TEA FOR ONE

まぁお茶でも飲みながら気ままに、好きなことを、すこ~しネタバレしながら、のんびりと………。

ロマンポルノの証言、「日活1971-1988 撮影所が育んだ才能たち」



 日活ロマンポルノ誕生45周年を記念し、日活映画人による膨大な証言集が発刊された。

 現場スタッフ&キャスト総勢108名による圧倒的な量のエッセイとインタビュー、貴重な撮影風景のスチール・スナップ、完全版を謳う詳細なフィルモグラフィ(ロマンポルノ・一般作・ロッポニカ・児童映画を網羅)、一部台本の表紙写真掲載など、B5サイズ480ページに詰まった数々は貴重な資料的価値が高く、まさに読み応えも見応えも十分なものになっている。
 日頃、あまり陽の当たらない現場スタッフ(美術・録音・撮影・衣装・スクリプター・タイトルデザイナーら)のインタビューや対談の充実度にも目を惹く。

nikkatsu1971-1988_3.jpg

 1960年代後半頃から切迫した経営難を乗り切る起死回生の手段として、低予算で収益を上げる成人映画の分野に舵をきった日活が生み出した「ロマンポルノ」。
 今でこそこうして何周年記念を祝い、映画史にも残る名作・傑作が生み出された事実を知る結果となっているが、当時にしたら、当然拒否反応を示した多くのスタッフや俳優陣が日活をあとにしたわけで、日活に籍をおくキャリアの浅いスタッフらにとっては、この未知の世界へ踏み出すことで、自由な制作現場を得たことにもなったろう。
 官憲との闘いもあれば、上層部との軋轢の中での試行錯誤。葛藤しながら闘い挑みつづけ、自由な発想と表現に意気上がった映画人たちの情熱がほとばしっている一冊だ。

nikkatsu1971-1988_2.jpg

 本書に並ぶ女優は、ロマンポルノ第1号女優白川和子と小川節子をはじめ、伊佐山ひろ子、中川梨絵(2016年に亡くなる前の貴重な寄稿文)、田中真理、谷ナオミ、小川亜佐美、水原ゆう紀、風祭ゆき、志水季里子、三崎奈美、中村晃子、畑中葉子、早乙女宏美らの名前。
 
 女優のところから読みはじめ、まだ全部を読んだわけではないのだが、小川節子が述懐する文章の端々には、羞恥や後ろめたさとの葛藤が重々に感じられ、村川透監督デビュー作の『白い指の戯れ』のオファーを断ったという話などを知ると、結果的にあの作品は伊佐山ひろ子の女優開眼第一歩の記念的映画となっているとしても、小川節子がヒロインだったらまた違った傑作になっていたのかもしれないと、ファンとしては勝手な夢想を膨らませるわけで…。

 水原ゆう紀は、『天使のはらわた 赤い教室』において完全に名美が憑依したと語る。
 果たして、水原ゆう紀のラストカットの解釈はまさに〝名美が憑依〟した心情だ。
 水原ゆう紀の名美は多方面で絶賛されたが、この後、田中登監督からの『天使のはらわた 名美』のオファーは断ったという。名美という普遍の女性像でありながら、あまりに確固たる名美像の呪縛がきつかったのだろう。
 水原ゆう紀のシリーズものもあり得たのかと石井隆ファンとしては複雑な気持ちだが、以後、余貴美子以外に名美を複数回演じた女優がいないのも、ある意味同様の作用が働いているのかもしれない。

    ◇

日活1971-1988 撮影所が育んだ才能たち
【ワイズ出版】
定価 4,625円+税

スポンサーサイト

MOOK本「蘇る!日活ロマンポルノ」



 去年(2016年)の11~12月頃に発刊された日活ロマンポルノのMOOK本だ。
 まず、表紙の写真が、ロマンポルノを代表する白川和子でも宮下順子でも谷ナオミでも、ましてやアイドル的存在だった美保純でもなく、80年代の作品『ブルーレイン大阪』で初主演デビューをした志水季里子というのが、彼女のファンとして嬉しい次第

 書籍としては、やはりMOOK本にした特性が活かされ、女優を中心に制作現場などのスチール写真がカラーで豊富に掲載されているし、特集を4つにわけた記事も的を射た豪華な執筆陣。団鬼六の娘・黒岩由紀子の寄稿は興味深い。

 著述家・プランナーの湯山玲子の、〝「女性も楽しめる」みたいなカギカッコはいらない〟発言や、映画音楽の役割についての辛口コメントも面白い。

 MOOK本としては女優&監督名鑑のほかに、男優、脚本家、音楽家名鑑の掲載が親切丁寧であり重宝する資料だ。
 巻末の全作品リストも、ぜんぶにコメントが付けられた労作。

