TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

新・座頭市「不思議な旅」

監督:勝新太郎
脚本:星川清司、奥村利夫(勝新太郎)
原作:子母沢寛
撮影:牧浦地志
音楽:喜多郎
製作:勝プロダクション/フジテレビ
出演:勝新太郎、原田美枝子

初回放映:1979年10月29日 フジテレビ「新・座頭市」第3シーズン第23話

    ◇

 例によってこの物語も、完成台本からイマジネーションを膨らませた勝流即興演出が際だった作品だ。
 ゲストは原田美枝子。彼女が「座頭市」に登場したのは1978年の第2シーズンの第10話「冬の海」においてだった。当時19歳の原田美枝子は、そこで「台本は捨てて心で演技を」と勝に教えられた。
 文春新書『天才 勝新太郎』のなかに、この時の原田美枝子を起用したエピソードが記されている。台本のない現場に原田のマネージャーは激昂。勝の「この子を連れて帰ると一生損をするよ」にピリピリする現場。そこに「私は演りたい」と原田の方からマネージャーに懇願したという。

 「座頭市」2度目のこの作品は、原田美枝子が五つの役(乞食・尼・旅芸人・子守り娘・遊女)に扮している。
 天才・勝新太郎と天才少女・原田美枝子が織りなす大傑作である。
 
 いきなり、雪の中から死体の手足がニョキと出ている絵から始まり、そこに、乞食(原田美枝子)の姿。
 通りかかる市に、「哀れな者にお恵みを~」としゃがれた声で呟く。声を潰して男のように発声する原田美枝子。はじめは何を言っているのか判らない。

 市から握り飯をもらい、桟橋の突端から湖に落ちそうになる市を止め、湖畔の土手で市に酒盛りをする御薦(おこも)の少女だ。
 「梅の花の匂いがする女がいいね」と市がぽつり。

 人探しの渡世人が通りかかり「18~9の女を見なかったかい?」と、ふたりに尋ねる。
 女は口をぱくぱくさせながら唖の仕草。市は白目を向ける。
 「喋れんモンと見えねえモンに聞いてもしょうがねぇ」と一味は立ち去る。

 乞食女が市の泊まるところとして安寿様がいる尼寺に連れていく。
 「安寿様、安寿様…………」「よく来てくださいましたね」と、乞食女が安寿の声色で一人芝居。あばら家の中では、梅の花を香らす安寿に変身した原田美枝子。ゆったりとした話し声。

 翌日、活気のある宿場町を歩く市ひとり。乞食姿に戻った女がこっそりと後をつけている。神社の奉納相撲に引っ張り出される市。夜、市は宿屋の女中に手を引かれ旅芸人の若い女の部屋に通される。再び原田美枝子。

 この宿の遊女・梅花(山口奈美)と、旅芸人の女が差しで静かに語り合うシーンは長回し。旅芸人の女の肩を揉む市は、右端の行灯に隠れて見えない構図で、壁に映る女の影が印象的。

 隣町で首を縊った“お梅”という遊女がいた。“お梅”の父親が座頭市だという。店に火をつけ金を奪って逃げきた女。“お梅”に成り変わった女。市に「いち」と名前が縫われた財布を差し出し「おとっちゃん」と呟く。女の正体はわからない。どれが本当のことで、何が想像なのか。

 市は女の話に乗り、女の生き血を吸うやくざ(小林昭二)たちを全員斬る。
 市が愛した“お梅”はいただろうが、市の娘が本当にいたのかどうかは判らない。

 物語の説明は一切ないままに、見る者の想像に委ねられる。これは受け手の感覚、好き嫌いで勝負するような作品。
 音楽は、喜多郎のの1stソロアルバム「天界」が全編に使われている。


