TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

「眠る男」*小栗康平監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。

1996_眠る男
監督:小栗康平
脚本:小栗康平
音楽:細川俊夫
出演:安聖基(アン・ソンギ)、クリスティン・ハキム、役所広司、野村昭子、田村高廣、今福将雄、蟹江敬三、小日向文世、平田満、左時枝、岸部一徳、渡辺哲、浜村純、八木昌子、高田敏江、藤真利子

☆☆☆ 1996年/日本/103分

 初見1996年9月。
 デビュー作『泥の河』(’81)の情感豊かなドラマ性に文句なく感動し、『死の棘』(’90)でカンヌ国際映画祭の審査員グランプリを獲得し、大いなる認識を得た小栗康平監督の初のオリジナル作品。

 人間が登場するも、そこにドラマはない。
 ただ、静かに、美しい風景が、“物語”を語るだけ。
 実に日本的な、精神性に富んだ作品。

 再度鑑賞するかと云われれば、一度の鑑賞で十分である。

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「真夜中まで」*和田誠監督作品

2001_真夜中まで
監督:和田誠
脚本:和田誠、長谷川隆
音楽:立川直樹
出演:真田広之、ミッシェル・リー、岸部一徳、國村隼、柄本明、笹野高史、斉藤晴彦、六平直政、もたいまさこ [ゲスト]大竹しのぶ、高橋克実、佐藤仁美、唐沢寿明、戸田菜穂、三谷幸喜、名古屋章、小松政夫 ほか(登場順)

☆☆☆☆ 1999年/日本・東北新社/110分

 2001年公開、初見2001年9月。
 イラストレーターとして『おたのしみはこれからだ』やエッセイなどの執筆者でもあり、『麻雀放浪記』『快盗ルビイ』など映画監督としてもその多才ぶりを発揮している和田誠の長編劇映画4作目、初のオリジナル脚本の作品。
 無類のジャズ好きで映画マニアの和田誠らしい遊びとこだわりで、とびっきりのエンターテインメントな逃走サスペンスが繰り広げられる。大好きな映画だ。

 街の夜景が艶やかな夜10時34分。ここはライヴハウス「Cotton Tail」。ジャズ・トランぺッターの守山(真田広之)にとって今夜は特別な夜だった。憧れのジャズマンG.P.サリヴァンが夜中のステージを聴きに来るのだ。
 休憩時間、店の外に出た彼のもとに突然、ホステスのリンダ(ミッシェル・リー)が助けを求めて来た。事情が呑み込めない守山だったが行きがかり上、リンダを追いつめる男たち(岸部一徳、國村隼)の攻撃をかわし、リンダを連れて夜の街へ飛び出すのだった。
 次のステージまで残された時間は1時間。
 果たして、殺人事件を目撃したリンダとともに守山は、事件を解決してステージに戻ることができるのか…?

    ◇

 「ジャズというジャンルはない。ジャズな人がいるだけだ」と、ジャズについてタモリが語った言葉のように、この作品はジャズな人が創った極上なジャズな映画である。

 ヒッチコック映画に見られる巻き込まれ型サスペンスの踏襲として、ありふれた判り易いストーリー展開に終始。ジャズと小道具に凝り、渋い脇役たちと多彩なゲストが大きな魅力になっている。
 「ROUND MIDNIGHT」が流れるオープニング、怪しい男たちがいる駐車場から隣のビルの階下にあるジャズバーの窓を抜け、店内のステージでトランペットを吹く真田広之にカメラが寄ってゆくカメラワーク。ワンシーン・ワンカットに見える技の流麗さに感嘆し、この映画の虜になる。

 ジャズをこよなく愛する和田誠の選んだジャズ・スタンダード・ナンバー「SO WHAT」「LULLABY OF BIRDLAND」「MY ONE AND ONLY LOVE」などが優雅に使われ、唱歌「月の砂漠」を隠し技にするお楽しみ等々、とにかく隅々まで洒落た作品なのである。