 ただし、女優名鑑に「芹明香」の名前がないのは不可解…ロマンポルノの一角を支えた重要性を認識していないのだろうか?
また個人的に、「速水典子」「水原ゆう紀」「泉じゅん」の名前がないのも寂しい…

    ◇

蘇る!日活ロマンポルノ
【徳間書店】
定価 1,204円+税

「映画芸術」ロマンポルノ再起動



 『映画芸術』2016秋457号は ロマンポルノ特集

 1971年11月の初公開から45年を迎えた2016年11月下旬からは、[ロマンポルノ・リブート・プロジェクト]として5人の映画監督が撮り下した新作が順次公開となる。
 それに伴っての新作監督3人のインタビューと、[シリーズ私の映画史・ロマンポルノ10本]の特集である。

 「(ロマンポルノって)三本立ての中から、我慢して自分にとっていいものを見つける(しょうものないものを選り分ける)、その感じがロマンポルノ」
 「二本捨てて自分だけの一本を探す経験」
 「名作でも佳作でもない、あまり評価されないものがロマンポルノ」

 インタビュー中の荒井晴彦の言葉と重なるが、それこそロマンポルノは自分だけの作品を探す旅だったような気がする…
 ただ、好みは十人十色とは云え、結果、自分のベスト作品を選んでみると、いま評価されている作品と多くがダブるわけだが……

 70年代の日活ロマンポルノは神代辰巳、藤田敏八以外の作品は女優で観ていた……
 物語はプログラム・ピクチャーなんだから三本立てのクオリティはたかが知れていたけど、2週間ごとに差し変わる作品群から「おっ」と身を乗り出すものに出会う愉しみがあった……
 新人女優として、グラマラスなひろみ麻耶(『実録ジプシー・ローズ』)や薄幸美の水原ゆう紀(『天使のはらわた 赤い教室』)に出会えたりしたわけで……

 
 ところで今回のロマンポルノ・リブートだって最低でも二本立てで観せて欲しいくらいで、各回入れ替え制になった映画館ではつまらんよ…

 [私の映画史・ロマンポルノ]において、12人の選者がそれぞれ10本の作品を挙げるなかで、脚本家として神代辰巳、荒井晴彦に次いで石井隆の名前が3番目に多く挙がっているのは、間違いなくロマンポルノの貢献者のひとりだったことに他ならず、同時代に石井隆の劇画と映画の読者と観客でいられたことが、なんと素晴らしい時間だったことか……

    ◇

映画芸術 2016年秋号
【編集プロダクション映芸】
定価 1,585円

日活ロマンポルノ創設45周年記念作品、リリース解禁



 2016年は日活ロマンポルノの初公開(1971年11月20日:白川和子主演「団地妻 昼下がりの情事」、小川節子主演「色暦大奥秘話」)から45周年。 
 それを記念して、全80作品のBlu-ray & DVDリリースが4月から開始された。2ヶ月ごとに12月までつづくこのリリース・ラッシュには、既発作品の初Blu-ray化はもちろん、初デジタル化の作品、2005〜7年版のラインナップからの再発も多くあり、ファンにはたまらない1年になることだろう。

 今回、初回リリースからは2本の初デジタルものを購入。当たり前だが、どちらも所持するVTRを一掃するクリアな画質!
 結城昌治原作、石井隆脚本、池田敏春監督で、天地真理2度目の復帰作としてジョニー大倉と共演した『魔性の香り』はオープニングの雨の橋桁シーンから、ラストの黄昏色に染まった土砂降りの雨の美しさに感動モノだし、藤田敏八監督、中川梨絵と地井武男出演の『エロスの誘惑』は、中川梨絵の美しさが倍増して映えているから、これまた感動………

 ほかに、『四畳半襖の裏張り』(神代辰巳:宮下順子)や『(秘)色情めす市場』(田中登:芹明香)はDVD所持ながら初Blu-ray化ということで思案中……特に『四畳半襖の裏張り』は宮下順子の音声コメンタリーが収録されているのが貴重なのだが、既に多くの作品が在庫切れになっているようだ。
 思案は皆無…即購入しないと後々後悔する………

 

「エロスの誘惑」*藤田敏八監督作品


監督:藤田敏八
脚本:松田昭三
撮影:山崎善弘
助監督:長谷川和彦
音楽:J.S.バッハ
出演:中川梨絵、小松方正、地井武男、川村真樹、天坊準、福地健太郎

☆☆☆☆ 1972年/日活/69分

    ◇

 初見1972年10月
 『八月はエロスの匂い』につづいて観た藤田敏八監督のロマンポルノ第2作目で、まさしくロマンポルノの女神中川梨絵の美しさの虜になった記念的作品。
 同時公開は神代辰巳監督の『一条さゆり 濡れた欲情』だった。

