TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「極秘捜査」*クァク・キョンテク


THE CLASSIFIED FILE
監督:クァク・キョンテク
脚本:クァク・キョンテク、ハン・デドゥク
出演:キム・ユンソク、ユ・ヘジン、ソン・ヨンチャン

☆☆☆ 2015年/韓国/108分

    ◇

 映画の題材は1978年に実際に起こった少女誘拐事件で、四柱推命を使って誘拐された子どもを見つけた刑事と導師の33日間を描いた実録犯罪映画。


 釜山で小学生の女の子ウンジュが下校時に誘拐された。
 女の子の同級生の息子を持つコン刑事(キム・ユンソク)は、ウンジュの両親の懇願で管轄外の事件にも関わらず捜査担当になり、子どもの保護を第一に考え、所轄の刑事と合同で極秘捜査を行う。
 一方、ウンジュの母親と義妹は有名な占い師たちを尋ね歩き、ウンジュの生死を占って回るが、どれも絶望的な回答を聞くばかりだった。そんななか、最後に訪れたキム導師(ユ・ヘジン)だけが「子どもは生きている。犯人からの連絡がくる」と占う。
 胡散臭く感じていたコン刑事だが、キム導師の占い通りに15日目に犯人から連絡があり、ウンジュが生きていることを確信する。
 しかしコン刑事を気に入らない所轄の刑事らは、子どもの生死より犯人検挙に血眼になり、協力するどころか邪魔ばかりで1ヶ月を過ぎようとしていた。
 コン刑事とキム導師のふたりは、子どもの命を優先に考え行動に出る……

    ◇

 人望のない刑事と風采の上がらない導師(占い師)のコンビなんて、それこそ小説やマンガの話で盛り上がれるだろうが、これが実話だということに驚く。
 70年代の韓国においては、導師という職業に社会的地位があったのだろうが、日本人としてはこの辺りよく判らない。

 また、警察が人質安否より手柄優先だったり、賄賂を受け取るのが普通だったと、警察のいい加減な姿がよく描かれている。
 
 この作品はサスペンスというより、コン刑事と導師と誘拐された家族3組の、子どもを思う親の心情を描いた映画と見る方がいいだろう。
 いい意味で、誘拐されたこどもの安否や身代金受け渡しなど、タイムリミット的な緊張感はない。
 捜査途中でキム導師が「犯人には共犯がいる」と占うも、結果、捕まる犯人はひとりだけで、それも、動機や方法がどうもよく判らない。

 事件解決後、コン刑事とキム導師ふたりの手柄は、所轄チームと占いを外したキム導師の師匠が持っていってしまう現実。
 しかし、それを受けいれるコン刑事とキム導師の晴れやかな表情も、また現実の話ってこと。
 おまけのインサートで、半年後にまたウンジュが誘拐され、今度はコン刑事とキム導師が4日間で事件を解決したと字幕が出る。キム導師の占いどおりに共犯者がいたらしいが、現実はかくも驚くものだ。

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「インサイダーズ~内部者たち」*ウ・ミンホ


INSIDE MEN
監督:ウ・ミンホ
脚本:ウ・ミンホ
出演:イ・ビョンホン、チョ・スンウ、ペク・ユンシク、イ・ギョンヨン、イ・エル

☆☆☆★ 2015年/韓国/130分

    ◇

 韓国におけるR18指定映画として、観客動員数歴代ナンバーワンを記録した社会派ドラマで、ゴロツキと検事が手を組み巨大な権力に立ち向かうサスペンス・ムービー。


 身なりのいいスーツに身を包んだ義手の男アン・サング(イ・ビョンホン)が、記者会見場に高級車で乗り付け、与党の次期大統領候補チャン・ピル(イ・ギョンヨン)と、財閥企業ミライ自動車の会長との癒着を示す証拠書類を、検察に提出すると発表するところから映画ははじまる。

