TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「マルタイの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1997_マルタイの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
企画協力:三谷幸喜
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、西村雅彦、村田雄浩、近藤芳正、高橋和也、江守徹、津川雅彦、宝田明、益岡徹、六平直政、不破万作、伊集院光、仲谷昇

☆☆☆ 1997年/東宝/131分

 初見1997年9月。

 「マルタイ」とは警護対象者のこと。
 『ミンボーの女』での襲撃事件と『大病人』での劇場スクリーン切り事件などに伴い、実際に伊丹十三が警察の警護を受けていた経験をヒントにした伊丹映画初の刑事ドラマ(殺人事件が起きるという意味において)で、事件の裏に宗教団体が登場することでオウム宗教事件を想起させるものでもある。
 
 伊丹十三はこれまで常に、映画における社会への影響力を考えつづけてきたであろう。
 10作目となる本作も、たしかに「マルサの女」と比較すればパワー不足とは云え、社会性の強い企画であればあるこそ綿密な取材を敢行し、そしてそれを、きちんとエンターテインメントに仕上げる作家としての力量を見せつけてくれていた。

 映画作家であった伊丹十三が残しておきたいと思ったものは何だったのか…… 
 こんなシーンがある。
 ヒロインのスキャンダルで脅しをかける宗教団体に対し、刺客を送り込まれた不倫相手(津川雅彦)が喋る。
 「年寄りには2種類の人間がいる。いつまでも生きたい年寄りと、いつ死んでもいい年寄りだ」
 「人生は、中途半端だ。道端のドブのようなところで、突然終わるもんだ」
 そして刺客たちを次から次に射殺し、自らを撃つ。
 
 自死の良し悪しではなく「いつ死んでもいい」生き方の伊丹十三が、何に対して怒りのマグマを煮えたぎらせていたのだろうか。
 この作品が伊丹十三の遺作となった。


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「スーパーの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1996_スーパーの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、津川雅彦、伊東四朗、金田龍之介、六平直政、高橋長英、渡辺正行、三宅裕司、あき竹城、松本明子、原日出子、伊集院光、野際陽子、佐藤蛾次郎、ヨネスケ、不破万作

☆☆☆ 1996年/東宝/127分

 初見1996年6月。

 激安店に押され経営不振になったスーパーマーケットを改革する一介の主婦の奮闘記で、激安商品のトリックを暴きながらダメなスーパーが立ち直ってゆくサクセスストーリーは、ただただ爆笑の連続となるドタバタコメディ。 
 身近なスーパーマーケットを舞台に、業界裏話として「良いスーパー」「悪いスーパー」の見分け方指南は、少し利口になったような気分になり楽しめる。
 映画としてのスマートさはないが、後に大きな社会事件にもなった食品偽装・表示改ざん・リパックのトリックなど、伊丹十三の先見の明が光る作品である。


「静かな生活」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1995_静かな生活
監督:伊丹十三
原作:大江健三郎
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:大江光
出演:佐伯日菜子、渡部篤郎、山崎努、柴田美保子、今井雅之、緒川たまき、岡村喬生

☆☆ 1995年/東宝/121分

 初見1995年10月。

 伊丹十三の級友であり義弟となる大江健三郎の私小説を原作に、作家家族の長女と障害をもった兄とのひと夏の日常を描いたもの。
 伊丹十三としては娯楽作品ではなく、映画作家としての良心で「障害者のいる家族」を世に問いたかったのだろうが、正直言って後味が悪く好きな作品ではない。
 未だに本作による今井雅之の最低男のイメージが消えないし、緒川たまきに官能させられるのでは鑑賞能力の稚拙さも判るってものか………。

「大病人」*伊丹十三監督作品

1993_大病人_pf

監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:三國連太郎、津川雅彦、木内みどり、高瀬春奈、宮本信子、熊谷真美、田中明夫、三谷昇、高橋長英、左時枝、渡辺哲、村田雄浩、清水よし子、南美希子、櫻井淳子

☆☆☆★ 1993年/東宝/116分


 初見1993年6月。

 暴力団に襲われ全治三ヶ月の重傷を負った伊丹十三が、事件が生々しいままに撮りあげた監督作品第7作目のテーマは「死」。
 大病人と医者と看護婦と妻と愛人の人間模様を巧みなユーモアで編み込み「死生観」を描いたが、興業的にはヒットしなかった。

 病院を舞台にするコメディなら「病院へ行こう」とか「ガンと闘う○○の方法」とか、もっと前向きな言葉でテンションを上げるタイトルを付けるだろうに、伊丹十三は「大病人」の「大=大病=癌」という負のアイコンでデリケートなテーマに堂々と切り込んできた。
 本作が製作された頃はまだ「本人への癌の告知」は一般的ではなかった。この映画は「人間にとって理想的な死に方」「人間の尊厳とは何か」を、往生際の悪いエロおやじを主人公にして語るところが実に生々しく面白いのである。
 実際に誰もが往生際を良くするなんて難題だが、「死」を見つめることで「生」を感じる実感はよく理解できる。