 夜の帳が映し出す妖しいアジアンテイストな街並と夜景。撮影と照明の素晴らしさに目を瞠らされる。
 次のステージの時間までというタイムリミットを設けたスリリングな展開は、追いつ追われつする物語の進行時間と上映時間がリアルに重なる仕掛け。設定は架空の街の架空のライヴハウスだから、こんなに長い休憩時間も許される。

 佐山雅弘ら日本を代表するジャズ・ミュージシャンを従える真田広之だが、実際は五十嵐一正が吹く甘美な音色。ただ、ジャズマンらしい真田広之の佇まいは及第点であろう。


★快盗ルビイ★

「大誘拐」*岡本喜八監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するものです。

1991_大誘拐
RAINBOW KIDS
監督:岡本喜八
原作:天藤真
脚本:岡本喜八
音楽:佐藤勝
主題歌:サイコ ヒステリックス「MESSAGE」
挿入歌:サイコ ヒステリックス「レインボー・キッズ」
出演:北林谷栄、緒形拳、風間トオル、西川弘志、樹木希林、内田勝康、神山繁、水野久美、岸部一徳、天本英世、奥村公延、岡本真実、嶋田久作、橋本功、常田富士男、本田博太郎、寺田農、竜雷太、山藤章二(特別出演)、景山民夫(特別出演)

☆☆☆☆ 1991年/東宝/120分

 初見1991年1月。
 1978年に発刊された天藤真の推理小説の映像化で、岡本喜八流エンターテインメントなヒューマン・コメディに仕上がっている。

 日本最大の地主で世界でも有数の大富豪・柳川とし子(北林谷栄)は、和歌山県の山奥に暮らす小柄なお婆さん。御年82歳。
 彼女を誘拐して大金を要求しようと計画したムショ帰りの若い3人組(風間トオル、西川弘志、内田勝康)。彼らは滞り無く誘拐を完了するものの、誘拐された当のお婆ちゃんにはずさんな計画がお見通し。
 ましてや身代金が5000万円だと知ると「見そこのうてもろたら困るがな。そんなはした金で取引をされたら末代までの恥…身代金は100億や」と頼りない3人組に知恵を与え、お婆ちゃん主導で身代金が引き上げられる。
 こうして、国家権力の警察とマスコミを相手に前代未聞の誘拐劇がはじまった……。
 
 なんと云っても若い頃から老け役で有名な北林谷栄の、品があり、気だてが良く、ひとを喰ったような大富豪のお婆ちゃんが素晴らしい。ときとして大胆さと天才的知力を持ち合わせ、凛とした存在感を醸し出せるのは彼女しか思い浮かばないだろう。
 緒形拳扮する井狩警部との頭脳戦も、そして、誰も傷つかないハートウォーミングなハッピーエンドといい、「お婆ちゃん思いの犯人」と「犯人思いのお婆ちゃん」の大人の寓話的活劇映画に満足するのであった。

「女がいちばん似合う職業」*黒沢直輔監督作品

 以下作品は、映画前売券のコレクションとしての記録です。

1991_女がいちばん似合う職業
監督:黒沢直輔
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
音楽:Date of Birth
出演:桃井かおり、岡本健一、橋爪功、伊原剛志、白竜、内藤剛志、伊武雅刀

☆☆★ 1990年/アルゴプロジェクト/102分

 初見1991年2月。

 亡くなった松田優作に捧げられたこの映画は、優作と親交の深かった面子が集まり『グロリア』や『ニキータ』ばりに女が拳銃をぶっ放つハードボイルドを狙った映画なのかと思いきや、これが、とんでもなく毛色の変わった女刑事ものとして出来上がっていた。