 もともと芸能事務所を経営していたサングは、政界と財閥の仲介をする黒幕「祖国日報」主幹ガンヒ(ペク・ユンシク)を兄貴と慕い、裏で女の斡旋や脅迫など汚れ仕事を請け負っていた。
 ある日、ミライ自動車がチャンに裏金を贈っていた証拠となるファイルを手に入れたサングは、それをネタにミライ自動車を脅し、さらなる成功を手に入れようと企てるのだが、失敗し腕を切り落とされる。
 一方、裏金の証拠を追っていた検事のウ・ジャンフン(チョ・スンウ)は、証拠ファイルをサングに奪われた責任を負わされ左遷させられる。

 正義を貫こうとするジャンフンは、復讐を伺うサングに一発逆転の計画を持ちかけ、財界・政界・メディアを取り巻く一大スキャンダルを暴こうとするが……。

    ◇

 ゴロツキと検事と策士の3人の男たちが仕掛ける命を賭けた騙し合いは、二転三転とコン・ゲームの様相を孕み、例によって韓国映画ならではの暴力と残酷シーン、そして、ばかばかしいほどのエロ・シーンを合間に挿みながら、痛快に進行する。見応えは十分。

 イ・ビョンホンのハードなワルぶりと三枚目的な演技も面白いし、ペク・ユンシクの静かな佇まいが不気味さを醸し出している。

 「モルディヴでモヒートでも飲みましょ」
 男ばかりの映画なので出番があまりないが、サングの芸能事務所の元女優ウネ役のイ・エルが、クールにファム・ファタルぶっていて、いい。

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 エンタメ的にデフォルメされたお話しながら、実際にいまだ韓国の政治腐敗がニュースになっている現状では、この映画のような汚職の構造や性接待などが、リアリティある存在として韓国の観客に受け入れられたのだろうな。

 〝♪五月雨のなか 去って行ったひと~〟
 イ・ビョンホンが運転する車のなかで、哀愁を帯びて流れる桂銀淑似の歌声……誰の、何て曲なんだろう、気なった。
 

「007 スペクター」*サム・メンデス

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007 SPECTRE
監督:サム・メンデス
脚本:ジョン・ローガン
音楽:トーマス・ニューマン
主題歌:「Writing's On The Wall」サム・スミス
出演:ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥ、モニカ・ベルッチ、デイヴ・バウティス、アンドリュー・スコット、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ベン・ウィショー、ジュディ・デンチ

☆☆☆★ 2015年/イギリス/148分

    ◇

 『007カジノ・ロワイヤル』『007 慰めの報酬』『007 スカイフォール』とつづいたダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの4作目。
 一話完結だったそれまでの007とは一線を画した連作ストーリーは、ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドが“シリアスな007”になっていたにも関わらず、これまで以上に不死身なボンドとなると、まるで『ミッション:インポッシブル』シリーズかと見間違うのはご愛嬌として、荒唐無稽のなかに味わいあるボンド・ストリーに仕上がり、スケールも壮大なものになっている。

 『007カジノ・ロワイヤル』で殺しの称号《00》のセクションに配属され、そこで愛する女性ヴェスパーを失い、『007 慰めの報酬』ではヴェスパーを操っていたミスター・ホワイトの組織がMI6に要員を送り込んでいたのが明るみに出る。
 『007 スカイフォール』では、元MI6のエージェントが敵となり死闘のあげくボンドの上司Mを死なせる結果となった。
 そして、このすべての物語の背後に宿敵「スペクター」の存在があった……という、MI6の存続とスペクターの組織をリンクさせる4部作の完結編。

 冒頭、メキシコ・シティの“死者の日”パレードに逆行して歩行するボンドが、ビルの屋上から敵を狙い撃つまでの流れが素晴らしく、そのあとのヘリコプター・アクションの想像以上の興奮も重なり、一気に“ダニエル”ボンドの世界に惹き込まれること必至。