 無垢な天才を見初めた天才。
 このあと、勝新太郎がカメラマンとなって原田美枝子のヌード写真集を出す。

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 書庫に眠る大切な宝物である。


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新・座頭市「祭りばやしに風車」

監督:田中徳三
脚本:石田芳子、田中利世、奥村利夫(勝新太郎)
原作:子母沢寛
撮影:牧浦地志
音楽:村井邦彦
製作:勝プロダクション/フジテレビ
出演:勝新太郎、石橋蓮司、萩尾みどり、守田学哉

初回放映:1979年9月17日 フジテレビ「新・座頭市」第3シーズン第20話

    ◇

 市は一宿一般の草鞋を脱いでいた一家の賭場で、鉄砲水の八(石橋蓮司)という賭場荒しの小指を落とし懲らしめた。逃げる八をさらに始末しようとやくざたちが後を追うが、市は落とし前は自分がつけたはずと八を助けて去って行った。

 数年後、風車売りの男に声を掛けられ男の家に招かれた市。男は堅気になった八で、女房(萩尾みどり)とつましくも楽しく暮らしていた。
 市も八もあの時の話はおくびにも出さず、三人で酒を酌み交わすのだった。八は慣れない行商のためか肩や背中を患い、女房は八のために市から按摩の手ほどきを受ける。

 そんなある日、八の前に昔の悪仲間が現れ、祭りの日、賭場の上がりを強奪するから八には騒ぎを起こしてくれと凄んできた。
 悩む八。自分の身体はボロボロだ。いつ死んでもいいような現状に、残った女房に幾ばくかの金がいると決断する。
 当日の朝、旅支度の市と八に行商を任された女房が町への街道を歩き別れていく。

 しばらくして、騒ぎを起こそうと出かけようとしていた八の前に、ふたたび市が現れる。

 「悪い了見 起こしちゃいけねぇよ。鉄砲水の八って名前は、島の鳥がどっかへ持ち去ってくれたんじゃなかったのか。青い空、きれいな海、おメエの身体を洗ってくれたんじゃなかったのかい。
 指切りのできねえおメエでも、約束は守らなくちゃな」

 市は八の鳩尾を殴り眠らせ賭場に向う。そして、悪党二人を誘い出して斬り、黙ってその地を去っていった。
 八が目を覚ました時、帰ってきた女房から町でふたりの男が斬られたことを聞かされる。

 町外れでは、鳥居の上に小石を乗せふたりの行く末を願う市の姿があった。

    ☆

 物語は、足を洗った男に昔の仲間が誘いをかけるといったよくあるパターンだが、出演者3人の芝居を噛み締めることが出来る秀作に仕上がっている。

 石橋蓮司の役は珍しく(笑)善人。市に助けられたことで目が覚め堅気になった男。子供らに風車や玩具を売っている街道に市が通りかかる。もちろん目明きの八は市と判るが、自分を名乗らないまま市を家に招き入れる。盲目の市の方は八とわかっているのか……。

 八の家の中で繰り広げられる約5分間の長回しの芝居は、市と八と女房の三人の心情が切なく織り込まれていて味わい深いシーンとなっている。
 萩尾みどりの台詞に被せるように石橋蓮司と勝新が割り込んでくるところを見ていると、このシーンはポイントになる台詞以外はアドリブのように見える。
 萩尾みどりが、勝新と石橋の自由さを戸惑いながらもちゃんと受けている様なのだ。

 この作品に限ってではないが、勝新がシナリオを現場で改変することは日常茶飯事で、完成台本から残るのはタイトルと役名だけだったと云う作品も数多くあったらしい。もちろん脚本家らとの軋轢は起きているのだろうが、勝新がワンマンであればあるほど勝新の天才ぶりは発揮されるわけだ。

 八は島帰りだと打ち明ける。鳥の声と自然の息吹と綺麗な海に身を洗われたと語る。八の市への恩義からくる礼の言葉。
 終幕、お互いあの時のことは何も言わないまま市が八に別れを告げるとき、そっと右手を撫でる。ふたりの心が通じ合っている証。いいシーンである。

