベスの死体発見者の悲鳴をフレームの隅に収めながら、バッキーとリーの張り込み現場に舞い降りてくるまでの長廻しは実に見事だ。

 そして後半のクライマックスであるスローモーション・シーンと、『キャリー』を彷彿とさせるラストのショック・シーンでのデ・パルマらしさに、ゾクゾクさせられた。

    ☆    ☆

 エリザベス・ショートが生きているシーンは、ポルノ映画とカメラテストのフィルムの中だけ。この手法が、回想以上にエリザベスの存在を際立たせている。カメラテストの監督の声はデ・パルマ自身。そして、このエリザベスを演じているミア・カーシュナーは、テレビシリーズ『24〈Twenty Four〉』のseason 1・2・4で女テロリストのマンデーを演じている。