 列車アクション、雪山アクション、強敵な用心棒など、シリーズにオマージュを捧げたシーンが、これでもかとてんこ盛り……そしてもうひとつ往年のファンには嬉しいのが、スペクターのNo,1:エルンスト・スタヴィロ・ブロフェルドの衣装がスタンドカラーだったり、愛猫の白いペルシャ猫が出てくるところ。
 ブロフェルドの顔が最初にスクリーンに登場した『007は二度死ぬ』では、ドナルド・プリーゼンスがスキンヘッドで右目に大きな傷のある姿で印象付けたが(以後、何人もの俳優がブロフェルドを演じたが顔の傷はなかった)、今回は、最後にあの傷痕が生々しく付けられ、オマージュとしてのブロフェルドが完成している。

 そして凝っているがブロフェルドの正体…。おいおい私怨かよ、とツッ込みも入れたくなるが、今回のボンドの行動も私情から始まってるのだからお互い様。それに、SPECTREが「亡霊」という意味だけに、妙に納得させられるところもありだ。

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「薄氷の殺人」*ディアオ・イーナン


白日焔火/ BLACK COAL,THIN ICE
監督:ディアオ・イーナン
脚本:ディアオ・イーナン
撮影:トン・ジンソン
音楽:ウェン・ジー
出演:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン

☆☆☆★ 2014年/中国・香港/106分

    ◇

 第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞(最優秀作品賞)と銀熊賞(最優秀男優賞)の二冠に輝いたクライム・ムーヴィーは、ファム・ファタールが登場するフィルム・ノワールの傑作。

 1999年。中国・華北地方の各都市の石炭工場で見つかったバラバラ死体。身分証からリアンという男の名前が判明。妻と離婚したばかりのジャン刑事(リャオ・ファン)は、容疑者となる兄弟の事情聴取中に抵抗にあい、仲間が殉職。ジャンはふたりを射殺し、事件の真相は闇の中に葬られてしまう。
 2004年。警察を辞め警備員として暮らすジャンは酒浸りの日々を送っていた。ある日、再び5年前と同じようなバラバラ殺人事件が起きる。
 かつての刑事仲間から、被害者はいずれも5年前の被害者リアンの妻ウー(グイ・ルンメイ)と親密な関係があったと聞かされ、ジャンは独自の捜査に乗り出すのだが、ジャンもまた若く美しいウーに惹かれてゆく。
 やがて、隠された事実が徐々に明かされてゆくのだが……。

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 キャロル・リードの『第三の男』やオーソン・ウェルズの『黒い罠』など、名だたるフィルム・ノワールを参考にしたと云うとおり、全体に流れるトーンは欧米のハードボイルド映画の香り。

 台詞は極力削られ、男と女の虚無感が夜気に溶け込み、吐く息が白く流れる冷え冷えとした街の空気に男女の情感がもがき苦しむ。雪とネオンと暗闇に虚実が並ぶ様は、多彩なカメラワークで捉えられる観覧車や屋外スケートリンクやトンネルなどに乗り移り、そのビジュアル効果も秀逸。
 中国の冬の地方都市が、どこか幻想的にヨーロッパの裏街に見え、美しい。

 ヒロインのグイ・ルンメイは、ゆらゆらと漂う女の闇と不気味さが光り輝いてみえる絶世のファム・ファタール。薄幸の美しさにも息を呑む。

 目覚ましく経済発展する中国の大都市とは違って、時代に大きく呑み込まれる地方都市の荒涼とした風景に、格差社会の現実が重ねられる。
 夜の郊外のスケートリンクや、暗闇に浮かぶ観覧車とナイトクラブ、ダンスホールの賑やかな音楽などに街の浮かれぶりが象徴され、貧しくはないが幸福感のない都市の殺伐さが伝わってくる。

 中国語の原題『白日焔火』は“真昼の花火”を意味する。白昼の花火ほど虚しいものはなく、ラストに打ち上げられる花火には、取り残されている者の荒廃とした想いが宿っているのであろう。




「誘拐の掟」*スコット・フランク

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A WALK AMONG THE TOMBSTONES
監督:スコット・フランク
原作:ローレンス・ブロック
脚本:スコット・フランク
撮影:ミハイ・マライメアJr.
衣装:ベッツィ・ハイマン
出演:リーアム・ニーソン、ダン・スティーヴンス、ボイド・ホルブルック、ブライアン“アストロ”ブラッドリー、ダニエル・ローズ・ラッセル