新・座頭市「人情まわり舞台」

監督:黒木和雄
脚本:中村努
原作:子母沢寛
撮影:森田富士郎
音楽:村井邦彦
製作:勝プロダクション/フジテレビ
出演:勝新太郎、原田芳雄、稲川順子、田武謙三

初回放映:1979年7月9日 フジテレビ「新・座頭市」第3シーズン第11話

    ◇

 1974年にはじまり1979年までに100本の作品が作られたTV版の座頭市。この最終シーズンともなると白髪まじりとなった座頭市だが、市井の人々とのふれあいで人生の哀歓をしみじみ感じさせるにはお似合いな風貌となっている。

 このTV作品では勝新太郎の監督作品が一番多いのは当然として、お馴染みの森一生や田中徳三、三隅研二ら旧大映の監督陣が大いに腕を振るったなか、『竜馬暗殺』『祭りの準備』の黒木和雄監督がメガホンを取った作品に目がいった。気心知れた原田芳雄とのタッグは、実に興味をそそられた一作である。(ほかにもふたりの作品が1本あるようだが未見)



 賭場からふらふらと千鳥足で出てくる男。通りを歩きながらすれ違う女たちを触りまくる。船大工の息子だった新三(しんざ・原田芳雄)だ。
 新三は博打と女で身を持ち崩し、惚れた女おつね(稲川順子)を足抜けさせるためにヒモの男を殺して、ふたりで郷里の潮来を捨ててこの宿場に流れ着いていた。
 おつねは町の顔役・卯三郎(田武謙三)に借金のかたで囲われものになり、新三はおつねのヒモに成り下がっていた。

 そんな新三が飲み屋で市と出会う。「市さんには世話になった恩返しだ」と自分が住んでいるボロボロの掘建て小屋に招き入れ、こっそりとおつねを呼出し酌をさせ、精一杯の歓待で酒を酌み交わすのだった。
 新三にとって市は、おつねと逃げたあと新三の父親が土地のモンにいたぶられたとき、毎年潮来の菖蒲を見に訪れていた市に助けてもらった恩義があるのだった。

 新三のもとに座頭市が居ることを知った卯三郎は、新三の殺しをネタに、おつねを自由にしてやってもいい代わりに市を殺せと脅してきた。
 乞食同然に身を堕している新三は、そばでおつねが軽蔑の眼差しを向けているのを知りながらも「市さんは酒に弱いから、強い酒を飲ませ酔ったところを襲えば簡単」と請け負うのだった。

 そしてその夜、新三のボロ家に集まった卯三郎一家とおつね。新三は市に地酒を飲ませ、酔っぱらった市が小便をしに外に出るのに肩を貸す。そのあとを追うやくざたち。
 残ったおつねは、死んじまいたい気持ちで毒が入っているという地酒をあおるのだが、その中身は水だった。
 新三の芝居を見抜いていた市は、新三を仕込み杖で眠らせ、襲いかかる敵を始末するのだった。

 驚愕しているおつねに、市は「今までの新三さんは死んじまったよ」と言い残し去っていく。

 倒れている新三に泣きつくおつねに、目を開けた新三は「死んでいたら喋れねえ。市さんにまた助けられちゃったなぁ。今度は……違う恩返しを考えないとなぁ」と呟くのだった………。

    ◇

 ボロ屋に連れてきた市を、二間しかない家の中で手を引きながらぐるぐると連れ回し、大きな家だと見栄を張る新三の滑稽さが、まさしく精一杯のまわり舞台。
 自分の着物を脱いで、新しい丹前だと言いながら市の着替えをする人の良さも、惚れた女に軽蔑されながらひと芝居打つ哀れさも、全部ひっくるめて、女にだらしなく野良犬のように生きている姿が様になる原田芳雄である。