 三國連太郎の子供みたいにダメ男ぶりの熱演。
 臨死体験のシーンは、当時日本映画初のデジタル・エレクトリック・オプティカル・システムによる合成画像。三國連太郎が異次元を飛び廻るが、ここは、新しもの好きの伊丹十三が4分間遊んでしまったってこと。

 裸になることを拒みランジェリーのままでラヴシーンを演じた愛人・高瀬春奈は十分に「性」の官能が豊かだったし、自転車に乗った溌剌とした美少女・櫻井淳子の姿は、まさしく美しいものに「生」を感じさせる素晴らしいシーンだ。

 

「ミンボーの女」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1992_ミンボーの女
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、宝田明、伊東四朗、中尾彬、村田雄浩、小松方正、津川雅彦、大滝秀治、結城美栄子、柳葉敏郎、田中明夫、関山耕司、六平直政、不破万作、上田耕一、渡辺哲、矢崎滋、関弘子

☆☆☆★ 1992年/東宝/123分

 初見1992年5月。

 「ミンボー」とは〝民事介入暴力〟の略語。高級ホテルを舞台に、暴力団に立ち向かう女弁護士とホテルマンたちの奮闘を描いた伊丹流How To映画で、一般市民とヤクザ、企業と暴力団、「善と「悪」との闘いをどこまでもエンターテインメントに仕上げている。

 宮本信子の「女」シリーズではあっても、主役は彼女ではなく暴力団と闘う民間人たち。
 伊丹作品の楽しみは適材適所のキャスティングでもあり、今回はやはり〝ヤクザ顔〟。伊東四朗、小松方正、中尾彬、田中明夫など役者映えするそうそうたる強面をさらにカリカチュアしている。
 まぁ反対に、そういった型にはまったお約束事に満腹感を覚えはじめたりするのも事実ではあるが……。

 さて、映画公開2ヶ月前に「暴力団対処法」なるものが施工され、映画は見事に大ヒットするのだが、五社英雄が「やられるかもしれないよ」と危惧したとおりに、伊丹監督が本物の暴力団に襲撃される事件が起きてしまったのは残念至極であり、怒りを覚える事柄として記憶される映画となった。 



「あげまん」*伊丹十三監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1990_あげまん
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:山崎善弘
音楽:本田俊之
出演:宮本信子、津川雅彦、大滝秀治、北村和夫、宝田明、金田龍之介、島田正吾

☆☆☆ 1990年/東宝/118分

 初見1990年6月。

 「可愛い男」と「可愛い女」の稚拙な恋愛物語は、当時、本作の前に観た黒澤明の『夢』よりは気分が上がったが、「あげまん=男に都合のいい女」にしか見えないヒロインには気分が下がる。
 インパクトあるタイトルはいかにも伊丹十三。「マルサ」が国税局の隠語だったように、この「あげまん」も花街での隠語。普通の人間が知ることもなかろう言葉で人を釣る、伊丹流呼び込みである。




「スウィートホーム」*伊丹十三製作総指揮

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1989_スウィートホーム
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
撮影:前田米造
音楽:松浦雅也
出演:宮本信子、山城新伍、NOKKO(レベッカ)、古館伊知郎、黒田福美、益岡徹、伊丹十三

☆☆☆ 1989年/東宝/102分

 初見1989年1月。

 「エクソシスト」で名を馳せた特殊メイクの巨人ディック・スミスがSFXを総指揮し、日本での特殊メイク第一人者の江川悦子の名前が邦画界に知れ渡ったホラー映画。

 監督は黒沢清。伊丹十三に自主映画の資金援助を仰いだ監督に「メジャーの舞台で撮りなさい」と伊丹十三が全面バックアップを買って出た作品で、伊丹十三は製作総指揮と出演を兼ねている。
 しかし映画製作は順調にはいかない。完成間際に伊丹十三と黒沢清監督の間で演出上のトラブルが起き、完成作品は黒沢監督の意向とは違うかたちで公開された曰くがある。
 後に、ビデオ販売に伴い著作権を巡る裁判沙汰にまで及んでおり、黒沢監督が敗訴している。そのためなのか、DVD化される見込みはない不遇の作品となっている。

 またこの作品は、日本映画において本格的ホラー映画の誕生と宣伝されていたのだが、実は、本作公開の前に池田敏春監督と石井隆脚本で『死霊の罠』と題した傑作ホラー映画が作られている。この『死霊の罠』こそ、B級度に吹り切れた低俗性ある日本初の本格スプラッターホラー映画だと云える。

1988shiryonowana:dvd

 低予算映画の最たるものだが、TVクルーが事件に巻き込まれるといった設定自体に似たものもあり『スウィートホーム』より『死霊の罠』を賞賛するホラーファンは多いと思う。因みにヒロインはお馴染みの名美であり、小野みゆきが演じている。
 また後年池田敏春がTwitterにて、この『死霊の罠』はスーパー16という安価な撮影方式だったためオリジナル・フィルムは既にジャンクされてしまい、唯一アメリカに1本だけ残っているらしいと言及。そのため、2000年に発売されたDVDはビデオからのネガ起こしであり、アメリカ版の方が綺麗な画像らしい。こちらも不憫な作品である。