☆☆☆☆ 2014年/アメリカ/114分

    ◇

 原作は、ニューヨーク派ハードボイルド作家ローレンス・ブロックの「獣たちの墓」。彼の代表作で無免許の私立探偵〝マット・スカダー〟シリーズの10作目。
 90年代初頭に上梓された「獣たちの墓」は、人間の心を持たない快楽殺人者たちとの対決を描いた「墓場への切符」「倒錯の舞踏」につづく“倒錯三部作”の最終篇でもある。

 映画はほぼ原作通りに描かれている。もちろん本編をタイトにするために、シリーズ・キャラクターの高級娼婦でスカダーの恋人エレインや、交流のある凶悪犯罪者ミック・バルーなどの存在はオミットされ、ラストも少し意外なものに変更されてはいるが、かなりハードボイルドな作品に仕上がっており、原作ファンとして大いに満足できた。

 映画の冒頭約10分間に、スカダーがしがない私立探偵を生業にする前の過去が描かれる。

 1991年、NY。ある夏の日、非番だったNY市警の警官マット・スカダーは、ワシントン・ハイツにある酒場で飲んでいた時、二人組の強盗が押し入りバーテンダーを射殺。スカダーは強盗を追いかけ一人を射殺、もうひとりの太腿に銃弾を浴びせる。

 そして時は一気に流れ、1999年。
 麻薬ディーラーのケニー(ダン・スティーヴンス)の妻が誘拐され、身代金40万ドルを払ったにもかかわらず、妻は無慈悲な犯人によってバラバラに切断されて帰って来た。
 無免許の私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)は、ケニーの兄でAA(アルコール依存症自主治療協会)の会の仲間のピーター(ボイド・ホルブルック)から相談を持ち掛けられ、犯人の行方を捜すよう依頼される。ケニーの目的が復讐であり、犯人が判明すれば彼の手で処刑されるだろうと推測されるが、スカダーはケニーの依頼を請け負った。犯人は残忍で狡猾、交渉不可能な猟奇殺人鬼なのだ。

 スカダーの行動原理は「人を殺して、その罪を免れることは絶対にゆるされない」という倫理観。孤独と絶望の淵を綱渡りしているスカダーの生き方は、プロローグにあった事件のつづきとして、シリーズ・キャラクターのTJ(ブライアン“アストロ”ブラッドリ)との会話で説明されていく。
 8年前の強盗事件で、発砲したときに跳弾した一発が、たまたま路上にいた少女の眼を貫通し死なせてしまった。事件としての過失はなく、警官として表彰もされたが、スカダーは警官を辞め、その日からスカダーは重い十字架を背負い生きている。

 妻を惨殺されたケニーのモラルと、倫理観を守り通してきたスカダーの正義。何が正しく、何が正義なのか自問しながら己と闘うスカダー。
 そしてまた、新たに誘拐事件が起きる。

 被害者はケニーと同じ麻薬ディーラーの14歳になる一人娘。
 スカダーは交渉役を引き受け、狡猾で残忍な犯人と危険な駆け引きをしながら犯人を追いつめるが……。

    ◇

 日本でも人気の高い〝マット・スカダー〟シリーズだが、これまでに映画化されたものは、ハル・アシュビー監督最後の劇場映画となった『800万の死にざま』(原作「八百万の死にざま」)が1986年に公開されたきり。マット・スカダー役はジェフ・ブリッジスが演じ、酔いどれ探偵には相応しいキャスティングではあったのだが、脚本のオリバー・ストーンがドラマの舞台をニューヨークからロサンゼルスに変更したことで、原作のムードは台無しであった。

 監督で脚本家のスコット・フランクが、この〝マット・スカダー〟の映像化にとりかかったのは15年近くも前だ。1998年頃に最初の映画化の話が流れ、2002年に日本で上梓された「死への祈り」の単行本のあとがきでは、訳者の田口俊樹氏の言葉で2003年にクランクインすること、また、その時のマット・スカダー役はハリソン・フォードだったとも記されていた。愉しみにしていたのだが、映画の企画は水もの…いつの間にか立ち消え、それから紆余曲折があったのだろうが、こうしてリーアム・ニーソンにキャスティングされ、原作のテイストをそのままに、練りに練られたシナリオとなって陽の目を見るまでに、長い年月待ったことになる。
 