 無様な男の風貌と、怯えと戸惑い、腹を括った決意など眼光で心情を見せる振る舞いは秀逸。『祭りの準備』のトシちゃんを思い出す。
 この10年後、黒木監督の『浪人街』で共演した勝新太郎と原田芳雄の芝居も、見逃してはならない傑作である。


★祭りの準備★
★浪人街 RONINGAI★


キャスティングに惹かれ、はずれもあるドラマ雑感

◆NHK土曜ドラマ『キルトの家』前編「はじめての人たち」

 「東京に逃れてきた若夫婦と、団地に取り残された老人たちが結ぶ不思議な絆。自立して生きようと気張る老人たちの想いが、不安に揺れる若者の生きる道を照らしだす………」

 渡辺謙さんちの杏ちゃんと三浦百恵ちゃんちの貴大くんの若者ふたりが楽しみだったのと、なによりふたりを取り巻くキャスティングが魅力だろう。

 すっかり怪しい老人ぶりが板についた山崎努に、いまだマドンナヴェルディと見紛う体躯の松坂慶子の大らかさ。
 小唄を唄う佐々木よし江の艶っぽさに、ひさしぶりに拝見した緑魔子は可愛く年を重ねていて、かつてのムードも伊達ではない不思議な存在感。
 「仁義なき戦い」の組長を演じていた織本順吉が、「12人の優しい日本人」の陪審員3号だった上田耕一に「あんた、暴力団だったかい?」なんて洒落っ気がある問いかけ……このシーンのふたりのコンビネーションは爆笑。
 今にもブルーズを歌い出しそうな根岸季衣のスナックママも気っ風良さそうでハマってる。
 余貴美子扮する自治会副会長はありがちではあるが良識派で聡明な普通人。
 「死は怖わない。弱いひとでも人の助けは要らん思うてるひと、おるんよ」正司歌江の台詞が残るなぁ。

 杏ちゃんがベラに見えたり、三浦貴大くんがポストイット男(「流星の絆」)桐谷健太に見えたり?

 オリジナルドラマが少なくなった現状で山田太一のドラマは稀少ではあるけれど、昔から少し苦手だった山田太一ドラマ、少しは楽しめた。
  でも………、話し言葉の台詞と言い回しは面白いのだが、いかにも作り過ぎた感が気になってしまうな。


脚本:山田太一
演出:本木一博
出演:山崎努、松坂慶子、杏、三浦貴大、佐々木すみ江、織本順吉、正司歌江、北村総一朗、根岸季衣、上田耕一、品川徹、緑魔子、余貴美子

2012年1月28日放送


◆WOWOWドラマ『ストレンジャ-6』

 「初の日本・中国・韓国共同製作のサスペンス・アクションドラマ! 巨大災害による危機を前に、3ケ国の男女6人が結成した極秘チーム“ストレンジャー6”がアジアの危機を救う」

 『24』のようなものを期待した訳ではないけれど、唐沢寿明と北村一輝出演のサスペンスということである程度の面白さを求めたのだが、いやはや、ものの見事に期待を裏切られた。

 初回だというのに何の緊張感もない。サスペンスもない。アクションは、唐沢寿明に多くを望むのは無理を承知。カット割を積み重ねた細切れアクションでは、醒めていくのは当たり前。

 原作・脚本・監督の飯田譲治は、かつて『沙粧妙子~最後の事件』とか『ギフト』といった傑作ドラマの脚本を書いた御仁。それもあっての期待もあったんだけどね、
 北村一輝登場の前に、リタイアである。

原作・脚本・監督:飯田譲治
音楽:布袋寅泰
出演:唐沢寿明、オ・ジホ、ボウイ・ラム、黄川田将也、キム・ヒョジン、リウ・シュエン、北村一輝

2012年1月27日 第1話放送(全15話)