 舞台は、東京湾デルタ地帯の倉庫街。
 貧相な倉庫主任・菊地(天坊準)と、逞しい体格のアルバイト青年・健太郎(福地健太郎)、そして、住み込みの事務員タネ(中川梨絵)の3人が、この薄暗く殺伐とした倉庫で働いている。
 タネの容姿は男心をそそるものがあり、菊地はタネに結婚を申し込むが「私がどんな女か知ってるの?」と冷たい対応。
 タネは、倉庫会社社長の三好(小松方正)に囲われている身。しかしどこか虚無的で冷めた女だ。三好に菊地のことをうち明けると、三好はタネに結婚を勧める。
 翌日、タネは菊地に結婚の承諾をするが、その日、本社から庄司という男(地井武男)が配属されて来た。無口で精悍な庄司に惹かれたタネは、挑発的な態度で「私をここから連れ出して」とでも言わんばかりに誘惑し、そのままずるずると三好と庄司との三角関係がはじまるのだった。
 しかしある日、庄司の妻と名乗る女(川村真樹)が現れ、庄司は忽然と姿を消してしまう……。

    ◇
 
 〝何も変わらない日常〟
 藤田敏八監督の演出は、ポルノ的扇情シーンやドラマティックな展開を抑え、吹きだまりの倉庫街に集まる冴えない男女の、虚無的日常と性を淡々と描いている。

 70年代はじめは風呂なしの部屋など当たり前で、台所で湯を沸かして行水するシーンが目に焼き付いていたり、ビルの屋上で洗濯ものを干すシーンなどにエロティックな感覚が沸いてくるのだった。

 まぁとにかく、中川梨絵が美しい。
 これだけで良いだろう……☆ひとつは彼女に捧げるものである。

1972_erosunoyuuwaku_dvd.jpg
★中川梨絵★
★一条さゆり 濡れた欲情★
 

「実録エロ事師たち」*曽根中生監督作品


監督:曽根中生
原作」吉村平吉
脚本:下飯坂菊馬
撮影:畠中照夫
美術:菊川芳江
音楽:月見里太一(鏑木創)
出演:二條朱実、殿山泰司、江角英明、星まり子、榎木兵衛、高橋明

☆☆☆ 1974年/日活/75分

    ◇

 〝エロ事師〟の名称は、野坂昭如が命名したとされる。
 ポン引き(売春斡旋)、ブルーフィルムやエロ写真の製作、カップルが本番行為を見せる白黒ショーの実演・上映会など、その商いは野坂昭如原作、今村昌平監督の傑作人間喜劇映画『人類学入門「エロ事師たち」より』を見ればよくわかるものだが、本作は、その野坂昭如の小説のモデルとなった伝説のポン引き師吉村平吉の著作本を原作にしている。


 手配師の殿村銀次郎(殿山泰司)の斡旋で、白黒ショーを演じる中山(江角英明)と春子(星まり子)の夫婦。ある日ふたりのショーに感激した客の西沢(榎木兵衛)が弟子入りを懇願する。それは若い女房のユカリ(二條朱実)を満足させたい一心だった。
 彼に同情した3人がいろいろと協力するのだが、なかなか効果は表れない。ある日、西沢に同情した春子が彼をモーテルに誘い、西沢は初めての歓喜を味わう。それは春子にとって初めての浮気でもあった。
 一方、殿村は性的不感症のユカリを白黒ショーに誘うが、あらためて夫の不甲斐なさを知り別れる決心をする。そして、春子の浮気に気づいた中山を尻目に、西沢と春子は駆け落ちをするのだった。
 殿村は、残された中山とユカリの新しいコンビを結成し初舞台を催すのだが、殿村が抱えるオカマ売春のカップルやブルーフィルムの監督など全員があえなく逮捕されてしまう。
 手錠姿の殿村だが「次はうまくやるさ」とうそぶくのだった…。

    ◇

 1958年までポン引きをしていた吉村平吉が述懐する彼らの生態は、やくざとは違った非合法社会を形成し、開けっぴろげでなごやかな人間関係があったとしている。

 艶笑ドラマとしての本作は、暗い部屋で睦あうアングラな世界に生きる人間たちの軽い浮き草のような人生の悲哀と、リアルに淡々と流れてゆく時間の心地良さに魅入ってしまう映画だ。
 男と女の時間に身を任せる人間模様のなか、殿山泰司が飄々としながらも活力に満ちた手配師を好演し、ある意味主役とも言える榎木兵衛は見事な情けなさぶりで、名脇役としてのいぶし銀光る姿を楽しめる。

 もちろん女優陣もよし。1973年にミノルフォンから「泣くなおっぱいちゃん」(作詞:富永一朗、作曲:井上忠夫)で歌手デビューした星まり子は、この作品で二条珠美と名前を並べて映画デビュー。以後、全部で10本ほどのロマンポルノに出演している。