 舞台の設定を原作から少しずらした1999年にしたとは云え、ほぼ原作を忠実に映像化している。2000年以降の現代では通用しないストーリー展開なのだから、細かなディテールに作品の良さが凝縮されている点が嬉しい。

 もちろん、原作ファンを十分に納得させるだけのマット・スカダー像が一番大事なわけで、その点、リーアム・ニーソンは申し分ない。
 このところスーパーヒーローを演じてきたリーアム・ニーソンだが、ここでは地味すぎるほど渋い。人間臭く〝罪と罰〟となる過去を引きずる悩める男を、深みのある演技でキメてくれる。

 また、リーアム・ニーソン以外の配役が、あまり馴染みのない俳優たちなので、ニューヨークの日常をリアルに感じられるのも魅力だ。

 スカダーとシリーズ・キャラクターのTJとの会話は原作でもユニークで読みどころだが、本作でもフィリップ・マーロウやサム・スペードの話を劇中に入れ、ハードボイルドへの意識を高めている。
 こうなれば、リーアム・ニーソンのシリーズとしてあと2~3作は観たいところだ。



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「監視者たち」*チョ・ウィソク


COLD EYES
監督:チョ・ウィソク、キム・ビョンソ
脚本:チョ・ウィソク
音楽:タル・パラン、チャン・ヨンギュ
出演:ソル・ギョング、チョン・ウソン、ハン・ヒョジュ、イ・ジュノ、チン・ギョン、キム・ビョンオク、サイモン・ヤム(カメオ出演)

☆☆☆ 2013年/韓国/118分

    ◇

 ジョニー・トーが製作した『天使の眼、野獣の街』(’07/香港)の韓国版リメイクで、凶悪犯の行動監視を専門とする警察チームと犯罪グループとの息詰る攻防を描いたクライム・サスペンス。


 卓越した記憶力と鋭い洞察力を持つ新人女性刑事ハ・ユンジュ(ハン・ヒョジュ)は、厳しいテストを見事にパスして、韓国警察特殊犯罪課(SCU)内で凶悪犯の行動監視を専門とする〝監視班〟に配属される。直属の上司は動物的な直感と本能で犯罪を追うファン班長(ソル・ギョング)。
 荒っぽく無茶な要求も多いが人情味に溢れたベテラン班長のもとには、コードネーム〝リス〟(イ・ジュノ)〝毒蛇〟〝モグラ〟などと呼ばれユンジュと同じ能力を持ったメンバーが集まっていた。そんな中、コードネームを〝子鹿〟と希望したユンジュだったが、仲間たちからは〝子ブタ〟と呼ばれる始末。
 おりしも街では、武装集団による強盗事件が発生する。
 徹底した計画のもと、わずか3分のうちに事を終え、1秒の誤差も許さない冷徹な犯罪集団のリーダー、ジェームズ(チョン・ウソン)。顔を見せず、手掛かりも残さないジェームズは、抜群の頭脳と高度な戦略で監視班の追跡を毎度くぐり抜けてしまう。
 ユンジュは、ジェームズの追跡捜査を通して徐々に監視班との絆を深めてゆき、あらゆる記憶を呼び起こしながらジェームズの完全犯罪に立ち向かっていくが…。

    ◇

 単純なストーリーで、エンターテインメント性にあふれ、理屈抜きに面白い。

 街に溶け込み、地道に張り込み、己が目で見たものの記憶だけを頼りにターゲットに近づいていく監視者たちの世界が描かれるのだが、そこは韓国映画らしい外連とダイナミックなアクション、スピーディでスリリングな展開で目を離させない。
 オープニングからしてスタイリッシュ。台詞は一切なく、カメラが捉える幾人かの登場人物の行動に、何が起きているのか判らないままの謎だらけの展開にただただ惹き込まれる。

