鉄砲玉の美学/中島貞夫の世界
Hotwax Trax 第4弾として『鉄砲玉の美学/中島貞夫の世界』が2月4日に発売された。
70年代の中島貞夫の映画は、通称チンピラ映画。
スクリーンの中では、どうしようもないクズたちが徒花のごとく血の華を咲かせながら散っていく。そして、日本のロックや歌謡曲がカッコ良く使われていたサウンドは、日活ニュー・アクションとは違った危険な香りがプンプンしていた。
その危険な香りの一番手が頭脳警察。1970年の日劇ウエスタン・カーニバルでの伝説(ステージ上でのヤバイ行為は、ここでは書けない)から始まり、超左翼系バンドの名前を欲しいままにしていた。ヴォーカルのPANTAの少し外れた歌声が、TOSHIの刻むビートに絡みながらヤバく暴れまくる。「銃をとれ!」「赤軍兵士の詩」「世界革命戦争宣言」は、あの時代のなかでは語るべくして生まれた歌詞だったと思うのだが、1stアルバムと2ndアルバムは発売禁止になっている。(2001年になって発売された)
ここに収録されている「ふざけるんじゃねえよ」は、初めて店頭に並んだ3rdアルバムのトップを飾った曲で、中島貞夫がATGで制作した『鉄砲玉の美学』に使われた。(映画の方が先だったと思う)
オープニングのカッコよさと、渡瀬恒彦演じるチンピラの哀しさが滲む映画だったなぁ。
ブルーコメッツのヴォーカルはもとより、70年代から90年代にかけて歌謡曲やポップスには欠かせなかった井上忠夫のサウンドは、大野克夫やミッキー吉野と並ぶ忘れられないクリエイターだった。59歳での死去は悔やまれる。
70年代の荒木一郎は、映画音楽の仕事とともにロマンポルノなどでも活躍しておりました。
梶芽衣子と野坂昭如の唄は昭和の逸品。橘真紀が唄うやさぐれ歌謡「酔いどれ女の流れ歌」も、まさに昭和!
そして、このアルバムの目玉は個性派男優・粟津號(あわづ ごう)の怪曲「人体改造」………これはスゴイ! この一曲だけでも購入の価値あり(笑)。
1972年に神代辰巳の作品でデビューをして、ロマン・ポルノだけでも30本近い出演。そしてテレビ・映画にも欠かせなかった彼でしたが、2000年に永眠。享年55歳は早すぎる。
「生きる辛さに泣きはしない 生きる喜びに涙する」彼の言葉です。
収録曲
01. ふざけるんじゃねえよ(唄・演奏:頭脳警察)
02. ジーンズブルース・明日なき無頼派 M-2(音楽:井上忠夫)
03.りんどばーぐスペシャル(唄:ピートマック・ジュニア)
04.ポルノの女王・にっぽんSEX旅行(音楽:荒木一郎)
05. 女番長・感化院脱走 M-14(音楽:荒木一郎)
06. 女番長・感化院脱走 M-6(音楽:荒木一郎)
07. ジーンズぶるうす(唄:梶芽衣子)
08. ジーンズブルース・明日なき無頼派 M-9(音楽:井上忠夫)
09. ジーンズブルース・明日なき無頼派 M-7(音楽:井上忠夫)
10. マリリン・モンロー・ノー・リターン (唄:野坂昭如)
11. 女番長・感化院脱走 M-7(音楽:荒木一郎)
12. 893愚連隊テーマ(音楽:広瀬健次郎)
13. ワン・ナイト、ワン・キッス (唄:ケン・サンダース)
14. 唐獅子警察のテーマ(音楽:広瀬健次郎)
15. 実録外伝 大阪電撃作戦テーマ(音楽:津島利章)
16. 人体改造(唄:粟津號)
17. 沖縄やくざ戦争 M-3(音楽:広瀬健次郎)
18. 現代やくざ 血桜三兄弟(音楽:山下穀雄)
19. 酔いどれ女の流れ歌(唄:橘真紀)
20. りんどばーぐスペシャル part2(唄:ピートマック・ジュニア)
21. 女番長・感化院脱走 M-10(音楽:荒木一郎)
22. 今日は別に変わらない(唄・演奏:頭脳警察)
23. ジーンズブルース・明日なき無頼派 M-15(音楽:井上忠夫)
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ところで、松田優作や原田芳雄の唄で知られる名曲「横浜ホンキートンクブルース」(藤竜也作詞・エディ藩作曲)が、荒木一郎の「りんどばーぐスペシャル」(荒木一郎自身もセルフカヴァーしている)にそっくりなのだが………。
アリスにもパクられていた荒木一郎の音楽は秀逸だ。