 企画は桃井かおり。脚本が丸山昇一。大筋はこんな話だ。
 妊婦ばかり惨殺する猟奇事件起きる。女刑事と同僚刑事が内偵をすすめひとりの少年を容疑者としてマークするが、なかなか尻尾を表さない。張り込みに気づいても表情ひとつ変えない少年に近づく女刑事は、彼と情交を重ねる。
 ある日、他の事件で停職処分を受けた女刑事は姿をくらませ、数ヶ月後、妊娠した姿で戻ってきた。女刑事は少年の子供を孕み、彼が妊婦になった自分を襲うように仕向け、身体を張って犯人と対決、末に彼を射殺するのだった…。

 凄い話だ。
 桃井かおりのキャラクターに尽きる映画である。
 ふてぶてしくクールな桃井かおりが、夜中に突然涙を流しすがるように同僚と寝てしまったり、凶悪犯の少年とも情交を重ねたり、情緒不安定的なヒロインは「グロリア』や『ニキータ』より生々しい。
 腹を抱え全速力で走る桃井かおりにはハードボイルドに生きる女の姿があり、橋爪功とのコンビネーションも伊原剛志との掛け合いも面白いのだが、どこかしらウェットな感覚に陥り乗り切れないまま映画が終わっていた。

 

チケット「いつかギラギラする日」

 以下作品は、映画前売券のコレクションとして記録するのみです。



過去レヴューあり
★いつかギラギラする日★

「犬、走る DOG RACE」*崔洋一監督作品

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DOG RACE
監督:崔洋一
原案:丸山昇一
脚本:崔洋一、鄭義信
撮影:藤澤順一
音楽:鈴木茂
題字:黒田征太郎
出演:岸谷五朗、大杉漣、冨樫真、遠藤憲一、香川照之、國村隼、絵沢萠子、岩松了

☆☆☆★ 1998年/シネカノン・東映セントラルフィルム/110分

    ◇

 不夜城・新宿歌舞伎町を舞台に、アナーキーな人間たちの生態をパワフルに、そしてコミカルに描いた異色作。

 新宿署生活安全課の不良刑事中山(岸谷五朗)は、在日韓国人の情報屋・秀吉(大杉漣)と繋がり警察情報を流したり、上海から出稼ぎにきた美女・桃花(冨樫真)と関係をもち、かなりヤバイ橋を渡りながら生きている。
 そんなある日、桃花が秀吉の部屋で死体となって発見された。実は桃花は、中山に隠れて秀吉や弟の健祐たちと中国人相手に闇送金や管理売春、密入国の手配や裏バカラで荒稼ぎをしていた………。

    ◇

 松田優作が映画化を熱望していた丸山昇一の原案を、崔洋一と鄭義信がアジアン・テイスト満載に脚色した本作は、脇を固める遠藤憲一や國村隼、絵沢萠子ら胡散臭い悪人顔が示すように、悪党ばかり登場するノワール映画だが、取り立てて言うほどのストーリーがあるわけではないのに、どこか可笑しく、切ない魅力を漂わす快作だ。

 新宿、とりわけ歌舞伎町を介して成立している“友情”という幻想を、分裂症気味な岸谷五朗と、飄々とした大杉漣の不思議なコンビが猥雑に演じているから面白い。

 岸谷五朗演じる“はみ出しデカ”中山は、韓国系やくざのボス権田(遠藤憲一)の情婦・桃花を恋人にしたり、後輩刑事の佐久間(香川照之)と麻薬の売人からせしめた覚醒剤を自ら打ち、ハイになった勢いで暴力バーでひと暴れして手柄をたてたりと、その生き様はメチャクチャだが、喰って、セックスして、懸命に走りつづける人間の滑稽さが魅力となっている。