 街中に備えられている監視カメラを駆使し、手掛かりを掴んで追尾する〝監視班〟のプロフェッショナルな動きは、ディテールの積み重ねがリアルなだけに十二分の緊張感を醸し出してくる。
 
 2011年にフジTVで連続ドラマとして放送された『絶対零度 season2〜特殊犯罪潜入捜査〜』の第1&2話が、本作のオリジナル『天使の眼、野獣の街』に影響されていたのは明らかなのだが、どうせならこの『監視者たち』くらいのクォリティが欲しかった。付け焼き刃って感じだろうか。

 さて、映画のラストシーンにはオリジナル作品へのリスペクトとして、サイモン・ヤムが顔を見せるのも一興である。

「悪魔は誰だ」*チョン・グンソブ


MONTAGE
監督:チョン・グンソブ
脚本:チョン・グンソブ
音楽:アン・ヒョンジョン
出演:オム・ジョンファ、キム・サンギョン、ソン・ヨンチャン、チョ・ヒボン、ユ・スンモク

☆☆☆☆ 2013年/韓国/120分

    ◇

 15年の時効を迎えた幼女誘拐殺人事件の被害者の母親と、執拗に犯人を追っていた刑事の前に再び悪夢がくり返されるサスペンスで、韓国のクライム・ムーヴィーは面白い。


 15年前に誘拐事件で幼い娘を失った母親ハギョン(オム・ジョンファ)は、犯人が見つからない中、自らも長年情報を集めていた。事件の担当刑事チョンホ(キム・サンギョン)は、事件が間もなく公訴時効を迎えることを告げにハギョンのもとを訪ねる。犯人逮捕を願っていた彼女にとって、それは決して受け入れられるものではなかった。
 時効まで残り5日と迫ったある日、事件現場に1輪の花が供えられていたことを知ったチョンホは、監視カメラなどそこに残った手掛かりを元に捜査を再開するが、時効まであと2時間というところで犯人を追いつめるも取り逃してしまう。
 責任を感じたチョンホは刑事を辞める。そして数日後、15年前と全く同じ手口の幼女誘拐事件が起きる……。

    ◇

 『殺人の追憶』『チェイサー』の成功で韓国映画の主流になった感のあるコリアン・クライム・サスペンスは、印象的な音楽や効果音を駆使した映像的アイデアとヴァイオレンス描写が観客の求心力を高めている。
 本作は『殺人の追憶』『チェイサー』のような実際の事件をベースにしたものではなく、巧妙にストーリーを練り込み推理性に重きが置かれた犯罪映画。だからこれまでのような残虐な描写もなく、スリリングなサスペンス映画に仕上がっている。
 邦題の『悪魔は誰だ」は、多分に『悪魔を見た』(’10)を意識した誘いでネーミングされたのだろうが、猟奇モノを連想させてしまい損をしているのではないだろうか。

 映画の核は、最愛の娘を亡くした母親の怒りと犯人を目の前で取り逃がした刑事の執念。
 身代金受け渡しの駅での大掛かりなシーンや、母親が小さな手掛かりをもとに犯人に近づいてゆく過程や、カセットテープに残された音声を解読し真相を知るシークエンスなど、ふたりの行動が丁寧に描かれることでミステリーの醍醐味が味わえる。
 そして、そこに映画のトリックをも隠されている趣向。

 本編の3分の2が過ぎたところで明かされる事件(映画)の真相は、単に観客を驚かせるだけの外連ではなく、つづく映画の終幕において、誰が〝悪〟に成り得るのかと観客に問うことになる。
 予告編の惹句通り、誰にも想像できない衝撃を目の当たりにするストーリーテリングの妙味に感心させられる。

 原題の〝モンタージュ〟は色々な意味で含みのある言葉で、映画を観終わったあとになるほどと思える仕組みになっている。

 刑事を演じたキム・サンギョンは上川隆二か仲村トオルに見えるところがあったり、母親役のオム・ジョンファはどこか鈴木砂羽に似ている。
 そのオム・ジョンファは、韓国のアカデミー賞と言われる大鐘賞で主演女優賞を獲得している。