◆フジ月9『ラッキーセブン』
 久しぶりに見た月9ドラマ。初回、どこか英国TVドラマ「華麗なるペテン師」の雰囲気のオープニングと、ガイ・リッチーの映画を見ているような瑛太と松本潤のスローモーション・アクションのクライマックスで快調な出だしと思いきや、2話からは普通のドラマになってしまい拍子抜け。
 瑛太の飄々として軽さと、松嶋菜々子のナゾがあれば今後も見ていくかな。

◆ テレ朝木9『聖なる怪物たち』
 第1話、不穏なオープニングと中谷美紀の無表情の存在感を満喫。
 そして2話、ますますの中谷美紀の不気味さに惹かれ、今後の重~い展開が待ち遠しい。

ジウ~警視庁特殊犯捜査係~

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原作:誉田哲也
脚本:菱田信也
演出:片山修、藤田明二、常廣丈太
主題歌:「ジ・エッジ・オブ・グローリー」レディー・ガガ
出演:黒木メイサ、多部未華子、城田優、北村有紀哉、L、モロ師岡、矢島健一、岸本加世子、伊武雅刀

第1回放送:2011年7月29日 テレビ朝日

    ◇

 この秋から〈姫川玲子シリーズ〉の連続ドラマ放送が決まった誉田哲也の、もうひとつの人気シリーズ〈ジウ3部作〉(『ジウI 警視庁特殊犯捜査係』『ジウII 警視庁特殊急襲部隊』『ジウIII 新世界秩序』)のドラマ化である。
 対照的なふたりの女デカに黒木メイサと多部未華子のキャスティングは興味をそそられるところで、さっそく放送前までに原作を全部読んでみた。

 原作は、グロテスクなヴァイオレンス描写を含んだアクロバティックなアクション・エンタテインメント小説だったが、さすがに最終章『ジウIII 新世界秩序』に至ってはかなり荒唐無稽だ。それでも、一気に読んでしまえる面白さがこの作家の魅力なんだろう。
 それは、はじめからドラマを連想させるような文体とストーリー展開を感じさせるからなのか。この読み易さが、どこか漫画を読んでいるのとあまり変わりない感じがして、〈ジウ・シリーズ〉においては「ワイルド7」の悪徳性を連想してしまった。(「ワイルド7」は実写映画として、飛葉役を瑛太で撮影が進んでいるようだが……)

 ドラマの導入は原作に忠実。しかしオープニングの誘拐事件のシーンには、原作にあった緊張感がまるで感じられない演出に少し興味半減。なんとなく日曜朝8時頃のドラマのような印象は、これがいいのか悪いのか……。

 格闘技に精通した女性猛者の基子役の黒木メイサは、ドラマ内の台詞どおりに目つきの悪さが魅力的。そのまんまであるが………感情豊かで心優しい美咲役の多部未華子も、かなり目ヂカラがあるのに気がついた。

 さて、とてつもない人数の死と暴力・レイプ・倒錯セックス描写がどこまでテレビドラマに反映されるのか。それともグロな部分をバッサリ刈り込んだお手頃ストーリーに変えてしまうのか。その辺りに興味がいく初回放送だった。

絶対零度~特殊犯罪潜入捜査~

脚本:浜田秀哉
演出:岩田和行
主題歌:オープニング 「Shadow behind」LOVE PSYCHEDELICO
    エンディング「It's You」LOVE PSYCHEDELICO
出演:上戸彩、桐谷健太、山口紗弥加、杉本哲太、中原丈雄、丸山智己、北川弘美、木村了、北大路欣也

第1話放送:2011年7月12日 フジテレビ

    ◇

 『絶対零度』としてはSeason2となる今回のドラマ、Season1となる「未解決事件特命捜査」をより進化させた分、予想以上に面白い警察ドラマになっていた。

 NHKドラマ『外事警察』を彷彿とさせる潜入捜査が主流で、冒頭の追跡シーンからスリリングに見せてくれるではないの。
 絶対前作より面白い。

 対象者を追跡する捜査員が街に溶け込んでいく様をじっくり見せるところは、見せ場としてキマってる。

 Season2のキャッチ「潜め,守るために。偽れ、救うために」

  単なる続編じゃないし、1話完結で収まらないストーリーもいいし、キャスティングが地味なところもいい。

 これに先立ち放送されたスペシャルドラマで塚本刑事(宮迫博之)の殉職した未解決のエピソードが、桜木(上戸彩)のトラウマとなっただけに、今後、どう展開していくのかも楽しみである。