 「剛」の岸谷五朗に対して「柔」の大杉漣は、桃花に純情な恋心を抱きながら、常に中山に「マサやん、マサやん」と懐いて付きまとう小悪党。誰からも「クズ!」「ボケ!」と蔑まれながらも、生きる術のしたたかさと抜け目のなさを軽く演じている。
 1980年代、高橋伴明や中村幻児らのピンク映画やロマンポルノで変態・エロを演じてきた大杉漣は、この作品でもブラジャーとコルセットを身につけてイってしまう変態ぶりと、産業廃棄物処理場の泥水のなかに頭から沈んだりする激演で伝説をつくり、全編通して見どころがいっぱいである。
 この作品、大杉蓮が主役と言ってもいいな。

 後半、ふたりで桃花の死体を担ぎながら歌舞伎町を彷徨うあたりはウェットになり、クライマックスは新宿の街ン中を全力疾走する大杉漣と岸谷五朗らのエネルギッシュなパワーが見どころ。ゲリラ撮影のような迫力から、ラストにじんとくる切なさもいい。

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「赤と黒の熱情」*工藤栄一監督作品

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PASSION
監督:工藤栄一
脚本:野沢 尚
撮影:仙元誠三
音楽:埜邑紀見男
出演:陣内孝則、麻生祐未、仲村トオル、古尾谷雅人、余貴美子、室田日出男、内藤剛志、大杉漣、柳葉敏郎

☆☆★ 1992年/東映/109分


 横須賀を舞台に、記憶障害になった女と、彼女の幸せと自分の罪の償いを賭けた若いヤクザとの儚い夢物語だ。

 ヤクザの松浦楯夫(陣内孝則)は、組の資金源三億円を強奪した弟分の矢崎文治(柳葉敏郎)を組の掟によって射殺した。ふたりは幼い頃から兄弟同然の仲だったが、組の命令には逆らえなかった。
 文治のたった一人の身内となる妹の沙織(麻生祐未)は、その衝撃と組の幹部・桐島(古尾谷雅人)の罠によって麻薬漬けとなった。
 事件から6年。出所した楯夫は、弟分の研作(仲村トオル)ら仲間たちと、記憶喪失となって精神病院にいる沙織のために、たとえウソであっても“美しい過去”で励まそうと思い出づくりをはじめるのだった。
 しかしそんな幸せな暮らしのふたりの前に、かつての記憶を呼び起こす事件が起き、ふたたび彼らの生き方は狂いだすのだった……。

    ◇

 光と影の魔術師・工藤監督らしい画面構成と演出は、メインタイトル前に見られる。
 雨降る中で、麻生祐未が持つ赤いパラソルが風に吹き飛ばされるシーンは、同じ年公開の『死んでもいい』のオープニング・シーンにダブり、その後、野沢尚脚本のテレビドラマ『青い鳥』('97)の夏川結衣登場へと繋がるような印象的なショットであった。

 問題は、それ以降のストーリー展開。
 真記子(余貴美子)のバーに集まる仲間たちの描かれ方など、群像劇を得意とする工藤監督らしさが活かされず、野沢尚氏の脚本の甘さが露呈しているのかもしれない。
 かつては“街の女たち”を束ねるバーのマダムで、今はレストランなどを経営する女性実業家役の余貴美子は、6年ぶりに出所してきた陣内孝則をベッドで迎え、膝を抱え「おかえりなさい」と見上げる目つきと仕草が艶っぽく、姐ご肌が似合い、仲間の信頼にも厚く、力強さと色っぽさを兼ね備えたいい役まわりだったのに後半、何も活かされないのが惜しい。

 沙織の失われた記憶を新しい思い出づくりとして作ってやろうと、仲間たちが奔走する“足ながおじさん的夢物語”が核にあるのだから、その仲間内のウソッぱちな物語を、映画を観ている観客には劇中でのリアリティに変えてくれないことには、観ていてどんどとん白けた気持ちになってくる。

 ラストの離れ小島(松田優作の『蘇える金狼』に登場した舞台と同じ)での銃撃戦や、古尾谷雅人や内藤剛志の怪演もあるのだが、展開の甘さが気になり失望に変わった作品であった。