 そして、欄干に仕掛けた鏡越しのベッドシーンとか、ネガポジを反転した二条珠美の裸体とか、工夫を凝らした曽根中生監督の演出も冴える。



昼下りの青春〜日活ロマンポルノ外伝



 月刊「シナリオ」に連載されていたプロデューサーで脚本家の山田耕大氏のエッセイを一冊にまとめた本が25日に発刊された。1978年名古屋から上京し日活に入社し、劇場勤務で『人妻暴行致死事件』『桃尻娘』『高校大パニック』等の上映に関わるところから、終焉を迎えようとするロマンポルノの制作現場で青春を過ごした日々の奔走を、熱く、ほろ苦く語るなかに血の通った映画制作の喜びが見て取れて、実に面白い読み物となっている。

 石井隆ファンには、ヒロイン降板劇で知られる因縁の2作『火の蛾』と『ルージュ』の話が興味深い。 
企画段階での『火の蛾』のキャスティングが明かされたのは初めてで、それまで、ただ単に女優が脱ぎたくないという理由で流れた企画と思っていたものの(石井隆自身が聞かされてきたことでの発言による)、少し思惑の違う理由がそこに存在していたというのだ。

 『火の蛾』で決まったキャストは、土屋名美を関根恵子、若い愛人の平野信を古尾谷雅人、殺される名美の夫・土屋英樹には伊丹十三だったという。監督は池田敏春。関根恵子の名美を想像するとゾクゾクしてくる恰好のキャスティング(関根恵子の抜擢は『ラブレター』繋がりだろう)だが、この時、同時に高橋伴明監督が『「TATTOO[刺青]あり』の企画を持ち込んできた事が運のつきってことか。
 しかし、『火の蛾』が後に『死んでもいい』として成就したことで、石井隆監督がメジャーな舞台に駆け上がったことを鑑みてみれば、すべて運命のもとに動かされていた出来事だったと思えるのだが…どうだろう?

 『ルージュ』も不憫な作品だった。
 1981年に制作発表されたときの陽子(名美)役は辺見マリ。辺見マリの降板も何も彼女の我儘などではなく、別の起因による残念至極な思いがあったことが判明。そして、1984年に新藤恵美のキャスティングで陽の目をみることになるのだが、それはとても石井ワールドとは言えないものだった。
 原作の「その後のあなた」が傑作だったのに、なぜ、あんなにも唖然とさせられるラストシーンの改変になったのか。企画を立てた著者の前に立ちはだかった大きな敵の存在を知り、納得する裏話ではあるが、やはり不憫な話である。

 石井隆は後々リベンジのための苦難の道を歩んで行くことを考えると、何とも辛抱強い作家だったのだと思う次第である。


日活へ行こう
愛と哀しみの社員研修
劇場狂時代
素晴らしき劇場野郎
俺たちに明日はない
仁義なき青春
僕の村は日活撮影所だった 

「おんなの寝室 好きくらべ」~「赫い髪の女」
「泉大八の女子大生の金曜日」~「クライマックスレイプ 剥ぐ」
「むちむちネオン街 私たべごろ」
「MR.ジレンマン 色情狂い」~「看護婦日記 いたずらな指」
「東京エロス千夜一夜」
「暴行儀式」~「朝はダメよ!」
「スケバンマフィア 肉刑」
「女子大生の告白 赤い誘惑者」
「ハードスキャンダル 性の漂流者」
「クライマックス 犯される花嫁」
「快楽学園 禁じられた遊び」
「後から前から」
「団鬼六 OL縄奴隷」
「女子大生の基礎知識 ANO・ANO」
「ひと夏の体験 青い珊瑚礁」
「モア・セクシー 獣のようにもう一度」
「レイプウーマン 淫らな日曜日」
「制服体験トリオ わたし熟れごろ」
にっかつ撮影所企画営業部の旅~「獲物」
「正四面体」
「小さな娼婦」
「火の蛾」
「その後のあなた」
「たかが友だち」
「無題」
「肉奴隷 悲しき玩具」
「ワイセツ家族 母と娘」
「家族ゲーム」
「セクシードール 阿部定3世」
「セーラー服百合族」
「ブルーレイン大阪」
「ダブルベッド」
「愛獣 猟る」
「女教師は二度犯される」
「縄姉妹 奇妙な果実」
「不純な関係」
「白衣物語 淫す」
「団鬼六 修道女縄地獄」
「女子大生 恥かしゼミナール」
「ひと夏の出来ごころ」
「OL百合族19歳」
「ルージュ」


[エピローグ・追悼]
三浦 朗
斎藤 博
神代辰巳
佐治 乾
奥村幸士
海野義幸
池田敏春
加藤 彰
高田 純

    ◇

昼下りの青春~日活ロマンポルノ外伝/山田耕大
【シナリオ11月号別冊・シナリオ作家協会】
定価1,680円(税込)