女は苦しむ女を見るのが好き*「美しい隣人」



脚本:神山由美子
演出:今井和久
出演:仲間由紀恵、檀れい、三浦理恵子、鈴木砂羽、渡部篤郎、草笛光子、小林正寛、藤井美菜
第1回放送:2011年1月11日 フジテレビ

    ◇

 蜷川実花撮影のポスターがいやに昼メロっぽかったり、「女は苦しむ女を見るのが好き」なんて云うキャッチコピーに、このドラマはドロドロした不倫モノかと敬遠気味だったのだが、これが、予想以上に大人が楽しめるミステリーであった。

 ドラマの舞台は海を見渡す新興住宅地。ある夏の日、絵里子(壇れい)のひとり息子が行方不明になり、夫(渡部篤郎)や警察の必死の捜査の末、無事発見されるという事件から幕を開ける。同じ日、近くの池で絵里子の息子と同じくらいの年格好の男の子が遺体で発見される事故が起こっていた。
 そして一年後。平穏に暮らしていた絵里子の隣家に、外国人の夫を持つマイヤー沙希(仲間由紀恵)と名乗る女性が越してきた………。

    ◇

 魔性の女が幸せな家庭の主婦をワナに陥れていったり、穏やかな隣人の不気味な行動をホラータッチで描くサスペンスは、昔からいろんな小説や映画で扱われている素材。
 そんな中でこのドラマには、およそ十数年前テレビドラマにミステリーブームを巻き起こした野沢尚のいくつかのドラマが思い起された。

 閑静な住宅地を舞台に、家族に災いが降り掛かるのが『眠れぬ夜を抱いて』
 つばの大きな帽子と深紅のワンピースで登場するヒロインは『緋色の記憶』
 夫に近づく魔性の女〈ファム・ファタール〉は『水曜日の情事』等々………

 脚本の神山由美子は野沢尚とはほぼ同年代の作家。彼女から野沢ワールドのテイストを感じるのが嬉しい感じもする。

 そして、米倉涼子と釈由美子のバトルで魅せた『黒革の手帖」や、女たちの悪巧みが見事だった「わるいやつら」を手掛けた神山由美子だけあって、今回の麗しき女優のダブルキャストのバトルには期待するばかり。
 ドラマの前半は仲間由紀恵の攻勢で、後半は壇れいが反撃するおんなの闘いになるのだろうか。

 女というのは、様々な感情を心のどこかでチロチロと燃やし続けながら生活している。
 男には理解できない“女の感情”は、そのまま“女の妖しさ”となって輝くのが、女という生き物だ。
 沙希の優しさの裏に隠されたもうひとつの女の顔が、得体の知れない怖さを含み不気味。視聴者は、沙希が絵里子に何かしらの悪意を抱いて引っ越してきたことが判っているので、どこで沙希の“ウラの顔”が垣間みられるのかと思って見ている。それを逆手にとり、なかなか表現しない演出にサスペンスを感じてくるのだから面白い。

 今後は、どんな風に捻ったプロットになっていくのか………。
 沙希に対する絵里子の息子の駿の行動が不可解だし、行方不明になった駿を助けた無口な青年にも秘密がありそうだし、ママ友の三浦理恵子の嫉妬や、ドラマ開始早々に引っ越して行った元隣人の鈴木砂羽も当然絡んでくるだろうから、視聴者が気持ちよく欺かれる展開を期待するばかりだ。